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ザ・スパイダースのバリ島珍道中

  • posted at:2016-01-27
  • written by:砂月(すなつき)
ざすぱいだーすのばりとうちんどうちゅう
日活
配給:日活
製作年:1968年
公開日:1968年8月28日 併映「だれの椅子?」
監督:西河克己
企画:笹井英男
脚本:伊奈洸 村田啓三 智頭好夫
撮影:高村倉太郎
照明:河野愛三
録音:片桐登司美
美術:坂口武玄
編集:鈴木晄
助監督:葛生雅美
色彩計測:舟生幸
特殊技術:日活特殊撮影部
現像:東洋現像所
製作担当者:岡田康房
音楽:かまやつひろし 林一
主題歌:「真珠の涙」田辺昭知とザ・スパイダース
主題歌:「赤いドレスの女の子」田辺昭知とザ・スパイダース
挿入歌:「ヘイ・ボーイ」田辺昭知とザ・スパイダース
挿入歌:「サマー・ガール」田辺昭知とザ・スパイダース
挿入歌:「メラ・メラ」田辺昭知とザ・スパイダース
挿入歌:「波止場の花」田辺昭知とザ・スパイダース
協賛:日清食品
協力:パン・アメリカン航空
出演:田辺昭知 堺正章 井上順 井上孝之 大野克夫
シネマスコープ カラー 86分

1968年の夏の盛り、東京のある屋敷に四人の男が集められた。彼らはブザーを合図に決闘を行い、残った二人(アマゾンの譲次、上海の張)に任務が与えられた。その任務とは広島に落とされた原爆の8倍の破壊力を持つプルトニウム239を東南アジアの某国に届けることだったが、この物質には衝撃に弱いという弱点があった。そこで一週間後に世界演奏旅行へ出かけるグループサウンズのザ・スパイダースが使用するアンプに忍ばせて運ぶことになっていた。衝撃に弱いアンプは扱いに慎重であることと、バンドの楽器に税関が関心を持たないからだった。謎の声は、香港についたアンプからプルトニウムを取り出してマカオに運ぶ際、この計画にスパイダースが気づいた場合は直ちに抹殺せよと命じた。そして万が一任務に失敗した場合は死が待っていることを告げた。

国内の演奏旅行を終え、楽屋で帰り支度をしていたスパイダースだったが、ボーカルの堺正章が婚約者の田代悦子と離ればなれになるのが悲しくてとても遠征なんて出来ないと言い出したのだ。心配になった悦子はついて行くと言ったが、メンバーの井上順は帰ってきたらすぐに式を挙げるんだから我慢しろと諭した。表口も裏口も熱狂的なファンに埋め尽くされていることからボイラー室の裏に移動車を回していることをマネージャーから説明されて渋々従う正章。そんな彼を気遣う悦子は、退室時から食べ始めた正章の食べかけのバナナを取り上げ、みっともないからおよしなさいよと放り投げた。すると最後に階段を下りてきたリーダーの田辺昭知がそれを踏んで滑り足を負傷、緊急入院したのだった。世界演奏旅行まで一週間ほどあることと契約による国際的な信用が拘わることで延期は不可能なことから、香港での演奏のみ昭知の代わりに正章がドラムを担当することになった。

二カ月間の演奏旅行に出発したスパイダースはパン・アメリカン航空の香港行きの旅客機に乗り込んだが、彼らをぴったりとマークしていたのはあの二人組だった。そんなこととは知らない6人は宿泊するホテルに直行。ところが予約した部屋が続き番号だったのにも関わらず何故か真ん中の302号室にボーイが入れてくれないのだ。押し問答しているところへその部屋の住人であるリンダがやってきて快く代わってくれたことから、6人は彼女をご馳走に誘ったのだった。だがその途中でかまやつひろしが財布を忘れたことに気付いたため、悦子に手紙を書くという正章とともにホテルへ戻ることになった。302号室に入ったひろしはいきなり男に殴られたが、大声を出したため譲次の手下たちは何も出来ずに逃げ出した。その声を聞いて隣の部屋から飛び出した正章は男たちを捕まえることは出来なかったが、手引きをした張の顔をしっかりと記憶していた。部屋の中の物は何も取られておらず、ひろしの財布も無事だった。なぜ泥棒がアンプの蓋を開けたのか、二人は頭を捻るばかりだった。

