忍者ブログ

ピラニア軍団 ダボシャツの天

  • posted at:2018-08-07
  • written by:砂月(すなつき)
ぴらにあぐんだんだぼしゃつのてん
東映(京都撮影所)
配給:東映
製作年:1977年
公開日:1977年2月26日 併映「北陸代理戦争」
監督:山下耕作
企画:杉本直幸 上坂久和
原作:政岡としや
脚本:松本功
撮影:増田敏雄
照明:金子凱美
録音:中山茂二
美術:富田治郎
音楽:渡辺岳夫
編集:玉木濬夫
助監督:清水彰
記録:梅津泰子
装置:吉岡茂一
装飾:西田忠男
背景:西村和比古
美粧:長友初生
結髪:福本るみ
スチール:内藤アリ
演技事務:西秋節生
衣裳:豊中健
擬斗:上野隆三
進行主任:長岡功
主題歌:「ダボシャツの天」川谷拓三
・・・:「恋歌」川谷拓三
出演:川谷拓三 竹田かほり 橘麻紀 菅貫太郎 深江章喜
シネマスコープ カラー 83分

死んだ母親から通天閣のように真っ直ぐ伸びるような男になれという願いを込めてつけられた名前を持つ松田天。それをどう解釈したのか出世するには極道になることが早道だと考えたのだった。そのためには刑務所に入って箔をつけることが先決だとし阪神刑務所の外壁に立ち小便するのだが、刑務官からは軽くあしらわれた。雪駄、腹巻、ダボシャツに夜店で買った偽革バンドといういで立ちの天は大阪・新世界を活動の拠点としている。ある日、彼はストリップ劇場の裏道で気弱そうな学生に無理矢理エロ本を売りつける高校生たちから四千円を巻き上げた二人のヤクザ者に物申した。何故ならその高校生は天をアニキと慕っている数少ない味方だからだ。ところがそこに大市組の幹部・花木が現れたことで事情は変わった。上方会の下っ端の彼が例え合図を送ったところで援軍がくるはずもなく袋叩きに遭うのだが、ある男が偶然通り掛かったことで形勢は逆転した。それは天が男の中の男と惚れ込んだ幹部の「百足の錦三」だった。四年前のイザコザで出来た腹の傷を錦三が見せると、バツが悪い花木は歯向かえず言われたとおりに四万円と心づけを渡してそそくさと逃げたのだった。

どうしても本物の極道になりたい天は以前から錦三に正式組員に所属したいことを申し出ていた。改めてそのことを申し出ると錦三は土産がいると言った。上方会では阿倍野の朝日町に特殊浴場を開くことになっており、彼はそこでマネージャーを任されることになっていた。そこで錦三は若い女性を二、三人連れてきたら考えてやると言った。天が不安視しているのは朝日町が大市組の縄張りであることだったが、錦三はそれも計算済みだった。近々、上方会は大市組と一戦交える計画があるからだ。それを聞いて安心した天は公園に出掛けて女性に片っ端から声を掛けた。ところが痴漢と間違えられてパトロール中の警官に逮捕され留置場に入れられたのだった。天は落ち込むどころかこれも極道にとって勉強だと前向きに捉えた。ブタ箱は小学校、拘置所は中学、そして刑務所は大学、と。ところが身元保証人となった錦三によってあっさりと釈放されたことでうれしさとさみしさが入り乱れた。

錦三の希望どおりに女を集められなかったことで正式組員への道が遠ざかった天は、天王寺動物園近くの道端でサルのおもちゃを売ることにした。そのときに高校生くらいの少女を見つけたためこれ幸いと声を掛けた。彼女は夏という名の奈良の山奥からやってきた家出少女で、大阪にきたもののどうしていいかわからない様子だったことから錦三のもとへ連れて行くことにした。だが世話をするうちに情が移り、自分は悪い男だし大阪には似たような男がいる怖い所だから田舎に帰るべきだと諭した。ところが話をするうちに夏が自分と同じように両親を亡くしていることがわかり、帰る家がないことを不憫に思った天は彼女を自宅に泊めることにした。

