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ラーメン大使

  • posted at:2016-03-10
  • written by:砂月(すなつき)
らーめんたいし
大映(東京撮影所)
配給:大映
製作年:1967年
公開日:1967年2月11日 併映「若親分を消せ」
監督:島耕二
企画:藤井浩明
原作:花登筐
脚本:舟橋和郎 花登筐
撮影:渡辺徹
録音:三枝康徐
照明:泉正蔵
美術:高橋康一
音楽:大森盛太郎
編集:鈴木東陽
助監督:進藤重行
製作主任:真鍋義彦
現像:東京現像所
出演:フランキー堺 船越英二 丸井太郎 市村俊幸 人見きよし
シネマスコープ カラー 83分

中国生まれの王(ワン)さんは、母親の遺言を叶えるために日本へやってきた。昭和13年、日華事変の戦火が広東省に拡がる中、日本兵たちが民家に潜んでいる兵士に警戒しながら中を検めていると、藁を被って隠れている一人の女性を見つけた。片言の日本語をしゃべる彼女が身重だとわかると山川伍長はすぐに衛生兵を呼び、安心していい子を産むんだぞとやさしく声を掛けた。そして夫が戦争で死んだことを知ると、哀れに思った山川はポケットから出した紙幣を握らせようとしたが、女性は強姦されるのではないかと警戒して受け取りを拒否した。怯える彼女に、君にじゃなくて生まれて来るその赤ん坊にあげるんだと山川が言うと、女性は感謝して何度も「山川伍長」という名を繰り返し口にした。それから歳月が流れ、女性は臨終の時を迎えようとしていた。彼女は傍に座る27歳になった息子の王さんに、人からもらったお金でお前を産んだのでは死んでも死にきれないからあの人にお金を返して欲しいと言った。そのことから王さんは、横浜港へ向かう貿易船ブルネオ丸に船員として乗り込んで日本を目指したのだった。港が見えると船長は王さんを呼び出し、無事に会えることを祈っていると言ってプレゼントのシャツを渡した。そしてその代わりに今日の正午に東京タワーの下で待つ私の友達に渡して欲しいと唐辛子の入った袋を手渡すと、喜ぶ王さんは必ず持って行きますと何度も頭を下げた。ブルネオ丸の船長は札付きの麻薬密輸男として警察がマークしていた。

下船した王さんは、港で一服していたクリーニング屋の六さんに山川さんについて尋ねたが、何のことやらさっぱりわからない六さんは何度も聞き返してその山川という人物が陸軍の伍長をしていたという情報を得た。そこで王さんと言えば長島さんだとひらめいた六さんは、配達用のバイクに彼を乗せて自分の街にある栄町派出所の長島巡査を訪ねたのだった。引き継ぎの巡査と交代した長島は、腹を空かせているという王さんを万来軒というラーメン屋へ連れて行く間に日本へ来た理由を聞いた。その日、万来軒は葉っぱ会という若者たちのサークルに貸し切っていたことから、長島はそこで王さんのことを紹介することにしたのだ。女将は彼の話を涙ながらに聞いていたが、返す金額が23円50銭と聞いて拍子抜けした。倍の50円とお礼の気持ちとして家が2、3軒買える2千円を用意してきたのだが、それは村長から聞いた60年前の情報をもとにしていたのだ。女将から今の2千円の価値がラーメン20杯程度しかないことを聞いた王さんは肩を落とした。その様子に長島は今の価値に換算した5万円を返したらどうかと提案したが、王さんは驚いてそんなお金はないと首を横に振った。ブルネオ丸が停泊している2週間で5万円を用意するのは大変だったが、長島はまず落ち着いてラーメンを食べるように言った。左手に持った七味の容器で唐辛子のことを思い出した王さんは急いで東京タワーに向かうと船長の友人だという二人組が現れた。だが一緒にいた長島の姿を見るなり慌てて逃げ出した。

