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宇宙戦艦ヤマト 完結編

  • posted at:2021-05-01
  • written by:砂月(すなつき)
うちゅうせんかんやまとかんけつへん
ウェスト・ケープ・コーポレーション
配給:東映洋画
製作年:1983年
公開日:1983年3月19日
監督:勝間田具治 西崎義展
製作総指揮:西崎義展
総監修:舛田利雄
総設定:松本零士
監修:松本零士
原作:松本零士 西崎義展
脚本:山本英明 笠原和夫 山本暎一 舛田利雄 西崎義展
チーフ・ディレクター:白土武
絵コンテ:白土武 遠藤政治
音楽:宮川泰 羽田健太郎
作詞:阿久悠
SF設定:豊田有恒
設定デザイン:辻忠直
総作画監督:宇田川一彦
美術監督:勝又激
撮影監督:清水政夫
編集:千蔵豊
録音:林昌平
音響監督:田代敦己
音響効果:柏原満 伊藤克己
アソシエイト・プロデューサー:山本暎一
制作担当:佐伯雅久
エフェクト・ディレクター:高山秀樹
メカニック・デザイナー:辻忠直 板橋克己 出渕裕
キャラクター・デザイナー:宇田川一彦 高橋信也
文芸:横山和夫
設定:山木泰人 小塚憲夫
音響:小山光弘
戦略・設定制作:鶴見和一
助監督:棚橋一徳
制作進行主任:関口孝治
作画監督:高橋信也 金田伊功 角田紘一
録音スタジオ:アバコ クリエイティブ スタジオ
編集:タバック
現像:東映化学
スキャニメイト:東洋現像所ビデオセンター
演技事務:青ニプロ
主題歌:「古代(おれ)とヤマト」ささきいさお
・・・:「ラブ・シュープリーム 至上の愛」八神純子
挿入歌:「明日に架ける虹」トランザム 桑江知子
・・・:「二つの愛」桑江知子
・・・:「宇宙戦艦ヤマト’83」ささきいさお
声の出演:富山敬 麻上洋子 納谷悟朗 ささきいさお 仲村秀生
アメリカンビスタ カラー 150分

地球が誕生してまだ間がない40数億年の昔、遥か銀河系大星雲の外から回遊してきた水の惑星・アクエリアスがまだ命を持たぬ地球のすぐ傍を通った。引力の干渉によって水がもたらされた地球には生命が芽吹き、進化し、人類を誕生させたが、そのアクエリアスが緩やかで広大な楕円軌道を描きながら再び地球に接近しつつあった。西暦2203年、地球はまだこの事実を知らなかった。同じ頃、銀河系と異次元から現れた別の銀河系星雲が交差し、その影響により核恒星系付近で多くの星々の衝突が起こった。そのことにより地球防衛軍司令部は艦長の古代進が指揮する宇宙戦艦ヤマトを調査のために核恒星系へ派遣した。核恒星系内にある友好国「ガルマン・ガミラス帝国」へ急行するが、本星は甚大な被害を受けデスラー総統とも連絡は取れなかった。宿敵であり真の友人であったデスラーを失ったことを古代は悲しみ簡素な宇宙葬を行ったが、まだ宇宙災害は治まっていなかった。大爆発が襲う中、古代は航海班長の島大介に命じヤマトを目標を定めぬまま無差別ワープをさせた。

危機から脱出したヤマトだったが何処にいるのか予測がつかなかった。だが前方に惑星が見えたためそこから位置を割り出そうとしたが、モニターの映像は様子がおかしかった。惑星全体が洪水に見舞われ高層の建物に逃げ込んだ人々が慌てふためいているのだ。古代は救助を命じるが、それが仇となり乗組員に犠牲者を出す結果となった。惑星から救い出せたのは少年一人だった。そこへ回遊惑星を発見したという連絡がレーダー室から入り、データを分析した結果、水惑星が光速の2分の1のスピードで太陽系方面へ進んでいることがわかった。それが地球へ接近した場合、あの惑星と同じ運命を辿るのだ。ヤマトは地球への報告を終えると帰還の途に就いたが、彼らの前に現れたのはディンギル帝国軍の艦隊だった。目の前に現れた者は全て敵だと考えるルガール・ド・ザール将軍は国籍不明と判断したヤマトをハイパー放射ミサイルで攻撃した。そのミサイルには放射性物質が搭載されており、被弾直後そのことにいち早く気づいた副長の真田志郎は乗組員全員に宇宙服の着用を命じた。だがミサイルは第一艦橋を直撃し、航行不能に陥ったヤマトは付近にあった惑星に墜落して行った。