屋台的映画館
PR

宇宙大怪獣ドゴラ

  • posted at:2018-08-03
  • written by:砂月(すなつき)
うちゅうだいかいじゅうどごら
東宝
配給:東宝
製作年:1964年
公開日:1964年8月11日 併映「喜劇 駅前音頭」
監督:本多猪四郎
製作:田中友幸 田実泰良
原作:丘美丈二郎
脚本:関沢新一
撮影:小泉一
美術:北猛夫
録音:矢野口文雄
照明:小島正七
音楽:伊福部昭
整音:下永尚
監督助手:佐野健
編集:藤井良平
音響効果:知久長
現像:東京現像所
製作担当者:中村茂
特殊技術・撮影:有川貞昌 富岡素敬
特殊技術・光学撮影:真野田幸雄 徳政義行
特殊技術・美術:渡辺明
特殊技術・照明:岸田九一郎
特殊技術・合成:向山宏
特殊技術・監督助手:中野昭慶
特殊技術・制作担当者:小池忠司
特技監督:円谷英二
出演:夏木陽介 藤山陽子 小泉博 若林映子 中村伸郎
シネマスコープ カラー 81分

テレビ中継用の人工衛星・L-100型が打ち上げられ、周回軌道に乗ることに成功した。衛星が6周目の日本上空を通過した頃、宇宙空間で異常事態が発生した。光を明滅しながら成長する3体の宇宙生物が地球に接近し、その衛星を飲み込んだのだった。だが地上で観測を行っていた電波研究所では正確な事態を把握することが出来なかった。

人工衛星の事故をラジオが速報として伝えていた深夜、パトロール中の警官二人は不審な車を見つけたため声を掛けた。その車にはラジオを聞いている女が乗っていたが、男を待っている様子だったのでそれ以上は聞かなかった。しばらくパトロールを続けていると酔っ払いが宙に浮いているのを目撃し急いでその後を追ったのだった。その頃、宝石店・天宝堂に五人組の強盗が押し入り金庫の扉をガスバーナーで焼き切ろうとしていたが、急に体が浮いて自由が利かなくなったため道具を放り出して逃げたのだった。店のシャッターには人工衛星を破壊した物と同じ生物が張り付いており、男たちは発砲したが手に負えず用意していた車をスタートさせると、リーダー格の男は待ち伏せしていた女の車に乗り込んだ。警官は銃声を聞いて駆け付けたが強盗団を捕まえることは出来なかった。

世界各国でダイヤモンドが盗まれる事件が多発し、それは日本も例外ではなかった。警視庁外事課の駒井刑事は宝石ブローカーのマーク・ジャクソンを追跡し、結晶構造学の権威・宗方博士の邸までたどり着いたが、あと一歩のところで出し抜かれたのだった。最近、世界的に組織されたダイヤモンド強盗団が動き出しており、ニューヨークやロンドン、パリなどで大きな被害が出ていた。だが彼らが拘わっていたのはパリの一件だけだった。日本支部でも成果が上がらないことに頭を抱えており、髭のボスは何か名案はないかと知恵を絞った。そもそも昨夜の犯人は人間ではなく、何故そんな奴がダイヤを狙っている理由がわからなかった。そこへ浜子がマークを連れてきたのだった。夕べの仕業はお前だろうと多田がマークに掴み掛かったとき、隣にいた真木がボディータッチをして背広のポケットから袋を見つけた。その中身をテーブルにぶちまけると無数のダイヤが光輝いた。

駒井は宗方を警視庁に呼び出すと天宝堂で起きた事件の資料を渡した。写真には金庫の扉が蝋細工のように溶けた様子が写っており、それを見た宗方は現場に放置されていた酸素切断機とは比較にならないほどのエネルギーが必要だと言った。そして駒井が被害届の提出を促すと、宗方は秘書の桐野昌代と顔を見合わせて困ったなと首を傾げた。盗まれたダイヤはまだ公にされていない研究、開発中の「人造ダイヤ」だったからだ。

屋台的映画館

くいこみ海女 乱れ貝

  • posted at:2018-07-30
  • written by:砂月(すなつき)
くいこみあまみだれがい
にっかつ
配給:にっかつ
製作年:1982年
公開日:1982年7月9日 併映「鏡の中の悦楽」
監督:藤浦敦
プロデューサー:結城良熙
企画:奥村幸士
脚本:富田康明 藤浦敦
撮影:水野屋信正
照明:矢部一男
録音:信岡実
選曲:伊藤晴康
編集:井上治
美術:中澤克巳
助監督:瀬川正仁
色彩計測:佐藤徹
現像:東洋現像所
製作担当者:鶴英次
協力:神津島観光協会
出演:渡辺良子 松川ナミ 藤ひろ子 水月円 松原玲子
アメリカンビスタ カラー 67分

