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透明剣士

  • posted at:2020-05-29
  • written by:砂月(すなつき)
とうめいけんし
大映(京都撮影所)
配給:大映
製作年:1970年
公開日:1970年3月21日 併映「ガメラ対大魔獣ジャイガー」
監督:黒田義之
企画:土田正義
脚本:吉田哲郎
撮影:今井ひろし
録音:中沢光喜
照明:美間博
美術:加藤茂
音楽:渡辺岳夫
編集:菅原完二
音響効果:倉島暢
擬斗:楠本栄一
助監督:大洲斉
製作主任:小沢宏
現像:東洋現像所
出演:酒井修 熱田洋子 岡八郎 桂三枝 横山やすし
シネマスコープ カラー 78分

夕月三四郎は父十兵ヱのような立派な剣士になろうと道場に通っていたが、生まれつき気が弱いこともあって剣術がなかなか上達しなかった。ある夜、夜警の際に十兵ヱが怪盗団に殺され、ひとりぼっちになった三四郎は行く末を悲観して橋の上から叫んだ。すると辺りが漆黒の闇に包まれ、再び目が効くようになると彼は賽の河原にいた。死神は十兵ヱを手招きすると舟を乗せ三途川に漕ぎ出したが、三四郎は思わず水に飛び込み追い掛けようとした。そこに現れた妖怪しょうけらは諦めるように説得し、力を貸してやるから勇気を出して敵を討てと元気づけた。深山に咲くチゴユリの花、幽谷の岩肌に生えるスッポンダケ、浜辺に打ち寄せるホンダワラの三つをどんなに苦労をしてでも集め、それらを月の出から日の出まで一晩中誰にも見られないように煮詰めると緑色の油が残る。それを進退窮まったときに三口飲み着物に数滴垂らせばどんなことでも出来るというのだ。しょうけらが姿を消すと辺りは再び暗くなり、それが晴れると三四郎は元居た橋の上に立っていた。

誰にも見られてはならぬというしょうけらの言いつけを守り諸国を回って材料を集めた三四郎は、長屋の連中に気づかれないように部屋へ帰ると戸につっかえ棒をして誰も入れないように細工した。日が暮れ天窓から月が見えると薬を作る準備を始め、竈に火を熾し釜に材料を入れると焦がさないように一晩中煮込むことにした。ところが三四郎はそのまま眠り込んでしまい、ニワトリが鳴く声が聞こえたときには空が白んでいた。慌てて飛び起きると竈の火は小さくなっており、辺りにくべる木がないことがわかると自分の下駄を放り込んだ。やがて日が上り釜の蓋を開けてみると底には緑色の油が溜まっていた。三四郎はそれを銚子に移すともうひと眠りすることにした。

大きな声がするため三四郎が目を覚ますと外では騒ぎが起きていた。乱暴な酔っ払いの浪人が狼藉を働き、十兵ヱの初七日の供養のために長屋の連中が銭を出し合って買った花や酒の入った徳利を壊したのだ。抵抗する熊さんを浪人が斬ろうとしたところ、部屋を飛び出した三四郎は仏に免じてお許しくださいと土下座した。浪人の怒りは鎮まることがなく、三四郎を慕うお鈴を連れて行こうとしたのだ。剣では太刀打ち出来ないと考えた彼はしょうけらの言葉を思い出し、部屋に戻ると銚子の薬を飲んだ。一口飲むと腕が消え、二口、三口と飲むと顔や体が消えた。そして着物に垂らすと姿が見えなくなった。浪人は突然目の前に現れた木刀に動揺し、桶の水を掛けられて困惑し、大八車に追い掛けられて逃げ出した。気を良くした三四郎の前に現れたしょうけらは仇討の確認をした。そして前向きであることがわかると薬の説明を始めた。薬の効果は半時で姿が現れる前にくしゃみが三度出る。最初のは薬が切れる予告で、着物が現れるのは二度目、三度目には全てが元に戻る。薬の残りはあと三回分。心して掛かれとしょうけらが言うと、三四郎は決意を固めた。

