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続 男はつらいよ

  • posted at:2020-03-20
  • written by:砂月(すなつき)
ぞくおとこはつらいよ
松竹(大船撮影所)
配給:松竹
製作年:1969年
公開日:1969年11月15日 併映「喜劇 よさこい旅行」
監督:山田洋次
製作:斎藤次男
企画:高島幸夫
原作:山田洋次
脚本:山田洋次 小林俊一 宮崎晃
美術:佐藤公信
撮影:高羽哲夫
照明:内田喜夫
編集:石井厳
録音:小尾幸魚
調音:松本隆司
音楽:山本直純
監督助手:大嶺俊順
装置:小野里良
進行:池田義徳
製作主任:峰順一
現像:東京現像所
主題歌:「男はつらいよ」渥美清
協力:柴又 神明会
出演:渥美清 倍賞千恵子 ミヤコ蝶々 佐藤オリエ 山崎努
シネマスコープ カラー 93分

最近やたらと母親の夢を見るようになった車寅次郎は久しぶりに生まれ故郷の柴又に帰ることにした。実家である団子屋「本家とらや本舗」の暖簾をくぐるとそこには叔父の竜造や叔母のつね、そして妹のさくらの顔があった。全国を飛び回っているおかげで彼は長い間会っていない気がしていたが、実際には一年ぶりの再会だった。ただ唯一変わっていたのはさくらに子供が生まれたことだった。満男と名付けられた甥っ子は寅次郎そっくりで、さくらが夫の諏訪博とうまくやっていることがわかると寅次郎は涙した。竜造はゆっくりと話を聞こうと奥の部屋に通そうとするが、旅の途中だから長居は出来ないと言って寅次郎は立ち去ろうとした。すると隣の印刷工場から慌てて飛んできた博が止めようとしたが、さくらをよろしく頼むと言ってかっこよく店を出た。とはいうものの寅次郎には特に行く当てもなく、町中をブラブラしていると何処からか子供たちの英語の歌声が聞こえてきた。もしやと思い、ある家に向かうと中から授業を終えた子供たちが出てきた。その家の主は寅次郎が中学生の頃にお世話になった坪内散歩で、退職後は近所の子供たちに英語を楽しく教えていたのだ。懐かしく思った寅次郎は玄関先で挨拶をして帰るつもりでいたが、外から戻ってきた散歩の娘・夏子が昔遊んでいた頃よりも格段に美しくなっていたため息をのんだ。すぐに帰るつもりでいたが、散歩から茶の一杯でも飲んで行けと言われたため言葉に甘えて上がり込んだ。一杯の茶が二杯、三杯となり、そのうちそれが酒となって腰が立たなくなった。そして酒が進むと今度は胃痙攣を起こし金町中央病院に担ぎ込まれたのだった。病室で一晩過ごすと朝には同室の入院患者たちを大声で笑わせられる程に回復し、その勢いは医師の藤村努を怒らせた。ところが夏子が見舞いにやってくると途端におとなしくなり気弱な病人を演じるのだった。

夏子は楽団のチェリストで、寅次郎の見舞いを終えると演奏録音を行うテレビ局に向かった。すると散歩からの電話で寅次郎が行方不明になっていることを知った。仕事を終えて病院に向かうと藤村はカンカンになって怒っていた。昼過ぎに弟分の川又登がきたことで寅次郎は肝吸いをつけたうな重二人前を取ってくれと看護師に言った。それを知った藤村が叱ると、二人はプイと出て行ったきり帰ってこないのだ。責任が持てないのでもう戻ってきて欲しくないと言うと、入院費は私が支払いますと夏子は平身低頭して謝った。すると藤村は彼女を責めていることに気づき、あなたも被害者なんですねと頭を下げた。その頃、焼き鳥屋でたらふく飲み食いしていた寅次郎たちだったが、財布を持っていないことを思い出しツケにして店を出ようとした。そのことがきっかけで店主はケガを負い二人は警察に連行された。登は返されたが寅次郎は留置場行きとなり、呼び出されたさくらは涙を流した。後日釈放されると、寅次郎はまた旅に出た。

