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女がいちばん似合う職業

  • posted at:2020-08-20
  • written by:砂月(すなつき)
おんながいちばんにあうしょくぎょう
キティ・フィルム=サントリー
配給:アルゴプロジェクト
製作年:1993年
公開日:1993年11月20日
監督:黒沢直輔
プロデューサー:伊地智啓 椋樹弘尚
脚本:丸山昇一
撮影:仙元誠三
照明:渡辺三雄
録音:林大輔
美術:今村力
編集:冨田功
音楽ディレクター:近藤由紀夫 小西香葉
音楽:Date of Birth
技闘:高瀬将嗣
助監督:山川元
キャスティング:斎藤勇司
プロデューサー補:朝倉千代子
製作担当:石川達也
宣伝プロデューサー:関根房江
アソシエイトプロデューサー:垂水保貴
提供:アルゴプロジェクト
提携:日本テレビ
出演:桃井かおり 岡本健一 橋爪功 伊原剛志 白竜
アメリカンビスタ カラー 102分

女、麻薬、拳銃の東南アジアルートに絡む野坂3兄弟を追っていた女刑事・きぬ。母・テルの誕生日には必ず駆けつけるという話を知った彼女は同僚の束田とともにバー・マミーブルーに乗り込んだ。マダムのテルは知らないの一点張りだが、今年に限って花のプレゼントだけ。おまけに刑事がくることを知っているかのように彼らは姿を見せなかった。カメラで店内が監視されていることがわかった上できぬはテルを締め上げ、長男の一彦はインポテンツ、次男の次郎はロリコン、三男の三雄はサディストだと防犯カメラに向かって挑発した。それは三兄弟への宣戦布告だった。同じ頃、オフィスビルのエレベーター内で妊婦が刺殺された。胎児もろともサバイバルナイフで一突きされ腹はえぐられていた。状況は2か月前に起きた事件と酷似していたが、違っていたのはナイフが残されたままになっていることだった。だが柄に血糊がべっとりとついているため指紋は取れなかった。聞き取りを行っているのは第一発見者である若いアベック、そしてその他の4人は会社を辞める被害者のために6階のレストランで送別会を開いた同僚だった。亭主に電話を掛けようとしたところ、公衆電話が塞がっていたため1階に下りたのだ。午後10時40分頃に、看板前に忙しくなるのを見込んで店の裏でタバコを吸っていた板前が犯人らしき人物を目撃していた。その人物が階段を下りて入り口の方へ向かうとエレベーター付近から悲鳴が聞こえたのだが、肩まで髪が長く性別の見分けがつかなかった。斜から見ると女だが、歩き方は男の様だったという。

数日後、ペットショップの店長から犯人らしき人物を牛丼店で見掛けたという証言を得たことから、きぬは店の前で張り込みを行い同僚の束田文夫を店員として内部に潜り込ませた。大勢の人々が交錯する中、彼女の横を直感で犯人だと思う人物が通り過ぎ、振り向くと男が牛丼店に入って行った。だがその男は短髪だった。きぬは自分の勘を信じ、散髪をした可能性があることを考慮した上で束田にサインを送ると食べ終わるのを待った。そして店から出てくると尾行を開始した。一方、束田は指紋採取のために食器を確保した。街並みを通り過ぎ、公園を横切り、やがて高架下に差し掛かるときぬは男たちに襲われた。それは母親を散々いたぶられ復讐に燃える野坂3兄弟だった。ボクサー崩れの次郎から腹にパンチを受けた彼女は意識が薄れゆく中で咄嗟に拳銃を構えた。そこに駆けつけたのはきぬの後を追ってきた束田と同僚の木戸だった。3兄弟のせいで見失ったものの、後日彼が住むマンションを突き止めた。佐山吾郎、20歳。きぬたちは向かいのホテルから彼を日夜監視し続けたが、佐山は殺風景な部屋でただ静かに座っていた。

