日活
配給:日活
製作年:1972年
公開日:1972年12月16日 併映「(秘)弁天御開帳」
監督:加藤彰
企画:伊地知啓
脚本:加藤彰
撮影:姫田真佐久
美術:渡辺平八郎
録音:福島信雅
照明:川島晴雄
編集:鈴木晄
音楽:月見里太一
助監督:高橋芳郎
色彩計測:田村輝行
現像:東洋現像所
製作進行:青木勝彦
技斗:田畑善彦
出演:中川梨絵 宮下順子 山田克朗 絵沢萠子 葵三津子
アメリカンビスタ カラー 70分
商事会社の営業部で次長を務める織部史郎は渋谷駅前で若い女性と待ち合わせをしていた。彼女は織部の部下の桐野しのぶで、二人はある場所へ向かった。そこはビル上階のレストランで、織部としのぶがコーヒーを飲んでいると男女が時間通りに現れた。女性は織部の妻の妙子で、男性は楠見というインテリアデザイナーだった。これは織部夫妻が楠見のためにセッティングした見合いの席だったのだ。食事の後に楠見はタクシーでしのぶをマンションまで送って行くが、そのマンションで投身自殺があり目撃者となった二人は警察から証言を求められて足止めを食った。彼女を心配した楠見は部屋まで付き添おうとするが、しのぶはどうも失礼しましたと丁重に断った。部屋に入ると彼女はバッグをソファーに放り投げ、電話を苦々しく睨みつけた。そして電話を早く取り払って欲しいと管理人室にクレームの連絡すると、花瓶に差してある花を全て引き抜き窓から投げ捨てた。花束が落ちた場所はチョーク・アウトラインのすぐ傍だった。一方、しのぶと別れた楠見は情婦の英子が住むアパートに向かった。
今回の見合いは織部が常務の知り合いに頼まれて渋々引き受けたものだった。楠見の両親は乗り気らしいがしのぶは欠勤が続いていた。織部は肌が白いのは病弱だからなのではないかと考えていたが、妙子は女の勘でそうではないことを見抜いていた。彼女はしのぶがお嬢さんの気まぐれで会社務めをしているのではないかと考えており、もしそうであればこの話を早くまとめて楽になろうとしていたのだ。妙子に急がされてしのぶの返事を聞くことになった織部は彼女のマンションを訪ねることにした。この間の見合いの件について聞きたくて様子を見に来たと告げるとしのぶは恐縮して頭を下げた。部屋に通された織部が楠見について尋ねると、しのぶはいい方だが女性と遊んでいるように感じたと答えた。そして自分が生まれつき心臓が弱くて小学生の頃にこのままでは二十歳まで生きられないと医師に言われたことを告白した。母親は結婚しろと口では言うものの結婚生活が無理であることは承知で、だからこそ独りでマンション暮らしをさせてくれていると泣き崩れた。余命よりも二年長く生きている今、短い一生を楽しく遊んで暮らして行くなんていう気持ちにはなれないと声を絞り出すと、織部はそれ程のことだとは知らなかったと絶句した。しのぶは諦めて帰ろうとする織部を引き留め紅茶を飲んで行ってくださいと言った。彼は出されたカップを口元に近づけるが、鼻をつく臭いでそれに毒が入っていることに気づいた。するとしのぶは入社した時から織部のことが好きでたまらず、それならば一緒に死にたいと言った。
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