屋台的映画館
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影の軍団 服部半蔵

  • posted at:2020-05-25
  • written by:砂月(すなつき)
かげのぐんだんはっとりはんぞう
東映(京都撮影所)
配給:東映
製作年:1980年
公開日:1980年2月23日
監督:工藤栄一
企画:翁長孝雄 日下部五朗 松平乗道
脚本:高田宏治 志村正浩 山田隆之
撮影:中島徹
照明:海地栄
録音:溝口正義
美術:井川徳道
編集:市田勇
音楽:原田祐臣
助監督:藤原敏之
記録:梅津泰子
装置:三浦公久
装飾:山田久司
背景:平松敬一郎
スチール:中山健司
宣伝担当:佐々木嗣郎 丸国艦
美粧結髪:東和美粧
衣裳:岩逧保
演技事務:寺内文夫
擬斗:菅原俊夫
進行主任:山本吉応
協力:芸能山城組 東映俳優センター
特殊撮影・撮影:増田敏雄
特殊撮影・美術:株式会社特撮研究所 松原裕志
特殊撮影・操演:株式会社特撮研究所 鈴木昶
特撮監督:矢島信男
出演:渡瀬恒彦 西郷輝彦 森下愛子 原田エミ 三浦洋一
アメリカンビスタ カラー 133分

慶安四年、三代将軍家光の治世。筆頭老中松平伊豆守は泰平の世を乱す恐れのある浪人無宿者の類を一人残らず江戸市中から追放するよう下知した。だが二月に家光が急死したことで御三家副将軍水戸光圀は家光の実弟で会津藩主の保科正之を幼くして将軍職に就いた家継の補佐役に命じた。その頃、家光の死去に伴い職を辞することになった老中堀田加賀守と阿部対馬守が殉死。一方、伊豆守は殉死を装って姿を消した。

江戸城下が混乱する中、無頼漢の一党は警護が手薄になった大名屋敷を次々と襲った。死んだ浪人たちの供養のためにありったけの金を奪い、盗品は市場で売り捌いた。ある夜、一党は大目付内藤山城守の屋敷を襲うが、頭目の正体が伊賀忍者の服部半蔵であることが見破られていた上に先手を打たれた。翌日、内藤の指示で両徳寺の山門に出向いた半蔵はそこで伊豆守から正之の暗殺を依頼されたのだった。恩賞は思いのままと言われたが、先代の服部半蔵や伊賀忍者が受けた仕打ちを思い断固拒否した。半蔵を手下に加え伊賀忍者と甲賀忍者を両輪にして企てを推し進めようと考えていた伊豆守だったが、それが叶わないことがわかると甲賀四郎兵衛に半蔵の抹殺を命じた。

ある夜、会津藩邸に忍び込んだ男は上半蔵と名乗り、服部家再興のために自分を正之に売り込んだ。そしていずれこの身が必要になるはずと邸を後にしたが、その彼を呼び止めたのは下半蔵だった。伊賀忍者の服部家には上下の二家あり、上は隠れ名にて常に世人に交わり、下は草に生きて機に乗じ時に応じ現れるのが習わしだった。上下両家は常に幕府の先兵として危難に身を晒して数多くの命を失った。だが泰平の世が訪れると内情を知り過ぎるがために疎んじられ始末された。切腹による死で幕府の非道を糾弾した先代の遺志を継いだ上半蔵は幕府内に入り込み天下取りを狙う道を選んだ。一方、下半蔵は盗賊として大名屋敷を襲い幕府を混乱させる道を選んだ。お互いの考えを確認し合うと二人は別れた。

正之の方針を無視し浪人無宿者の取り締まりを強化しようとする内藤を拉致した下半蔵は、拷問で伊豆守の傍にいた男の名を割らせ用が済むと裸にして通りに放り出した。役人の追跡から逃れるには江戸を離れるよりも何十万といる人の中に紛れた方が得策だと考えた下半蔵は次の作戦を実行するために隠れ家を移動し、妹の小萩を彼女が好意を寄せる上半蔵のもとへ送った。

