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ミスター・ミセス・ミス・ロンリー

  • posted at:2015-09-22
  • written by:砂月(すなつき)
みさたーみせすみすろんりー
市山パースル=日本A・T・G
配給:ATG
製作年:1980年
公開日:1980年12月20日
監督:神代辰巳
プロデューサー:市山辰己 原田美枝子 佐々木史朗
企画:多賀祥介
原案:刹那
脚本:神代辰巳 刹那
音楽:千野秀一
演奏:ダウンタウン・ファイティング・ブギウギバンド ナショナルズ
撮影:押切隆世
照明:秦野和人
美術:大谷和正
録音:米山靖
編集:山地早智子
助監督:高橋安信
製作主任:熊田雅彦
製作担当:大堀誠
演出助手:渡辺寿 秦衛
撮影助手 芦澤明子 前田亮 星野和弘
照明助手:小谷朗 小野和幸 松浦正志
美術助手:藤田徹
小道具:大関進
録音助手:中村淳 沢畑明
ネガ編集:南とめ
編集助手:大坪隆介 吉田博
記録:津田のり子
進行:福永知幸
衣裳:京都衣裳 田内道世
メーク:おかもと技粧 住吉久良蔵
装飾:高津映画装飾
スチール:渡辺昌二
撮影機材:フカザワ
照明機材:三和照明
車輌:富士映画K・K 関東照明
録音所:櫂の会
現像:東洋現像所
オリジナルサウンドトラック盤:「ミスター・ミセス・ミス・ロンリー」ポリドールレコード
協力:大関酒造株式会社 日本マランツ株式会社 TAC株式会社 シドニーローム・薔薇の館
出演:原田美枝子 原田芳雄 天本英世 荒井智子 井川晃一
アメリカンビスタ カラー 138分

小説「三角陥斊」に登場する主人公・千里に共感し同じ生き方をしてみようと考えた若い女は、千里と名乗りエピソードに沿って手錠を電柱に繋いだ。そんな彼女を拾ったのは、たまたま車で通りかかったバーのマスターの半崎市雄だった。市雄は彼女を途中で降ろすつもりでいたが、家にまでついてきたのでなぜあのような目に遭ったのかと尋ねた。すると千里はわからないと答え、する側には正当な理由があっても、される側は死ぬほどつらいと言った。市雄は夜が明けたら追い出そうと考えていたが、千里はいつまでも居続けた。大声や手の動きに対して極度に怯える千里と、人懐っこい彼女を拒み続ける市雄。ある夜、市雄は酒の勢いで自分のことを勝手にしゃべり始めた。赤坂や銀座で毎晩100万使うバーの常連客から5万円のチップをもらったこと、その男から金をもらうと外国へ逃げたくなること、逃げたくても国籍がないためパスポートを作れないこと、混血児である自分が3歳のときに捨てられ、孤児院に入れられたが数年後に逃げ出したこと、そして誰も追いかけてこなかったこと。

大手商社の三信商事と共同でカズノコの買い占めを行った北川商産が経営の悪化で倒産した。北川商産は三信商事のダミー会社と噂されているのだ。負債総額は500億円といわれ、社長の北川は個人口座に振り込んだ会社の資金15億円を引き出すと姿を消した。この事件に関心を寄せていたのは三崎栄介だった。栄介は資産家の下村竜一郎に近づき、北川が海外へ逃亡しアムステルダムからピレネー山麓のアンドルーに無事についたという話を聞いたと話した。だが下村は暴走族まがいの連中を使って現金を横取りし、その交換条件として逃亡を手助けしたという話を信じようとしなかった。すると栄介は、北川とは中学時代の同級生だったことで話し合いはスムーズに行ったと答えた。自分の会社を倒産させた三信商事を恨んでいることもあり、二人の間柄は楽観的なものではないと説明した。そして北川との信頼関係はあなたとの関係と同じだというと、プロはそんな精神的な遊びはしないと席を立った。後日、再び接触した下村に違法ギリギリの行為で資産を増やしていることを栄介が指摘すると、彼は「私に3億円任せますか?」と言った。1週間後に北川商産の債権者会議があり、告訴となれば破産管財人が当たることから、債権者の顔見知りにその3億円で告訴しないように持って行けるかもしれないというのだ。それとは別に親会社の三信商事に破産責任の告訴をし裁判が長期化する間に残りの資金を動かして増やせばいいと下村が提案すると、栄介は身を乗り出した。