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遺産相続

  • posted at:2020-03-16
  • written by:砂月(すなつき)
いさんそうぞく
東映(京都撮影所)
配給:東映
製作年:1990年
公開日:1990年10月20日
監督:降旗康男
企画:高岩淡 佐藤雅夫
プロデューサー:奈村協 天野和人
脚本:松田寛夫
撮影:木村大作
照明:増田悦章
録音:堀池美夫
美術:内藤昭
音楽プロデューサー:おくがいち明
音楽:篠崎正嗣
編集:荒木健夫
助監督:長岡鉦司
記録:田中美佐江
装置:野尻裕 稲田源兵衛
装飾:極並浩史
背景:西村三郎
美粧:田中利男
結髪:山田真佐子
スチール:高瀬和三郎
演技事務:寺内文夫
衣裳:豊中健
擬斗:土井淳之祐
進行主任:長岡功
出演:佐久間良子 宮崎萬純 野々村真 尾美としのり 清水美砂
アメリカンビスタ カラー 109分

マネキンの製造、販売を行う中小企業のセントラル工芸。社長の藤島元春は気さくな性格で社員たちからとても慕われていた。セントラル工芸は典型的な同族会社で、専務は内縁の妻・喜久恵、重役は連れ子の和仁と里実が務めるという具合だった。ある日、その会社に勅使瓦英俊という青年が入社した。快く迎え入れられた彼には新入社員であるにも拘らず総務課長のポストを用意されていた。

英俊の仕事ぶりがようやく板についてきた頃、元春は彼を奥多摩での渓流釣りに誘った。京都で気ままな大学生活を送っていた英俊にとって山歩きは苦痛でしかなかったが、魚が釣れると一転喜びに変わった。ようやく渓流釣りが楽しいと感じ始めたとき、元春が足を滑らせて滝壷に落下しそのまま帰らぬ人となった。

葬儀はしめやかに行われていたが、ある人物の登場で波乱の展開となった。その人物とは湘南に住む元春の本妻・静子だった。弁護士の安西浩一は喜久恵に元春が遺言書を作成していないことを確認すると、共同相続人による遺産分割協議を出来るだけ早く行うことを伝えた。その協議に参加するのは、静子と娘の和子、そして和仁と里実だった。その中に自分の名前がないことを知った喜久恵が激怒すると、法律は戸籍上の妻にのみ相続権があると安西は静かに言った。それを聞いた喜久恵は、一緒に暮らすことこそが夫婦であり真実の妻は自分だと主張したが、内縁の妻に相続権はないと法律が定めていると今度はきっぱりと言った。そして良からぬ動きを封じるために、預貯金口座からの出金、有価証券、ゴルフの会員権等の売却、貸金庫の開扉は共同相続人全員の立ち会いが必要になると釘を刺すと、頭に血が上った喜久恵はそんな法律なんて絶対に認めないと安西に食って掛かり、あのバカ本妻に渡してしまうくらいなら火をつけて燃やした方がマシだと吐き捨てた。そしてその様子を英俊ら部外者は面白がって見物していたのだった。このままでは埒が明かないと考えた安西は別の場所にいた和仁の妻・美香と接触し、喜久恵抜きで共同相続人と話してみませんかと提案した。遺産総額はザッと見て50億円。相続税や譲渡税を払ったとしても手元に5億円は残る計算であり、喜久恵は元々相続権はないことから和仁を説得して話し合いを進めるべきだと言った。その会話を耳にしたのは偶然通り掛かった里実だった。

区役所に提出された死亡届は所轄の税務署に転送される。相続人が対策を講じ脱税を行う可能性があるからだ。台東税務署主任は、喪主が内縁の妻が務めており連れ子の二人と養子縁組を結んでいること、そして戸籍上の妻との間に子供がいることから、機先を制するためにセントラル工芸の税務調査を行うことにした。

