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吼えろ鉄拳

  • posted at:2019-02-05
  • written by:砂月(すなつき)
ほえろてっけん
東映(京都撮影所)
配給:東映
製作年:1981年
公開日:1981年8月8日 併映「野菊の墓」
監督:鈴木則文
企画:日下部五朗 本田達男
脚本:鈴木則文 井上眞介 志村正浩
撮影:北坂清
照明:加藤平作
録音:荒川輝彦
美術:園田一佳
編集:市田勇
助監督:藤原敏之
記録:森村幸子
装置:太田正二
装飾:小谷恒義
背景:西村三郎
衣裳:東京衣裳
美粧結髪:東和美粧
演技事務:藤原勝
スチール:中山健司
音響効果:永田稔
擬斗:斉藤一之
宣伝担当:丸国艦 茂木俊之 小田和治
企画補:佐藤公彦
進行主任:野口忠志
協力:東映俳優センター
音楽:羽田健太郎
主題歌:「青春の嵐(ハリケーン)」真田広之
フラメンコ・ダンス指導:岡崎義隆
奇術指導:広瀬良雄
腹話術指導:小泉みつる
ボクシング指導:権藤正雄
協力:サニ千葉エンタープライズ ジャパンアクションクラブ
アクション監修:千葉真一
出演:真田広之 志穂美悦子 山下美樹 横山エミー 黒崎輝
アメリカンビスタ カラー 95分

アメリカ・テキサス州の牧場で働く響譲次は父危篤の知らせを聞き急いで自宅に戻った。彼の父・鉄心は空手の達人だったが、今は闘病生活を送っていた。鉄心は今際の際に譲次が自分の子ではないことを告げ、お前の人生を狂わせたのは自分だと悔いた。そして真実を書き記した手紙を渡すと息を引き取ったが、譲次の受けた衝撃は計り知れないものだった。18年前、青雲の志を抱いて沖縄から本土へ渡った鉄心だったが、現実は厳しく忽ちその日の食べ物にも事欠く悲惨な暮らしに陥った。その頃、週刊誌で裕福な生活を送る日野原氏のことを知った彼は、幼い3人の子供のうち双子の一方を仲間と共謀して誘拐した。それが譲次だった。諍いがもとで仲間を殺した鉄心は彼を連れてアメリカに渡ったのだった。亡くなるひと月前、ヒューストンの病院へ行った鉄心は偶然日本の新聞を目にし、日野原家の消息を知って愕然とした。3年前に日野原夫妻は自家用機の事故でこの世を去り、双子の兄・透も海外で謎の失踪をしたという。それ以来、鉄心は一日も早く譲次が日本へ帰ることを望んでいたのだった。

ポートアイランド博覧会で賑わう神戸に到着した譲次はメモに従って中央区北野町にある王文元の屋敷にたどり着いた。どうしようかと迷っていると相棒であるリスザルのピーターが塀を乗り越えて中に入って行ったため、勝手に入って捜すことにしたのだがプールで遊ぶ女の子たちに痴漢と間違われてしまった。その様子に驚いた王は慌てて熊沢青厳に電話を掛けた。日野原透が帰ってきた、と。だが熊沢は香港の楊玄徳のシンジケートから始末をつけたという連絡を受けていると真っ向からそれを否定した。

誤解が解け、さらに王邸へくる途中で財布を掏られたことに王の娘・麗花たちから同情された譲次は、連れてこられた喫茶カサブランカで腹を満たした。マスターのボギーから一文無しでどうやって生活して行くんだと心配される中、店に入ってきたのは王邸までバイクで連れてきたチンピラの三吉だった。彼は譲次から掏った財布の金でツケを払いにきたのだ。相手が観念したことで譲次のもとに無事に財布は戻ってきたが、今度は執事風の男が店に現れ彼は大きな屋敷に連れて行かれた。そこは譲次の叔父に当たる資産家・日野原一輝の屋敷で、譲次の姉である盲目の千尋も住んでいた。譲次は自己紹介しなければ千尋が間違うほど声が透とそっくりであり、一輝は現代の奇跡だと心から喜んだ。千尋は譲次を自室に招き入れるとオルゴールの音色を聞かせた。それは19歳の誕生日に父親からプレゼントされた特注品で、今も彼女の心の支えとなっていた。千尋は9歳を過ぎて網膜剥離になり、透は必ず姉さんの目を治すと医学の道を選んだ。そしてロンドンの大学へ留学したのだが行方がわからなくなったのだ。話を聞き終えた譲次は、透が帰ってくるまで僕が姉さんの杖になりますと言った。