下村と別れた栄介はタクシーを停めようとするが、どのタクシーも空車のランプが点いているものの素通りして行った。頭に来た栄介が石を投げると見事にヒットし引き返してきたことから慌てて逃げ出した。交差点に飛び出した彼は市雄が運転する車にはねられた。

屋台的映画館
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宇宙大戦争

  • posted at:2015-09-19
  • written by:砂月(すなつき)
うちゅうだいせんそう
東宝
配給:東宝
製作年:1959年
公開日:1959年12月26日 併映「サザエさんの脱線奥様」
監督:本多猪四郎
製作:田中友幸
原作:丘見丈二郎
脚本:関沢新一
撮影:小泉一
美術:安倍輝明
照明:石川緑郎
録音:三上長七郎 宮崎正信
音楽:伊福部昭
監督助手:梶田興治
編集:平一二
現像:東洋現像所
製作担当者:坂本泰明
特殊技術・光学撮影:荒木秀三郎
特殊技術・撮影:有川貞昌
特殊技術・美術:渡辺明
特殊技術・照明:岸田九一郎
特殊技術・作画合成:向山宏
特技監督:円谷英二
出演:池部良 安西郷子 高田稔 千田是也 レン・スタンフォード
シネマスコープ カラー 93分

1965年、三機の円盤による襲撃で宇宙ステーションJSS3が壊滅すると、世界各地で奇妙な現象が立て続けに発生した。日本では東海道線の鉄橋が持ち上がったことが原因で特急列車が脱線事故を起こし、パナマ運河では航行中のアメリカの貨物船・ブルークイーン号が突然空中に浮かび上がりミラフローレス閘門付近の小山に激突するという不可解な事故が起きた。そしてベニスは突如猛烈な気温低下に襲われ河川の水がことごとく凍ると、今度は竜巻のように逆流して大空に舞い上がったのだった。この連続した怪事件を追及するため、世界中の科学者を集めた緊急会議が東京にある国際宇宙科学センターで行われることになった。三つの事件で共通していたのは、被害者が皆ひどい凍傷を起こし低温による感覚のマヒを訴えていることだった。そこで物体を急速に降下させるとその物体の重力が減少する現象が起きたと考えられるとアメリカ代表が発言すると、中国代表は特定の物体や限定的な場所の重力を無くすことは不可能だと否定した。すると進行役のカナダ代表は、これまではそうであったが今現実に発生していると指摘した。意見を求められた日本代表の勝宮一郎は、重力の起源は核振動であり絶対零度では重力は無になることから、核振動エネルギーを吸収する冷却線を放射された物体は温度が急降下するとともに重力は減少。その結果、地球の自転の遠心力で物体は宙に舞い上がることから、今回の事件は宇宙からこの冷却線を打ち込まれたことにより発生したのだと結論付けた。

宇宙人侵略への対策が叫ばれる中、センターでは地上熱線砲が完成していた。原子力R600をエネルギー源とするこの兵器は5万時間の連続発射可能となる優れものだった。各国代表に公開された実験では、最高の強度を有し宇宙ロケット・スピップ号に使用されている特殊金属S250号が的になったが、熱線は遠距離の板を完全に貫いていた。そして次に公開されたのは、その熱線砲が搭載されるスピップ号だった。調整作業が行われ発射が時間の問題となっている中、安達博士を訪ねてきたのは国際防衛警察の有明警部だった。組織の秘密調査の結果、イラン代表のアーメッド教授に不審な点があるというのだ。だが見学者の中に彼の姿はなく、捜しているとサイレンが鳴った。実験室で異常があることに気付いた勝宮が中に入ると岩村幸一技師がアーメッドと格闘していた。アーメッドは「ナタール」という遊星人に操られ、熱線砲を奪おうとしたところを岩村に見つかったのだ。彼は建物の外に逃げ出すと飛来した円盤に助けを求めたが光線で焼かれた。地面に残った人型の影の上に落ちていた小さな金属塊を分析した結果、怪電波の受信機であることがわかった。

国連は月面に前線基地を構築しているナタールの意図を探るためにスピップ号を派遣することに決め、1号機には安達博士を長とする8名、2号機にはリチャードソン博士を長とする8名が搭乗することになった。そして怪電波の発信地点とされるトビエツスキー山脈の左側と緑の海を中心とする100キロから150キロの地点が二機の着陸予定地点に指定された。その頃、搭乗員の一人にナタールの魔の手が伸びていた。