古代たちが救出に向かった惑星はディンギル帝国の母星だった。アクエリアスから大量の水が流れ込んだことで、特殊な組成で出来たディンギル星はその後大爆発を起こして消滅したのだ。帰る星を失ったルガール大神官大総統は、3千光年先にある太陽系の惑星・地球を移住先に決めた。

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宇宙からのメッセージ

  • posted at:2021-01-04
  • written by:砂月(すなつき)
うちゅうからのめっせーじ
東映=東北新社=東映太秦映画村
配給:東映
製作年:1978年
公開日:1978年4月29日
監督:深作欣二
製作:植村伴次郎 渡辺亮徳 高岩淡 平山亨 岡田裕介 サイモン・ツェー 杉本直幸
プロデューサー:伊藤彰將
原案:石森章太郎 野田昌宏 深作欣二 松田寛夫
脚本:松田寛夫
撮影:中島徹
特殊撮影:高梨曻
音楽:森岡賢一郎
音楽プロデューサー:木村英俊
美術:三上陸男
照明:若木得二
録音:荒川輝彦
編集:市田勇
助監督:俵坂昭康
記録:田中美佐江 リン・フィンク
装置:稲田源兵衛
装飾:西田忠男
美粧・結髪:東和美粧
擬斗:菅原俊夫
衣裳:高安彦司
スチール:鈴木和生
演技事務:西秋節生
宣伝担当:福永邦明 田中憲吾
振付:小井戸秀宅 辻村功
進行主任:長岡功
写真提供:緑川洋一
ロールス・ロイス提供:東原利夫
特撮監督:矢島信男
特撮スタッフ・操演効果:鈴木昶
特撮スタッフ・美術:大沢哲三
特撮スタッフ・照明:大西美津男
特撮スタッフ・記録:黒川京子
特撮スタッフ・助監督:松本清孝
特撮スタッフ・移動効果:小西浩
特撮スタッフ・特殊効果:久米功
特撮スタッフ・視覚効果:中野稔
特撮スタッフ・光学撮影:デン・フィルム・エフェクト
特撮スタッフ・装置:吉岡茂一
タイトルバック・イラスト:渡辺善夫
メカ・デザイン:石森章太郎 ひおあきら 青柳誠
製作担当:中村義幸
出演:ビック・モロー 志穂美悦子 フィリップ・カズノフ ペギー・リー・ブレナン 真田広之
アメリカンビスタ カラー 105分

アンドロメダ星雲にある惑星ジルーシアはかつては生命に満ち溢れていたが、宇宙の侵略者・ガバナス星人によって要塞化された。ジルーシア人の大酋長・キドは救いの奇跡となる勇者を求めて8つの聖なるリアベの実を宇宙に放った。彼は孫娘のエメラリーダにそれを追うように命じ、護衛として名乗りをあげた戦士のウロッコとともに洞窟に隠された宇宙帆船プレアスターに乗り組んだ。二人は要塞からの攻撃を掻い潜って脱出するが、ガバナス帝国皇帝・ロクセイア12世は巨大戦艦グラン・ガバナスで後を追った。

地球人類は資源と植民地を求めて銀河系内にある諸惑星に進出していた。その中の一つである惑星ミラゼリアの付近では宇宙暴走族が出没していた。宇宙戦闘機ギャラクシーランナーを操るシロー・ホンゴーとコメットファイヤーのアロン・ソーラーは地球からの宇宙艇を見つけると進路妨害をしておちょくった。すると間もなくして船長からの通報を受けた宇宙ポリスが現れ二機の追跡を始めたのだった。シローとアロンはフォックス巡査を挑発しミラゼリアの地上すれすれで回避するチキンランでの勝負を挑んだ。ポリス機は地面との衝突は免れたが狭い谷での勝負で機体を破損しリタイアした。一方、何とか逃げ延びたシローたちだったが、二機ともにエンジントラブルに見舞われ不時着を余儀なくされた。慌てて飛び出したシローが消火活動を行いエンジンルームを開けたところ、中からリアベの実が見つかった。それはアロンも同じだった。