屋台的映画館
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この子の七つのお祝いに

  • posted at:2016-01-20
  • written by:砂月(すなつき)
このこのななつのおいわいに
松竹=角川春樹事務所
配給:松竹
製作年:1982年
公開日:1982年10月9日 併映「蒲田行進曲」
監督:増村保造
製作:角川春樹
プロデューサー:岡田裕介 中川完治
原作:斎藤澪
脚本:松木ひろし 増村保造
音楽:大野雄二
撮影:小林節雄
照明:川崎保之丞
美術:間野重雄
録音:井家真紀夫
編集:中静達治
助監督:近藤明男
制作主任:高橋文雄
撮影助手:竹沢信行 岩本道夫 笠間公夫
撮影効果:塚本貞重
照明助手:国本正義 本田純一 大坂章夫 清野俊博 岡秀雅
美術助手:和田洋
装置:荒井新一
セット付:藤田雄幸
装飾:神田明良
衣裳:松竹衣裳 相沢登記雄
メーキャップ:入江荘二
結髪:馬場利弘 沢辺満代
記録:山之内康代
録音助手:舛森強 小川健司
音響効果:佐々木英世
編集助手:大橋富代
ネガ編集:南とめ
現像:東洋現像所
宣伝:梶原時雄 松本行央
スチール:清水紀雄
助監督:藤由紀夫 加藤仁
進行:宮本恵司 大崎裕伸 八鍬敏正
制作担当:生田篤
衣装協力:鈴乃屋
衣装制作:小泉清子
ロケ協力:会津若松・市橋漆工藝(有)
制作協力:オフィス・ヘンミ
出演:岩下志麻 根津甚八 辺見マリ 畑中葉子 中原ひとみ
アメリカンビスタ カラー 111分

東京のとあるマンションで無職の女性・池畑良子が殺害された。遺体には左の頸動脈から喉元にかけて鋭い刃物で切られたような傷があり、他にも肩甲骨の下に2か所の刺し傷、左の乳房の下にもえぐられた箇所があった。警視庁城西警察署の渋沢刑事はあまりにもひどい手口から怨恨の可能性を口にしたが、近所の聞き込みで男出入りが激しかった情報を掴んでいた阿久津刑事は色恋のもつれではないかと言った。その相手はマンション周辺に住む土地成金の親父やその息子たちで、5,6人を代わるがわる部屋に連れ込んでいたという話だった。部屋は荒らされておらず洋服ダンスだけがかき回されていること、現場にはケーキの他に外国たばこの吸い殻が残されていることから、渋沢らはそれらを手掛かりに捜査を始めた。

参考人の一人としてピックアップされたのは、5年前に東洋新報を辞め今は月刊公論の専属ルポライターをしている母田耕一だった。彼が27日、つまりこの日の午後6時に良子と会う約束をしていたことは部屋のカレンダーに記されていたことでわかったが、母田はその理由を秦一毅の日常生活を取材するためだったと取り調べで証言した。秦は保守党次期総裁候補・磯崎大蔵大臣の第一秘書官で、磯崎を陰で操っている怪物と言われていた。その屋敷で家政婦として働いていた良子だったが、出入りの商人と関係したことでクビになった。それを知った母田は彼女に接触して秦に関する情報を聞き出そうとしたのだ。母田は潔白を証明するために吸っていたショートホープをもみ消すと、僕の血液型はO型だからこの吸い殻で良く調べてくださいと皮肉を言った。その夜、署内で偶然再会した東洋新報時代の後輩・須藤洋史に取材方法の手解きをすることにした母田は、須藤の行きつけのバー・往来(ゆき)で調査中の案件を公開した。秦が磯崎の黒幕であることを須藤は知っていたが、母田は彼を大物にしたのは秦ではなく内縁の妻の青蛾(おおが)であることをファイルの資料で説明した。占い師の青蛾は高輪にある秦の豪邸を仕事場にしていた。彼女は証文(人の手形)を見て運勢や将来を占うのだが、磯崎が総裁候補になれたのは青蛾の言うとおりに動いたからだという噂だった。そのことが評判になり大物の政治家たちが事を決める時は必ず青蛾に占ってもらうことにしていた。この高輪詣は秦が選んだ人物しか占わず、一回の相場が300万から500万円と言われていた。