屋台的映画館
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キングコングの逆襲

  • posted at:2016-03-04
  • written by:砂月(すなつき)
きんぐこんぐのぎゃくしゅう
東宝
配給:東宝
製作年:1967年
公開日:1967年7月22日 併映「長篇怪獣映画 ウルトラマン」
監督:本多猪四郎
製作:田中友幸
脚本:馬渕薫
テクニカル・アドバイザー:アーサー・ランキン
撮影:小泉一
美術:北猛夫
録音:吉沢昭一
照明:高島利雄
音楽:伊福部昭
整音:下永尚
監督助手:佐野健
編集:藤井良平
音響効果:西本定正
現像:東京現像所
製作担当者:坂本泰明
特殊技術・撮影:富岡素敬 真野田陽一
特殊技術・光学撮影:徳政義行
特殊技術・美術:井上泰幸
特殊技術・照明:岸田九一郎
特殊技術・合成:向山宏
特殊技術・操演:中代文雄
特殊技術・監督助手:中野昭慶
特技監督:円谷英二
出演:宝田明 浜美枝 ローズ・リーズン リンダ・ミラー 天本英世
シネマスコープ カラー 104分

海底油田調査のためソロモン諸島東部に位置するモンド島付近を潜航していた国連科学委員会所属の原子力潜水艦・エクスプロアー号は、突然の海底岸壁崩落によりスクリューシャフトを損傷した。モンド島には大きな入江があることからそこで応急処置を行うことになったが、この島に上陸出来ることを心から喜んでいたのは野村次郎三佐と艦長のカール・ネルソン司令官だった。彼らは兼ねてよりこの島に住むと言われる身長20メートル程のコングを研究していたが、油田調査優先の今回はスケジュールに余裕がなく勝手な行動は許されなかったからだ。次郎とカール、そして二人の話に興味を持ちついてきた看護師のスーザン・ワトソンはホバークラフトで上陸したが、原住民に警告を受けたため話し合いを行うことにした。集落を目指して険しい山を登る彼らはスーザンを残して来たことを後悔した。森の中からゴロザウルスが現れスーザンを背後から襲ったのだ。彼女の悲鳴は次郎たちに届いたが、山の上ではどうしようもなかった。そのとき現れたのは、それを聞きつけたコングだった。コングはスーザンを右手で掴んで高い木の上に避難させるとゴロザウルスと格闘を始めた。敏捷な動きを見せるゴロザウルスに対し、防戦一方のコングは一瞬の隙をついて首投げを決めるとパンチの応酬で勝負を決めた。勝利の雄叫びを挙げるコングは再びスーザンを右手で掴んでしげしげと眺めるが、降ろして欲しいと懇願する彼女の仕草に仕方なく従った。駆けつけたカールに抱き付くスーザンの姿を見たコングは嫉妬するが、息を吹き返したゴロザウルスが右足に噛みついたことでそれどころではなくなった。コングは再びゴロザウルスを押さえつけると両手で顎を引き裂き息の根を止めた。一方、ホバークラフトは騒動の間に脱出を試みたが、海上に出たところで大ウミヘビに襲われた。それに気づいたコングが投げた岩が大ウミヘビの頭に直撃してホバークラフトは沈没を免れたが、尾が船体に当たり安定装置が故障した。コングが海に入って大ウミヘビと格闘を始めると、カールはその時間を使って修理を行いエクスプロアー号に戻った。だがシャフトの修理はまだ完成しておらず、準備を急がせているうちに戦い終えたコングが近づいてきて船体を揺らし始めたのだ。対応に頭を痛めるカールにスーザンはコングを説得する役目を自ら志願した。

究極の核兵器素材となる「エレメントX」を必要とする某国は、工作員マダム・ピラニアを天才科学者のドクター・フーに接触させ、調査等の見返りとして掘削に使用するロボットを研究、開発する費用を全額負担する契約を行った。その結果、北極の地下にその放射性物質が大量に眠っていることを突き止め、ドクター・フーは完成させたロボット怪獣をテストを兼ねて始動することにした。カールと次郎が生物学や解剖学に基づきキングコングと同等の能力を持つロボット版キングコングとして作成した資料を何らかの方法で手に入れ、実体化したのがこの「メカニコング」だった。だが鉱脈に差し掛かると強力な磁気を浴びて機能を停止した。

