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競輪上人行状記

  • posted at:2021-03-09
  • written by:砂月(すなつき)
けいりんじょうにんぎょうじょうき
日活
配給:日活
製作年:1963年
公開日:1963年10月13日 併映「遊侠無頼」
監督:西村昭五郎
企画:大塚和
原作:寺内大吉
脚本:大日信行 今村昌平
撮影:永塚一栄
美術:大鶴泰弘
録音:八木多木之助
照明:三尾三郎
編集:丹治睦夫
助監督:藤田繁夫
製作担当者:亀井欽一
音楽:黛敏郎
出演:小沢昭一 伊藤アイコ 南田洋子 小山田宗徳 高橋昌也
シネマスコープ モノクロ 98分

夏のある日、中学教師の伴春道は家出をした教え子の小酒井サチ子を上野駅で見つけると保護した。彼女の家がある青梅まで連れて行こうとしたのだが、何故かその場を離れたがらなかった。 理由を尋ねてもしゃべらず、そのうち叔母さんのところへ行きたいと言い出した。その家が自分の実家の近くであることがわかったが、まずは両親に引き渡すことが先だと考えた春道はそれよりも先にトイレで用を足すことにした。ここを動くなと指示してトイレに向かったが、気になって戻ると老女がサチ子を連れ去ろうとしていた。慌てて声を掛けると、その老女は知り合いでポン引き屋のブラック婆さんであることがわかった。彼女は春道の顔を見るなり、兄さんが死んだのに一体ここで何しているんだと言った。驚いた春道はサチ子を連れて実家に向かうことにした。春道の実家は法妙院というオンボロ寺で、坊主になるのが嫌で飛び出した彼は教師の道を選んだのだ。

体育のバレーボールの授業中にサチ子が腹痛で倒れ込んだ。その原因は食あたりなどではなく妊娠だった。春道は担任の鏡味とともに家に行き母親に心当たりを尋ねるが何故か口を閉ざした。そして父親もよそよそしい態度を取った。その帰り、父親の態度でサチ子の相手がその父親だと鏡味が言うと、そんなことがあり得るのかと驚き悩む春道だったが、下宿に戻ると父・玄海からの手紙が届いており、そこには帰って寺を継げと書かれてあった。夏休みの間だけ渋々手伝うことにした春道だったが、そのまま寺に置いておきたい玄海から兄嫁のみの子と所帯を持ちことを持ち掛けられたのだった。心が揺れ動く中、色川という男が他所で行われるはずだった葬儀を持ってきた。面倒な春道は古株の芳順に任せようとしたが、その場に居合わせたみの子が手っ取り早く引き受けたのだった。

葬儀の夜、芳順の行きつけの飲み屋で女将のシマから衝撃的な話を聞いた。この店で出している焼き鳥は法妙院で弔った犬の肉を使っているというのだ。春道はみの子が本堂を再建するために何でもやって金を稼いでいることを知り、止めさせようとしたが聞く耳を持たなかった。仕方なく檀家回りをするが不景気の影響で誰にも相手をされなかった。足を棒のようにして一日中歩いても成果が上がらずうなだれていると打鐘の音が聞こえてきた。目の前には松戸競輪があり、吸い込まれるように入り訳がわからないまま車券を買ったところ大穴を当てた。ちょっとした勘の働きと運で莫大な浄財を手にする方法を見つけた春道は毎日通うようになった。

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男はつらいよ 葛飾立志篇

  • posted at:2021-03-06
  • written by:砂月(すなつき)
おとこはつらいよかつしかりっしへん
松竹(大船撮影所)
配給:松竹
製作年:1975年
公開日:1975年12月27日 併映「正義だ!味方だ!全員集合!! 」
監督:山田洋次
製作:島津清 名島徹
企画:高島幸夫 小林俊一
原作:山田洋次
脚本:山田洋次 朝間義隆
撮影:高羽哲夫
美術:出川三男 佐藤公信
音楽:山本直純
録音:中村寛
調音:松本隆司
照明:青木好文
編集:石井巌
スチール:長谷川宗平
監督助手:五十嵐敬司
装置:小野里良
装飾:町田武
進行:玉生久宗
衣裳:松竹衣裳
現像:東京現像所
製作主任:内藤誠
主題歌:「男はつらいよ」渥美清
協力:ブルドックソース株式会社 柴又 神明会
出演:渥美清 倍賞千恵子 樫山文枝 下條正巳 三崎千恵子
アメリカンビスタ カラー 97分

