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ネコナデ

  • posted at:2020-03-12
  • written by:砂月(すなつき)
ねこなで
「ネコナデ」製作委員会(AMGエンタテインメント=アミューズメントメディア総合学院=tvk=テレ玉=チバテレビ=三重テレビ=KBS京都=サンテレビ=NTTぷらら=スタジオビコロール)
配給:AMGエンタテインメント
製作年:2008年
公開日:2008年6月28日
監督:大森美香
製作:永森裕二 間宮俊二 関佳史 松本宏 青柳洋治 波多美由紀 細井俊介 江副純夫 小川貴史 陣汰朗
プロデューサー:平体雄二
ラインプロデューサー:宮田幸太郎
原案:永森裕二
脚本:永森裕二
撮影:近藤龍人
照明:藤井勇
録音:古谷正志
美術:高尾研吏
編集:菊井貴繁
スクリプター:田口良子
ヘアメイク:岩本みちる
スタイリスト:百井豊 春原香代
助監督:北川博康
制作主任:稲垣隆治 武藤貴紀
進行主任:岩川悠生 佐野浩章
アシスタントプロデューサー:飯塚達介
プロダクションマネージメント:樋口哲史
音楽:遠藤浩二
主題歌:「頼りない天使」つじあやの
製作プロダクション:スタジオブルー
企画:AMGエンタテインメント
出演:大杉漣 青山倫子 黒川芽以 入山法子 立花彩野
アメリカンビスタ カラー 85分

IT企業「デジタルドラゴン」の人事部長・鬼塚太郎は辰美孝四郎社長の方針に従って粛々とリストラを進めていた。対象となるのは中堅社員で、相手の素性を調べ上げたうえで反論出来ない理由で追い込むのだ。そのやり方は冷酷そのもので社員たちからは「鬼」と恐れられていた。だがそこからくるストレスは相当なもので、胃薬を手放すことは出来ない生活となっていた。ある夜、帰路の途中にある公園のベンチでいつものように胃薬をコーヒーで流し込んでいると、付近で若いカップルのはしゃぐ声が聞こえてきた。その足元には段ボール箱があり四匹の子猫が鳴いていた。彼らはそのうちの一匹を抱き上げて飼おうかと相談していたのだが、どうやらペット禁止のアパートに住んでいるらしいのだ。飼う気もない猫をおもちゃのように扱うカップルにイラッとした鬼塚は責任が持てないのならやめなさいと注意した。すると男の方がキレ気味に責任持って飼いますよと言い、あなたも一匹くらい救ってあげたらどうですかと続けた。その迫力に言葉を詰まらせている間にカップルは帰って行き、鬼塚は無言で段ボール箱を見つめた。

人事部が第二新卒に対するの研修の準備を行っている頃、辰美のもとに複数の陳情書が届いていた。そこには誹謗中傷を繰り返して評価する鬼塚こそ会社の健全経営に多大な影響を与える人物であり解雇対象となるべき人物だと書かれていた。その文書を手にした辰美はご満悦だった。何故なら陳情書がくればくる程リストラがうまく行っている証拠だからだ。彼は効率良い経営を行うために中堅社員の首を切り、その代わりに一度就職した後に何らかの理由で退職した若い求職者を入社させた。新卒者と比べて最低限のビジネスマナーを体得しているため、会社としてもその方が扱いやすいのだ。そして頃合いを見て効率良く人員整理を行った。研修が始まると鬼塚は所謂「バツイチ」たちに対し新たにビジネスマナーを叩き込んだ。新入社員たちは研修の間テレビのない寮で生活することになっているが、厳しい訓練が二週間も続くことを考えると皆心が暗くなった。そんな中、田中亜里沙は翌日行われる工場研修の引率の役目を人事部員の君島凛子から任せられた。何故自分が。その疑問を率直に投げ掛けると、凛子は鬼塚の指示だと言った。思い当たる節はあった。研修の説明の間、彼女は鬼塚をずっと睨みつけていたからだ。

仕事の帰り、鬼塚はいつものように自動販売機でコーヒーを買うと公園のベンチで一息ついていた。ふと子猫のことを思い出した彼はあの場所へ歩いて行き、段ボール箱が無くなっていたことできっと誰かに拾われたんだろうと安堵のため息をついた。ところが小さな鳴き声がしたため足元を見ると一匹の子猫がつぶらな瞳で見つめていたのだ。思わず抱いて家に連れ帰ったが、そのことを家族には言い出せなかった。妻・静子、小学生の長女・真由と三人暮らしの鬼塚は威厳のある父親として弱みを見せられないのだ。だがこのまま隠し通せるとも思えず、一晩考え抜いた末に寮の空き部屋でしばらく飼うことにした。

