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不良番長 猪の鹿お蝶

  • posted at:2019-03-11
  • written by:砂月(すなつき)
ふりょうばんちょういのしかおちょう
東映(東京撮影所)
配給:東映
製作年:1969年
公開日:1969年1月18日 併映「にっぽん’69 セックス猟奇地帯」
監督:野田幸男
企画:吉田達 矢部恒
原作:凡天太郎
脚本:山本英明 松本功
撮影:山沢義一
録音:小松忠之
照明:大野忠三郎
美術:江野慎一
音楽:八木正生
編集:祖田冨美夫
助監督:山口和彦
擬斗:日尾孝司
進行主任:清河朝友
装置:吉田喜義
装飾:武井正二
記録:勝原繁子
現像:東映化学工業株式会社
出演:梅宮辰夫 宮園純子 谷隼人 菅原文太 克美しげる
シネマスコープ カラー 89分

関東特別少年院から出所した神坂弘は、自動車修理工場から巻き上げた建物を使って仲間とともにスター音楽舞踊研究所というダンス教室を始めた。彼らの目的はレッスンにきた女性たちを踊り子に仕立て上げて海外に売り飛ばすことだった。ある日、昔の仲間の赤沢五郎が訪ねてきたことで懐かしがっていると、大勢の連れがやってきた。彼らは釜ヶ崎の大釜組で、サイコロ賭博で100万円の借金を作ったために赤沢は神坂を頼ってきたのだ。そこへ中国人ブローカーの周喜兆が下見にきたことから、神坂は踊り子8人分の120万円を前金で払って欲しいと言った。だが周は足が太い女は嫌だと言って50万円しか出さなかったため、神坂はこれで話をつけようと札束を放り投げ相手の注意が逸れたのを見計らって銃を奪い取った。その鮮やかさに驚いた大釜組は恐れおののいて逃げ帰ったのだった。神坂が次に目をつけたのはゴーゴー喫茶で働くダンサーの奈々子だった。彼女はダンス教室に通う生徒たちとは別格で、美人でスタイルもよく高額で取り引きされることは間違いなかった。だがこの店を取り仕切る住田組が黙っておらず、関東挺身会からも目をつけられた。

ある日、着流し姿の女がダンス教室にやってきた。彼女は妹の初枝を勝手に連れ出そうとしたが、神坂はそれを黙って見過ごすわけには行かなかった。何故なら教育のための費用が掛かっているからだ。初枝の代わりに身を置けと神坂が言うと、女は懐から出した札束で彼の頬を叩いた。すると神坂は態度を変え、どうぞお帰りくださいとにこやかに言った。女が初枝と帰ろうとしたところ、乗ってきた車が谷川武たちの嫌がらせで潰されていた。谷川のふざけた口をふさぐために、女は彼に向けて3枚の花札を投げた。猪、鹿、蝶。彼女は関東と関西を股に掛けて荒稼ぎをする一匹狼の女番長・猪の鹿お蝶だった。

ポパイの暴走がきっかけで少年院時代の仲間だった藤木光男と再会した神坂は、その夜歓迎会を開いた。藤木は博多で世話になった稲長組の親分に恩義を感じており、彼の娘のキクエに手を出そうとした兄貴分を斬って逮捕されたのだ。そして宇都宮から仙台へたらい回しされた挙句、網走に飛ばされようやく出所したばかりだった。故郷の博多へ帰らずに東京にいた理由は、世話になった親分が刑務所暮らしの間に亡くなり、兄貴分が知らぬ間に跡目を継いでいたからだ。更にその兄貴分は性懲りもなくキクエを妻にしようと企んだため、彼女はそれを嫌って2年前に東京へ逃げてきたのだった。話を聞いた神坂が、また刑務所に戻るような要領の悪い渡世をしちゃダメだと助言したその時、投石が窓ガラスを破った。乗り込んできたのは住田組の福田で、稲長組からキクエを捜しにきている男と組んで彼女を取り返しにきたのだ。その男は少年院時代の仲間の八代敬だった。