屋台的映画館

タッチ

  • posted at:2020-05-21
  • written by:砂月(すなつき)
たっち
「タッチ」製作委員会(東宝=小学館=オー・エル・エム=日本テレビ放送網)
配給:東宝
製作年:2005年
公開日:2005年9月10日
監督:犬童一心
製作:本間英行
製作統括:島谷能成 亀井修 奥野敏総 高田真治
プロデューサー:山中和成
ラインプロデューサー:前田光治
キャスティングプロデューサー:田中忠雄
アシスタントプロデューサー:遠藤学
原作:あだち充
脚本:山室有紀子
撮影:蔦井孝洋
美術:小川富美夫
照明:疋田ヨシタケ
録音:矢野正人
編集:普嶋信一
助監督:熊澤誓人
製作担当:平山高志
音楽:松谷卓
主題歌:「歓びの種」YUKI
挿入歌:「タッチ」ユンナ
・・・:「夢の続き」ユンナ
製作プロダクション:東宝映画
出演:長澤まさみ 斉藤祥太 斉藤慶太 RIKIYA 平塚真介
アメリカンビスタ カラー 116分

双子の兄弟の上杉達也と和也。そして隣家に住む朝倉南。三人は小さな頃から仲良しで、まるで三つ子みたいと近所の人たちから言われていた。父親たちの影響で野球に興味を持った三人は地元の少年野球団に入ったが、ある日テレビで観た高校野球に影響を受け甲子園に憧れるようになった。三人の元気に手を焼いた親たちは両家の間に共同出資で小さな子供部屋を建てたが、南はその後、二つの悲しみを味わった。一つは母親を亡くしたこと。そしてもう一つは女子の体力では高校野球に参加するのが厳しいことを知ったこと。だが前向きな彼女は叶わない夢を二人に託すことにし「南を甲子園につれていって」とお願いした。

平成16年、三人は明青学園高校に入学した。和也は野球部に入部早々エースとして活躍し、全国高校野球選手権の西東京大会一回戦では強打の武章高校を11奪三振で完封した。南はそんな和也を支えるために野球部でマネージャーの仕事をこなした。一方、達也はというと特に目標もなく高校生活を送っていた。ところが強面のせいか常にケンカを売られるボクシング部の原田正平と同級生だったせいでその巻き添えを食うこともあり、成り行きでボクシングを始めることになった。それを知った和也は達也が何故再び野球を始めないのかが不思議でならなかった。球速は彼の方が上なのに。

和也の活躍で明青が大澤高校を1-0で下した頃、達也はデビュー戦でKO負けした。猛練習したにも拘らず不甲斐ない負け方をした彼は悔しくてたまらずに会場から姿を消し、そのおかげでマネージャーの日向小百合が自宅まで道具を届けなければならなくなった。小百合は達也の母・晴子に頑張ってましたよと報告し、負けたことがわかるとそれ以上のことは聞かなかった。その夜、晴子から結果を聞いた南は元気づけようと寝室に行き、ふて寝する達也に励ましの声を掛けた。だが気持ちの晴れない達也は、優しい女の子だったら黙ってキスのひとつくらいしてくれるんじゃないのとぶっきら棒に言った。すると南は達也に近づいて行った。

明青は順調に勝ち上がり、ついに決勝戦にたどり着いた。だが対戦相手の須見工業高校は打率7割5分の強打者・新田明男を擁していた。和也は中学時代に一度だけ対戦していたが、そのときは完璧に抑えていた。野球なんて次はどうなるかわからないと和也が言うと、カッちゃんの勝利は保証するから大丈夫と南は言った。それを聞いた和也は、勝利の女神にキスでもしてもらおうかなと呟いた。彼は数日前に二人がキスについて話しているのを偶然聞いてしまったのだ。嫉妬する和也は達也が南の父・俊夫から頼まれた草野球について行き、そこで南を賭けた勝負をすることにした。

屋台的映画館

地獄(1979年)