葛飾柴又にある団子屋・とらやを修学旅行の女子高生が訪ねた。山形からやってきた彼女の目的は車寅次郎に会うことだったが、旅に出ているからいつ帰ってくるかわからないとつねが言うと女子高生は残念そうにうつむいた。そんな彼女にさくらはやさしく声を掛け、兄に会いにきた理由を尋ねた。彼女の名前は最上順子。毎年正月になると母親宛てに手紙が届き、その中に娘さんの学資の足しにと少額のお金が入っているのだという。寅次郎と母親との関係について尋ねると、順子は何故か口ごもった。するとそこに姿を見せたのはその寅次郎だった。店に入ってきた彼は順子の顔をしばらく眺めると、その面影から母である雪のことを思い出した。一方、顔を知らない順子がお父さんなのと尋ねると、さくらたちその言葉に驚いた。だが一番驚いたのは寅次郎だった。実の子を捨てたのではないかという疑惑が渦巻く中、寅次郎は雪に指一本触れたことがないこと、彼女が赤ん坊を背負っていたことを説明し無実を訴えた。その結果、その時の赤ん坊が順子であることがわかると皆、胸をなで下ろした。話をしていくうちに雪が亡くなったことを知った寅次郎は、別れ際に財布の中の有り金を全て渡し困ったことがあったらいつでもくるんだぞと元気付けた。

寅次郎が初めて雪と出会ったのは雪が降る寒い晩だった。何をやってもうまく行かず寒河江の街を無一文で歩いていた彼を空腹が襲い、矢も楯もたまらず駅前の食堂に飛び込んだ。そしてカバンと腕時計を差し出しこれで何かを食わせて欲しいと頭を下げると、女将の雪は困っているときはお互い様だと大盛の丼飯と湯気の立った豚汁にお新香を添えて出してくれたのだ。無我夢中でそれをかき込むうちに涙が止めどなく流れ、彼女が観音様のように思えたのだった。その時に雪の背中にいたのが順子だった。女手一つで娘を育てる雪の姿に感銘を受けた寅次郎は正月になるとお金を送るようになったのだ。その手紙の主が自分の父親であると16年間信じ続けた順子が訪ねてきたことに寅次郎は運命を感じていたが、その話を聞いた竜造がまともに結婚していたら同じくらいの娘がいたっておかしくないんだぞと言ったことでまた騒動が始まった。そして寅次郎は、だってしょうがねえじゃねえかと捨て台詞を吐き店を後にした。

屋台的映画館

黒い画集 第二話 寒流

  • posted at:2021-03-02
  • written by:砂月(すなつき)
くろいがしゅうだいにわかんりゅう
東宝
配給:東宝
製作年:1961年
公開日:1961年11月12日 併映「二人の息子」
監督:鈴木英夫
製作:三輪禮二
原作:松本清張
脚本:若尾徳平
撮影:逢沢譲
美術:河東安英
照明:猪原一郎
録音:保坂有明 下永尚
音楽:斎藤一郎
監督助手:梶田興治
編集:岩下広一
現像:キヌタ・ラボラトリー
製作担当者:井上卓之
出演:池部良 新珠三千代 平田昭彦 志村喬 丹波哲郎
シネマスコープ モノクロ 96分

安井銀行池袋支店の後任支店長を決める会議が本店の重役会議室で行われた。小西副頭取は従来より話が出ている田島を推していた。一方、急速に発展する池袋のような有望な地域で他の銀行と競争するにあたり、桑山常務は消極的な田島よりも誠実で積極的な貸付課長の沖野を推薦した。すると小西は最近課長になったばかりの経験が浅い沖野には荷が重すぎるとその意見を一蹴した。投票の結果、次期支店長に選ばれたのは沖野だった。

新任の挨拶回りで沖野が前任の田島と初めに向かったのは大口の取引先である料亭「比良野」だった。女将の前川奈美は三年前に亭主を亡くしたが、三十代という若さにも拘らず積極的に事業展開を行っていた。事業内容はしっかりとしており、一昨年に行った改築では七百万円を貸し付けたが、それも翌年の暮れには返済を終えていた。沖野は玄関で挨拶をすると先約があると言って早々に切り上げた。その先約とは桑山の遣いだった。桑山は情婦との関係を清算するために自ら出向くことはせず沖野に小切手を持たせたのだ。学校の後輩である沖野は支店長推薦の件もあり従うしかなかった。

