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不良姐御伝 猪の鹿お蝶

  • posted at:2015-08-07
  • written by:砂月(すなつき)
ふりょうあねごでんいのしかおちょう
東映(京都撮影所)
配給:東映
製作年:1973年
公開日:1973年2月17日 併映「まむしの兄弟 刑務所暮し四年半」
監督:鈴木則文
企画:天尾完次
原作:凡天太郎
脚本:掛札昌裕 鈴木則文
撮影:わし尾元也
照明:北口光三郎
録音:堀場一朗
美術:石原昭
音楽:荒木一郎
編集:市田勇
助監督:志村正浩
記録:牧野淑子
装置:米沢勝
装飾:柴田澄臣
美粧・結髪:東和美粧
スチール:藤本武
演技事務:上田義一
衣裳:豊中健
擬斗:三好郁夫
進行主任:俵坂孝宏
出演:池玲子 成瀬正孝 衣麻遼子 早乙女りえ 三原葉子
アメリカンビスタ カラー 88分

日露戦争に勝利し国内が湧きかえる明治三十八年、金沢セントラルホテルに滞在している政心会総裁・黒川義一を暴漢が襲った。暴漢は柊修之助という青年で、警備に当たっていた警官隊に右腕を切られると勝ち目なしと見て逃げ出した。街中を逃げ回る修之助を見兼ねて建物の陰に引き込んだのは、ある渡世打ちを捜して全国を旅している女博徒の「猪の鹿お蝶」こと葛西杏子だった。彼の身を気遣うお蝶は追手がいなくなってから病院へ連れて行こうとしたが、修之助は拒否した。するとそこへやってきた柊家に仕える執事の羊川実麿が深々と頭を下げ彼を連れ去った。一人残されたお蝶がふと左手を見ると、無意識に修之助の袂から掏ったロケットペンダントを握っていた。「仕方のない指だねえ」。そうつぶやいてペンダントを開けると、中には外国の女性の写真が入っていた。

稲村組を訪れたお蝶が組長に渡世打ちのことを尋ねると、そんな男がいたことは聞いたことがあるが20年以上も前のことだから覚えていないという答えが返ってきた。お蝶が捜している渡世打ちは、彼女が三歳のときに警視庁の刑事だった父親の徳造を殺した敵だったが、花札博打で猪鹿蝶を操るいかさまの名人としか手がかりがなかったため捜索は難航していたのだ。通り名がそこからきているのかと尋ねられたお蝶は、その札には一生忘れられない思いがこもっているのだと答えた。すると「猪の鹿お蝶」の噂をかねがね知っていた稲村はその手の内を見せてくれないかと言った。その夜、開かれた賭場で稲村からいかさまを指示された舎弟の細谷が裏切られて殺された。今わの際に貯金通帳をお蝶に手渡した細谷は、浅草にいる妹・ゆきが女郎に売られる前に渡して欲しいと言った。賭場での悪い噂が広まることを恐れた稲村は、口封じのために風呂につかる無防備なお蝶を闇討ちした。だが隙のないお蝶は相手の長ドスを交わし奪うと襲い掛かる侠客たちを次々と斬り倒した。

お蝶が浅草にやってきたのは徳造の命日だった。育ての親である仕立て屋お銀を訪ねると、彼女は満面の笑みで迎えた。お銀はスリの女親分で、徳造に世話になっていたことからせめてもの恩返しということで彼女を養女に迎えたのだった。お蝶が次に向かった先は加納組だった。十二階下の女を取り仕切っているのはキズ源しかいないはずで、女衒の平助がゆきを連れてきていることまではわかっていると組員に詰め寄った。だが彼らはこの界隈には女がゴマンといるのだからいちいち身元はわからないと白を切った。するとそこに岩倉建設社長・岩倉直蔵の車が到着し、早く上玉を拝みたいものだと出迎えたキズ源に言った。座敷に通された岩倉がゆきに酌をさせようとしたところ、襖がスッと開きお蝶が入ってきた。そして用意した500円の札束を見せ、これでこの娘を身請けさせて欲しいと言ったが、岩倉はいくら金を積まれようのこの娘を手放すわけにはいかないと態度を変えようとはしなかった。そこでゆきの兄から頼まれてきているのだとお蝶が頭を下げると、岩倉はきれいだねと彼女の手を取った。手のひらに博打だこがあることに気づき堅気ではないことを知った岩倉は、この話を博打で決めようと言った。