  • posted at:2020-05-18
  • written by:砂月(すなつき)
じごく
東映(京都撮影所)
配給:東映
製作年:1979年
公開日:1979年6月3日
監督:神代辰巳
企画:翁長孝雄 日下部五朗 松平乗道 奈村協
脚本:田中陽造
撮影:赤塚滋
照明:金子凱美
録音:溝口正義
美術:鈴木孝俊
音楽:真鍋理一郎
編集:玉木濬夫
助監督:俵坂昭康
記録:梅津泰子
和楽:中本敏生
装置:稲田源兵衛
装飾:山田久司
背景:西村三郎
スチール:石丸泰規
宣伝担当:佐々木嗣郎 田中憲吾
美粧:田中利男
結髪:伊藤実
衣裳:豊中健
演技事務:西秋節生
擬斗:土井淳之祐
企画助手:杉本直幸
進行主任:長岡功
視覚効果:中野稔
光学撮影:デン・フィルム・エフェクト
特殊音響効果:小森護雄
作詞・作曲・唄:山崎ハコ
協力:市山パースル 鈴鹿サーキット チーム オスカー スピード・スター・レーシング 鶴来 和田屋
特殊撮影・撮影:株式会社特撮研究所 高梨曻
特殊撮影・美術:株式会社特撮研究所 大沢哲三
特殊撮影・操演:株式会社特撮研究所 鈴木昶
特殊撮影・照明:株式会社特撮研究所 日出明義
特殊撮影・進行:株式会社特撮研究所 中村義幸
特撮監督:矢島信男
出演:原田美枝子 林隆三 田中邦衛 栗田ひろみ 石橋蓮司
アメリカンビスタ カラー 131分

昭和30年、生形竜造は臨月のミホを連れて駆け落ちした。ミホは竜造の兄・雲平の嫁であり、腹の中には竜造との不義で出来た子がいた。それが自分の子でないことを知った雲平は激怒し、身の危険を感じた竜造はミホとともに険しい山越えを試みたのだった。ところが山小屋で休息を取っているところを見つかり、竜造は猟銃で射殺された。一方、逃げ出したミホは狩猟用のトラバサミに掛かって動けなくなり、雲平は地獄の苦しみを味わわせようと殺さずに放置したのだった。帰ってきた雲平からそのことを聞いた竜造の妻・シマはミホのもとへ行き、地獄でその子を産めばいいと吐き捨てるとすがる手を振りほどいて去って行った。一人残されもがき苦しむミホが息絶えると同時に久能寺の卒塔婆の金輪が回り始め、程なくして村人たちが彼女の亡骸を見つけた。すると腹が波打ち始め、元気な泣き声の赤ん坊が産まれるとミホはあの世へ行った。気がつくと彼女は賽の河原をとぼとぼと歩いていた。目の前には大きな木があり、そこにいた懸衣翁と奪衣婆が無言で近づくと彼女の着物を剥ぎ取った。懸衣翁と奪衣婆は三途川の番人であり、着物を木の枝に掛けることでその者の罪の重さを計ることが出来るのだ。姦通の罪だけにとどまらずその子を産み落としてきたことを知った懸衣翁は、己とともに地獄へ落ちるべき不倫の子は例え現世で生きようとも地獄がついて回るぞと忠告した。そして生まれながらに地獄を背負った赤子の生き様を見届けるのだと言った。

昭和50年、レーサーの水沼アキはレース中に大事故を起こし、休養のために旅に出た。彼女が選んだ旅先は鬼涙温泉だったが、乗車した列車の乗降口前で雑誌を読んでいたところ何処からか自分の名を呼ぶ声が聞こえた。すると突然ドアが開き彼女は外へ吸い出されたが、異変にいち早く気づいた男によって助けられた。彼の名は生形幸男と言い、鬼涙温泉駅の一つ先にある生形村の出身者だった。美術雑誌の出版社に勤めていたが、窯元である本家を継ぐために戻ってきたのだ。鬼涙温泉が先日の地震で湯元が枯れ閉鎖されていることから、幸男は生家にアキを連れて行くことにした。ところがアキはこの家にきたのが初めてにも拘らず隅々まで知っている気がした。一方、シマも彼女を見るなり顔色が変わった。そして入浴中のアキの尻に痣があることを知り確信すると明日にでも帰ってもらって欲しいと幸男に言った。20年前、ミホが産み落とした子をシマは事故に見せ掛けて殺そうとしたが下男の山尾治に止められた。村人たちは彼女がその子をどう育てるか興味を持って観察していたからだ。そこで山尾は離れた町に捨てられていた子とその子を交換し東京の養護施設に預けたのだが、身元を明かしていないにも拘らず戻ってきたことにシマは運命を感じた。そこで彼女は何とか村を出て行ってもらう方法はないものかと考えを巡らせた。