屋台的映画館

温泉おさな芸者

  • posted at:2016-02-27
  • written by:砂月(すなつき)
おんせんおさなげいしゃ
東映(京都撮影所)
配給:東映
製作年:1973年
公開日:1973年7月4日 併映「実録 私設銀座警察」
監督:鷹森立一
企画:太田浩児
脚本:今子正義 鷹森立一
撮影:星島一郎
録音:小松忠之
照明:大野忠三郎
音楽:菊池俊輔
編集:田中修
助監督:田村猛
記録:宮本衣子
スチール:藤井善男
渉外:中川亘
進行主任:岩谷敏明
装飾:装美社
美粧:須々木善三郎
美容:高杉喜美子
衣裳:長谷稔
演技事務:石川通生
現像:東映化学
協力:天城観光協会 天城湯ヶ島温泉旅館組合
出演:深田ミミ 沢リミ子 田辺節子 南廣 小林千枝
アメリカンビスタ カラー 71分

東京の私立高校に通う3年生の速野征代と穴沢良子は、夏休みに入ると残りの10日間を過ごす沖縄旅行の費用を稼ぐためのアルバイト先を探した。お金のない彼女たちが気分転換を兼ねて決めた先は西伊豆。だが20日間をアルバイトに当てることは考えていたものの何をするかは決めていなかった。早速ヒッチハイクで図々しくトラックの荷台に乗り込んだまでは良かったが、行く先は横浜だった。その後もヒッチハイクを繰り返したが、西伊豆に近づくにつれて次の車が拾えなくなり長距離を歩く羽目になった。体はクタクタでもう一歩も歩けなくなっていた彼女たちの目に飛び込んできたのは駐車中の無人のジープだった。後部座席に乗り込んで運転手を待っていると、やってきたのが同世代の女性二人だったことから良子たちは西伊豆まで乗せて欲しいと頼んだ。すると女子高生の方が冗談は顔だけにしてとケンカを売り、カッとなって手を出そうとした征代を車から引きずり降ろしたのだ。尻餅をついた征代を心配して良子が駆け寄ると、背後で大きなクラクションが鳴った。運送会社のトラックが彼女たちのせいで通れずに困っていたのだ。征代たちが運転手に声を掛けた隙にジープは逃げるように走り去った。すると二人はトラックに無理矢理乗り込むと当て逃げをしたあのジープを追いかけて欲しいと頼んだのだった。それをまともに信じた運転手はアクセルを踏み込んだが、登坂で振り切られてしまった。

天城温泉郷についた二人は宿を決める前にまず腹ごしらえをすることにした。茶屋で雑談しているとそこの女将がここで働きなさいよと声をかけてきた。宿泊、三食付きで日当も出るということで持ち合わせのない彼女たちには渡りに舟だった。女将のまん婆さんは多角経営の時代だからと茶屋の他に置屋もやっており人手が不足していたのだ。その夜、旅館の番頭・田村から天城一の売れっ子芸者がまだ来ないという催促の電話があり、前の座敷が長引いていることを知ったまん婆さんは自分が行くことを提案した。だがそれを聞いた田村は、大事な顧客である東日医師会幹事との関係をぶち壊されてはたまらないと全力で拒否したのだった。そこでまん婆さんはある妙案を思いついた。今の時代は何でもインスタント。そこでまんじゅう作りを手伝う征代と良子をインスタント芸者に仕立て上げることにしたのだ。旅館に到着するとそこにジープが停まり芸者が降りてきた。彼女は征代たちを置いて逃げた奈々だった。驚いて指を差し合う征代たちを見て何事かわからないまん婆さんは、大急ぎで二人を座敷に引っ張って行った。首を長くして待っていた須田、毛塚、別所の3人はゼミナールと称した要求を素直に聞く征代たちをとても気に入り、楽し気な笑い声は館内に響いた。噂はあっという間に広がり興味本位の客たちが次々と指名したが、気分が悪かったのは他の芸者衆だった。