屋台的映画館
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悪女かまきり

  • posted at:2020-03-07
  • written by:砂月(すなつき)
あくじょかまきり
東映(東京撮影所)
配給:東映
製作年:1984年
公開日:1984年4月8日 併映「セカンド・ラブ」
監督:梶間俊一
企画:伊藤源郎 瀬戸恒雄
脚本:内藤誠 梶間俊一
撮影:奥村正祐
録音:林鉱一
照明:梅谷茂
美術:今村力
編集:戸田健夫
助監督:岡田敏夫
音響効果:原尚
記録:宮本衣子
製作調整:山田光男
演技事務:石原啓二
装置:浜中一文
装飾:三谷巌
背景:植田義明
美粧:沢辺満代
衣裳:山内三七子
進行主任:河野正俊
宣伝:吉田達 荒井一弥 野口敦男 清水一美
スチール:加藤光男
車人形:西川古柳
現像:東映化学
音楽監督:菊池俊輔
挿入歌:「悪女の季節」五月みどり
・・・:「横浜ホンキートンクブルー」石黒ケイ&WISH
協力:大関早苗美容室 (株)佐藤貴金属商店 東映美術センター
衣裳協力:ミレーヌ・友田
出演:五月みどり 速水亮 豊田真子 奈美悦子 日向明子
アメリカンビスタ カラー 84分

八丈島に接近していた台風13号は夜半に神奈川県に上陸し北上した。翌朝、西伊豆海岸にはその時に遭難したと思われる二人が打ち上げられた。一人は藤村真沙子という女性で一命を取り留めたが、もう一人の伊吹和夫は既に死んでいた。真沙子は横浜の武智美容室に勤める美容師だったが、自分のことをしゃべらないため同僚たちは彼女のことを何も知らなかった。ただ常連客の和夫と親しかったことを除いて。週刊誌が事件を面白おかしく書き立てる中、捜査を行う刑事の小林六助は事件解明の糸口を探っていた。勤務先の物産会社から5千万円を横領した和夫は横浜で8百万円の遊興費を、油壷のヨットハウスで1千2百万円のヨットを購入したことまではわかっていたが、残りの3千万円が不明となっていた。そこで小林は真沙子を喫茶店に呼び出しさりげなく聞き出そうとするが知らないの一点張りだった。このままで時間の無駄だと感じた小林は本来の目的である女子高生をテーブルに招いた。彼女は和夫の妹のかおるで、兄が真沙子を愛していたことは彼の日記を読んで知っていた。だが一人だけ無事に生還出来たことがどうしても信じられなかった。

一年後、真沙子は独立して美容室を開店させた。それを知った小林は開店祝いを持って訪ねたのだが、そこでかおるが働いていることに驚いたのだった。真沙子は兄を失ったかおるを引き取り、二階に住み込ませるだけでなく国家試験を受けさせるために自身の店で働かせていたのだ。だが小林が知りたいのはそのことではなかった。天宝堂宝石店の脱税事件を調べていた彼は真沙子が半年ほど前にエメラルドの指輪を3千万円で処分したことを突き止めた。そのことを話すと真沙子はそれを店の開店資金に充てたと説明したが、それをいつ何処で手に入れたのかを聞き出そうとすると真沙子は向きになってそれを拒んだ。そして人に言えない苦労をして買ったものだと弁解したが、小林はその言葉を疑った。

真沙子には堂島太一という不動産会社社長のパトロンがいた。堂島は山中湖畔にある別荘を彼女に与えることにしたが、それだけでは真沙子は満足しなかった。例えば堂島が死んだ場合、鎌倉に住む妻には20億円の遺産が入る。それに比べて真沙子はただの遊び相手だ。くやしいわと不平を漏らすと、堂島は愛の証として真沙子名義の生命保険に入ることにした。