ミラゼリア方面軍司令部のガルダ司令官は忠実だったロボット・ベバ1号の死を悼みロケットに積んで宇宙葬を行った。そのことが連邦軍司令官の逆鱗に触れ即刻解任された。元々堕落し切った軍に未練などないガルダはベバ2号を連れて街に繰り出すとナイトクラブで酒を次々と呷った。ベバが心配する中、バーテンダーから渡されたグラスの中にはリアベの実が入っていた。その頃、厨房ではシローとアロン、そしてチンピラのジャックが震えていた。愛機の修理代としてシローたちはジャックから金貨30枚を借りたのだが、それは彼のボスであるビッグサムの金貨を黙って又貸ししたものだった。シローたちはアルバイトをしてゆっくり返せばいいと聞いていたのだが、ビッグサムがギャンブルで大損したことで話が変わったのだ。すぐにでも返さなければ地獄を見ることになるが、金貨は既に戦闘機のパーツに。三人が頭を抱えているところにやってきたのは富豪令嬢のメイア・ロングだった。シローたちがからかったのは彼女の宇宙艇で、友人との意外な場所での再会に感激し二人の行方を捜していたのだ。渡りに船とばかりにアロンが借金を願い出るとメイアは条件付きでOKした。その条件とは「蛍狩り」につき合うことだった。背に腹は代えられず逮捕覚悟で立ち入り禁止区域に漂う宇宙蛍を捕まえに行くと、そこで偶然プレアスターと遭遇した。

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宇宙戦艦ヤマト 新たなる旅立ち

  • posted at:2020-04-03
  • written by:砂月(すなつき)
うちゅうせんかんやまとあらたなるたびだち
オフィスアカデミー
配給:東映洋画
製作年:1981年
公開日:1981年3月14日 併映「ヤマトよ永遠に 」
総監督:西崎義展
演出:田口勝彦
監修:舛田利雄
企画:西崎義展
製作総指揮:西崎義展
総設定:松本零士
総監修:松本零士
原案:西崎義展
脚本:山本英明
SF原案:豊田有恒
チーフディレクター:白土武
総作画監督:小泉謙三
音楽:宮川泰
絵コンテ:安彦良和
作詞:阿久悠
助監督:棚橋一徳
テクニカルディレクター:石黒昇
作画監督:宇田川一彦
動画作監:清島孝一郎
メカ設定:中村光毅 板橋克巳
美術監督:勝又激
音響監督:田代敦巳
音響効果:柏原満
録音:千蔵豊
演出助手:安濃高志
文芸制作:山田哲久
音響制作:本多保則
制作担当:広岡修
主題歌:「新たなる旅立ち」ささきいさお フィーリング・フリー
・・・:「サーシャわが愛」島倉千代子 フィーリング・フリー
録音所:アバコスタジオ
現像所:東京現像所
声の出演:富山敬 麻上洋子 仲村秀生 青野武 永井一郎
スタンダード カラー 95分

西暦2201年、宇宙の邪悪な侵略者・白色彗星帝国との戦闘後、大ガミラスの再建とガミラス民族の復興を目指すデスラー総統はガミラス残存艦隊を率いて新たな惑星を捜す旅に出ようとしていた。新天地への大航海前に、寿命を迎えようとする母星・ガミラスを一目見ようと立ち寄ったところ、見慣れない船団が無断で鉱石のガミラシウムを採掘していたのだ。母なる星を傷つけるとは許せぬ。激怒したデスラーは艦隊に一斉射撃を命じ船団は全滅した。ところがそのときに生じた爆発がきっかけとなりガミラス星は崩壊。落胆、後悔するデスラーだったが、彼の目の前では新たな事象が発生していた。連星を構成していたガミラス星が崩壊したことで引力のバランスを失ったイスカンダル星が漂流を始めたのだ。好意を寄せる王女・スターシャの身を案じたデスラーは追跡を開始した。彼の他にもイスカンダル星に注視している者がいた。それはガミラス星で採掘を行っていた暗黒星団帝国だった。ガミラス星でしか採取出来ないガミラシウムとイスカンダル星でしか採取出来ないイスカンダリウムを手に入れることが出来れば現在遂行中の宇宙間戦争を優位に進められる貴重なエネルギー資源だからだ。マゼラン方面軍・メルダーズ総司令はデーダー第1艦隊司令に追跡を命じた。