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秘密戦隊ゴレンジャー 青い大要塞

  • posted at:2020-08-17
  • written by:砂月(すなつき)
ひみつせんたいごれんじゃーあおいだいようさい
NET=東映
配給:東映
製作年:1975年
公開日:1975年12月20日 併映「アンデルセン物語 マッチ売りの少女」「がんばれ!!ロボコン ムギョギョ!!食いねェ」「アクマイザー3」「UFOロボ グレンダイザー」
監督:竹本弘一
プロデューサー:荻野隆史 平山亨 吉川進
原作:石森章太郎
脚本:上原正三
撮影:原秀夫
照明:戸塚和男
美術:小川富美夫
仕上制作:映広音響
録音:太田克己
編集:菅野順吉
効果:松田昭彦
記録:徳永絵里子
音楽:渡辺宙明
音楽制作:あんだんて
主題歌:「進め!ゴレンジャー」ささきいさお 堀江美都子
・・・:「秘密戦隊ゴレンジャー」ささきいさお こおろぎ’73
助監督:高橋正治
進行主任:大竹昭男
技斗:高橋一俊
メークアップ:佐藤せつ子
装置:日向勤
制作担当:佐久間正光
トランポリン:湯川泰男
衣裳:東京衣裳
オートバイ協力:スズキ自動車
現像:東映化学
特撮研究所:鈴木昶
大平特殊効果:菊地潔
オートバイアクション:室町健三
出演:誠直也 畠山麦 小牧りさ 伊藤幸雄 宮内洋
アメリカンビスタ カラー 24分

仮面怪人の虹仮面はアジトとする虹の要塞に強力なミサイル攻撃に耐え得る超金属防御装置=バリヤーを装備した。文字通り難攻不落の要塞となったことで以前から準備していた日本列島五大都市攻撃計画を開始しようとしたところ、首領である黒十字総統に止められた。アフリカ戦線で連戦連勝の戦果を挙げたという日輪仮面が日本に帰ってくるというのだ。優秀な能力を持つ無敵の日輪仮面を総統はパートナーとして組ませようと考えていた。何故ならバリヤーには致命的な欠点があるからだ。側面からの攻撃には強いが真上からは弱い。宿敵ゴレンジャーにはバリブルーンという飛行戦艦があり、上空から攻撃されればひとたまりもないのだ。弱点を指摘されたプライドの高い虹仮面は、総統が日輪仮面をより信頼していることが面白くなかった。

イーグル関東支部16分隊は山岳訓練を行っていたが、そこに総攻撃を仕掛けたのは虹仮面軍団だった。緊急司令を受けて出動したゴレンジャーはバリブルーンで現場に急行した。アオレンジャーは上空から基地を探し、アカレンジャー他3人は地上で黒十字軍と戦うことにした。アカレンジャーたちは虹仮面と戦おうとするが、横たわるたくさんの隊員は全て戦闘員・ゾルダーの変装だった。罠だと気づいたときには辺りを取り囲まれており地道に倒して行くしかなかった。そんな中、この作戦を指揮しているのが高台に立つ日輪仮面だと気づいたミドレンジャーは特殊合金製ブーメランのミドメランを投げつけた。すると日輪仮面はミドメランを払いのけて逃げ出したのだった。一方、上空から不自然な噴気を確認したアオレンジャーはバリブルーンを着陸させようとするが、虹色の光に包まれた虹仮面が目の前に現れバリブルーンの引き渡しを要求した。そして地上から発射されたワイヤーによって自由が利かなくなり、機体は格納庫へ引き込まれた。寸前に脱出したアオレンジャーは特殊な弓・ブルーチェリーで虹仮面の頭を射たが、何事もなかったようにすり抜けたのだった。さらに分身攻撃で撹乱されたアオレンジャーは窮地に陥った。その頃、ゾルダーに邪魔をされ虹仮面の姿を見失っていたアカレンジャーたちは小型ロケットブースター・バーディーで上空から捜すことにしたのだが、偶然傷ついたアオレンジャーを発見した。意識を取り戻したアオレンジャーは通信機による遠隔操作でバリブルーンを呼び戻そうとするが、電波遮蔽装置によって妨害されていた。虹仮面からバリブルーンを取り返すためにアカレンジャー、キレンジャー、ミドレンジャーの3人は虹の要塞へ向かった。