日本のとある島の漁村。集まれば男の話題に花が咲く6人組の海女は主にアワビなどの貝類を獲っている。その中の一人、渡辺帆奈美は網元の若旦那・岩瀬源太郎と恋仲で、両親を海で亡くした彼女にとって源太郎の父の死は他人事と思えず命日に墓参りをした。そんな帆奈美を源太郎の母・千恵は認めており、息子との縁談をいち早くまとめたいと考えていたが、当の源太郎はというといろいろ自由にやってみたいことがあると言って煮え切らなかった。そこでおじの忠吉は、彼を東京に連れて行きやりたいことを思い存分やってから島で結婚式を挙げればいいと提案した。それからしばらく経った頃、6人の間にある噂が持ち上がっていた。それは上京した源太郎がすっかり羽を伸ばし、銀座の一流ホステスに夢中になっているというのだ。そのホステスはかなりの美人であっちの腕は抜群。そんな彼女に源太郎が骨抜きにされているという話は忠吉からの確かな情報だった。帆奈美はみんなの前で素っ気ない振りをしたが、内心は穏やかではなかった。

ある日、島に到着したフェリーから降りてきたのは今までとすっかり雰囲気が変わり明るさを取り戻した源太郎とそんな彼を心配する忠吉だった。源太郎が惚れ込んだそのホステスは、島にはいないタイプの骨が細くてしなやかな女で一万人に一人といわれる名器の持ち主だった。その話は漁師仲間の只見茂など男たちにあっという間に広がり、それを聞いた女たちも自分とどう違うのだろうと興味津々だった。それから数日後、フェリーから降りてきた垢抜けた女は神津村の岩瀬家が何処にあるのか尋ねた。その女が源太郎を追い掛けてきたホステスの藤井由紀だった。彼女がくるのを心待ちにしていた源太郎は車で出迎えると灯台のある高台へ連れて行き体を重ねた。そしてそれが終わると源太郎は車で島を案内し、もし結婚することになれば先祖代々伝わる山林や土地など数えきれない程の不動産や大きな5艘の漁船、ひと航海して当たればドカッと大金が転がり込む漁師の仕事が2人の物になることを説明した。その様子を目撃したことで面白くなかった6人組のうち何人かはいつか意地悪してやろうと企んでいた。

数日後、島に降り立ったパナマ帽の男はかつての由紀のヒモ・長谷部淳一だった。淳一は岩瀬家に直行すると、大酒呑みで薬を打っている由紀のような女はここの家柄に合わないから源太郎に諦めさせるようにと千恵に吹き込んだ。そして次に由紀が泊まる旅館へ向かうと、二度と会わない約束だったが気が変わったと復縁を迫るのだった。

屋台的映画館
なぞときねままだむまーまれーどのいじょうななぞしゅつだいへん/かいとうへん
テレビ東京=SCRAP
配給:テレビ東京
製作年:2013年
公開日(出題編):2013年10月25日
公開日(解答編):2013年11月22日
監督:上田大樹 鶴田法男「鏡」 中村義洋「やまわろわ」
制作統括:田村明彦
ゼネラルプロデューサー:松本篤信
エグゼクティブプロデューサー:鈴木一巳 松迫由香子
プロジェクトプロデューサー:柳原雅美 橋田道子 松田直樹
企画・原案:加藤隆生
脚本:堀田延 鶴田法男「鏡」 中村義洋「やまわろわ」
音楽:やまだ豊 末廣健一郎 伊藤忠之
技術プロデューサー:佐々木宣明
美術プロデューサー:高田太郎
音楽プロデューサー:志田博英
撮影:今井孝博 川越一成「鏡」 三村和弘「やまわろわ」
照明:中村晋平
録音:甲斐次雄 関根光晶「鏡」
映像:浅香康介
美術進行:金子靖明
装飾:飯田恵一
衣装:池島枝里 吉川茂雄「やまわろわ」
ヘアメイク:桂木智子
持道具:矢倉秀隆
編集:深澤佳文
視覚効果:本田貴雄
音響効果:谷口広紀 本郷俊介
選曲:長沢佑樹
音楽ディレクター:千田耕平
アニメーション(出題編):銀木沙織
助監督:亀谷英司 土岐洋介「鏡」「つむじ風」
記録:嶋崎綾乃 山崎美緒「鏡」「やまわろわ」
制作:今野茂昭 堀内蔵人
プロデューサー補:岸根明
主題歌:「Death Disco(Instrumental)」SEKAI NO OWARI
制作プロダクション:Takujiクリエイト
出演:川口春奈 山崎一 池田成志 オクイシュージ 井口恭子
(出題編):アメリカンビスタ カラー 105分
(解答編):アメリカンビスタ カラー 54分