屋台的映画館
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八甲田山

  • posted at:2019-02-02
  • written by:砂月(すなつき)
はっこうださん
橋本プロダクション=東宝映画=シナノ企画
配給:東宝
製作年:1977年
公開日:1977年6月18日(青森県先行公開 1977年6月4日)
監督:森谷司郎
製作:橋本忍 野村芳太郎 田中友幸
企画:吉成孝昌 佐藤正之 馬場和夫 川鍋兼男
原作:新田次郎
脚本:橋本忍
撮影:木村大作
美術:阿久根巌
録音:吉田庄太郎
照明:高島利雄 大沢暉男
音楽:芥川也寸志
助監督:神山征二郎 橋本信吾 永井正夫 桃沢裕幸 中沢新一
編集:池田美千子
記録:米山久江
タイトル:米内康夫
現像:東洋現像所
製作担当:小山孝和
出演:高倉健 北大路欣也 加山雄三 三國連太郎 丹波哲郎
シネマスコープ カラー 169分


明治三十四年十月、第四旅団司令部において重要な会議が行われた。日本とロシアとの海戦は時間の問題となっており、軍はそれに備えて兵器の充実や兵の教育に力を入れていた。だが中林大佐には現陸軍に準備不足と感じている部分があった。それは寒地訓練だった。予測される戦場は遼東半島から満州に掛けてであるが、先の日清戦争では寒さのためにこの遼東半島で四千人もの凍傷者を出したことで軍の作戦に大きな支障をきたした。次に戦う相手はシベリアの寒さに耐えうる装備と極寒零下数十度においてもなお戦う術を修得するロシア軍であることから、それに対する訓練は一日でも怠ることは出来なかった。また海戦ともなればいち早いロシア艦隊は津軽海峡と陸奥湾の封鎖を行い、その際に艦砲射撃で鉄道や道路を破壊される恐れがあった。そして青森ー弘前、青森ー八戸方面がそれぞれ遮断されると八甲田山系を縦断する以外に方法がなかった。そこで中林は師団参謀長としての私案である寒地装備訓練と同時に万が一の場合の交通路確保の作戦を中隊もしくは小隊編成で行う八甲田山の踏破による調査を提案した。そして友田少将は雪中行軍の経験者である青森歩兵第五連隊の神田大尉と弘前歩兵第三十一連隊の徳島大尉を指名した。会議後、弘前と青森の双方から出発して八甲田山辺りですれ違うという行軍計画を児島大佐が提案すると、自然条件が同じであることを考えればそれが最適だと津村中佐も同意した。

行軍が翌年の一月末か二月初めと決まり、準備のために田茂木野村に出向いた神田は村長の作右衛門から話を聞いた。だが様々なことを聞くうちに今回の作戦が如何に無謀であるかを思い知らされた。その季節は雪が深い上に風が強く一度踏み込んだら生きて帰れない、まるで白い地獄だというのだ。失敗は絶対に許されないことから神田は徳島と情報交換を行ったが、その中で踏破が中林や友田の命令ではなく連隊の責任ということになっていることを知り驚愕した。だがもう引くに引けない二人は資料を参考にして具体的な方法を話し合った。神田が別れ際に今度会うときは雪の八甲田の何処かでと言うと、徳島は静かに頷いた。

