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逆光の頃

  • posted at:2019-08-24
  • written by:砂月(すなつき)
ぎゃっこうのころ
東映ビデオ=マイケルギオン
配給:SPOTTED PRODUCTIONS
製作年:2017年
公開日:2017年7月8日
監督:小林啓一
制作:間宮登良松
エグゼクティブプロデューサー:加藤和夫
プロデューサー:中野剛 原田博志
ラインプロデューサー:松嶋翔
脚本:小林啓一
原作:タナカカツキ
録音:日高成幸
撮影部:野村昌平
衣裳・持道具:野口吉仁 内山さやか
ヘアメイク:北村あきな
方言指導:平松実季
DI カラリスト:相馬仁美
オンラインエディター:檜山めぐみ
整音:宮本明子
アクション監督:高杉真宙 金子大地
演出部:宮崎紀彦
制作部:森脇健介 村山宗一郎
載金指導:大塚華仙
制作プロダクション:マイケルギオン
出演:高杉真宙 葵わかな 清水尋也 金子大地 佐倉絵麻
アメリカンビスタ カラー 66分

京都生まれ、京都育ちの赤田孝豊は何処にでもいるような平凡な17歳の高校二年生。模擬テストの日、中々寝床を出られなかったことで遅刻しそうになった彼は急いで自宅を出た。自転車を飛ばして学校に向かっていたが、その途中でギターケースを背負ったクラスメイトの公平と会った。ライブの日と重なったためそっちを優先するというのだ。時間が気になった孝豊は少しだけ話をしてすぐに別れたが、公平のことが気になり行く先をライブハウスに変更した。ライブハウス初体験の彼にとって全てが新鮮で、しかもステージ上でギターを弾きながら歌う自分の知らない公平の姿に驚きを感じたのだった。ステージを終えた公平は貰ったギャラで弁当とビールを買い孝豊を連れて鴨川に向かった。そしてそこで雑談をしながら腹を満たしていたのだが、公平はいきなり靴を脱ぎ出すと川に入って行った。才能はあるやつはいいなあとその様子を眺めていた孝豊だったが、無邪気にはしゃぐいつもの公平に戻ったため一緒にバカ騒ぎした。夕方、自転車を押しながら通学路を帰っていると、後ろから幼馴染のみことが声を掛けてきた。彼女は孝豊が学校をサボった理由を深く聞かずに模擬テストの問題と解答用紙を手渡した。翌日、今度はちゃんと学校へ行き二日目の模擬テストを受けていた孝豊だったが、右隣にある空席が気になった。そこは公平の席で、自分の好きなことに没頭出来る彼をうらやましく思っていたのだ。その頃、ライブハウスで演奏を終えた公平はオーナーから最後の出演料を貰っていた。周辺の店から上がっていたの長年の苦情に対し、オーナーはこの夏を最後に店を閉める決断をしたのだった。居場所を失くした彼は学校を辞めて京都を出て行った。

五山送り火の夜、孝豊は自宅の屋根の上で公平のことを考えながら大の字になって寝ていた。すると梯子を上ってきたみことが朱塗りの器を差し出した。京都では大文字の送り火を水に映して飲むと病気に罹らないという風習があり、東京へ行った公平のことを考えながら一気に呷った。ところが彼が飲んだのは酒だった。孝豊がうろたえていると、みことはクスリと笑った。孝豊が考え事をすることが多くなり、彼女なりに元気づけようといたずらを仕掛けたのだ。

夏休みに入ると孝豊は英単語を一日に30個覚える目標を立てたが、学習する場所として選んだのは誰もいない学校の教室の机だった。ここだと自宅の部屋と違って集中がしやすいし、慣れ親しんだ自分の机で覚えた方がテストのときに思い出しやすいのではないかと考えたからだった。ある夜、孝豊が帰ってこないことを心配した彼の姉で小料理屋の女将の五月はみことに迎えをお願いした。その頃、孝豊は教室にいた。うたた寝をしてそのまま眠り込んでしまったのだ。月明かりの中で帰宅の用意をし教室を出ようとすると、タイミングよくみことがやってきた。だが問題はどうやって校舎から出るかだった。見回りにくる警備のおっちゃんは融通が利かないことで有名で、もし二人でいることがわかれば面倒なことが目に見えているからだ。とりあえず息をひそめて様子を見ることにしたのだが、尿意が孝豊を襲った。