屋台的映画館

必殺! 主水死す

  • posted at:2020-08-14
  • written by:砂月(すなつき)
ひっさつもんどしす
松竹=朝日放送
配給:松竹=松竹京都映画
製作年:1996年
公開日:1996年5月25日
監督:貞永方久
製作:櫻井洋三
企画:山内久司
プロデューサー:佐々木勇
脚本:吉田剛
音楽:平尾昌晃
音楽担当:encore! 長部正和 渡辺邦孝
撮影:石原興
照明:中島利男
美術:倉橋利韶
録音:広瀬浩一
編集:園井弘一
調音:鈴木信一
効果:上床隆幸 藤原誠
助監督:酒井信行
撮影補:安田雅彦
装飾:木下保
スクリプター:野崎八重子
プロデューサー補:堀口貴子
製作担当:大志万恭子
制作主任:渡辺寿男
監督補:津島勝
主題歌:「哀しみは花びらにのせて」葛城ユキ
製作協力:鎌倉シネマワールド 株式会社大船撮影所
後援:朝日放送株式会社
出演:藤田まこと 三田村邦彦 菅井きん 白木万理 中条きよし
アメリカンビスタ カラー 100分

天保の頃、江戸城大奥では将軍世継ぎ家定の生母お美津の方と大奥取締上臈年寄姉小路の二派が反目し相争っていた。お美津の方は大奥御下御掃除人の葛西衆を動かし、姉小路は大奥を堅め守る別式女を操っていた。元老中の水野忠邦が姉小路とつるんでいるという情報を掴んだ葛西衆の権の四郎はお美津の方の指示のもと次の行動へ移った。

江戸城に招待された葛飾北斎は吹上にて家定の似顔絵を描いていたが、左目の下に姉小路が勝手にほくろを書き込んだことに腹を立てた。城下で泥酔した北斎が愚痴を並べていると、顔なじみの南町奉行所同心中村主水が通り掛かった。このままでは始末に負えないことから主水は娘のお栄を呼びに行き、しばらくして戻ると北斎は死んでいた。同じ頃、北斎の仕事仲間の彫師と摺師も死んでいたが、医者が卒中と診断したことで奉行所は病死として処理をした。三人の死に疑念を持つお栄は北斎が持っていた十両を主水に渡し下手人を捜して欲しいと頼んだ。その頃、北斎たちの暗殺に成功した姉小路は別式女に似顔絵の人物を捜し出すよう命じた。家定の双子の弟の存在を知った姉小路は彼を利用して御家乗っ取りを企んだのだった。権の四郎の報告により幼い時に捨てたその者がまだ生きていることを知ったお美津の方は直ちに始末せよと命じた。だが葛西衆が大奥の外で活動することは御法度であることからそれを仕事人に依頼をすることにし、子息の清太が元締のおけいに仕事を依頼した。依頼人が直接こないこと、恨みのない仕事はただの人殺しであることなどを理由に主水や飾り職人の秀、三味線屋の勇次らは引き受けるのを拒否した。おけいは若い仕事人を引き連れて家定の弟の捜索を行ったが、別式女の出現で斬り合いとなり奉行所が出動する騒ぎとなった。仕事人狩りのおかげで秀や勇次は身を隠さなければならなくなり、主水に至っては関係のない別式女から命を狙われた。

何か手掛かりはないかと摺師の家を探したお栄は版画の中から作風の違う一枚の絵を見つけた。早速それを河原にいた主水に見せるが、似顔絵の人物が誰なのかわからなかった。だが左目のほくろで北斎の最後の絵だったことを思い出しその人物を捜し出すことにした。ある日、主水は大道芸人の中に似顔絵とそっくりな少年がいることを知り住処を訪ねた。そして捨蔵を女、一緒に暮らす義理の母お夢を昔の仲間だったお千代と見抜いたが、お千代は二十年前の怪我で記憶を失っていた。