ある日、奈美が銀行を訪れた。料亭増築の資金として必要となる一千万円の融資を申し込むためだった。後にその話を聞いた桑山は、立地条件が悪いにも拘らず比良野が繁盛していることを疑問視し、沖野に実際に行って様子を見るべきだとアドバイスした。その夜、比良野へ行った沖野は女中頭のお時から奈美の評判を聞き、この店は女将の器量で繁盛していることを確信した。翌日、不動産の価値が担保として申し分ないこと、官庁や大手筋の企業を得意先としており売掛金の回収がスムーズで経営状態に問題ないことを報告すると、君に確信があるのならやってみたまえと桑山はGOサインを出した。早速、沖野は稟議書を持って奈美の自宅を訪れ手続きを済ませた。それ以降、彼女は相談があるなどと沖野と会う機会を増やし、次第に二人は深い仲になっていった。奈美は度々結婚を口にするようになり、病弱の妻を抱える沖野の心は揺れ動いた。

屋台的映画館

相棒 劇場版

  • posted at:2021-02-28
  • written by:砂月(すなつき)
あいぼうげきじょうばん
「相棒 劇場版」パートナーズ(テレビ朝日=東映=トライサム=アミューズ=小学館=朝日放送=メ~テレ)
配給:東映
製作年:2008年
公開日:2008年5月1日
監督:和泉聖治
製作総指揮:君和田正夫
制作統括:早河洋 坂上順
製作:上松恒夫 鈴木武幸 水谷晴夫 畠中達郎 亀井修 水野文英 吉田鏡
エグゼクティブプロデューサー:亀山慶二
企画:梅澤道彦 中曽根千治
プロデューサー:松本基弘 上田めぐみ 香月純一 西平敦郎
脚本:戸田山雅司
音楽:池頼広
撮影:会田正裕
照明:大久保武志
編集:只野信也
録音:舛森強
美術:伊藤茂 近藤成之
装飾:神戸信次 田村康利
助監督:東伸児
制作主任:今村勝範
製作プロダクション:東映東京撮影所 東映テレビ・プロダクション
出演:水谷豊 寺脇康文 鈴木砂羽 高樹沙耶 川原和久
アメリカンビスタ カラー 117分

元ニュースキャスター・仲島孝臣の遺体が東京・多摩のテレビ塔に吊るされた状態で発見された。事件現場には「f6」という謎の記号が残されていた。翌朝、警視庁特命係の杉下右京警部と相棒の亀山薫巡査部長が部署のテレビでその事件のニュースを見ていると内村完爾刑事部長に呼び出された。参議院議員・片山雛子の事務所に小包爆弾が届き開封した秘書が左手を負傷して病院に搬送されたのだ。殺傷能力が低く軽傷で済んだが、警察庁警備局参事官の棟田はそれが警告を目的としたものだと考えていた。最近、左翼過激派「赤いカナリア」からの脅迫文が事務所や議員の周辺に送りつけられていた。片山議員が所属する平成未来派が提出した改正通信傍受法案は左翼過激派を一掃する効果が期待されており、その法案の成立を阻止するのが狙いだと考えられた。片山議員は午後、空港へ向かうことになっており、内村は窓際部署の二人に警護任務の増援に加わることを命じられたのだった。

警護任務とはいうものの杉下たちが乗る公用車に片山議員の姿はなかった。彼らは囮であり、片山議員と面識があるからというのが表面上の理由だった。公用車が空港近くの路地に入ると建築資材が道路を塞ぎ銃声のような音が鳴り響いた。それが爆竹の音だと気づいた杉下が指差した先にはダイナマイトが乗ったラジコンカーがあり、亀山はそれを追い掛けると上空に放り投げた。間一髪でラジコンカーは爆発したがケガ人はなかった。現場に残った二人が調査を行っていたところ「d4」と書かれた記号が見つかった。鑑識を行った米沢守刑事部長によると今回の事件に使用された物と過去に赤いカナリアが使用した爆発物の成分は一致しなかったという。