屋台的映画館
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キカイダー REBOOT

  • posted at:2019-05-18
  • written by:砂月(すなつき)
きかいだーりぶーと
「キカイダー」製作委員会(KADOKAWA=東映=テレビ朝日=アサツー ディ・ケイ=バンダイ=木下グループ=日本コロムビア)
配給:東映
製作年:2006年
公開日:2006年6月10日
監督:下山天
エグゼクティブプロデューサー:井上伸一郎 白倉伸一郎
 制作:安田猛 有川俊 平城隆司 和田修治 小野口征 木下直哉 前山寛邦
スーパーバイザー:小野寺章
プロデュース:嵐智史 小川泰明 佐々木基
原作:石ノ森章太郎
脚本:下山健人
音楽:吉川清之
キャラクターリファインデザイン:村枝賢一
アクション監督:田渕景也
VFXスーパーバイザー:美濃一彦
撮影:小林元
美術:岡村匡一
照明:堀直之
装飾:肥沼和男
録音:豊田真一
整音:小林喬
音響効果:中村佳央
編集:下山天 難波智佳子
助監督:高橋浩
制作担当:曽根晋
ラインプロデューサー:林周治
キャスティングプロデューサー:福岡康裕
主題歌:「ゴーゴー・キカイダー REBOOT2014」ザ・コレクターズ
出演:入江甚儀 佐津川愛美 高橋メアリージュン 原田龍二 池田優斗
シネマスコープ カラー 100分

内閣総理大臣の田部慎之介は日本経済再生の一環として「ARKプロジェクト」を立ち上げた。原発事故処理や福祉介護において科学技術は限界に達していた。その打開策として国と企業が一体となり世界最先端のロボット開発を行うのがテーマで、主任研究員の光明寺信彦を中心に推し進められた。ロボットには「心」が必要と考える光明寺に対し、助手のギルバート神崎はそれを真っ向から否定していた。何故なら「良心回路」の影響で状況などにより若干の判断の遅れが見えるからだった。神崎はそれを証明するために自らが開発した良心回路を搭載していないマリ(BJX-2)と光明寺が開発したジロー(KJX-1)を極秘に対決させた。そしてジローが戦闘に向かないことを実証したのだった。それを知った光明寺は抗議したが、同時にプロジェクトが想定外の方向へ進んでいることもわかった。その戦闘能力テストにはプロジェクトのリーダーで国防大臣の椿原が立ち会っていたからだった。軍事利用が目的だったのならこっちにも考えがある。そう言って光明寺は施設を出て行った。

光明寺の事故死から1年が経った頃、彼の長女で大学生のミツコにつきまとう男が現れた。その男はルポライターの服部半平で、事故のことを調べているうちに奇妙なことに気づいたのだ。それは研究中の事故死だったにも拘らず一切ニュースで報じられることはなく、しかもプロジェクトは続行されていたからだ。半平は何か特ダネはないかとミツコの周りをうろついたが、彼女にはただ鬱陶しいだけの存在にしか映らなかった。ミツコには小学生の弟・マサルがおり身の回りの世話は彼女が全て行っていた。ある夜、半平がマンションを訪ねたとき二人は武装した謎の部隊に襲われ屋上に連れて行かれた。だが銃口を向けられたミツコたちの窮地を救ったのは突然現れたジローだった。彼は男たちを次々となぎ倒しミツコに逃げろと指示したが、部隊が銃を乱射し始めたため盾となって二人の身を守った。そして本来の機械の姿に変身すると圧倒的な強さと素早さで相手の銃を破壊した。その様子を監視していたヘリコプターからは巨大なロボットが投下されたが、苦戦しながらもジローはそれをも倒したのだった。騒動を知り駆けつけた半平はミツコの身を案じたが、何も知らないし何もわからないと彼女は言った。そこには既にジローの姿はなく、何が起きたのかわからない半平は二人に早くこの場所から立ち去るようにと促すしかなかった。

部隊の首謀者は椿原だった。彼は「光明寺ファイル」を奪うために鍵を握るマサルを拉致しようとしたが、ミツコが抵抗してきたため部隊は二人まとめて連れ去ったのだ。ところが事故後に行方不明となっていたジローがミツコの悲鳴を聞きつけて現れたことで計画が狂ったのだった。