屋台的映画館

俺達に墓はない

  • posted at:2020-08-11
  • written by:砂月(すなつき)
おれたちにはかはない
東映セントラルフィルム
配給:東映
製作年:1979年
公開日:1979年5月26日 併映「その後の仁義なき戦い」
監督:澤田幸弘
企画:黒澤満 伊藤亮爾
脚本:田中陽造
撮影:仁村秀信
録音:林鉱一
照明:渡辺三雄
美術:川崎軍二
編集:田中修
助監督:崔洋一
音楽:竹田由彦
色彩計測:村田米造
記録:幸縁栄子
刺青:霞涼二
擬斗:高倉英二 松尾悟
進行主任:青木勝彦
美粧:入江美粧
衣裳:第一衣裳
現像:東映化学
協力:吉祥寺 ミドリヤ 東映俳優センター
出演:松田優作 志賀勝 岩城滉一 竹田かおり 梅津栄
シネマスコープ カラー 131分

島勝男はデパートで爆弾騒ぎを起こしレジから現金を盗んだ。それを元手に中井から沖縄ルートのリボルバー、登録ナンバーを削り取ったライフル銃を手に入れるとねぐらとしているバー阿邪馬に戻り弟分の石川満彦にそれを渡した。その夜、二人は大金をせしめる計画を練った。次の標的はノミ屋を生業としている都築興業だった。都築興業を経営しているのは暴力団・十日会であり、黒い金が金庫の中で唸っているという噂だった。二人は以前、現金輸送車を襲ったことがあるが、石川がヘマをしたせいで島は逮捕された。だがそれも怪我の功名、金庫の中には常時二千万円近くの現金がプールされていることを刑務所の仲間から聞いたのだ。出所までの三ヶ月間は頭の中はそのことばかりで、十日会の金庫というだけで恐れて誰も手を出さないことが逆に狙い目だという結論に至ったのだった。翌日、島は下見をするために向かいのビルから都築興業の室内の様子を双眼鏡で窺ったが、そこからは金庫のダイヤルナンバーが見づらいため場所を移動した。すると反対側のビルにも同じように双眼鏡で窺う男がいたのだ。島はその男を知っていた。デパートから逃げた後、公園で頭を冷やしているとコワモテの男が尾行していることに気づいたからだ。しかもその誤魔化し方が如何にもという感じだったため余計に印象に残っているのだった。

日が暮れ島が阿邪馬に戻ると店に川村ミチという女がいた。石川は店の前で酔い潰れていた彼女を介抱していたというが島には都合が悪かった。何故ならその女は犯行現場で顔を間近で見られたデパートの店員だったからだ。ミチは騒動時に店に残ったことで現金87万3千円を横領したと疑われクビになったのだという。警察に出頭して疑いを晴らして欲しいと泣きつかれたが、それどころではない島はミチを石川に任せると計画の詰めに入った。翌日、島たちが喫茶店で車の配置などの打ち合わせをしていると、またあの男がうろついていた。男が同じように都築興業の金庫を狙っているのではないかと考えた島はその日のうちに決行することに決めた。ビルのトイレで作業員に変装した島が部屋に踏み込み、ライフル銃を持った石川が続く。段取りは完璧だった。ところがドアを開けようとしたのと同時に中から出てきたのはあの男だった。現金を袋詰めにした男は用意していた車に乗り逃走、彼の一味と間違われた石川は十日会の組員に捕まり締め上げられた。一方、ドアの反対側にいたため見つからなかった島はもぬけの殻になった部屋に入ったが金庫に金目の物は残っていなかった。男と島によるカーチェイスが始まり、島はついに男を追い詰めた。彼のしつこさに負けを認めた男は山分けと提案するが、鞄の中には数枚の1万円札しか入っていなかった。逃げる途中で何処かに落としてきたのだ。落ち込む男は次の大きな仕事を提案するが、やるならあんたの身代わりになった石川の救出が先だと島は言った。

