東映(京都撮影所)
配給:東映
製作年:1984年
公開日:1984年1月14日
監督:中島貞夫
企画:日下部五朗 奈村協
原作:宮尾登美子
脚本:松田寛夫
撮影:森田富士郎
音楽:黛敏郎
美術:井川徳道 佐野義和
照明:増田悦章
編集:市田勇
助監督:清水彰
録音:栗山日出登
整音:荒川輝彦
記録:森村幸子
装置:太田正二
装飾:福井啓三
背景:西村三郎
絵画指導・題字:山本六郎
絵画制作・協力:白数徳郎 宮本道夫 藤森哲朗 秋好泰海
美粧結髪:東和美粧
衣裳:黒木宗幸
舞踊振付:藤間紋蔵
演技事務:下川護
進行主任:山本吉應
出演:名取裕子 風間杜夫 三田村邦彦 水沢アキ 小林綾子
アメリカンビスタ カラー 145分
安政五年、貧しい農家で生まれ育った勢以は九歳の時に養女に出された。勢以の養家である島村家は京都でちきりやという葉茶屋を営んでおり、主人の甚八は彼女を本当の子供のように育てた。勢以が十八歳の時に三百年続いた徳川幕府が倒れ、その翌年の明治二年に養父母が相次いで世を去った。翌明治三年、世話人の紹介により壬生寺で御華足という供物を盛る台の彫物職人をしていた若者を婿養子に迎えたが、五年後の明治八年に夫は二児を残して急死した。勢以は二十六歳で若後家となり、心配した母親の麻はちきりやを訪れると女手一つで食べていくのは大変だから、家族が共倒れになるのなら長女の志満を養女として手放した方がいいと助言した。勢以は自分が働けば何とか暮らして行けるだろうと考えており、それを聞いた麻が女子はどうせ嫁に出さなければならないのだから遅いも早いも同じだと言った。それが養女に出された理由だと知った勢以は信念を貫くことにした。その夜、自分が養女に出されるのではないかと不安を覚えた志満は赤ん坊である妹の津也の目を潰そうとした。茶の手揉みをしていた勢以はそのことに気づくと急いで止めさせるが、志満はその時に囲炉裏の鉄瓶を倒してしまい右腕に火傷を負った。この件をきっかけにして勢以はこれまで以上に二人に愛情を注ぐことに決めた。
津也は小学校に上がると担任の西内太鳳のおかげで絵の才能を開花させた。母を描いた絵が展覧会で賞を取ったことから西内は卒業したら画塾へ行くことを勧めた。だが女性が画家として食べて行くのは不可能に近いと考えていた勢以は反対した。すると志満は彼女の分まで家の手伝いをするから望みを叶えて欲しいと懇願した。津也の頑固で気の強い性格は母親譲りで、卒業すると画家の高木松溪が主宰する松溪塾に通った。そこで筆の使い方から始まる技法を習得した彼女は十六歳で島村松翠を名乗り、明治二十三年の第三回内国勧業博覧会に「四季美人図」を出品して一等褒状を受賞した。その絵は来日中だった英国皇族のコンノート殿下が買い上げたということで忽ち話題になり、そのことを新聞の記事で知った勢以は涙ながらに喜んだのだった。
屋台的映画館
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