屋台的映画館

君が若者なら

  • posted at:2019-01-19
  • written by:砂月(すなつき)
きみがわかものなら
新星映画社=文学座
配給:松竹
製作年:1970年
公開日:1970年5月27日 併映「明日また生きる」
監督:深作欣二
制作:松丸青史 其田則男 武藤三郎
脚本:中島丈博 松本孝二 深作欣二
撮影:江連高元
美術:平川透徹
音楽:いずみ・たく
照明:平田光治
録音:吉田庄太郎
編集:仲達美
記録:城田孝子
助監督:久保治男
制作主任:小鷹忠
監督助手:箕輪雅夫 片桐康夫 三宅晋輔
撮影助手:奥村義博 宮川博 石川泰行
照明助手:高木広志 平田礼一 鈴木優
美術助手:長沼宗夫 堀内重郎 手塚研一
制作経理:石田輝子
スチール:金田正
宣伝:丸山富之
総合宣伝:時実象平
進行:中田新一 荻原孝
現像:東京現像所
効果:協立音響効果
録音:東京スタジオセンター
協力:オールスタッフプロダクション
出演:石立鉄男 前田吟 河原崎長一郎 林秀樹 峰岸隆之介
アメリカンビスタ カラー 90分

九州の炭鉱町で育ったが、中学生のときの落盤事故で父親を失いひとりぼっちになった樋口喜久男。そして同じ事故で父親を失い、生活に困り体を売って生計を立てる母親に反発した鈴木麻男。中学卒業後、幼馴染の二人は就職列車に乗って他の若者たちとともに上京した。金の卵と呼ばれた彼らは夜間高校に通わせてもらえるという厚遇を約束され、辛抱すれば明るい未来が開けると皆信じていた。石の上にも三年。だが三年経っても暮らしは楽にならなかった。その会社の学歴別賃金昇給表を手に入れた喜久男は、高卒や大卒との開きに愕然とし何とかしなければならないと考えるようになった。その後、工場が倒産すると行き場のなくなった喜久男と麻男は失業保険を頼りにそのまま寮に居座ることにし、同じく行き場のない佐渡の漁師の息子の矢部清、川崎の労働者の息子の井上一郎、北海道の開拓村から出てきた北野竜次も一緒に残った。翌日に銀行の関係者が建物競売の手続きを行うことを知った日の夜、喜久男たちはボクサー志望の竜次が初めてリングに立つ前座4回戦を応援しに行った。そして劣勢の試合の中、彼らは汚いヤジを飛ばすチンピラと乱闘になり留置場に入れられたのだった。静かな部屋で頭を冷やした喜久男はある考えに至った。自分たちのトラックを手に入れて商売するのだ。そして各々では何も出来ないが5人で列を組めば必ず出来るはずだ、と。5年掛かる苦労を5人で分ければ1年となる。そうなれば4年先にはひとり1台トラックが持てるのだ。一郎が1台のトラックでのし上がった飯場のオヤジの話を思い出したことで、自分たちでもやれるのではないかと皆信じるようになった。釈放後、独立を目指して働くことに決めた5人はそれぞれの職場に散った。ボクサーを諦めた竜次は資材の運搬で汗を流し、喜久男は自動車修理工場で腕を磨いた。清はホテルの清掃業に就き、一郎はバーのボーイに、そして麻男はビルの建設に携わった。

トラックを買うために5人はひと月の給料から一定額を積み立てることになっているのだが、清だけ納金が遅れていた。焦った彼はやくざ者と結託して倉庫に忍び込み商品を盗み出そうとしたが、そこに現れたガードマンを殴り倒したことで強盗と窃盗の罪で逮捕された。一郎はホステスとつき合うことになったが、子供が出来たことで生活が苦しくなりトラックどころではなくなったのだ。二人が抜けたことで喜久男と麻男は残った竜次を頼りにしていたが、特別手当の1万円欲しさに経営者側のスト破りに参加したことで警官に警棒で頭を殴られて死んだ。独立の夢を諦めようとした喜久男たちは竜次の姉・秋子を訪ね、積み立てた金を返そうとした。だが彼女は弟の願いを叶えて欲しいとそれを受け取らなかった。その思いを汲んだ二人は土砂運搬業でがむしゃらに働き、雇い主からお墨付きをもらった。そして銀行から融資を受けられることになったことでついに念願のダンプカーを手に入れたのだった。