屋台的映画館

必殺4 恨みはらします

  • posted at:2020-03-03
  • written by:砂月(すなつき)
ひっさつふぉーうらみはらします
松竹=朝日放送
配給:松竹
製作年:1987年
公開日:1987年6月6日
監督:深作欣二
制作:山内久司 櫻井洋三
脚本:野上龍雄 深作欣二 中原朗
音楽:平尾昌晃
撮影:石原興
照明:中島利男
美術:太田誠一
録音:広瀬浩一
調音:鈴木信一
編集:園井弘一
記録:野崎八重子
装飾:玉井憲一
スチール:長谷川宗平
進行:鈴木政喜 西村維樹
演技事務:木辻竜三
監督助手:原田真治
照明助手:中山利夫
撮影助手:安田雅彦
美術助手:家木一実 西村伊三男
編集助手:関谷憲治
録音助手:山本研二
効果:竹本洋二
殺陣:菅原俊夫 楠本栄一
現像:IMAGICA
装置:新映美術工芸
美装:八木かつら
衣裳:松竹衣裳
小道具:高津商会
製作主任:高坂光幸
監督補:津島勝
助監督:原田徹
題字:糸見溪南
製作協力:ジャパンアクションクラブ
独楽指導:藤田由仁
踊り指導:祗園東 満佐子
タイトル:シュプール
主題歌:「ついて行きたい」テン・リー
宣伝:松本淳 宮田秀世 長崎直定 川戸文夫
製作補:斉藤守恒 佐生哲雄
製作協力:京都映画株式会社
出演:藤田まこと 村上弘明 かとうかずこ 西田健 ひかる一平
アメリカンビスタ カラー 131分

四月十三日。仏滅に暗剣殺、三隣亡に大殺界という八方塞がりの大変な大厄日に南町奉行所で見習与力の安田小兵衛が突然怒り狂って奉行の長尾監物を斬りつけた。そもそもの事の起こりは、監物が小兵衛を筆頭与力に取り立ててやると口約束し五十両の賄賂を只取りしたからだった。その結果、頭に血が上った小兵衛は刀を抜いたのだが、迷惑したのは中村主水を始めとする同心たちだった。奉行所内は蜂の巣をつついたような大騒ぎとなり、身を守ることに必死な同心たちが戸を閉め切ると部屋の中の残されたのは目が血走った小兵衛、命乞いをする監物、そして貧乏くじを引いた主水だけだった。追い詰められた監物は主水を盾とするが、ひらりと身を交わされ小兵衛の餌食となり、その小兵衛は自ら命を絶った。やれやれ助かったと胸をなで下ろしたのもつかの間、主水は卑怯未練な振る舞いをしたと一人咎められ半年間、俸禄の半額を命じられたのだった。それから数日後、奉行所に後任の奉行が到着した。とても若く端整な顔立ちをした奥田右京亮は、着任祝の席で主水に対し私のときには見殺しにするなよと言った。ふて腐れた彼は気分直しにおけら長屋の居酒屋に立ち寄り女将のおふくを口説こうとしたのだが、表の騒動でそれどころではなくなった。ど派手な化粧と身なりの若者たちが馬で暴れ回っていたのだ。彼らは旗本の子息で結成された愚連隊で長屋の住民を虫けら同然に見下していた。そんな中、素浪人の杉江伊織が立ちはだかり抗議をしていると、愚連隊の一人が乗った馬が突然暴走を始め子供を助けようとした平野弥兵衛が命を落とした。人殺しと叫びながら弥兵衛の娘のお弓が向かって行くと、首領の神保主税は殺したのは馬だと弁解した。だが怒りの治まらない長屋の人々が石を投げ始めたため愚連隊は成す術もなく退却した。そこに現れた主水は、お前らの気持ちはわかるが事を大きくしないでくれと懇願した。そして事切れた馬に駆け寄ると脚に刺さった十字手裏剣を引き抜き、こいつのせいだと呟いた。

一体誰が何のために騒動を起こしたのか。疑念を持った主水は翌日、調書とともに証拠となる十字手裏剣を提出したが、何者かによって仕組まれた陰謀であるという推察を荒唐無稽だと右京亮は一蹴し、何の根拠もないことを取り上げるわけにはいかないと言った。更に十字手裏剣を受け取った覚えはないと言ったことで主水は闇の根深さを感じ、思い違いだったと釈明して一旦引き下がることにした。その夜、弥兵衛の弔いが行われ、主水はおふくの店で伊織と静かに飲んでいた。するとあれは誰だったのかなとおふくが独り言を漏らした。訳を聞くと、騒動のときに子供を助けた人物がもう一人いたというのだ。主水も伊織もそのことに気づいておらず、おふくの思い違いではないかと疑ったが、それを確かめようにも伊織はあの子供を長屋で見掛けたことがなかった。考えれば考える程謎は深まるばかりだった。