屋台的映画館

ネコナデ

  • posted at:2020-03-12
  • written by:砂月(すなつき)
ねこなで
「ネコナデ」製作委員会(AMGエンタテインメント=アミューズメントメディア総合学院=tvk=テレ玉=チバテレビ=三重テレビ=KBS京都=サンテレビ=NTTぷらら=スタジオビコロール)
配給:AMGエンタテインメント
製作年:2008年
公開日:2008年6月28日
監督:大森美香
製作:永森裕二 間宮俊二 関佳史 松本宏 青柳洋治 波多美由紀 細井俊介 江副純夫 小川貴史 陣汰朗
プロデューサー:平体雄二
ラインプロデューサー:宮田幸太郎
原案:永森裕二
脚本:永森裕二
撮影:近藤龍人
照明:藤井勇
録音:古谷正志
美術:高尾研吏
編集:菊井貴繁
スクリプター:田口良子
ヘアメイク:岩本みちる
スタイリスト:百井豊 春原香代
助監督:北川博康
制作主任:稲垣隆治 武藤貴紀
進行主任:岩川悠生 佐野浩章
アシスタントプロデューサー:飯塚達介
プロダクションマネージメント:樋口哲史
音楽:遠藤浩二
主題歌:「頼りない天使」つじあやの
製作プロダクション:スタジオブルー
企画:AMGエンタテインメント
出演:大杉漣 青山倫子 黒川芽以 入山法子 立花彩野
アメリカンビスタ カラー 85分

IT企業「デジタルドラゴン」の人事部長・鬼塚太郎は辰美孝四郎社長の方針に従って粛々とリストラを進めていた。対象となるのは中堅社員で、相手の素性を調べ上げたうえで反論出来ない理由で追い込むのだ。そのやり方は冷酷そのもので社員たちからは「鬼」と恐れられていた。だがそこからくるストレスは相当なもので、胃薬を手放すことは出来ない生活となっていた。ある夜、帰路の途中にある公園のベンチでいつものように胃薬をコーヒーで流し込んでいると、付近で若いカップルのはしゃぐ声が聞こえてきた。その足元には段ボール箱があり四匹の子猫が鳴いていた。彼らはそのうちの一匹を抱き上げて飼おうかと相談していたのだが、どうやらペット禁止のアパートに住んでいるらしいのだ。飼う気もない猫をおもちゃのように扱うカップルにイラッとした鬼塚は責任が持てないのならやめなさいと注意した。すると男の方がキレ気味に責任持って飼いますよと言い、あなたも一匹くらい救ってあげたらどうですかと続けた。その迫力に言葉を詰まらせている間にカップルは帰って行き、鬼塚は無言で段ボール箱を見つめた。

人事部が第二新卒に対するの研修の準備を行っている頃、辰美のもとに複数の陳情書が届いていた。そこには誹謗中傷を繰り返して評価する鬼塚こそ会社の健全経営に多大な影響を与える人物であり解雇対象となるべき人物だと書かれていた。その文書を手にした辰美はご満悦だった。何故なら陳情書がくればくる程リストラがうまく行っている証拠だからだ。彼は効率良い経営を行うために中堅社員の首を切り、その代わりに一度就職した後に何らかの理由で退職した若い求職者を入社させた。新卒者と比べて最低限のビジネスマナーを体得しているため、会社としてもその方が扱いやすいのだ。そして頃合いを見て効率良く人員整理を行った。研修が始まると鬼塚は所謂「バツイチ」たちに対し新たにビジネスマナーを叩き込んだ。新入社員たちは研修の間テレビのない寮で生活することになっているが、厳しい訓練が二週間も続くことを考えると皆心が暗くなった。そんな中、田中亜里沙は翌日行われる工場研修の引率の役目を人事部員の君島凛子から任せられた。何故自分が。その疑問を率直に投げ掛けると、凛子は鬼塚の指示だと言った。思い当たる節はあった。研修の説明の間、彼女は鬼塚をずっと睨みつけていたからだ。

仕事の帰り、鬼塚はいつものように自動販売機でコーヒーを買うと公園のベンチで一息ついていた。ふと子猫のことを思い出した彼はあの場所へ歩いて行き、段ボール箱が無くなっていたことできっと誰かに拾われたんだろうと安堵のため息をついた。ところが小さな鳴き声がしたため足元を見ると一匹の子猫がつぶらな瞳で見つめていたのだ。思わず抱いて家に連れ帰ったが、そのことを家族には言い出せなかった。妻・静子、小学生の長女・真由と三人暮らしの鬼塚は威厳のある父親として弱みを見せられないのだ。だがこのまま隠し通せるとも思えず、一晩考え抜いた末に寮の空き部屋でしばらく飼うことにした。