屋台的映画館

希望の国

  • posted at:2018-06-19
  • written by:砂月(すなつき)
きぼうのくに
「希望の国」製作委員会(キングレコード=鈍牛倶楽部=ビターズ・エンド=RIKIプロジェクト=グランマーブル=ピクチャーズデプト=マーブルフィルム)
配給:ビターズ・エンド
製作年:2012年
公開日:2012年10月20日
監督:園子温
製作:大月俊倫 富田敏家 永井拓郎 山本正典
プロデューサー:定井勇二 國實瑞恵 Yuko Shiomaki
共同プロデューサー:Adam Torel James Liu
ラインプロデューサー:鈴木剛
原作:園子温
脚本:園子温
撮影:御木茂則
照明:松隈信一
美術:松塚隆史
装飾:石毛朗
録音:小宮元
整音:深田晃
音響効果:齋藤昌和
編集:伊藤潤一
助監督:吉田聡
制作担当:竹岡実
VFXディレクター:馬場革
スクリプター:貞木優子
キャスティング:杉山麻衣
共同制作:Third Window Films Joint Entertainment International
制作プロダクション:ビターズ・エンド
出演:夏八木勲 大谷直子 村上淳 神楽坂恵 清水優
アメリカンビスタ カラー 133分

長島県大葉町で酪農業を営む小野泰彦は認知症気味の妻・智恵子、息子の洋一とその妻のいずみと平凡ながらも満ち足りた生活を送っている。ある日、長島県の東方沖でかつての東日本大震災を思い起こさせる程の地震が発生し、泰彦はまず家族が無事であることを確認した。次に彼は酒屋を営む友人の松崎に電話を掛けたが、いくら待っても繋がらなかった。町からの退避命令が出るはずだと泰彦が外に出ると、農業を営む向かいの鈴木健の息子・ミツルとヨーコがバイクで帰ってきてお互いが無事であることを確認すると、健とその妻のめい子にそのことを報告した。泰彦が退避命令を気にしている理由は、この大葉町には原子力発電所があるからだった。地震が発生したのは午後4時5分頃で、規模はマグニチュード8.3と推定された。県内では大規模な停電が発生し沿岸部では大津波警報が出されていた。ラジオからは新しい情報が次々と流れている中、泰彦が物置から引っ張り出したのはチェルノブイリ事故のときに心配で買ったガイガーカウンターだった。原発事故のことが頭から離れない彼にとってお守りのような物だ。情報無線が停電で役に立たないことと、情報統制を敷いた場合の政府を当てにしていないからだ。まだ暖房が必要な時期であることから泰彦は早めに就寝するために寝床確保の片づけを家族に命じた。

翌早朝、泰彦は町内を巡回する広報車の音声で目覚めた。それは長島第一原発から半径20キロ圏内の住民に対する避難命令だった。彼が外へ出るとサイレンをけたたましく鳴らしたパトカーなどの緊急車両が到着し、敷地に規制線を張った。彼らが放射能防護服を着ていたことで原発がやられたのかと泰彦は質問したが、警官は詳しいことはわからないの一点張りだった。やがて準備が整うと警官は警戒区域の住民に対して避難を命じたが、小野家は規制線の外側にあった。いずみはその基準に疑問を持ち抗議を行ったが受け入れられなかった。一方、健たちも我が家から強制的に離れなければならないことに対し抗議を行ったが受け入れられなかった。そういったやり取りや警察官による作業の様子を泰彦は静かに見ていた。

避難所へ向かうバスに乗った健たちは二、三日したら家に戻れると説明を受けたが、それが無理なことは東日本大震災の報道で知っていた。やがて何があっても帰ると一人が言い出すと同乗する自衛隊員に不信感を抱いていた者たちが騒ぎ始めたのだ。するとミツルが立ち上がり、生きているのだから何とかなると一喝して治めたのだった。その頃、辺りが静かになった小野家では話し合いが行われていた。洋一といずみにここから出て行くべきだと泰彦が促すと、これが今生の別れとなるかもしれないと感じた洋一はせめて明日の朝まで居させて欲しいと涙ながらに頼み込んだ。