徳島は第三十一連隊の雪中行軍計画書を提出した。十泊十一日で行程二百四十キロを踏破するいう無謀な計画書を読んだ児島は驚きどういうことかと説明を求めた。すると徳島は壁に貼ってある地図の前に立ち、弘前から十和田湖に進み南側に沿って進んだ後、北上して八甲田山の北側を進んで弘前に戻るという計画を説明した。そしてその行程になったのは連隊長の責任だと言うと児島は反論出来なかった。徳島は続けて、第五連隊が八甲田を経て八戸方面に向かうため、我々がすれ違うには迂回する以外に方法はないと言った。行軍は見習い士官や下士官を主力にした二十七名の編制するが、それは研究に主眼を置いていることと、いざという場合に国民に対して申し訳が立つからだ。徳島は旅団司令部で安請け合いしたことを後悔していると胸の内を正直に打ち明けた。児島はそれを黙って聞くしかなかった。

屋台的映画館

忍者武芸帖 百地三太夫

  • posted at:2019-01-30
  • written by:砂月(すなつき)
にんじゃぶげいちょうももちさんだゆう
東映(京都撮影所)
配給:東映
製作年:1980年
公開日:1980年11月15日 併映「さらば、わが友 実録大物死刑囚たち」
監督:鈴木則文
企画:日下部五朗 本田達男
脚本:石川孝人 神波史男 大津一郎
撮影:中島徹 小川原信
照明:海地栄
録音:平井清重
美術:佐野義和
音楽プロデューサー:すずきまさかつ
音楽:バスター
主題歌:「風の伝説」真田広之
編集:市田勇
助監督:俵坂昭康
記録:石田照
装置:野尻裕
装飾:渡辺源三
擬斗:上野隆三
背景:西村三郎
衣裳:森護
美粧結髪:東和美粧
スチール:中山健司
整音:荒川輝彦
宣伝担当:丸国艦 茂木俊之
演技事務:寺内文夫
舞踊振付:一の宮はじめ 藤間紋蔵
進行主任:野口忠志
協力:東映俳優センター サニー千葉エンタープライズ ジャパンアクションクラブ
アクション監督:千葉真一
出演:真田広之 志穂美悦子 蜷川有紀 火野正平 千葉真一
アメリカンビスタ カラー 117分

天正九年三月、織田信長は羽柴秀吉に命じて伊賀の総人口を遥かに上回る大軍を送り、伊賀忍者の皆殺しを謀った。それは度重なる合戦の中で散々痛めつけられたことへの激烈な報復だった。劣勢に立たされた百地砦では権力者の百地三太夫に甲賀軍率いる不知火将監が助力を申し出たが、彼は秀吉の犬だった。秀吉の狙いは伊賀忍者の皆殺しと百地一族が管理する隠し金山を掌握することだったが、三太夫を倒したしたものの金山の在り処の鍵となる小柄を見つけることは出来なかった。その頃、屋敷で三太夫死去の知らせを受けた妻千代は、百地一族の証である狼の印が入った短刀を幼い鷹丸に預けると鶉火の平六とともに逃げるように促し、自身は自害して果てたのだった。屋敷に踏み込んだものの一足遅れた将監は、弟の幻之介に三太夫の忘れ形見鷹丸を始めとする一族を女子供ひとり残らず皆殺しにするよう命じた。闇夜に紛れて逃げる平六を待ち受けていたのは兄の弥藤次や里の者たちだった。だが追ってきた甲賀忍者によって次々と斬殺され、岸壁に追い込まれた平六は鷹丸を抱えたまま海に飛び込んだのだった。天正十年六月、信長は明智光秀の謀叛により本能寺の炎に消え去った。その動きをいち早く察知した将監が密かに秀吉に通報すると、自らの手を汚すことなく障害を取り除けたことに狂喜した。主君の弔合戦の旗印を高々と掲げた秀吉軍は摂津山崎にて光秀軍を撃破。敗残の光秀は待ち伏せていた将監に討ち取られ彼の天下は三日で終わりを告げた。