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ねらわれた学園(1981年)

  • posted at:2015-07-31
  • written by:砂月(すなつき)
ねらわれたがくえん
角川春樹事務所
配給:東宝
製作年:1981年
公開日:1981年7月11日 併映「ブルージーンズメモリー」
監督:大林宣彦
製作:角川春樹
プロデューサー:逸見稔 稲葉清治
原作:眉村卓彦
脚本:葉村彰子
撮影監督:阪本善尚
美術デザイン:薩谷和夫
音響デザイン:林昌平
音楽監督:松任谷正隆
主題歌:「守ってあげたい」松任谷由実
ピクトリアルデザイン:島村達雄 坂間雅子
作画合成:岡田明方 山田孝
編集:P・S・Cエディティング・ルーム
ネガ:相沢尚子
記録:新沼恵子
ファッション・コーディネーター:斉藤のり子
助監督:山下稔
製作担当:隈部文康
録音スタジオ:アバコスタジオ
カラーバイ:東洋トーン
制作協力:オフィス・ヘンミ
出演:薬師丸ひろ子 高柳良一 長谷川真砂美 手塚真 赤座美代子
アメリカンビスタ カラー 90分

新宿副都心にある受験校として名を知られた第一学園高校。校長は新年度からクラブ活動よりも勉強を優先する方針を打ち出したが、それに異議を唱えたのが体育教師の山形だった。剣道部の顧問の彼は高校対抗試合に出場することを目標にしていたが、文武両道からの突然の変更に納得が行かなかったのだ。直談判に持ち込むと、迫力に圧された校長は考えておきましょうと言葉を濁して逃げた。その校長の考え方に賛同していたのは2年B組の担任の須田だった。昨年から同じクラスを受け持つ彼の生徒の中には学年間でトップの成績を挙げた三田村由香がいたが、クラブ活動を優先して最低点を取った5人がいたことでクラス平均で最下位になったことを悔やんでいたのだ。その中の一人である剣道部主将の関耕児はそんな担任の苦労など気も留めず新入部員獲得に精を出していた。夕方、幼馴染の由香と下校していた耕児は奇妙な光景を目にした。走ってくるトラックの前に飛び出した三輪車の子供が、映画のフィルムを巻き戻したように後戻りしたのだった。

トラックの前に飛び出した子供に、由香は「いけない、戻りなさい!」と叫んだ。するとトラックとともに三輪車が逆走し、子供は何事もなかったように横断歩道を渡った。自分が起こしたかもしれない現象に驚いた由香は、自宅に帰るとひとりにしておいてと母・圭子に告げて部屋に籠った。その夜、落ち着いた由香はあの不思議な出来事を話そうとしたがうまく言い表せなかったため、ママはテレパシーが強い方かと尋ねた。それを聞いた圭子は、よくお父さんにお前は鈍いからというお小言をいただくと笑った。いつもと様子がおかしい由香を学校で何かあったのではないかと圭子が心配していると、耕児の父・熊吉が経営する酒屋の住み込み店員・広志が注文していたビールを配達してきた。成績のことで学校に呼び出された熊吉は、耕児の成績がどうにかして上がらないかと思案していた。大学進学は死んだ妻の悲願だったこともあり、学校を出て店を継げばいいという考えの耕児に、長男に生まれたことを不運だと思ってがんばってくれと手を合わせた。すると広志が専門の家庭教師をつければいいのではないかと提案した。彼が由香の名前を挙げると祖母のタケもなりふり構ってられないんだからと賛同した。話はあっという間にまとまり、広志が配達のついでに交渉をすることになったのだ。対抗試合目前で練習が出来なくなることを危惧した耕児は電話をかけて断るように言ったが、由香はあっさり了承したのだった。家庭教師を引き受けた彼女は、気が散りますからと誰も部屋に寄せ付けず、鍵をかけると窓から縄梯子を垂らして耕児を練習に行かせた。三週間後の対抗試合は、城南高校の次峰に手こずり副将の大野まで敗れ、最後の耕児も相手の迫力に圧された。だが由香が「神様、お願い!」と心の中で祈ると相手の動きが一瞬止まり、耕児は胴に打ち込んで勝った。さらに中堅、副将、主将にまで同じことが起こり逆転勝利したのだった。再びあの現象を体験した由香は不安に駆られた。