翌日、亀山は仲島がキャスターを務めていた番組の関係者から、会わせて欲しいという若い女性からの電話を何度か受けたという証言を得た。そのことを杉下に話していると捜査一課経理担当の陣川公平が大変な情報を手に入れたと息を切らせてやってきた。仲島の死は予告殺人だというのだ。法定関係のコミュニティーサイトにアクセスしたところ、彼の批評が書かれた掲示板があった。そこでは最終的に評決がなされ、有罪が無罪を上回ると処刑リストに掲載されるのだ。仲島の場合、理由は「電波を私物化した罪により死刑」、方法は「テレビアンテナで絞首刑」と書かれていた。リストの中には片山議員の名前もあり、「相次ぐ爆弾発言で政治を茶番にした罪で死刑」、「自らの爆弾発言で誤爆死」と書かれてあった。引き続き殺人が起こることを危惧した杉下はサイトの所有者を突き止めることにした。

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男はつらいよ 寅次郎相合い傘

  • posted at:2021-02-26
  • written by:砂月(すなつき)
おとこはつらいよとらじろうあいあいがさ
松竹(大船撮影所)
配給:松竹
製作年:1975年
公開日:1975年8月2日 併映「ザ・ドリフターズのカモだ!!御用だ!! 」
監督:山田洋次
製作:島津清
企画:高島幸夫 小林俊一
原作:山田洋次
脚本:山田洋次 朝間義隆
撮影:高羽哲夫
美術:佐藤公信
音楽:山本直純
録音:中村寛
調音:松本隆司
照明:青木好文
編集:石井巌
スチール:長谷川宗平
監督助手:五十嵐敬司
装置:小野里良
装飾:町田武
進行:玉生久宗
衣裳:松竹衣裳
現像:東京現像所
製作主任:内藤誠
主題歌:「男はつらいよ」渥美清
協力:柴又 神明会
出演:渥美清 倍賞千恵子 浅丘ルリ子 下條正巳 前田吟
アメリカンビスタ カラー 91分

葛飾柴又にある団子屋とらやでは来日しているイギリスのエリザベス女王の話題で持ち切りだった。テレビを見ていたつねが、夫のフィリップ殿下のおとなしそうなところが博に似ているというと、油を売りにきていた朝日印刷所の桂梅太郎社長がそれならば妻のさくらは女王様だと大笑いした。それを聞いた竜造は全国を放浪する「プリンス」のことがとても気になった。甥の車寅次郎はいつもならこの時期になると帰ってくるのだが、今年はまだ姿を見せていないのだ。どうしたんだろうと噂をしているところに女性が訪ねてきたためさくらが接客に出ると、顔を見るなり歓声をあげた。その女性は2年前に寅次郎を通じて知り合ったドサ周り歌手の松岡リリーだった。さくらたちが近況を尋ねると、彼女はうつむきながら「私、別れちゃったの」と寂しげに言った。寿司屋の主人・石田良吉と結婚したリリーだったが、堅気の生活には馴染めなかったのだ。彼女は旅の途中でとらやのことが懐かしくなり立ち寄ったのだが、寅次郎がいないことを少しがっかりしながら列車の時間があると言って足早に去って行った。その慌ただしい様子に竜造は自分たちの不用意な言葉が彼女を傷つけたのではないかと心配した。その夜、とらやに寅次郎から電話が掛かった。旅先で出会った兵頭という男は俺と一緒に旅をしているから安心して欲しいと家族に伝えてくれというのだ。さくらは彼がどのような人物なのかと聞き返すが電話が切れてしまい、訳がわからないまま先方へ電話を掛けることになった。ただ寅次郎が元気なのは確かだった。

青森市の神社の夏祭りで易断本を啖呵売する寅次郎。一仕事終えた彼が港町の宿屋に戻るとまだツレの男がいた。その男は兵頭謙次郎といい、八戸の駅のホームでぼーっと立っていた彼にお前自殺する気かと寅次郎が声を掛けるとそのままついてきたのだった。二人で旅を初めてもう一週間経つが何故か家族と連絡を取ろうとしなかった。兵頭は人生に物足りなさを感じていたが寅次郎と旅をすることで今まで感じたことのなかった人間の愛情への喜びやちょっとしたことでも感動する気づきを得たのだった。そして今までの縛られた生活から解放されたことで、例え金がなくても駅のベンチで寝ることだって出来るとさえ考えるようになった。その夜、寅次郎と兵頭が屋台でラーメンをすすっていると女性が客としてやってきた。その声に気づいた寅次郎がふと目をやるとそこにはリリーがいた。喜び盛り上がる二人がただの関係ではないことがわかると兵頭は静かに席を外そうとした。だが寅次郎たちは彼を引き留め細やかな宴会を始めた。

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