十年が経った文禄の世、海岸に一艘の小舟が流れ着いた。その小舟に乗っていたのは明国育ちの青年で、京の町にたどり着くと何やらおかしな物が目に留まった。立札には昨今世間を騒がす盗賊石川五右衛門を京都所司代に知らせた者には大判五枚、捕縛した者には大判十枚を進呈すると書いてあったのだ。五右衛門は義賊だと庶民の間では専らの噂だったが、青年にはどうでもいい話だった。彼が盛り場を歩いていると客引きの門太に芝居小屋へ無理矢理押し込まれた。そこでは陸奥のお艶一座による歌舞伎の公演が行われていたが、その妖艶な内容に興奮した役人が舞台に上がり大混乱になった。その様子を見兼ねた青年は明国の武術で次々と役人を倒して行ったのだった。町人たちの歓声を浴び意気揚々を去って行く青年の腰に刺さる小柄が百地家の守り刀だと気づいた門太は猿回しの川次郎、右衛吉と後を追った。そこに騒動を聞きつけてやってきた所司代は異国人を捕らえようとしたが、彼の小柄を見て目の色が変わった。所司代は幻之介だった。青年は持ち前の身軽さで包囲の網を掻い潜ると屋根伝いに逃げて行った。寺の前で休む青年は、追いかけてきた門太たちの顔をまじまじと見てようやく彼らが伊賀で一緒に育った幼馴染であることに気づいた。青年は沖を通り掛かった明国の船に助けられ命拾いした鷹丸だった。

屋台的映画館

日本一の男の中の男

  • posted at:2019-01-27
  • written by:砂月(すなつき)
にっぽんいちのおとこのなかのおとこ
東宝
配給:東宝
製作年:1967年
公開日:1967年12月31日 併映「ゴー!ゴー!若大将」
監督:古澤憲吾
製作:渡辺晋
脚本:笠原良三
撮影:永井仙吉
美術:小川一男
録音:増尾鼎
照明:隠田紀一
整音:下永尚
音楽:広瀬健次郎 萩原哲晶
主題歌:「なせばなる」植木等
・・・:「そうだそうですその通り」植木等
監督助手:高橋薫明
編集:黒岩義民
合成:松田博
現像:東京現像所
製作担当者:坂井靖史
出演:植木等 浅丘ルリ子 谷啓 水谷良重 藤あさみ
シネマスコープ カラー 94分

丸菱造船の熱血営業社員・小野子等は、15万トン級の貨物船を2隻必要とする東南アジアのバイヤーのミスター・ジャンボと商談を行うことになった。先方から午後1時に伺うという電話が掛かり、そのことを丸川営業課長に報告すると今日中に契約に持って行くぞと意気込んだ。そんな彼に丸川はプライベートな相談があると食堂へ誘うと、来月の人事で営業部の第一係長に昇進が内定したことを伝えた。そしてそのついでに懐から封書を取り出すとじっくり見給えと手渡した。中には女性の写真が入っており、丸川は妻の妹を結婚相手に推薦しようとしたのだ。だが等は、好きとか嫌い以前の問題で死んだ母のような理想の女性がみつかるまでは結婚しない主義だと言って断った。どんな人だったのかと丸川が尋ねると、亭主に対して絶対服従、従順貞節、無抵抗主義だったと等は答えた。今時そんな人がいるわけないじゃないかと呆れた丸山は、結婚は理屈ではなく寂しさを埋めることだと言った。そんなことなど馬耳東風の等はテーブルのカレーを一口頬張ったが、約束の時間に遅れると言ってそそくさと去って行った。

等がジャンボを引き連れて工場内を案内していると、ヘルメットをかぶらずに場内をうろつく老人が目に留まった。ケガでもしたらどうするんだと怒鳴りつけたその人は、会長の大神田剛之助だった。それを知っても等の勢いは止まらず、それなら尚更気をつけるべきで現場は現場にまかせるべきだときっぱり言った。貨物船1隻の契約を取り上機嫌で等がデスクに戻ってくると、丸川が渋い顔で待っていた。松田人事部長が呼んでいるというのだ。丸川から写真を返せと言われたが、いよいよ係長に昇進かと胸を躍らせて向かうと予想外の事態が待っていた。明日付で世界ストッキング株式会社に転勤せよというのだ。何故畑違いの会社へ行くことになるのかと抗議すると、これは会長直々の命令なのだという。しかも待遇はこれまでと同じと聞き、頭にきた彼は深酒をして家に帰った。思わず母の写真に向かって愚痴をこぼすと、彼女は写真から飛び出してきて「耐え難きを耐え、忍び難きを忍び、花も嵐も踏み越えて、行くが男の道ですぞ」と助言した。それを聞いて心を入れ替えた等は靴下業界で日本一を目指すことに決めた。