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高校エロトピア 赤い制服

  • posted at:2015-07-27
  • written by:砂月(すなつき)
こうこうえろとぴああかいせいふく
日活
配給:日活
製作年:1979年
公開日:1979年5月19日 併映「凌辱 こます」「女子大生 三日三晩汗だらけ」
監督:白鳥信一
プロデューサー:細越省吾
原作:大友克洋
脚本:鹿水晶子
撮影:森勝
照明:小林秀之
録音:福島信雅
美術:柳生一夫
編集:山田真司
音楽:高田信
助監督:菅野隆
色彩設計:青柳勝義
現像:東洋現像所
製作担当者:服部紹男
出演:原悦子 日夏たより 飛鳥裕子 松井康子 吉沢由紀
アメリカンビスタ カラー 63分

高校生で映画研究部に所属している世古真一、中村格、宮島豊の三人はいつか自分たちで映画を作って金儲けをしたいと考えていた。手っ取り早く作れて儲かる映画の代表格と言えばブルーフィルムだが、先立つものがないため飲食店の厨房でアルバイトをして製作費を賄うことにした。だが最も問題となっていたのは、主演女優がいないことだった。仕事を終えた三人が夜道を自転車で帰宅していると、副部長の沢田芳子が男と玄関の前に立っていることに気付いた。芳子に片思いの世古は、彼女の自宅が近所だったこと、そして男がいることに驚いたのだった。

翌日、映研部の部室では文化祭で制作、上映する作品を決定する会議が行われた。昨年上映した「僕の家は試験場だった」が好評だったこともあり、部長は今年もいい作品を作りたいと意気込んでいた。そこで今回、会議に招待されたのは、映研部OBで東都大芸術学科の横田だった。中村と宮島は彼の顔を見るなり、昨日の野郎だとつぶやいた。昨夜、芳子の隣にいた男なのだ。アニメや時代劇、劇画、純愛ものと様々な意見が出る中、宮島が提案したのは副部長が主演するロマンポルノだった。私の相手役は誰がなるのと芳子が尋ねると、中村は変な野郎に騙される前に俺に声をかけろよと言い、宮島も同調した。話に割って入った横田は、君ら世代の涙や笑い、苦しみが表現出来る作品であればジャンルは問題ではないが、それらの訴えや表現方法についてもう一度謙虚に振り返るためにも高校生としての本当の裸の姿を描いて欲しいと言った。すると宮島は、やっぱりポルノだと茶々を入れた。横田は短絡的すぎると否定し、高校生活の虚と実を浮き彫りにするようなドキュメンタリーが最適だと言うと、二人以外の部員が賛成した。会議があることを忘れていた世古が終了後にやってくると、女の目星がついたと中村がいきなり切り出した。ギャラが払えないなど贅沢が言えない条件の中、出演してくれる可能性があるのは宮島の兄の友人から聞いたというホルモン焼き屋のささえという女だった。ささえは2階の部屋で客を取っていたが、世古たちが下見に行くと店からやくざ風の中年男が出てきた。すると彼女がそのあとを追いかけ金を払えと首を絞めたのだ。金融業の平和商事に勤める男の名は久三郎、ささえの亭主だった。自分の体にプライドを持つささえは、亭主だろうと構わず金を取っていた。持ち金のない久三郎は世古たちから7500円を借りることで何とか騒動をおさめることが出来たが、金貸し屋が高校生から金を借りたのでは立つ瀬がなかった。そこで久三郎は、女のことで何かあったら助けてくれたお礼に世話をすると言った。あの金はアルバイトで貯めた映画の製作費であり、金を倍にして返すという話を信じた宮島がそれを簡単に貸してしまったことには苛立っていた。お前がホルモン焼き屋のババアなんか紹介するから悪いんだと中村が怒鳴ると、それなら金のいらないっていうもっといい女を連れてくればいいじゃないかと宮島は怒鳴り返した。すると中村は「わかった、見つけてきてやる!」と憤って去って行った。