屋台的映画館

君は恋人

  • posted at:2015-09-16
  • written by:砂月(すなつき)
きみはこいびと
日活
配給:日活
製作年:1967年
公開日:1967年11月3日 併映「赤木圭一郎は生きている 激流に生きる男」
監督:斎藤武市
企画:水の江滝子
脚本:若井基成
撮影:山崎善弘
照明:大西美津男
録音:高橋三郎
美術:坂口武玄
編集:近藤光雄
助監督:樋口頴一
色彩計測:畠中照夫
現像:東洋現像所
製作担当者:長谷川朝次郎
音楽:中村八大 小野崎孝輔
主題歌:「君は恋人」浜田光夫
主題歌:「旅に出るなら」浜田光夫
挿入歌:「愛につつまれて」舟木一夫
挿入歌:「いつか何処かで」ジャニーズ
挿入歌:「さすらい」克美しげる
挿入歌:「愛すればこそ君に」克美しげる
挿入歌:「君に捧げん」荒木一郎
挿入歌:「いとしのマックス」荒木一郎
挿入歌:「アヒルの行進」ザ・スパイダース
挿入歌:「バン・バン」ザ・スパイダース
挿入歌:「恋のハレルヤ」黛ジュン
協賛:ヨット鉛筆株式会社
出演:浜田光夫 和泉雅子 克美しげる 林家こん平 戸田皓久
シネマスコープ カラー 93分

重傷を負った俳優・浜田光夫の復帰記念として、映画会社は彼を主役にした映画「君は恋人」を製作することになった。久しぶりに撮影所へやってきた彼をスタッフや俳優たちは温かく迎えた。メイクを終えスタジオに入ると、映画監督の石崎はリハーサルに参加するよう指示し、ブランクを感じさせない演技に満足すると本番の撮影に入ったのだった。

歌舞伎町の小路を歩いていた矢代光夫は、とんかつ屋・とん吉から出てきたトン坊とぶつかって出前を台無しにしてしまい、食い逃げで捕まった山川とともに皿洗いで弁償することになった。店員の雅子は仕事を終えた光夫に引き続き見習いコックとして働くことを薦めたが、彼はこんなゴキブリ臭いところに潜り込むぐらいだったらガタボロでも旋盤にしがみついてるよとつれない返事をした。そしてどうして工員を辞めたのかとしつこく聞いてくる雅子におせっかいだと釘を刺し、これで貸し借りなしだぞと出て行った。光夫が向かった先はバー・とまり木だった。そこで待っていたのは石戸興業の社員のこん平で、事故で遅くなったと言い訳する光夫に今夜の仕事がふいになったと激怒した。遅れた分を取り返すのでやらしてくださいと光夫が懇願すると、こん平は一束の名刺大のビラを渡した。光夫が請け負ったのはこの「今晩おひま?」と書かれたピンクビラを停めてある車のワイパーに挟んで回る仕事だったが、こん平が間違ってパトカーに挟んだことで二人は警官に追われる羽目になってしまった。翌早朝まで飲んでに帰宅した光夫が昼まで寝ていると、母親のさちが仕事に出かけることを告げるために起こしに来た。さちは昨日、職場からの帰りに工場長とバッタリ出会い、光夫が工場を辞めたことを知って驚いたのだ。なぜ相談してくれなかったのかと問いただすと、俺が思いついたことに反対されたくなかったのさと光夫は答えた。彼が兄貴と呼ぶ人物がヤクザであることがわかると、さちはヤクザなんて人間の屑だと言った。それを聞いた光夫は、旋盤工の方が屑さと言い返した。旋盤工として働いていた彼の父は交通事故であっけなく死んだ。そのことから光夫は石戸組に入って中幹部になり、贅沢な生活をすることを夢見ていた。だが組に入るにはそれなりの成果が必要なことから、こん平の手伝いをしながらチャンスを待っていたのだ。その石戸興業の社長・石戸は組織暴力団としてではなく健全なサービス業としての新たな経営方針を考えていたため、石戸組と呼ばれることをひどく嫌った。だが大野専務ら重役は、下がっている営業成績を立て直すには旧体制を復活させて社員を鍛え上げ、組織を叩き上げなければならないと考えていた。深江組の親分が出所するという噂があり、それが現実となれば石戸がバラされシマが乗っ取られる可能性があるのだ。大野たちは同業の会合でラスベガスへ行くという石戸を送り出すと、部下に深江を消させる計画を立てた。