屋台的映画館
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GSワンダーランド

  • posted at:2019-03-07
  • written by:砂月(すなつき)
じーえすわんだーらんど
「GSW」製作委員会(AMGエンタテインメント=ジェネオン エンタテインメント=デスペラード=アミューズメントメディア総合学院=ポニーキャニオンエンタープライズ=tvk=テレ玉=チバテレビ=三重テレビ=KBS京都=サンテレビ)
配給:デスペラード=日活
製作年:2009年
公開日:2009年10月31日
監督:本田隆一
製作総指揮:吉田尚剛
製作:杉原晃史 熊澤芳紀 石田雄治 森下敏治
プロデューサー:永森裕二 永井正敏 曽我勉
共同プロデューサー:関佳史 松本宏 青柳洋治 波多美由紀 今西武志 江副純夫
アソシエイトプロデューサー:大高由紀子
ラインプロデューサー:木村和弘
キャスティングプロデューサー:かねだあきこ
脚本:本田隆一 永森裕二
撮影:小林元
照明:堀直之
録音:伊藤裕規
美術:丸尾知行
装飾:吉村昌悟
監督補:亀井亨
助監督:野尻克己
音響効果:北田雅也
音楽:サリー久保田
編集:本田隆一
VFXスーパーバイザー:森山ヒロカズ 三宅大介 小平和久
Bカメ撮影:小宮由紀夫
スタイリスト:小里幸子 田中美由紀
ヘアメイク:清水ちえこ
プロデューサー補:前田利洋
制作プロダクション:グランデ
企画:AMGエンタテインメント
出演:栗山千明 石田卓也 水嶋ヒロ 浅利陽介 温水洋一
シネマスコープ カラー 100分

1968年、夏。グループサウンズは最盛期を迎え、ザ・タイガースのシングルレコード「銀河のロマンス/花の首飾り」はオリコン週間チャートの1位を7週連続で獲得し67万枚を売り上げていた。パープル・シャドウズのデビューシングル「小さなスナック」も着実に売り上げを伸ばし、40万枚超えを記録した。ファインレコーズは演歌専門のレコード会社だったが、課長の佐々木智典が童謡のソノシートよりもGSブームに乗った方がいいと会議で提案したことで鎌田兼一専務はGOサインを出したのだ。ところがそれ以降何の進展も見られないため、3ヶ月間でバンドを見つけてレーベルを立ち上げろと命じられたのだった。佐々木の頼みの綱は小さな芸能プロダクション・オフィス梶井の梶井良介社長だけだったが、目ぼしい所属タレントがいなかったため急遽スカウトに走らなければならなくなった。事務所に戻ると扉の前に雑誌の募集広告を見てきたという人物が立っていた。だが性別は女。梶井が必要としているのは男なのだ。恨むならGSを恨んでくれと断ると、少女は腹を立てて去って行った。

GSをやって有名になり日劇の舞台に立つことを夢見る高校生の紀川マサオは、友人の村上大吾が呆れるほどギターにのめり込んでいた。秋になり学校へ行くのを止めたマサオは夢へ近道する方法を考え出した。それはライブハウスACEで演奏するザ・ナックルズの楽屋へ行き、直談判することだった。ところが全学連風の二人の男が騒動を起こしたことで楽屋は大混乱を起こし、マサオは何故か男たちとともに逃げ出したのだった。男たちの正体は元ナックルズのメンバーの正巳屋シュンと柏崎ケンタだった。シュンはドラムを、ケンタはベースを務めていたが、リーダーの長谷川タツオは新メンバーの加入で必要なくなった彼らを体裁良く追い出すために「ポール・マッカートニーとリンゴ・スターが日本の若者にロックを教える目的で秋田の山奥に極秘で教室を開いているから行くべきだ」と嘘をついたのだ。たどり着いた者だけが教えてもらえると聞いた二人は山中をさまよい嘘だと気づいたときには3ヶ月が経過していたことから、仕返しをするために楽屋へ乗り込んだのだった。明日からの予定が何も決まっていない3人はとりあえずバンドを組むことにした。