白色彗星帝国との激戦の末に辛くも勝利を収めた宇宙戦艦ヤマトは傷ついた姿で地球に帰還した。そのヤマトは急ピッチで修復され、復帰した乗員たちの他に新人も加わったことで訓練が出来るまでに準備が整っていた。火星付近でのテスト航海が行われる中、デスラーから入電があった。コントロールを失ったイスカンダル星が速度限界点に達しワープしたというのだ。艦長代理の古代進は悩んだ。彼の兄はスターシャの夫・守だが私情で動くわけには行かないからだ。だが地球防衛軍司令長官は救援を命じた。地球を救ったスターシャに恩を返すべきだと。

重力星雲を前にイスカンダル星は動きを止めた。デスラーは交信を行い、着陸時に戦艦へ乗り移るようスターシャに促すが、デーダー艦隊の奇襲によりガミラス艦隊は大打撃を受けた。デーダーはイスカンダルの大宮殿にも容赦なく総攻撃を仕掛け、室内から様子を見ていた守は覚悟を決めた。そのとき上空に現れたのは進が率いるコスモタイガー隊だった。

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運が良けりゃ

  • posted at:2019-12-08
  • written by:砂月(すなつき)
うんがよけりゃ
松竹(大船撮影所)
配給:松竹
製作年:1966年
公開日:1966年3月19日 併映「涙の連絡船」
監督:山田洋次
製作:脇田茂
監修:安藤鶴夫
原案:山内久
脚本:山田洋次
美術:佐藤公信
撮影:高羽哲夫
照明:津吹正
編集:浦岡敬一
録音:小尾幸魚
調音:佐藤広文
音楽:山本直純
監督助手:大嶺俊順
進行:堀田章
衣裳デザイン:柳生悦子
現像:東洋現像所
製作主任:沼尾鈞
出演:ハナ肇 犬塚弘 倍賞千恵子 藤田まこと 桜井センリ
シネマスコープ カラー 91分

江戸天明の春。飢饉は全国にあいつぎ、物価の上昇は天井知らず。悪徳役人は天下にはびこり、民の暮らしはまことに苦しかった。ある夜、向島山谷堀の裏長屋に住む大工の熊さんと相棒のハっつあんが花札賭博で大損し身包みはがされて帰ってくると、クズ屋の久六が今にも井戸に飛び込んで命を絶とうとしていた。二人に気づいた久六は娘を身売りするような甲斐性のない親だから止めないでくれと懇願したが、熊さんは止めやしないから早くやれと手頃な石を渡した。そして手助けしてやろうと二人で背中を押すと、久六は踏ん張って「人殺し!」と叫んだ。するとその声を聞いた久六の女房が飛んできてうちのひとに何するんだとすごい剣幕で怒鳴りつけたのだ。熊さんは娘を売るたびに身投げした日にゃ命がいくつあっても足りねえや捨て台詞を残して去ったが、それは乱暴だが彼らなりの人助けの手段だった。

雨が降ると大工は仕事が休みになる。そうなると長屋の男たちは熊さんの部屋に集まるのが常だった。金がないからやることもなし。だが熊さんは千住辺りに繰り出して金を使わずにどんちゃん騒ぎをする算段を朝から考えていたのだ。それには目つきが良くて何処となく鷹揚で金をしこたま持っているような人物が必要だったが、たまたま近江屋の若旦那七三郎が訪ねてきたことで役者が揃った。早速着替えて遊郭へ乗り込むと飲めや唄えで遊びつくした。

翌朝、ツケ馬の番頭がやってくると棟梁の七三郎が財布を出しなと手を出した。するとハっつあんはないと言った。棟梁のかみさんから金がいることがあるなら取りにおいでと言われていたが、飲み過ぎてつい忘れていたのだ。熊さんはそんなハっつあんを懲らしめようとしたが、それを止めた七三郎は番頭に馬一頭と若い者を寄越して欲しいと言った。そうすれば家に着いたときに勘定を払うと言ったが番頭は納得しなかった。そこへ熊さんが助け舟を出し、棟梁のかみさんは遣いにきた人には小遣いだけでなく、時には帯の一本や羽織の一枚でも手土産として持たせるわかったお人だと言った。すると七三郎がヤケを起こし、どうせ三百両の建て替えの仕事を逃すんだったらもう一晩騒ごうじゃねえかと怒鳴った。その様子に困惑した番頭は自分がお供をすると言った。そうなると話が早い。帰り支度を手早く済ますと一行は番頭を引き連れて遊郭を後にした。父親が米相場で大儲けした金を女郎に貸し付ける阿漕な高利貸しを番頭がしていることを道中に知った熊さんは、バチが当たっても仕方ねえやとほくそ笑んだ。