シナリオライターの赤井はストーリーに行き詰って頭を抱えていた。撮影中に脚本を勝手に変更されたことで辻褄合わせをしなければならなくなっていたのだ。籠りっきりになっている赤井を心配した妹が部屋にコーヒーを届けると、彼は気分転換のためにボウリング場へ出かけた。

屋台的映画館

温泉あんま芸者

  • posted at:2015-09-11
  • written by:砂月(すなつき)
おんせんあんまげいしゃ
東映(京都撮影所)
配給:東映
製作年:1968年
公開日:1968年6月28日 併映「帰ってきた極道」
監督:石井輝男
企画:岡田茂 天尾完次
脚本:石井輝男 内田弘三
撮影:吉田貞次
照明:北口光三郎
録音:溝口正義
美術:矢田精治
音楽:八木正生
編集:神田忠男
助監督:本田達男
記録:石田照
装置:稲田源兵衛
装飾:山田久司
美粧:久斗敏厚
結髪:横田三佳代
衣裳:豊中健
振付:藤間勘真次
進行主任:俵坂孝宏
協力:琵琶湖汽船 亀岡ジャングル温泉 石川県粟津温泉
出演:吉田輝雄 橘ますみ 三島ゆり子 三原葉子 應蘭芳子
アメリカンビスタ カラー 89分

ある温泉の旅館・鶴亀荘で二つの芸者グループが火花を散らしていた。一方は舞、唄、三味線など芸事が出来る「温泉芸者」。そしてもう一方は昼間にマッサージ師として働く掛け持ちの芸者だ。座敷ではなく寝床で芸を披露する彼女たちを、温泉芸者は蔑んで「あんま芸者」と呼んでいた。ふた組は宴会場に通されると、温泉芸者の中で一番人気の金太郎が舞踊を披露し宿泊客の喝采を浴びた。するとあんま芸者の富丸たちはゴーゴーダンスで邪魔をするのだった。お気に入りの金太郎がコケにされたことでおもしろくない野毛親分は野球拳で勝負を決める提案をした。30人を超える壮大な野球拳の噂は館内に瞬く間に伝わり、興奮は最高潮に達した。

翌日、疲れて舟を漕ぎながらあんまする富丸に、宿泊客の黒島はどんな職業でも努力しなければ出世は出来ないぞと説教した。彼は汲み取り業者の社長で、発注先選定で便宜を図ってもらうために市の職員が慰安旅行を行っている旅館に先回りしたのだ。実業家として命を懸けた勝負のときなのだが、肝心の芸者が他の団体客と重なって手配することが出来ず頭を悩ませていた。そこへやってきた番頭は、もしよろしければお勧めできるシステムがございますと耳打ちした。本物の芸者よりも線香代が安く、マッサージからその他のアフターサービスまでつく芸者がいることを話すと、そういういいことを早く言わんかと黒島は飛び起きた。そこは富丸が所属するあんま芸者の置屋・浜中だった。宴会が始まり芸者たちとともに偶然を装って黒島が入ってくると、清掃部長の品川は怪訝な顔をした。黒島はいつもお世話になっているのだから野暮なことは言いっこなしですと煙に巻き、バキューム車9台分ぐらいのもんですからとさりげなく言った。するというと品川は商売のことを言うなんて野暮だと逆に返した。千代のことが気に入った品川の願いを叶えるためアフターサービスが出来る様、黒島は番頭に掛け合ったが、彼女だけは身が堅くてそれが出来ないことを知り困り果てた。急遽紹介してもらった雛奴をあてがうことにしたのだが、くじで品川が引いたのはガス臭い富丸だった。彼女は力むとおならをしてしまう癖があるのだ。品川は君の商売と関係あるんじゃないのかと黒島にクレームをつけ芸者を交換した。ところがその娘も冷えるとお腹を壊しやすいという欠点を持っていた。