梶井がジャズ喫茶や養成所、芸能事務所にレコード会社と立て続けに電話を掛けるが、いずれもいい返事をもらうことが出来なかった。ビートルズのようなバンドがそう簡単にいるかと独り言をつぶやいていると、何処からかそのビートルズのような演奏が聞こえてきた。彼は音の出処を探し回り、ついにそれがマンションの屋上であることを突き止めた。そしてザ・ダイアモンズがアマチュアバンドであることがわかると、うちから2ヶ月後にレコードデビューする気はないかと尋ねた。マサオはすぐに飛びついたが、シュンはそんなうまい話があるわけないと懐疑的だった。だが名刺を渡されて本物だと確信した3人は世話になることにした。梶井からその話を聞いた佐々木は無理だと言った。既にデビュー曲は完成しており、演奏するにはギター、ベース、ドラムの他にオルガンが必要なのだ。アレンジが効かないと言われた梶井はしばらく考えた末にある名案を思いついた。以前、事務所にきた少女=大野ミクがオルガンを得意にしていると言っていたことから、彼女に男装をさせれば丸く収まるのだ。

屋台的映画館

不良番長

  • posted at:2019-03-03
  • written by:砂月(すなつき)
ふりょうばんちょう
東映(東京撮影所)
配給:東映
製作年:1968年
公開日:1968年10月1日 併映「徳川女刑罰史」
監督:野田幸男
企画:吉田達 矢部恒
脚本:松本功 山本英明
撮影:山沢義一
録音:渡辺義夫
照明:銀屋謙蔵
美術:藤田博
編集:田中修
助監督:内藤誠
擬斗:日尾孝司
進行主任:阿部征司
装置:石井正男
装飾:林新吉
記録:宮本衣子
現像:東映化学工業株式会社
音楽:八木正生
挿入歌:「夜の花」克美しげる
出演:梅宮辰夫 谷隼人 克美しげる 大原麗子 夏珠美
アメリカンビスタ カラー 89分

海岸でカップルが新宿に巣食う不良グループに襲われた。彼らは神坂弘率いる愚連隊で、ヤクザなどの組織とは違い己の欲望を満たすためだけに行動した。襲われたカップルのうち男の方はグループの中でも一番の色男のタニーで、全てはナンパした女を利用するための芝居だった。手段を択ばない彼らは女を馴染みのバー・サバンナにホステスとして売り飛ばすと手に入れた金で夜の街に消えた。翌日、路上に停めてある車を盗み出そうとしている現場を持ち主の女子大生の龍子に見つかった。タニーがいつものように色仕掛けで迫ると、彼女は面白い所へ案内すると言った。龍子が連れてきたのはエキゾチックな雰囲気漂うクラブで、タニーたちは彼女やその友達が酔い潰れるのを辛抱強く待った。そして時がくるとグループのマンションに連れ込んだのだが、突然睡魔が彼らを襲った。龍子は男たちが目を逸らしているうちにグラスへ睡眠薬を入れていたのだ。静かになった部屋から逃げ出そうとしたところ、入り口で立っていた神坂に止められ自由を奪われた。

新宿駅の前でナンパしていたタニーとランキングは大阪からきたという娘に声を掛けた。心が打ち解けたところで神坂のもとに連れて行こうとした二人だったが、彼らの前に立ち塞がったのは神津組の若い衆だった。シマを荒らしていることに対し制裁を加えようとしたが、駆けつけた神坂たちの助力によってタニーとランキングは命拾いした。だが騒動を聞きつけた大江興業の背広組が加わったことで話がややこしくなった。そこで神坂は仲間に逃げるように言うと自ら事務所に出向くことにした。会長から使えそうだと見込まれ組に入らないかと誘いを受けた神坂だったが、その時がきたらお願いしますと答え、頭を下げると早々に立ち去った。

街中で龍子の姿を見つけたポパイはタクシーで後をつけることにした。その結果、神津という大きな屋敷にたどり着いたが、そこは神津組会長・神津清之助の屋敷だった。彼はポパイの身柄を預かり神坂を呼び出すと、娘の前から消えろと説教した。龍子は神津の一人娘なのだ。その大事な娘が神坂によって汚されたことを知り神津は激怒したが、ちょっとした弾みで起きたことは金で解決すべきだと龍子は冷静に言った。そして精神的、肉体的慰謝料として50万円を要求すると神坂はニヤリと笑った。金で済むのであればと支払いの約束をすると、彼はポパイを引き連れて帰って行った。それから数日後、神坂は神津に呼び出された。高台から見える建設中のホテルは北星観光の物だったが、大江興業が建設費から多額のピンハネを行っているという噂が流れていた。そこで神津は証拠を掴んで強請って欲しいと頼んだが神坂は首を縦に振らなかった。神津は仕方なく北星観光の請負を大江に全て横取りされたことを話すと、神坂は分け前の金額次第で考えると言った。