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スクラップ・ヘブン

  • posted at:2015-07-16
  • written by:砂月(すなつき)
すくらっぷへぶん
オフィス・シロウズ=テレビ東京=バンダイビジュアル=イエス・ビジョンズ=ザズウ
配給:オフィス・シロウズ=シネカノン
製作年:2005年
公開日:2005年10月8日
監督:李相日
企画:佐々木史朗
製作:井澤昌平 川城和実 竹中功 松野恵美子
プロデューサー:久保田傑 柳原雅美 河野聡 吉田晴彦
アソシエイト・プロデューサー:押田興将 安井美紀子 上山公一
ライン・プロデューサー:齋藤寛朗
脚本:李相日
撮影:柴崎幸三
照明:市川元一
録音:柿澤潔
美術:仲前智治
編集:今井剛
スクリプター:田口良子
衣裳:小林身和子
ヘア・メイク:細川昌子
CGディレクター:増尾隆幸
助監督:久万真路
制作担当:金子堅太郎
音楽プロデュース:曾田茂一
音楽:曾田茂一 JETBIKINI Masao Nisugi
音楽制作:茂木英興
音楽制作協力:GRAND FUNK 毒組 WILD CORPORETION
出演:加瀬亮 オダギリジョー 栗山千明 光石研 田中哲司
アメリカンビスタ カラー 117分

テレビドラマに出てくるような刑事像に憧れて警察官になった粕谷シンゴ。だが現実は甘くなかった。交番に5年勤務した後、本署の刑事部へ転属になったものの、希望した刑事課ではなく総務課に配属された。被害届などの手書きの書類をパソコンに打ち込む地味な作業を毎日続けることで仕事への意欲を失っていた。ある日、嶋田係長に呼び出されたシンゴは、一課の薮田刑事とともに遠藤町で一年前に起こったストーカー殺人事件で被害者になった主婦の法事に出向くことになった。自宅前の道路で子供が落書きしていたので、薮田は「パパ、いるかい」と声をかけケーキの箱を手渡した。すると子供は箱を叩き落とすと足で踏みつけ、家に駆け込んで行った。シンゴは被害を食い止められなかったことと、刑事は事が起こらなければ動けないことへの矛盾を感じていた。その夜、帰宅のためにバスに乗った彼は、潰れたケーキをかぶり付きながらぼんやりとしていた。すると後部座席に座っていた清掃員の葛井テツが、走っているコースが違っていると騒ぎ出したのだ。我に返ったシンゴもそれに気づき、同乗していた薬剤師の藤村サキも慌てた。テツが運転手に文句を言いに行こうとすると、その横に立っていた男が彼に拳銃を向け、ちょっと行く先を変えましたと言った。そして少し落ち着くと自分について勝手にしゃべり出した。猛勉強して大学に入り代議士の秘書になったが、不祥事を被って自殺をしなければ納まりがつかなくなった、と。一段落すると斎藤は運でも試しますかと言ってリボルバーの弾倉から弾を抜き、一発だけ残した。弾倉を回して銃口をこめかみにつけると、まず私から行きますと引き金を引いた。だが弾は出ず、俺はついているぞと叫んだ。気持ちが高揚した斎藤が次をじゃんけんで決めようと言い出すと、シンゴは憧れのシチュエーションでいいところを見せようとした。だが震える声に説得力はなく、銃口を向けられると何も出来なかった。斎藤の威圧する声で始まったじゃんけんはあっけなく決まり、テツが負けた。すると彼はいきなりテツに向けて発砲した。その銃声に怯えた運転手がブレーキを踏んだことでバスは急停車し、乗客たちは床に転がった。シンゴは座席にしがみつき、テツは胸から血を流し、サキは右目の義眼を探していた。そして斎藤は首に銃口を押し当て自殺した。3か月後、シンゴは薮田に相談を持ち掛けた。一課に取り次ぐという話はそのままになっていたのだ。薮田は、あれだけのバツが付いたんだから俺の立場も考えてくれと言った。そしてお前は警官に向かないヤバいタイプだから肩の力を抜いて仕事しろとアドバイスした。

シンゴの帰宅コースではいつもホストが女性をナンパしていた。いつかあいつらを懲らしめてやりたいと思っていたが、それを実践していたのがテツだった。偶然の再会を喜んだシンゴが世の中の矛盾など思いの丈をぶちまけると、テツはある場所に連れて行った。そこは公園の公衆トイレだった。世の中には復讐したくても何も出来ない人がいる。そこで代わりに心の叫びを聞き、世間を肥溜めにしている馬鹿どもに、振り上げた拳が自分に返ってくることを思い知らせることにしたのだ。壁にメッセージを書いたテツは、自分が苛立っている原因は何かとシンゴに尋ねた。答えられずにいると、デスクに一日中かじりついていても世の中は1ミリも変わらないぞと言った。