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悪女かまきり

  • posted at:2020-03-07
  • written by:砂月(すなつき)
あくじょかまきり
東映(東京撮影所)
配給:東映
製作年:1984年
公開日:1984年4月8日 併映「セカンド・ラブ」
監督:梶間俊一
企画:伊藤源郎 瀬戸恒雄
脚本:内藤誠 梶間俊一
撮影:奥村正祐
録音:林鉱一
照明:梅谷茂
美術:今村力
編集:戸田健夫
助監督:岡田敏夫
音響効果:原尚
記録:宮本衣子
製作調整:山田光男
演技事務:石原啓二
装置:浜中一文
装飾:三谷巌
背景:植田義明
美粧:沢辺満代
衣裳:山内三七子
進行主任:河野正俊
宣伝:吉田達 荒井一弥 野口敦男 清水一美
スチール:加藤光男
車人形:西川古柳
現像:東映化学
音楽監督:菊池俊輔
挿入歌:「悪女の季節」五月みどり
・・・:「横浜ホンキートンクブルー」石黒ケイ&WISH
協力:大関早苗美容室 (株)佐藤貴金属商店 東映美術センター
衣裳協力:ミレーヌ・友田
出演:五月みどり 速水亮 豊田真子 奈美悦子 日向明子
アメリカンビスタ カラー 84分

八丈島に接近していた台風13号は夜半に神奈川県に上陸し北上した。翌朝、西伊豆海岸にはその時に遭難したと思われる二人が打ち上げられた。一人は藤村真沙子という女性で一命を取り留めたが、もう一人の伊吹和夫は既に死んでいた。真沙子は横浜の武智美容室に勤める美容師だったが、自分のことをしゃべらないため同僚たちは彼女のことを何も知らなかった。ただ常連客の和夫と親しかったことを除いて。週刊誌が事件を面白おかしく書き立てる中、捜査を行う刑事の小林六助は事件解明の糸口を探っていた。勤務先の物産会社から5千万円を横領した和夫は横浜で8百万円の遊興費を、油壷のヨットハウスで1千2百万円のヨットを購入したことまではわかっていたが、残りの3千万円が不明となっていた。そこで小林は真沙子を喫茶店に呼び出しさりげなく聞き出そうとするが知らないの一点張りだった。このままで時間の無駄だと感じた小林は本来の目的である女子高生をテーブルに招いた。彼女は和夫の妹のかおるで、兄が真沙子を愛していたことは彼の日記を読んで知っていた。だが一人だけ無事に生還出来たことがどうしても信じられなかった。

一年後、真沙子は独立して美容室を開店させた。それを知った小林は開店祝いを持って訪ねたのだが、そこでかおるが働いていることに驚いたのだった。真沙子は兄を失ったかおるを引き取り、二階に住み込ませるだけでなく国家試験を受けさせるために自身の店で働かせていたのだ。だが小林が知りたいのはそのことではなかった。天宝堂宝石店の脱税事件を調べていた彼は真沙子が半年ほど前にエメラルドの指輪を3千万円で処分したことを突き止めた。そのことを話すと真沙子はそれを店の開店資金に充てたと説明したが、それをいつ何処で手に入れたのかを聞き出そうとすると真沙子は向きになってそれを拒んだ。そして人に言えない苦労をして買ったものだと弁解したが、小林はその言葉を疑った。

真沙子には堂島太一という不動産会社社長のパトロンがいた。堂島は山中湖畔にある別荘を彼女に与えることにしたが、それだけでは真沙子は満足しなかった。例えば堂島が死んだ場合、鎌倉に住む妻には20億円の遺産が入る。それに比べて真沙子はただの遊び相手だ。くやしいわと不平を漏らすと、堂島は愛の証として真沙子名義の生命保険に入ることにした。