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ウール100%

  • posted at:2019-09-07
  • written by:砂月(すなつき)
うーるひゃくぱーせんと
「WOOL 100%」製作委員会(クロックワークス=ピラミッドフィルム=双日)
配給:クロックワークス
製作年:2005年
公開日:2006年10月28日
監督:富永まい
エグゼクティブプロデューサー:酒匂暢彦 高橋増夫 松江正俊
プロデューサー:遊佐和彦 原田雅弘
ラインプロデューサー:関友彦
脚本:富永まい
撮影監督:瀬野敏
美術:都築雄二
音楽:矢口博康
監督補:谷口正行
VE:仲野喜久治
録音:前田一穂
編集:長嶋勝一
アニメーション制作:ROBOT
助監督:市原大地
照明:尾崎智治
装飾:柴田博英
美術制作:高橋徹
スタイリスト:三田真一
着物制作:田島貴代子
ヘアメイクディレクター:小西神士
編み物監修:八田幸子
制作主任:稲垣清隆
制作進行:落合洋介 谷岡貴雄
出演:岸田今日子 吉行和子 北浦愛 ティアラ 兼田カロリナ
アメリカンビスタ カラー 99分

今は昔か、あるところに梅と亀という老いた姉妹が住んでいた。二人は長い間、古い屋敷に暮らしてきたが、訪ねてくるものは誰もおらず、誰にも会いたいとも思わなかった。姉妹は毎日一度だけ街に出掛けるが、その度に何かしら拾って帰ってきた。街にはあまりにもたくさんの物が捨てられているため、何時だって気に入った「ヒロイモノ」を見つけることが出来るのだ。二人はヒロイモノをとても大切にし、夜はそれらに囲まれることで安心して眠ることが出来た。そんな夜を何千回と迎えたが、聞こえないくらいの小さな音が耳の奥に流れていることを姉妹は気づいていなかった。そしてその流れの中に、長い間拾われることを待っている誰かがいることを。

毎朝、姉妹はおせっかいな幼稚園の先生と園児たちによる合唱で起こされる。朝食を取り、その日の気分に合わせてヒロイモノの杖や靴などをコーディネートすると、いつものように街へ出掛けるのだ。そしてゴミ捨て場から目ぼしい物を見つけると満面の笑みでそれを眺め屋敷に持って帰った。だがその日は川原へ向かいもう一苦労することにしたのだが、その甲斐あって赤ちゃん用の玩具を見つけることが出来た。思わぬ収穫に満足し帰ろうとした矢先、二人は足を取られて草むらに倒れ込んだ。姉妹の足には毛糸が絡んでいたのだ。長く伸びる毛糸を辿って行くと、そこには真っ赤な毛糸の玉が山のように盛られたかごが置いてあったため、二人はそれを持って帰ることにした。

帰宅した姉妹はまずヒロイモノをきれいに拭き、スケッチブックにその絵を描いた。今日の収穫は「おきあがり小法師」、美容機器の「ビューテーセブン」、そして「真っ赤な毛糸玉」だった。その日の深夜、物音に気づき恐る恐る姉妹が覗くと居間に灯りが点いていた。そこでは少女が毛糸を使って一心不乱にセーターを編んでいた。運ぶときに転がり落ちた毛糸玉の糸を辿って屋敷にやってきたのだ。彼女はあっという間にセーターを完成させるとすぐに着込み網目のチェックを始めた。ところが気に入らない箇所が見つかり頭を抱えると「あみなおしじゃあ」と叫んだのだった。その音量は耳を塞がなければならないほどの驚くべきもので、止めると同時に彼女は裾をほどくとまた編み始めた。ところが突然倒れるように眠ってしまったため、姉妹も寝ることにした。翌朝、姉妹は眠ったままの少女を置き去りにしてヒロイモノ探しに出掛けると、いつものように収穫を手にして戻ってきた。冷蔵庫の中は荒らされ食器は散らかされていたが、厄介者がいなくなったと安堵のため息をついた。だが再び現れて叫びながら屋敷中を駆け回るため頭を抱えた。お腹がいっぱいになれば眠たくなるはずと食事を与えることにしたのだが、少女は逆に編み進めるスピードを速めたのだった。次なる手段として少女を布団に寝かせて絵本を読み聞かせようとしたのだが、自分たちが先に寝入ってしまった。

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