屋台的映画館

ピストルオペラ

  • posted at:2019-02-28
  • written by:砂月(すなつき)
ぴすとるおぺら
日本ビクター=松竹=衛星劇場=テレビ東京=電通=スパイク=小椋事務所
配給:松竹
製作年:2001年
公開日:2001年10月27日
監督:鈴木清順
製作代表:岸田卓朗 迫本淳一 石川富康 宮川鑛一 小岐須直俊
アソシエイト・プロデューサー:関根康 深田誠剛 菅沢正浩 神田裕司
キャスティング・プロデューサー:久保忠佳
エグゼクティブ・プロデューサー:小澤俊晴 宮島秀司 石川博 菅原章
プロデューサー:小椋悟 片嶋一貴
脚本:伊藤和典
美術監督:木村威夫
撮影:前田米造
照明:矢部一男
特撮:樋口真嗣
編集:鈴木晄
スクリプター:内田絢子
音楽:こだま和文
音響:岩浪美和
キャスティング:茂木香
助監督:井原眞治
製作担当:宮川健治
企画・制作:小椋事務所
出演:江角マキコ 山口小夜子 韓英恵 永瀬正敏 樹木希林
スタンダード カラー 112分

謎の殺し屋組織「ギルド」の東の番付No.3・通称「野良猫」。気乗りがしなければ仕事をしないという彼女の前に現れたのは代理人の上京小夜子だった。訳あって仕事の依頼を受けると、翌日には宅配便の小箱が届いた。その中には野良猫が「あたしの男」と呼ぶピストルが入っていた。標的は小倉興産社長の愛人。水泳の高飛び込みが趣味であることを知った野良猫は屋内プールに先回りし水中に潜伏した。そして彼女が台から飛んだと同時に狙撃し、水中に没すると野良猫はプールを出てボディーガードの前を何食わぬ顔で通り過ぎた。彼女は愛人と同じ水着を着ていたため、男たちが事態を把握したときには後の祭りだった。そんな彼女の動きを監視していたのは車椅子の男だった。男はギルドに所属する生活指導の先生で逃げる野良猫を追い回したが、港に追い込んだところを返り討ちに遭い命を落としたのだった。野良猫はこれまでの経緯を問い詰めるが小夜子は知らぬ存ぜぬ一点張り。そこで元No.1の花田五郎に会いに行くと、彼は野良猫もしくは先生のいずれか、または両方を消すための口実ではないかと言った。東京駅でNo.2・昼行燈の萬を殺したのがNo.1の百目という噂も飛び交っておりギルドが揺れていることは容易に見て取れた。再編が終わるまで生き残り勝ち残ればNo.1になれると花田は助言するが、その代償として彼のように松葉杖生活を送ることになるのは御免だと野良猫は言った。

ある日、小夜子から宅配便が届いた。中には前回の報酬の札束とともに手紙が入っており、そこには次の仕事のために会いたいと書かれていた。小夜子が持ってきた仕事の依頼主はギルド自身であり標的は百目だったが、誰もNo.1の正体を知る者はいなかった。例えタイトルを獲得することが出来ても野良猫はその話に乗るつもりはなかったが、女剣劇の客席で起きた殺人がいずれも番付のランカーだったことから身の危険を感じた彼女は情報を仕入れるためにギルドへ向かった。ところがそこで待ち受けていたのは無痛の外科医ことNo.5の男で、彼は百目のパートナーとなりギルドの情報システムを潰す依頼を受けていたのだ。私と組めば例え百目でも怖くないと野良猫は色目を使い、No.1はあなたのものになると誘惑した。そして痛みを感じない凄さを見せて欲しいと胸にナイフを突き立てさせ、もっともっととエスカレートさせた。自分が置かれている立場に気付くのが遅すぎたNo.5に、野良猫は素敵よと言った。ギルドの建物から何とか這い出たものの、No.5から刺された傷のせいで彼女は瀕死の状態に陥っていた。そんな野良猫を少女はリヤカーを準備して待っていた。リヤカーの行く先は三途の川の渡し場だった。