屋台的映画館

かずら

  • posted at:2016-02-20
  • written by:砂月(すなつき)
かずら
「かずら」制作委員会(ホリプロ=ポニーキャニオン)
配給:クロックワークス
製作年:2009年
公開日:2010年1月30日
監督:塚本連平
製作:菅井敦 三宅容介
エグゼクティブプロデューサー:朝長泰司 男全修二 南條昭夫
プロデューサー:三瓶慶介 利光佐和子
原案・監修:小林信也
脚本:福田雄一 石川北二 塚本連平
撮影:北村信也
美術:松塚隆史
装飾:石毛朗
照明:丸山和志
録音:福田伸
VE:高橋正信
ラインプロデューサー:鈴木剛
助監督:島添亮
制作担当:山内君洋 伊藤友子
スタイリスト:棚橋公子
ヘアメイク:五十嵐広美
音楽:藤岡孝章
プログラマー:羽生正貴
ミキシングエンジニア:大竹恵里花
主題歌:「雨のち晴れ」かりゆし58
挿入歌:「夜行列車」かりゆし58
出演:三村マサカズ 芦名星 ベンガル 井森美幸 田中要次
アメリカンビスタ カラー 94分

富士山を望む南山梨市在住の森山茂(35歳・独身)。家族と同居し東興住建でデザイナーとして働く彼は若ハゲという大きな悩みを抱えていた。森山家は代々髪が薄く、父親の盛夫はツルツル、二人の弟も既にスカスカの状態だった。洗面所で時間をかけて髪をセットしていると妹からはスタイリングするだけの素材がないから無駄だとバカにされる始末。会社では「薄い」などのワードに敏感に反応して仕事に集中出来ず、愛犬の毛並みを見てはいいなあと呟いた。そんなある日、東京の本社から次のプロジェクトに人が足りないということで茂に転勤の話が出た。そのプロジェクトは集合住宅の開発計画で、各社がプランを提出してその中の1社に施工の権利が与えられるというものだった。ぜひ力を貸して欲しいと言われ悪い気がしない茂はその申し出を引き受けることにした。

上野駅に到着した茂だったが、道を尋ねても誰も立ち止まろうとしないため途方に暮れていた。誰も俺に興味なんてないんだと東京での生活に不安を抱えていた彼がふと大型ビジョンに目をやると、男性がはつらつとした姿を見せるかつらのCMが流れていた。明後日の出社日までが人生を変えるチャンスだと考えた茂は、誰も興味がないのならとかつらメーカーを訪ねることにした。彼が最初に立ち寄ったのは、人工皮膚のかつらを金具で地毛に止めるというポピュラーなタイプの物を扱うA社だった。料金は3段階方式で200万円、仕上がりまでに5週間ほどかかると聞き驚いた。次に訪ねたのは、残っている髪の毛と糸で土台を作りそこにネット製の製品を特殊な糸で固定する編み込み式の物を扱うB社だった。料金は40万から60万円とA社に比べれば安く仕上がりはひと月半ほど。しかも普段通りに洗髪出来るという有利な点があった。だが料金とは別に毎月の手入れ料が1万円かかり、その度に来社して散髪をしなければならないという面倒臭さがあった。3番目に訪ねたのは、ベースそのものに植毛されている強力な粘着シートを直接頭皮に貼り付けるタイプの物を扱うC社だった。年間で100万円ほどだが、全ての頭髪を剃る必要があり頭部全体に施すには45日ほど必要だった。結局、予算面と時間面で踏み切ることが出来ず、茂は会社を後にするのだった。

茂は帰り道に小さい奇妙な張り紙を見つけた。そこには「早い。安い。うまい。あなたのかつら作ります」と書かれてあり、彼は矢印に導かれるように路地裏へ進んで行った。そしてついに辿り付いたのは古びた理容院で、看板には「大和田カツラ」の文字。恐る恐るブザーを押すと中から無表情の男が出てきた。店主の大和田は茂を店内に招き入れると、大手だと1ヶ月以上かかるがうちは即日渡しだと言った。そして個人経営だからこそ小回りが利き、一人だからこそコストが抑えられることで早くて安くてうまいかつらが作れると茂の疑問に答えた。不安を抱きながらも35万円で契約すると、大和田はそれに応えようと夜通し制作に没頭し夜明けとともに茂の新しい頭が完成した。そのクオリティーの高さに驚く茂に、大和田は内側の5つの金具が外側の5つの要素、天、風、水、火、人から守り支えてくれると言った。これが彼のうれしくも悲しいかつら人生の始まりだった。