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必殺4 恨みはらします

  • posted at:2020-03-03
  • written by:砂月(すなつき)
ひっさつふぉーうらみはらします
松竹=朝日放送
配給:松竹
製作年:1987年
公開日:1987年6月6日
監督:深作欣二
制作:山内久司 櫻井洋三
脚本:野上龍雄 深作欣二 中原朗
音楽:平尾昌晃
撮影:石原興
照明:中島利男
美術:太田誠一
録音:広瀬浩一
調音:鈴木信一
編集:園井弘一
記録:野崎八重子
装飾:玉井憲一
スチール:長谷川宗平
進行:鈴木政喜 西村維樹
演技事務:木辻竜三
監督助手:原田真治
照明助手:中山利夫
撮影助手:安田雅彦
美術助手:家木一実 西村伊三男
編集助手:関谷憲治
録音助手:山本研二
効果:竹本洋二
殺陣:菅原俊夫 楠本栄一
現像:IMAGICA
装置:新映美術工芸
美装:八木かつら
衣裳:松竹衣裳
小道具:高津商会
製作主任:高坂光幸
監督補:津島勝
助監督:原田徹
題字:糸見溪南
製作協力:ジャパンアクションクラブ
独楽指導:藤田由仁
踊り指導:祗園東 満佐子
タイトル:シュプール
主題歌:「ついて行きたい」テン・リー
宣伝:松本淳 宮田秀世 長崎直定 川戸文夫
製作補:斉藤守恒 佐生哲雄
製作協力:京都映画株式会社
出演:藤田まこと 村上弘明 かとうかずこ 西田健 ひかる一平
アメリカンビスタ カラー 131分

四月十三日。仏滅に暗剣殺、三隣亡に大殺界という八方塞がりの大変な大厄日に南町奉行所で見習与力の安田小兵衛が突然怒り狂って奉行の長尾監物を斬りつけた。そもそもの事の起こりは、監物が小兵衛を筆頭与力に取り立ててやると口約束し五十両の賄賂を只取りしたからだった。その結果、頭に血が上った小兵衛は刀を抜いたのだが、迷惑したのは中村主水を始めとする同心たちだった。奉行所内は蜂の巣をつついたような大騒ぎとなり、身を守ることに必死な同心たちが戸を閉め切ると部屋の中の残されたのは目が血走った小兵衛、命乞いをする監物、そして貧乏くじを引いた主水だけだった。追い詰められた監物は主水を盾とするが、ひらりと身を交わされ小兵衛の餌食となり、その小兵衛は自ら命を絶った。やれやれ助かったと胸をなで下ろしたのもつかの間、主水は卑怯未練な振る舞いをしたと一人咎められ半年間、俸禄の半額を命じられたのだった。それから数日後、奉行所に後任の奉行が到着した。とても若く端整な顔立ちをした奥田右京亮は、着任祝の席で主水に対し私のときには見殺しにするなよと言った。ふて腐れた彼は気分直しにおけら長屋の居酒屋に立ち寄り女将のおふくを口説こうとしたのだが、表の騒動でそれどころではなくなった。ど派手な化粧と身なりの若者たちが馬で暴れ回っていたのだ。彼らは旗本の子息で結成された愚連隊で長屋の住民を虫けら同然に見下していた。そんな中、素浪人の杉江伊織が立ちはだかり抗議をしていると、愚連隊の一人が乗った馬が突然暴走を始め子供を助けようとした平野弥兵衛が命を落とした。人殺しと叫びながら弥兵衛の娘のお弓が向かって行くと、首領の神保主税は殺したのは馬だと弁解した。だが怒りの治まらない長屋の人々が石を投げ始めたため愚連隊は成す術もなく退却した。そこに現れた主水は、お前らの気持ちはわかるが事を大きくしないでくれと懇願した。そして事切れた馬に駆け寄ると脚に刺さった十字手裏剣を引き抜き、こいつのせいだと呟いた。

一体誰が何のために騒動を起こしたのか。疑念を持った主水は翌日、調書とともに証拠となる十字手裏剣を提出したが、何者かによって仕組まれた陰謀であるという推察を荒唐無稽だと右京亮は一蹴し、何の根拠もないことを取り上げるわけにはいかないと言った。更に十字手裏剣を受け取った覚えはないと言ったことで主水は闇の根深さを感じ、思い違いだったと釈明して一旦引き下がることにした。その夜、弥兵衛の弔いが行われ、主水はおふくの店で伊織と静かに飲んでいた。するとあれは誰だったのかなとおふくが独り言を漏らした。訳を聞くと、騒動のときに子供を助けた人物がもう一人いたというのだ。主水も伊織もそのことに気づいておらず、おふくの思い違いではないかと疑ったが、それを確かめようにも伊織はあの子供を長屋で見掛けたことがなかった。考えれば考える程謎は深まるばかりだった。

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