クビになった良子と連絡が取れたため喫茶店で会うことになった母田は、そこで青蛾の占いにからくりがあることを聞いた。話の続きは500万円をもらってからでないと話せないと言われたが、信憑性がないと断ると彼女は証拠として頭にきて盗み出したという一枚の証文を取り出した。青蛾は占いと称してこの手形の男を探しているというのだ。あんたに洗いざらい話して復讐してやるんだと良子が言うと、金は何とかするから3日後にマンションで詳しい話を聞きたいと再び会う約束をしたのだった。

屋台的映画館

美女と液体人間

  • posted at:2016-01-14
  • written by:砂月(すなつき)
びじょとえきたいにんげん
東宝
配給:東宝
製作年:1958年
公開日:1958年6月24日
監督:本多猪四郎
製作:田中友幸
原作:海上日出男
脚本:木村武
撮影:小泉一
美術:北猛夫
録音:三上長七郎 宮崎正信
照明:西川鶴三
音楽:佐藤勝
特殊技術・撮影:荒木秀三郎 有川貞昌
特殊技術・美術:渡辺明
特殊技術・照明:城田正雄
特殊技術・合成:向山宏
監督助手:梶田興治
編集:平一二
現像:東洋現像所
製作担当者:眞木照夫
特技監督:円谷英二
出演:白川由美 佐原健二 平田昭彦 小沢栄太郎 千田是也
シネマスコープ カラー 86分

雨が降る深夜の東京で、タクシーに撥ねられた男が衣服や持ち物を残して行方をくらましすという奇妙な事件が発生した。警視庁捜査一課は遺留品や目撃者の証言などから、草津駅のロッカーから麻薬を盗み出し第一銀行兜町支店付近に身を隠していたギャングが待っていた車に荷物を積み込もうとしたところ突然発砲。仲間割れした車は走り去り、残された男は対向車線を走ってきたタクシーに撥ねられたが、何故か裸で失踪したという仮説を立てた。だが目撃者であるカップルとタクシーの運転手は撥ねられた男が逃走する姿を見ておらず、銃声を聞いて駆け付けた巡回中の警官も同じ証言をした。この不可解な事件には物的証拠が多いことから、宮下刑事部長はあらゆる方向から身元が割れるはずだと楽観視していた。そこへやってきた富永捜査一課課長は、ギャングが置いて行った鞄の中に時価7、8百万円相当の麻薬が入っていたことを報告した。破られたロッカー以外には手を付けていないことから、ギャングが鞄だけ狙ったことは確かだった。小川刑事と田口刑事は預け主である金という男を連行し聴取したが、彼は東京駅のプラットホームで知らない人物から受け取ったと言い張った。宮下は参考人の写真を数枚見せ、金の表情から三崎だと確信すると彼が住むアパートを包囲した。宮下、田口、坂田刑事の三人は返事のない三崎の部屋に踏み込んだが、ベッドに寝ていたのは恋人の新井千加子だった。坂田が三崎のことを尋ねると4、5日ほど戻っていないと答えたため署に連行した。聴取を担当した富永は、部屋の中に高価なテレビや三面鏡があった理由を尋ねると、彼女がキャバレー・ホムラの専属歌手であることがわかり納得した。だがそれが麻薬で儲けた金で買ったものではないという証拠にはならないし、三崎が売人であることを知らないという理由にもならなかった。田口が現場に残された腕時計とライターを机の上に置くと、三崎がとても大事にしていた時計だと千加子は認めたため、富永は深く追及せずに釈放した。彼女を泳がせば三崎が必ず接触してくるに違いないからだ。

キャバレーに客として潜入した田口と坂田は、千加子からメモを受け取った男を現行犯逮捕し連行した。だが富永はその男の顔を見た途端、笑顔になった。彼は富永の友人で城東大学助教授の政田だった。黙っていたらブタ箱に入れると富永に言われた政田は、三崎はあの雨の降る寒い晩に裸で逃げたんだろうかと言った。政田の専門は生物化学で、核爆発による放射性物質の人体に及ぼす影響を研究していた。仮に何かの不思議な現象で人間の肉体が解けたとしたら。あの晩降った雨に多量の放射性物質が含まれていたとしたら。事件の数日前に南洋で米軍による核実験が行われ、漁をしていた第二龍神丸が消息を断っていたのだ。富永は政田の説に科学的な裏付けがないことを知ると、今後事件に首を突っ込まないことを約束させた。