屋台的映画館

会社物語 MEMORIES OF YOU

  • posted at:2020-05-14
  • written by:砂月(すなつき)
かいしゃものがたりめもりーずおぶゆー
坂本事務所=SEDIC=市川準事務所
配給:松竹
製作年:1988年
公開日:1988年11月26日
監督:市川準
製作:坂本敏夫
プロデューサー:中沢敏明
脚本:鈴木聡 市川準
音楽:板倉文
撮影:小野進
美術:菊川芳江
録音:熊谷良兵衛
照明:小中健二郎
編集:冨宅理一
助監督:米山紳
制作担当:高橋憲行
記録:川野恵美
スチール:上牧佑
スタイリスト:南平和子
擬斗:車邦秀
音楽プロデューサー:安藤賢次 庵豊
アートコーディネーター:市川敏明
企画協力:中井純一
製作協力:渡辺プロダクション
提携:松竹 日本テレビ放送網 坂本事務所 SEDIC
出演:ハナ肇 西山由美 谷啓 犬塚弘 桜井センリ
アメリカンビスタ カラー 99分

東京商事で勤続34年の総務課長・花岡始は間もなく定年を迎えようとしていた。仕事の引継ぎが終わったことで特に何もすることがなくなった彼は、自分のデスクからお茶をすすりながら部下たちの仕事ぶりを眺めるのが日課となった。仕事のストレスから解放されたからか朝早く目覚めるようになり、おかげで出勤時のラッシュアワーに遭うことはなくなった。だが家に帰れば見慣れた妻と顔を合わせなければならず、離婚した長女は娘と同居、受験に失敗した長男は予備校通いと別のストレスが溜まった。そんな花岡の一服の清涼剤は新入社員の西山由里が朝早くから笑顔で出迎えてくれることだった。退職を機に郊外へ引っ越すことにした花岡は、この地での最後の思い出に見慣れた河川敷で家族間でのささやかな焼肉パーティーを行ったが、定年後の彼を心配した妻は市役所でもらってきた趣味講座のチラシを手渡した。趣味を持たない花岡にとってどうでもいいようなものばかりだったが、何処からか聞こえてきたトロンボーンの音色に思わず耳を傾けた。

引っ越しが一段落した頃、花岡は同僚たちから陰口を叩かれていることを社内のトイレで偶然知った。その夜、久しぶりに別の課の谷山啓と飲みに行った花岡はそこで自分が昔、立川にある米軍基地のクラブでドラムを叩いていたことを話した。六大学の花形トロンボーン奏者として有名だった谷山が定年前に会社でジャズを演奏してみたいと言ったことに触発されたのだ。その頃を思い出し深酒をした花岡は帰り道にふらついて電柱に額をぶつけ、翌日は長男が警察にやっかいになり妻と謝りに行った。年末が目前に迫り何かと慌ただしい中、花岡は会社に迷惑を掛けまいと部下の木村台子に送別会を行わない旨の書類の作成を頼んだ。用事を済ませて席に戻ると封筒が置いてあり、その中には二人だけで行う由里主催の定年パーティーの案内が入っていた。驚いた花岡は視線で彼女を捜したが、その仕掛け人は台子だった。台子にとって朗らかで実直な花岡は太陽のような存在であり、私生活で何かあっても会社に行くことで元気をもらえた。 ある日、その花岡が由里を見るときだけ違う目をしていることに気づいた台子は、感謝のつもりでデートしてあげて欲しいと言った。パーティーは午後7時からだったが、重役会議と称した麻雀に誘われ抜けることが出来なくなった。ようやく終わった時には予定の時間を大きく過ぎており、急いで駆けつけると由里は辛抱強く待っていた。食事をし、今まで一度も足を踏み入れたことがないディスコへ行き、定年祝いの花をもらった。上機嫌でタクシーに乗ったが、伝えることを忘れていたことに気づき戻ると、由里は若い恋人とキスをしていた。ショックを受けた花岡はうなだれたまま家に帰った。

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