屋台的映画館

季節風

  • posted at:2017-09-14
  • written by:砂月(すなつき)
きせつふう
松竹=NPミュージックプロモーション
配給:松竹
製作年:1977年
公開日:1977年7月16日 併映「愛情の設計」 
監督:斎藤耕一
制作:中川完治
企画:西川宗明 中西正治
脚本:長野洋
撮影:坂本典隆
美術:芳野尹孝
音楽:東海林修
録音:平松時夫
調音:松本隆司
照明:八亀実
編集:杉原よ志
スチール:赤井薄旦
監督助手:仲倉重郎
装置:森勇
装飾:宮崎琢郎
衣裳:松竹衣裳
現像:東京現像所
進行:柴田忠
制作主任:沼尾鈞
主題歌:「季節風」野口五郎
挿入歌:「感情曲線」野口五郎
制作協力:東洋工業株式会社 ポリドールレコード
出演:野口五郎 大竹しのぶ 宇佐美恵子 加藤治子 新克利
シネマスコープ カラー 86分

大学受験に失敗した高村慎次は肩身の狭い思いをしていた。彼は八戸の兄夫婦が切り盛りする酒屋で母の琴絵とともに同居していたが、落ちたのは今回が初めてではなかった。前年は父が亡くなったことで心に余裕がなかったが、次第に大学へ行くという意欲が薄れてきていた。そんな気持ちを知ってか知らずか兄の浩一は慎次に東京の予備校へ行かせようと考えていた。店の経営が苦しいながらも浩一が彼や琴絵のことを支えようとしていたのには理由があった。慎次が腹違いの弟だからだ。だがもう浩一や妻のミツ子の顔色を見ながら生活をすることに限界を感じていたことで思いの丈をぶちまけると、浩一はひとりで好きなようにやってみろと怒鳴った。

頭にきて家を飛び出した慎次がバイクをぶっ飛ばしていると、交差点に進入してきた車にぶつかりそうになり転倒した。慌てて運転席から出てきたのは、テレビCMの撮影を終えて東京に帰る途中だったモデルの白川圭子だった。この日、慎次が彼女に会ったのは初めてではなかった。朝方、母たちからのプレッシャーで家にいるのが嫌になり、浜辺の岩場で好きなギターを弾いていると女性が手を振っていた。まさか自分にと疑いながらも立ち上がって照れながら手を振り返すと、監督からカットの声。そこでは自動車のCMの撮影が行われていたのだが、ギターの練習に熱中するあまり周りの状況に気づかなかったのだ。そんなこともあって必要以上に彼の身を案じる圭子は病院へ向かおうとしたのだが、話しているうちに東京へ行くことがわかると慎次は一緒に連れて行って欲しいと懇願した。

夕刻、立ち寄った食堂でラーメンをすすっていると、奇妙な親父が近づいてきた。その男は圭子の顔を見るなり悪い相が出ているから良くねえよと言った。何を言っているんだと慎次が眉をひそめていると、圭子が人生の分かれ道で決断を迷っているのだという。さらに顔をジロジロと見て二人の関係が何もないことを言い当てられると慎次は動揺した。食事を終えて店を出ると圭子は車を発進させたが、道を間違えてしまい本当に迷ってしまった。

東北から夜通し運転し、東京に着いたときにはもう陽が高く上っていた。車を降りた慎次は新宿駅前にやってきたものの、特に行く当てもないためとりあえず少年野球で監督をしていた山本健を訪ねることにした。そこには幼なじみで健の妹の美紀もいたが、兄の食事を用意するとすぐに帰って行った。彼女を送ろうとする慎次を引き留めた健は、俺たちのような他に身寄りのない人間は早くひとりで生きて行くことに慣れなければならないし、女だから未成年者だからと甘やかしてくれるほど世の中は甘くないんだと言った。それを聞いた慎次は何も言い返せなかった。健は勤めていた会社が倒産し失業していたが、慎次を快く受け入れた。そして慎次も恩返しとして健の商売を手伝い、そこで初めて社会の難しさを知った。

屋台的映画館

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砂月(すなつき)
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