屋台的映画館

インターミッション

  • posted at:2016-01-09
  • written by:砂月(すなつき)
いんたーみっしょん
オブスキュラ=東北新社
配給:オブスキュラ=東北新社
製作年:2013年
公開日:2013年2月23日
監督:樋口尚文
エグゼクティブ・プロデューサー:樋口久美 嶋元勧治 小坂恵一
プロデューサー:蔵原康之
アソシエイト・プロデューサー:菅正剛 鈴木伸英 松本学 白石信彦 坂野かおり
脚本:樋口尚文 港岳彦
音楽:菅野祐悟
撮影:町田博
照明:津嘉山誠
美術:部谷京子
録音:益子宏明
編集:山本憲司
音響効果:小森護雄
ライン・プロデューサー:井上淳
助監督:根木裕介
製作協力:ティーエフシープラス オムニバス・ジャパン ヒューマックスシネマ
出演:秋吉久美子 小山明子 水野久美 竹中直人 佐野史郎
アメリカンビスタ カラー 112分

震災後の検査で耐震性に問題があることがわかり取り壊されることになった、東京・銀座の中心部にある老舗の映画館。ここでは世界の名作からB級映画まで平等に上映していたことから幅広いファンに支持されていた。閉館となるその日までいつもと変わらない接客を心掛けている支配人のクミコには親子ほども年の差がある絵描きの夫・ショウタがいるが、納得行かない閉館命令とスランプで描くことが出来ないと嘆く夫へのイライラでつい母親のように強く叱ってしまうのだった。

休憩(インターミッション)
上映を待つユリコに声を掛けてきたのは義妹のヨーコだった。狭くて暗くて息が詰まるという理由で映画館が苦手だというユリコ。そんな彼女が頻繁にいることをヨーコが不思議がっていると、アレが怖いのよとその理由を打ち明けた。アレとは原発事故で放出された放射能だった。それを聞いて笑い飛ばすヨーコ。何故ならこの映画館は核シェルター替わりどころか雨漏りするほど老朽化しているからだ。どうやったら逃げられるのよとユリコが尋ねると、大変なことになったら北の最果てに行こうが南の島に行こうがどこまでも飛んでくるとヨーコは答えた。どこまでも追いかけて来るのは若い頃のうちの亭主みたいとユリコが笑うとヨーコはあきれた。別れた男ののろけぐらい不毛なものはないとヨーコが釘を刺すと、ユリコはどうしておたくもうちも亭主が消えたのかしらと皮肉った。みんな自分のことしか考えないのだから、いっそ日本が滅んで心を入れ替えなきゃダメよ。ユリコが最近起こった連続爆弾魔ヒグ・ボマーの話題を出すとヨーコの目の色が変わり、「むしろやってみる?」とバッグから古びた冊子を取り出した。年の離れた兄さんが昔ヤバい友達からもらったというその冊子の表紙には「腹腹時計」と書いてあり、それを見た途端ユリコは何でもっと早く知らせてくれなかったのと叫んだ。意気投合した二人は上映が始まる前に映画館を後にした。「本日の上映 ミケランジェロ・アントニオーニ監督 「砂丘」 1970年」。

休憩(インターミッション)
上映終了後も作品の余韻に浸っていたナツキは、この映画を紹介してくれたアキコに感謝した。二人は女優で、ナツキは以前アキコの付き人をしていたこともあり何でも打ち明けることが出来る間柄だった。昔は気に入った映画を何度も観たが、自分が出ている映画だけは観なかったとアキコが言うと、大スターだったから忙しくて時間がなかったんですねとナツキは頷いた。するとアキコはそれを否定し、自分の演技の粗ばかり見えて楽しむことが出来なかったのよと言った。テレビドラマや舞台だと台本読みや立ち稽古があって流れがつかめるが、細切れで撮る映画で一貫した感情を表すのは本当に難しい。だが昔出演した映画を最近改めて観直すことでその細切れの中に自分が生きていることを見つけ、ある映画と別の映画の自分が一続きに見えてくることさえあった。そして100本近く出演した映画大陸にはその時代の自分が生きているのだ。しかし映画が一人の女優の人生を変えてしまうこともあることから、ナツキが女優になると言ったときにアキコは反対したのだった。女優には役と現実の区切りがないことから、現実に家庭を持ってそれを軸にした方がいいのかもしれないとアキコが言うと、私には何十年も愛しているが結婚出来ない人がいるとナツキは言った。そしてもう一度付き人に戻りたいと告白した。「本日の上映 ジャック・ドワイヨン監督 「ラ・ピラート」 1984年」。