海外での受賞歴がある日本映画界の巨匠・藤堂俊之介。その妻の良枝は自身に死期が迫っていることを悟っていたが、それまでに長い間気になっていることを解決しなければならないと考えていた。そこでその究明を依頼したのは、解けない謎はないと豪語するマダム・マーマレードだった。彼女はマダムと名乗るには若過ぎる少女のような容姿をしているため、年の離れた助手のバルサミコと度々間違われることを不快に思っていた。

執事・田中の案内で部屋に通された二人は、依頼者で元女優の良枝から依頼内容を聞いた。夫の俊之介は監督作が22本あり、その内の3本が日米合作で日露合作は1本ある。そしてパリ芸術映画祭グランプリ、批評家協会最優秀監督賞、コンテンポラリー賞、文化シネマコンクール監督賞など数々の受賞歴があった。1983年に死去し既に30年が経過していたが、死の間際に発した最後の言葉の謎を解いて欲しいというのが彼女の依頼だった。俊之介は最後の力を振り絞るようにして良枝に向かい「最初の台詞だ」と告げた。その最後の言葉が何を意味するのかそのときはまるでわからなかったが、ある日書斎を整理をしているときに書置きが見つかった。そこには「短編映画3本に秘密がある」と書かれていた。俊之介は長編映画を中心に監督していたが、自費制作した短編映画は外部に知られないようにしていたのだ。完成した映画はいずれも未公開だったが、かつて俊之介の助監督を務めていた田中は向学のために観ていたためその存在を知っていたのだった。俊之介の長男・俊一と次男の俊二はそのことを知らなかったが、田中が思い出したおかげでそれが未公開の3作であることが断定された。そこで俊一たちは繰り返しそれを観たのだが解決にたどり着くことは出来ず、そのうち考えるだけ無駄だと思うようになり、いつしか言葉や書置きのことを忘れてしまったのだ。だが良枝は自分の時間が残り少ないことがわかると同時に夫の言葉を思い出し、あの謎を一刻も早く解かなければならないと思うようになった。何故なら天国で再会した際に顔向け出来ないと考えたからだ。

話を聞き終えたマーマレードは、謎を解くことは保証するがその際にどんな真実が出てきても受け止める覚悟はあるかと良枝に尋ねた。すると彼女の経歴に疑問を持っている藤堂家の顧問弁護士の斉藤が具体的な過去の謎解きの例を教えてくれと口を挟んだ。具体例を挙げることに意味がないと主張するマーマレードに代わり、バルサミコはその真実が不倫や身内の犯罪の告発などの可能性があることを説明した。するとマーマレードはそれを受け全ての謎は解かれたがっていると言った。そしてようやく日の目を見た謎が例え誰かを傷つけたとしてもこの自由な世界に解き放つと続けた。それを聞いた良枝は覚悟を決め、お願いしますと頭を下げた。マーマレードが準備を整えると田中は上映の支度を始めた。