一泊した黒島たちを見送るために港に集まったあんま芸者たち。すると到着したフェリーから降りてきたのは、富丸の恩師の横谷だった。彼女は横谷をいち早く見つけると、積もる話がたくさんあるから桟橋で待っててと告げ宿泊客たちを見送った。富丸は横谷が妻との結婚生活に絶望して逃げてきたことを知ると、御恩返しをさせてもらうから何でも言って欲しいと胸を叩いた。

屋台的映画館

もらとりあむタマ子

  • posted at:2015-09-06
  • written by:砂月(すなつき)
もらとりあむたまこ
エムオン・エンタテインメント=キングレコード
配給:ビターズ・エンド
製作年:2013年
公開日:2013年11月23日
監督:山下敦弘
プロデューサー:齋見泰正 根岸洋之
脚本:向井康介
撮影(秋・冬篇):芦澤明子
撮影(春・夏篇):池内義浩
照明(秋・冬篇):永田英則
照明(春・夏篇):原由巳
美術:安宅紀史
録音:小宮元 岩丸恒 中山隆匡
整音:岩丸恒
編集:佐藤崇
スタイリスト:篠塚奈美 馬場恭子
ヘア・メイク:木村友華 望月志穂美 大島美保
助監督:長尾楽 渡辺直樹 窪田祐介
ラインプロデューサー:濱松洋一 原田耕治
アソシエイトプロデューサー:石井稔久
主題歌:「季節」星野源
制作プロダクション:マッチポイント
出演:前田敦子 康すおん 伊東清矢 奈良木未羽 萩原利映
アメリカンビスタ カラー 78分

東京の大学を卒業し甲府の実家に戻ってきたものの、就職もせず、家業のスポーツ用品店も手伝わず、毎日ゴロゴロして過ごしている坂井タマ子。起きているときはマンガかゲーム。ニュース番組を見ながらの食事では「ダメだな、日本は」といつも毒づいた。家事は父・善次が一手に引き受け、雑用はじゃんけんで決めている。季節は秋になってもその生活リズムは変わっていなかった。ある日、善次が出かけているときに客がやって来た。その客は前日に母親とバスケットシューズを注文しにきた中学一年生の仁で、先輩よりも高い物を身につけていると具合が悪いから商品を変更したいというのだ。タマ子はカタログを見ながら仁の気に入りそうな物を一緒に選ぶことにした。その夜、夕食時にニュース番組を観ながら悪態をつくタマ子に、善次は日本がダメなんじゃなくてお前がダメなんだと怒鳴った。滅多に荒げない善次の声に驚いたタマ子は、しばらく考えてから「少なくとも今ではない」と静かに答えた。

大晦日にもなると坂井家も新年の準備で大忙しとなっていた。善次は店の片付けや床の掃除を行い、自主的に動くようになったタマ子は買い物に出かけた。用事を終えた彼女が近所の商店から出てくると、仁が同級生の女の子と仲良さげに帰宅していた。自分をじっと見ていることに気付いた仁が目をそらすと、タマ子はにやにやしながら何度も振り返ってその場を去った。その夜、タマ子が紙に落書きをしながら年越しそばが出来るのを待っていると、善次の義姉・よし子がおせちを届けにきた。よし子は帰省することになっているタマ子の姉の顔をついでに見て帰るつもりでいたが、夫の都合で出発が遅くなると聞き残念そうに帰って行った。そばが出来上がると二人は早速食べ始めたが、携帯電話をいじるのを止めようとしないタマ子に善次はどちらかにしろと注意した。するとタマ子は、年が明けたが繋がらなくなるから今のうちに新年のメールを送っておくのと言った。それを聞いた善次は、その機転を就職活動に活かしてくださいよと嫌味っぽく言った。体が温まりこたつでうとうとするタマ子。夢に驚いて目覚めるがまだ姉は帰ってはいなかった。お母さんからも連絡ないねとさりげなく言うが、善次はゆく年くる年を観ながらそっけなく「そう」とだけ答えた。タマ子が離婚した母と先月電話でしゃべったことを話していると姉夫婦が帰って来た。

春、タマ子は美容院で髪を切った。だが家に帰って鏡を見ると、自分のイメージとはかけ離れていたため舌打ちした。彼女は自室にこもると履歴書を書き始め、夕食は父親が作ったものではなくカロリーを意識したものを自分で用意した。食事中に面接用の服が欲しいと言われた善次は、ついに来るべき時が来たと思いあっさりと承諾した。

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