屋台的映画館

浮かれ三度笠

  • posted at:2016-01-05
  • written by:砂月(すなつき)

うかれさんどがさ
大映(京都撮影所)
配給:大映
製作年:1959年
公開日:1959年12月6日 併映「闇を横切れ」12/12まで 「旅情」12/13から
監督:田中徳三
製作:三浦信夫
企画:辻久一
脚本:松村正温
撮影:武田千吉郎
録音:大谷巌
照明:斎藤良彰
美術:西岡善信
音楽:塚原哲夫
色彩技術:青柳寿博
編集:菅沼完二
装置:科田豊一
擬斗:宮内昌平
助監督:池広一夫
製作主任:黒田豊
現像:東洋現像所
出演:市川雷蔵 本郷功次郎 中村玉緒 宇治みさ子 左幸子
シネマスコープ カラー 99分

将軍職争いに敗れた尾張大納言宗春は、五日後に届くことになっている同心協力を成約した諸大名の連判状を心待ちにしていた。宗春は徳川幕府に対し謀反を起こそうとしていたのだ。尾張国に不穏な動きがあることを知った八代将軍徳川吉宗は大岡越前守忠相に相談を持ち掛けたが、未だ大名の名前を知るまでに至っていなかった。宗春の気持ちを和らげる方法はないかと頭を悩ませる吉宗は、甥の松平与一郎と宗春の息女菊姫を縁組させその仲人を引き受けることを忠相に提案した。翌日行われる縁談の話題は尾張藩江戸屋敷の腰元たちの間で持ち切りとなり、やがて菊姫の耳にも入った。松平伊勢守与一郎という男、大層粋な若様で浮いた稼業の女たちの間でも引く手あまたとのこと。父上と上様は仲が悪いんだから碌な人を紹介するはずがないと菊姫が言うと、腰元の渚も道楽者でいくじなし、おまけにお脳が弱いと散々な言い草だった。菊姫はそこへやってきた老家老の孫太夫に不承知だと伝えると、御家の安泰など知らぬと部屋を出て行き、追いかけて来る孫太夫を困らせるために廊下の下へ隠れた。姫を捜す孫太夫は家老此木大膳正と指南役の諸岡一角に挟まれ、諸岡によって斬られた。大膳にとって天下泰平を口にするものは全て逆臣だった。菊姫は二人が去ったのを確認し地面に落ちた孫太夫に駆け寄ると虫の息の彼から連判状を受け取った。それが意味することを知っていた菊姫は、宗春の心を変えるために渚とともに名古屋へ向かった。縁談当日、松平家に出向いた大膳は菊姫が出奔し行方が分からなくなっていることを説明したが、家老坂部監物はこの縁談に不満があることに対する言い訳だと考えていた。するとこちらでも与一郎が書置きを残して屋敷から出奔したことが監物の耳に入った。書置きには菊姫に受けた恥辱を刀にかけて晴らすが追手は無用と書いてあった。

大膳は内密に菊姫を捜し出す大役を若い楠見兵馬に託すことにした。だが兵馬は女の扱いが極めて不器用だからという理由で役目を断ろうとした。すると大膳はうっかり渚が落としたという兵馬にあてて書いた恋文を証拠として差し出し、不義が御家の御法度であることを盾に役目を押し付けたのだった。その頃、二人が行方知れずになったことを忠相から伝え聞いた吉宗は気を揉んでいた。尾張藩では頻りに浪人者を抱え、名古屋城を改築。謀反の噂は美濃三州一円にまで広がっていた。出奔と称した菊姫に連判状を託しているのではないかと考えた忠相は、その策略を潰すために隠密ふくろう組の権藤民部と黒手組の赤座道犬に追跡を命じた。街道の茶屋で兵馬がひと休みしていると、向かいに座る娘が何度も目配せをしてきた。無視を決め込んでいた彼もさすがに気になり、どうしていいかわからずにそわそわしていたが、やがて視線が自分にではなく左隣にいる色男に注がれていることに気付いた。その色男は遣らずの与三郎という渡世人だった。

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