屋台的映画館

XX 魔境伝説

  • posted at:2018-07-22
  • written by:砂月(すなつき)
えくすくろすまきょうでんせつ
「XX(エクスクロス)」製作委員会(エイベックス・エンタテインメント=STUDIO SWAN=東映=メモリーテック=アース・スター エンターテイメント=クオラス=東映チャンネル=宝島ワンダーネット=NECビッグローブ)
配給:東映
製作年:2007年
公開日:2007年12月1日
監督:深作健太
製作:千葉龍平 樫野孝人
製作委員会:田中迪 坂上順 石井徹 川崎代治 中西一雄 村山創太郎 古玉國彦 下島健彦
企画:劔重徹 高木政臣 遠藤茂行 幕内和博
プロデューサー:小池賢太郎 松橋真三 近藤正岳
企画プロデューサー:渡辺真喜子
アソシエイトプロデューサー:菅野和佳奈 莟宣次
協力プロデューサー:西口典子
ラインプロデューサー:原田博志
宣伝プロデューサー:杉田薫
原作:上甲宣之
脚本:大石哲也
音楽:池頼広
主題歌:「こわれそうな愛の歌」Aly&AJ
撮影:小松高志
照明:松岡泰彦
美術:仲前智治
セットデザイナー:郡司
録音:益子宏明
整音:室蘭剛
編集:洲崎千恵子
Bキャメ撮影:相馬大輔
VE:鏡原圭吾
スクリプター:坂本希代子
装飾:平井浩一
衣裳:宮本まさ江
ヘアメイク:松山和美
VFXスーパーバイザー:諸星勲
アクション監督:横山誠
助監督:佐和田恵
製作担当:平野宏治
製作プロダクション:STUDIO SWAN
出演:松下奈緒 鈴木亜美 中川翔子 小沢真珠 池内博之
アメリカンビスタ カラー 90分

初めて付き合った彼氏に裏切られた女子大生の水野しよりは傷心旅行をしようと思いつき、サークル仲間の火請愛子の案内で人里離れた温泉郷の阿鹿里村へ車で向かっていた。その彼氏=朝宮圭一は復縁を願って携帯電話に何度も連絡してきたが、しよりは無視を決め込んでいたのだ。トンネルを過ぎた辺りで突然全身黒ずくめの女が道路を横切り、驚いたしよりは急ブレーキを掛けて事故を回避した。車から飛び出した愛子が怒鳴りつけると、その女は「本物の地獄がどんな物か知ってる?」と言ってほくそ笑んだ。その様子を見たしよりたちは怖くなり、急いで車に乗り込むと目的地に向かった。阿鹿里村には車で直接行くことは出来ず、ロープウェイで谷を越さなければならなかった。降りた駅からは温泉もキャンプ場も遠く、どうしようかと相談していた二人に声を掛けてきたのは通り掛かった温泉の従業員で、促されるがままに車に乗ると舗装されていない道をガタガタと進んだ。日が暮れ掛けた頃に到着したキャンプ場には立派なコテージが並んでおり、出迎えた老婆は宿泊客をもてなすために村のみんなで建てたのだと言った。二人は早速この村の名所の露天風呂に浸かったが、しよりは愛子から圭一との関係はもう無理なのかと尋ねられ、浮気の一回くらい許してあげればいいのに言われたことに腹を立てた。たくさんの人と付き合っている愛子に私の気持ちなんてわかるはずない、と。二人の間に険悪な空気が漂い始めるとそれを察したしよりは先に出て行き、愛子は彼女を見送りながら湯桶の中のタオルに隠した携帯電話を取り出した。そして「後は予定通りに」と誰かに伝えた。

川のほとりの大きな石に座るしよりは圭一から届いたメールを見ながらこれまでの彼との経緯を思い出していたが、過去と決別するために携帯電話を谷底へ投げ捨てた。すると山中に鳴り響く何かを叩くような音が聞こえたため怖くなってコテージに戻った。いくつもある鍵を掛けホッと息をつくと部屋の何処から携帯電話の着信音が聞こえた。自分の物ではないその着信音の出処を探しているうちにたどり着いたのは二階の押し入れで、恐る恐るその電話に手を伸ばし通話ボタンを押すと「早くそこから逃げろ!足を切り落とされるぞ!」という男の声が聞こえた。どうしていいかわからず座り込んでいると大きなドアのノック音が突然室内に響いたのだった。用心しながらドアを開けると、食事の用意が出来たと知らせにきた老婆だった。老婆がコテージから離れて行くと再び着信音が鳴り、奴らに捕まったら生贄にされてしまうぞと男は警告した。しよりは悪戯を疑い、この電話が自分の物ではないと言うと男は驚いたのだった。電話が彼の妹の物だと言われたしよりが経緯を説明すると、男はひどく落胆した。そのとき部屋の照明が消え固定電話のベルが鳴った。これからくると言う老婆にもう寝ると断って切ると、しよりは生贄にされるという話の説明を男に求めた。すると彼は城南大学で民俗学を研究している物部明だと名乗り、この村の風習について話し始めた。

屋台的映画館

プロフィール

HN:
砂月(すなつき)
性別:
非公開
自己紹介:
ブログ主はインドア派大分トリニータサポーター

 

P R

 

フリーエリア