屋台的映画館

ビューティ・ペア 真赤な青春

  • posted at:2020-02-28
  • written by:砂月(すなつき)
びゅーてぃぺあまっかなせいしゅん
東映(東京撮影所)
配給:東映
製作年:1977年
公開日:1977年7月2日 併映「ドーベルマン刑事」
監督:内藤誠
企画:吉峰甲子夫 松永高司
脚本:中島信昭
撮影:花沢鎮男
録音:宗方弘好
照明:大野忠三郎
編集:鈴木宏始
助監督:渡辺寿
進行主任:瀬戸恒雄
現像:東映化学
音楽:八木正生とエレクトリック・ファミリー
主題歌:「真赤な青春」ビューティ・ペア
挿入歌:「かけめぐる青春」ビューティ・ペア
製作協力:全日本女子プロレス興業(株)
企画協力:ワイド プロモーション
音楽:八木正生
協力:九州産業交通株式会社 熊本スズキ株式会社 青年の酒 美少年
出演:ジャッキー佐藤 マキ上田 赤城マリ子 池下ユミ 阿蘇しのぶ
アメリカンビスタ カラー 57分

世界女子プロレス選手権の試合会場においてタッグマッチ3本勝負が行われた。アイドル的人気を誇るビューティ・ペア(ジャッキー佐藤、マキ上田)と対戦するのは悪役レスラーのブラック・ペア(池下ユミ、阿蘇しのぶ)だった。1本目はビューティ・ペアが制したが、2本目はブラック・ペアのフォール勝ち。そして3本目はジャッキーが場外乱闘の際に古傷の右ひざを凶器のパイプ椅子で殴打され、あまりの痛みに気を失いリングに戻ることが出来なかった。ビューティ・ペアは敗れタイトル獲得に失敗した。

ジャッキーが目を覚ますとそこは病室だった。マキと滝川有造コーチは弱気を見せずに頑張れと励ますが、怪我の状態は予想以上に悪かったのだ。そのことを知らないジャッキーは一日も早く治ることを信じながら今までのことを思い返した。神奈川県立商工高校でバスケットボール部のエースだったジャッキーはスポーツ万能だった。そんな彼女を親友のちあきは憧れの目で見ていた。ある日、二人が自転車に乗って帰宅していると、応援団団長の重山が行く手を遮りちあきに話があると言った。彼女が嫌がる素振りを見せたことでジャッキーは諦めるように諭したのだが、突然殴り掛かってきたため金的攻撃をした。団長がもんどり打って倒れ込むと今度は団員たちが情け容赦なく向かってきた。多勢に無勢でピンチに陥った時、偶然通り掛かった女性が男たちを次々と投げ飛ばしたのだ。彼女は女子プロレスラーの赤城マリ子でトレーニング場に向かう途中だったのだ。その強さに魅了されたジャッキーはプロレスラーになる決意を固めた。家に帰って母親の里枝にそのことを話してみたが相手にされなかったため、旅行カバンに荷物を詰めると書き置きを残し家族が寝ている間に家出をした。ベッドの上のジャッキーは心配を掛けた里枝のことを思い、くじけるもんかと復帰への決意を固めた。
 
滝川は練習中のマキを呼び出すとジャッキーの代わりにペアを組む相手を決めるように言った。再起不能となるかもしれない程の怪我をジャッキーが負っていることを初めて知ったマキは考える時間が欲しいと嘆願し、黙々とランニングを行った。鳥取県立農業高校のバレーボール部で活躍していたマキは浜村先生による鬼のような特訓に対し必死に食らいついていた。ところがその浜村が突然辞めて長野の実家に帰ることがわかると、心の支えを失ったマキはバレーボールへの熱意をも失った。そのことに激怒した彼女の父・強は滝川の先輩だったこともあり、精神力と肉体を鍛えさせるために全日本女子プロレスに無理矢理入門させることにしたのだ。マキはプロレスに興味がなかったが、入門にやってきたジャッキーから一緒にやろうよと声を掛けられたことで決心したのだった。そのことを思い出したマキは練習場に急いで戻り、ジャッキーが復帰するまでシングルマッチで試合を行うことを滝川に伝えた。