屋台的映画館

点と線

  • posted at:2019-02-25
  • written by:砂月(すなつき)
てんとせん
東映(東京撮影所)
配給:東映
製作年:1958年
公開日:1958年11月11日 併映「修羅八荒」
監督:小林恒夫
企画:根津昇
原作:松本清張
脚本:井手雅人
撮影:藤井静
録音:大谷政信
照明:川崎保之丞
美術:田辺達
音楽:木下忠司
編集:祖田冨美夫
助監督:飯塚増一
メーキャップ:井上守
美容:中井マサ
衣裳:八木一郎
色彩計測:林七郎
記録:大内小枝子
スチール:藤井善男
進行主任:内田秀雄
撮影助手:田中丈之助
録音助手:矢島一隆
照明助手:桑名史郎
美術助手:下沢敬悟
装置:中村唯行
装飾:北原義雄
背景:服部与一
電飾:木村孝
音響効果:岩藤龍三
現像:日本色彩映画株式会社
出演:南廣 高峰三枝子 山形勲 堀雄二 加藤嘉
シネマスコープ カラー 85分

10月21日、福岡香椎の海岸で男女の遺体が見つかった。着衣の乱れがない二人は規則正しく並び、履物もきちんと揃えてあった。傍にはジュースの空き瓶が落ちており、男女ともに顔の血色が良かったことから検視官は死因を青酸カリによる中毒死とした。東福岡署は死亡推定時間10時間前後、夜の10時から11時の間に合意の上で心中を図ったと断定した。だが古参刑事の鳥飼重太郎は違和感を覚えていた。どうして心中するのに寒々しい場所を選んだのだろう、と。だが石井刑事は考え過ぎだと一笑に付した。場所を署内に移し遺留品の確認が行われた。男の身元は持っていた名刺で産工省企業局業務部調査課課長補佐の佐山憲一であることがわかった。一方、女も東京赤坂にある割烹料理屋小雪の女中・お時であることが持ち物から判明した。佐山の遺留品の中から10月14日の日付けが入った列車食堂の受取証を見つけた鳥飼は一人分となっていることに疑問を感じ、東京発博多行きの7号列車の特急あさかぜには佐山一人で乗っていたのではないかと考えた。田坂刑事の捜査によって佐山が東中須の旅館に泊まっていたわかっており、20日の午後8時頃に女の声で掛かってきた電話をきっかけに出掛けたことも証言があった。これで翌朝の遺体発見と繋がった。

鳥飼は石井刑事とともに警察病院へ向かった。遺体を引き取りにきた佐山の兄は、女遊びを知らない堅物の弟が悪賢い女中の手管に掛かったのだとこぼした。それを聞いた鳥飼は二人の関係を彼が知らなかったことを確認した。一方、お時のことを良く知る女中の八重子も佐山が店にきたことはないと証言した。彼女に恋人がいることは察していたが、それが佐山だったことを今回初めて知ったのだ。それは一緒にきた女将も同じだった。だが八重子は、14日の夕方に友達のとみ子と東京駅にいたときに佐山がお時といるところを見ていた。そのことを何気なく話すと鳥飼の顔色が変わった。お時は佐山を見送りにきていたのではなく、一緒に車両に乗っていたのだった。

ひと月後、警視庁刑事部捜査第二課の三原紀一が東福岡署にやってきた。産工省汚職事件を追っていた彼は佐山の死に疑問を抱き、鳥飼から話を聞くことにしたのだ。鳥飼は彼を心中現場へ案内する間に複数の目撃者がいることを話した。一人は国鉄香椎駅向かいにある八百屋の主人で、買い物する客がいないかと店先にいたところ、オーバーを着た男と防寒コートを着た女が西鉄香椎駅の方へ歩いて行ったのを覚えていた。そしてもう一人は21時35分着の列車から降りた利用客で、酔ってゆっくりと歩いていた彼を追い抜いて行った二人組のうち女の方が澄んだ声で東京の言葉をしゃべっていたのを覚えていた。それらの証言を得ても鳥飼には腑に落ちない点があった。それは心中する場所を温泉地や観光地ではなくうら寂しい海岸を選んだのかだった。

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