屋台的映画館

十一人の侍

  • posted at:2016-02-14
  • written by:砂月(すなつき)
じゅういちにんのさむらい
東映(京都撮影所)
配給:東映
製作年:1967年
公開日:1967年12月16日
監督:工藤栄一
企画:岡田茂 天尾完次
脚本:田坂啓 国弘威雄 鈴木則文
撮影:吉田貞次
照明:井上孝二
録音:溝口正義
美術:塚本隆治
音楽:伊福部昭
編集:神田忠男
助監督:大西卓夫
記録:国定淑子
装置:矢守好弘
装飾:柴田澄臣
美粧:堤野正直
結髪:白鳥里子
衣裳:松田孝
擬斗:上野隆三
制作主任:武久芳三
出演:夏八木勲 里見浩太郎 南原宏治 宮園純子 大川栄子
シネマスコープ モノクロ 100分

天保10年11月、鹿狩りに興じ国境を越えたことに気付かなかった将軍の弟で館林藩藩主の松平斉厚は、道を遮った農夫に矢を放った。そこへ偶然通りかかった忍藩藩主・阿部豊後守正由が何故の御成敗かと尋ねると、斉厚は前を横切ろうとした故に無礼討ちにしたと高らかに言った。それを聞いた正由は、ここは忍藩の領内であり領主たる某に何の挨拶もなく領民を斬り捨てるとは、天下万民の手本となるべき御身をお忘れかと言った。その言葉が癪に障った斉厚は正由に矢を放ち、右目を貫かれた正由は絶命した。この事態に忍藩次席家老・榊原帯刀は訴状に矢を添えて江戸千代田城の老中・水野越前守忠邦に申し出たが、もしそのようなことが諸大名や旗本の模範となるべき人物にあれば徳川家の威信は地に落ちる。そこで忠邦は、国境の仕切りを弁えずに館林領へ馬を乗り入れ斉厚に無礼な雑言、その際の流れ矢に当たった正由の不祥事と、それを斉厚の所業として公儀を謀ったとして帯刀に忍藩取り潰しを言い渡した。この理不尽な判決に言葉を失う帯刀。上意だと言われ歯噛みしながら引き下がった帯刀は、取り潰しの触れ出しを11月の晦日まで待って欲しいと願い出た。訝る水野に彼は、寝耳に水の藩中の者たちが間違いを起こさぬよう説き聞かせ、心を一つにして御上意をお受けせねばなりませんと苦々しく言った。そして水野が斉厚の処置について口を閉ざしたことから、ひと月の猶予を貰えなければその場で腹を切ると帯刀が言うと忠邦はそれを渋々認めた。

藩に戻った帯刀は藩取り潰しの件を重臣たちに隠し、斉厚に不穏な企てを起こす者が現れれば公儀の印象を損ねることから藩士に道理を言い聞かせて行動を慎むようにと言い渡した。その一方で彼は竹馬の友である藩士・仙石隼人と会い、遠乗りと称した密談を行った。忍藩500人の家臣や領民の生活を守るためには、ひと月の猶予の間に行動を起こす必要があった。そこで帯刀は隼人に力を貸して欲しいと願い出たのだった。隼人はしばらく考えた末に脱藩することに決めたと言った。素浪人となれば藩に迷惑がかかることはないからだ。成功の確率は低いが、理非を訴えることが出来ないこの世の中を変えるにはいずれ誰からやらねばならないのだ。引き受ける条件として自分と同じような人間があと10人ほど必要だと隼人がいうと、帯刀はお主に任せるとゆっくり頷いた。隼人は暗殺隊を組織するにあたってまず連絡役に藤堂幾馬を指名した。

斉厚が江戸へ出府するという噂を聞きつけた忍藩藩士・三田村健四郎と仲間たちは、持病の労咳で急死した兄の代わりに参加することになったぬいとともに斉厚を討とうと待ち構えていたが、動きを察していた隼人に阻止された。藩邸に戻ると帯刀はぬいに謹慎、6人には切腹を言い渡した。怖気づく三田村たちに俺が介錯してやると隼人が言うと、彼らは刀を腹に突き立てようとした。すると帯刀の待ての声。6人の死への覚悟と勇気を認めた隼人は真相を話し始めた。

屋台的映画館

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