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赤い天使

  • posted at:2020-08-08
  • written by:砂月(すなつき)
あかいてんし
大映(東京撮影所)
配給:大映
製作年:1966年
公開日:1966年10月1日 併映「殺人者」
監督:増村保造
企画:久保寺生郎
原作:有馬頼義
脚本:笠原良三
撮影:小林節雄
録音:飛田喜美雄
照明:泉正蔵
美術:下河原友雄
音楽:池野成
編集:中静達治
助監督:崎山周
製作主任:上嶋博明
写真提供:毎日新聞社
出演:若尾文子 芦田伸介 川津祐介 千波丈太郎 赤木欄子
シネマスコープ モノクロ 95分

昭和十四年五月、西さくらは陸軍看護婦として天津の兵站病院に赴任した。内科病棟を担当することになったさくらは、岩島婦長から半分の重症患者と軽い結核か精神疾患の入院患者の中に偽の病人が紛れ込んでいるため気をつけるようにと忠告された。そして治癒しているにも拘らず前線復帰を嫌って残りたがる兵士の嘘を見抜くことが日常で接しているあなたの仕事だと言われると身が引き締まる思いをした。見た目は内地の陸軍病院と変わらなかったが、そこは天津。坂本一等兵は彼女の出自などを根掘り葉掘り聞き出すと同郷のよしみだと言って妙に馴れ馴れしくした。その夜、巡回の時間になり病室を見回ると、それを待っていた坂本たちに強姦された。次の日の夜、さくらが恥を忍んで婦長にそのことを報告をすると、坂本が常習犯だということがわかった。肺浸潤はまだ癒えてはいなかったが彼は前線の中隊に強制的に復帰させられた。

二ヶ月後、さくらは前線近くの深県分院は凄まじい地獄だった。傷病兵が何台ものトラックで運ばれ担架に乗せられた。広場に並べられた兵士たちは医師により即座に診断が下され、命があっても処置が不可能な者は見捨てられた。さくらは岡部軍医少尉を始め看護婦、衛生兵とともに不眠不休で働いた。多くの兵士が次々と分院へと運び込まれ、ある者は手術を待つ間に、またある者は手術中に、さらにまたある者は手術を受けてから死んで行き、皆死体置き場へ運ばれた。死んだ患者から外された認識票は山のように積まれた。職務期間最後となる三日目の終わり頃、腹を撃たれた患者が運ばれてきた。出血が酷く岡部から見捨てられた兵士は坂本だった。驚いたさくらは顔をそむけたが、坂本はあの時はすまなかったと腕にすがりついてきた。助けて欲しいと強く懇願することから、自分を犯したという罪だけで死なせたくないと思い無理を承知で岡部に輸血を頼んだ。もっと助かりそうな者に使うべきだと岡部は主張し、それなら今夜俺の部屋にくるかと条件をつけた。さくらが少し考えてからお願いしますと頭を下げると、岡部は特別だぞと腹立たしげに言った。全ての患者の処置を終えたとき、坂本は輸血の甲斐なく死んだ。衛生兵が即座に彼を運び出すと、さくらは岡部の部屋へ向かった。そして患者について報告すると、兵士は人間ではなく一枚の認識票だと思えと岡部は言った。今回死ぬとわかっていて手術を行ったのは、軍医として召集される前までは大病院で外科医をしていたからだ。ここの仕事は負傷兵の生か死の判断をするだけであり、時として一人の医師に戻りたくなるのだ。坂本に手術を行ったのは彼の中に残っている外科医としての誇りと執念がそうさせたのだった。今まで何百本という手足を切ってきたが、その患者は果たして幸せなのだろうか。自問自答し精神をすり減らしてきた彼はいつしかモルヒネを常用するようになっていた。翌日、深県分院に勤務した看護婦たちは患者と同じトラックで天津の兵站病院に戻った。その頃、さくらにとって岡部は忘れられない人になっていた。

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