屋台的映画館

BU・SU

  • posted at:2020-02-24
  • written by:砂月(すなつき)
ぶす
東宝映画=日本テレビ放送網
配給:東宝東和
製作年:1987年
公開日:1987年10月31日
監督:市川準
製作:小倉斉
プロデューサー:平林邦介 出口孝臣 中沢敏明
脚本:内館牧子
撮影:小林達比古
美術:金田克美
照明:磯崎英範
録音:宮本久幸
助監督:天間敏広 吉田多喜男
編集:奥原好幸
記録:加藤八千代
製作担当:高橋憲行
音楽:板倉文
主題歌:「あじさいのうた」原由子
・・・:「Tonight’s the night」原由子
音楽プロデューサー:山本久 安藤賢次
スタイリスト:下田眞知子
アートコーディネーター:市川敏明
企画:アミューズ・シネマ・シティ
製作協力:SEDIC
出演:富田靖子 大楠道代 高嶋政宏 藤代美奈子 伊藤かずえ
アメリカンビスタ カラー 95分

心が「BU・SU」な高校3年生の森下麦子。彼女の母・雪乃は東京の神楽坂にある「蔦屋」という古い芸者置屋の長女だった。かつて神楽坂のナンバーワンと呼ばれた雪乃だったが、ある日料亭の板前と全てを捨てて駆け落ちし、板前の故郷である静岡弓ヶ浜に落ち着くと小料理屋「雪乃」を始めた。麦子が3歳になった冬に父親が土地の人妻と海で心中したが、何故か雪乃は弓ヶ浜から離れようとしなかった。自分の生い立ちが不幸なのは母のせいだと決めつけ殻に閉じこもって生きてきた麦子は18歳になったその日にあることを決断した。それは見知らぬ東京へ行き新しい自分として生活を始めることだった。だがその理由が思い当たらず考えを巡らせていると今まで思ってもみなかった考えが突然浮かんだ。それは東京で芸者になることだった。蔦屋の女将は雪乃の妹の胡蝶が継いでいたため、そこから新しい学校へ通えばいいのだ。麦子は雪乃を説得して九段にある学校への転校手続きを行った。

胡蝶から新しい名前をもらい麦子から鈴女となった彼女の新たな生活が始まった。3年D組の一員となったその日は文化祭の出し物を決めることになっており、ホームルームでは学校創立100周年として特別なことをやりたいと考えていた実行委員長の京子がクラスメイトからアイデアを募っていた。まだ学校のことが何もわからない鈴女はその様子を静かに聞いていた。休み時間に入ると興味本位の男子がちょっかいを出してきたが、鈴女は平手打ちでそれに答えた。そして授業が終わると思い切り遠回りして帰り家に着いたときは辺りが薄暗くなっていた。その日は神楽坂の料亭「井筒」での宴会はあり、呼ばれた揚羽の付き人は鈴女が受け持っていた。揚羽は胡蝶の娘で、鈴女とはいとこの関係だった。慣れない仕事で疲れた鈴女は布団の上に寝そべった。

学校から帰ると鈴女はすぐに踊りの稽古に加わった。自分ではうまくやっているつもりでも胡蝶からは厳しい声が飛んだ。胡蝶はいつもうつむき加減な彼女の姿勢を直すために人間は顔を上げなきゃダメだと指摘し、宴会には人力車の後ろを走って行くことを命じた。着物姿のスニーカー娘が街中を走る光景はとても珍しく、子供たちが面白がってついてきた。私だけ何故こんな仕打ちに遭うのだろう。そんな彼女は仕事を終えるとゲームセンターのテーブルゲームで憂さを晴らした。「ざけんじゃねえよ」とゲームのキャラクターが代弁していた。

夏の夕暮れ、白山にある三味線屋でのおつかいを終えて帰る途中、着付けの辰巳はふと「八百屋お七」は知っているかいと鈴女に尋ねた。だが知らないことがわかると近くにあるお七の墓へ連れて行き、16歳で男のために江戸の町を火の海にした少女の話をした。そしてその話を題材にした「人形振りのお七」を雪乃が浅草公会堂で踊り、娘の情けのようなものが見事に表現されていたと感慨深げに話すと、鈴女の脳裏に笑顔の母が浮かんだ。

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