屋台的映画館

丑三つの村

  • posted at:2015-07-10
  • written by:砂月(すなつき)
うしみつのむら
松竹映像=富士映画
配給:富士映画
製作年:1983年
公開日:1983年1月15日
監督:田中登
製作:奥山和由
原作:西村望
脚本:西岡琢也
撮影:丸山恵司
美術:猪俣邦弘
音楽:笹路正徳
録音:山本忠彦
調音:小尾幸魚
照明:野田正博
編集:後藤彦治
助監督:満友敬司 藤澤龍一
オプチカル:石川智弘
装置:小島勝男
装飾:宮崎琢郎
衣裳:松竹衣裳
現像:東京現像所
進行:大川修
特殊効果:トビー門口
音楽担当:坂井洋一
製作主任:沼尾鈞
出演:古尾谷雅人 田中美佐子 池波志乃 原泉 石橋蓮司
アメリカンビスタ カラー 106分

出征する赤木巌を駅のホームで見送る犬丸継男。四国の小さな山村・日暮谷に住む十八歳の彼は幼いときに両親を亡くしており、今は祖母・はんと暮らしていた。住民からは村一番の秀才ともてはやされる継男は巌のように戦場へ行くことに憧れていたが、出征兵を見送る母親が泣いているのを見て、祖母も泣くのだろうかと思った。夕食時にそのことを尋ねると、はんはお国のために戦ってこいと笑って見送ってやると言った。それを聞いた継男は安心して自分の部屋に入った。するとはんは、大声をあげて泣くかもしれんと呟いた。学校の教師を目指している継男は、はんを置いて師範学校に行くことが出来なかったため独学で検定試験を受けるための勉強をしていた。いつものように勉強をしていると体が熱っぽく咳込んだ。翌日病院に行くと、医師の見立ては肺浸潤。栄養を摂ってのんびりと養生すれば三か月で治るだろうと言われ安堵した。

ある夜、勉強中に眠り込んだ継男は真夜中に目を覚ました。すると戸の隙間から靄が漏れ入ってくるのに気付き、外に出ることにした。一面の靄がかかるというという珍しい光景を目の当たりにした継男は散歩してみることにしたが、一軒だけ灯りが点いている家があったため気になって中を覗いた。そこでは人妻のえり子が村の有力者である赤木勇造と絡み合っていたのだ。再び散歩に戻ると村を巡回する自警団と会った。彼らは夜這いの取り締まりを行っていたが、その発案者が勇造だと聞き継男は吹き出した。それから数日後の夜、夜這いに興味を持った継男がえり子の家を訪ねると彼女は寝乱れていた。気配で目覚めたえり子が声をかけると、継男は靄が出た晩に勇造がここにいたのを見たと話した。満州で兵隊が国のために体を張って戦っているのにと言うと、えり子はそれくらいのことは知っているからきついことを言わないでとたしなめた。彼女の夫は補充兵として戦場にいたのだが、馬の世話ばかりしていると蔑んでいた。えり子は暑いと胸をはだけると、男も戦争、女も戦争やと言って体を押し付けた。

継男の親戚筋に当たる赤木ミオコが金を借りに来たが、はんは出かけていていなかった。継男がそのことを伝えると彼女はあなたからもお願いして欲しいと言った。ミオコは何度も借りに来ているため、断られるかもしれないと思っていたからだ。事情を知らない継男があっさり了承すると、ミオコは喜んで手を合わせた。帰り際にミオコは、働き者の夫・中次がいつも家を空けているので、暇な夜はいつでも遊びにおいでと言った。そして女ひとりの夜って長過ぎるのよと目配せした。その夜、はんからお金を預かった継男はミオコの家を訪ねた。すると赤ん坊の授乳中だった彼女は胸をあらわにしたまま出てきたのだ。ミオコは継男を座敷に引き入れると体を重ねた。

幼馴染のやすよは、継男の顔を見るなりみんなが体調を心配していると伝えた。すると継男は、咳がひどいが勉強で期待に添えなくても、徴兵検査で甲種合格して兵隊になれば男はいいんだと言った。気持ちだけ受け取ってとやすよが自分で作った組み紐を贈ると、継男は満面の笑みを浮かべてお礼を言った。徴兵検査の日、自信を持って臨んだ継男だったが、軍医から肺結核の診断をされ検査に落ちた。その噂は忽ち村中に広がり、神童だとおだてていた住民たちは落胆する彼が戻ると無視をした。

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