翌日、新しい会社に出社した等は春山人事部長のところへ挨拶に行った。だが硬い鉄製品を売っていた君が婦人用の柔らかい靴下を扱うことが出来るのかと嫌味を言われる始末。すると等は務まらないものも務めちゃいますと豪語し、銀座にある直売店ショールームの営業を任されることになった。主任の花岡輝子から商品知識を頭に入れなさいとカタログを渡されると、それをパラパラとめくると早速来店した二人の女性客に声を掛けた。婦人用の靴下は実用に供するだけでなく亭主の目を惹きつけるだけの魅力のある物でなくてはならないので、女子店員に尋ねるよりは僕に任せてくださいと言った。すると二人は納得し、口上に乗せられて1ダースずつ購入したのだった。次にきた若い3人娘に新製品を紹介した等がふとよそに目をやると、母に生き写しの女性がいることに気づき息を飲んだ。早速売り込みに掛かったが、彼女は時々店舗を訪れてその様子を社長に報告する秘書課長の牧野未知子だった。

屋台的映画館

電光空手打ち/流星空手打ち

  • posted at:2019-01-23
  • written by:砂月(すなつき)
でんこうからてうち/りゅうせいからてうち
東映(東京撮影所)
配給:東映
製作年:1956年
公開日:1956年1月29日 併映「大地の侍」
監督:津田不二夫
企画:光川仁朗
原作:牧野吉晴
脚本:小林大平
撮影:福島宏
録音:加瀨壽士 廣上庄三
照明:森澤淑明
美術:中村修一郎
音楽:大久保徳二郎
編集:長澤嘉樹
装置:長北喜二次
記録:城田孝子
監督補佐:加島昭
メーキャップ:高木茂 伊奈モト
スチール:山守勇
殺陣:片岡一
進行担当:大木福榮
琉球芸能指導:川田禮子と守禮会
出演(電光空手打ち):高倉健 浦里はるみ 藤里まゆみ 山形勲 神田隆
出演(流星空手打ち):高倉健 浦里はるみ 波島進 山形勲 神田隆
(電光空手打ち):スタンダード モノクロ 59分
(流星空手打ち):スタンダード モノクロ 58分
 
大正の頃の沖縄。中里東恩のもとで知倒流唐手の修行に励む忍勇作は、師匠がライバル視する名越義仙に辻試しをしようと考えた。早朝、岸壁で一人鍛練を行う義仙に勇作は岩陰から忍び寄ると背後から飛び掛かった。だがそれをひらりと交わした義仙は命を粗末にするでないとたしなめた。そして血気盛んな勇作に対し、私の唐手は君たちのように人を襲うためのものではないと言った。それを詭弁だとして勇作は勝負を仕掛けようとしたが、凛と立つ義仙には打ち込む隙が無くとうとう観念した。己の未熟さを悟った彼は許してくださいと土下座して許しを請うが、義仙は無言で立ち去った。道場に戻った勇作は、早朝から姿を見せなかったことで心配する東恩の娘恒子や門弟の赤田鉄才に俺たちの相手ではなかったと言った。彼が義仙に勝負を挑んだことを知った鉄才が負けたのかと問い詰めると、勇作は一歩も踏み込めなかったと言った。俺が性根を叩き直してやると鉄才が身構えても勇作は戦おうとせず、恒子がその理由を尋ねると、彼は義仙の計り知れない大きさに打たれたと言った。恒子は勇作のことを愛していたが裏切られることになるとは思っていなかったのだ。そして唐手の技だけでなく真の精神を知りたいと答えたため、恒子は知倒流が真の唐手ではないと彼が考えていたことに衝撃を受けたのだった。東恩は息子の克明が頼りないことを理由に後継者として勇作に継がせようと考えていた。父の苦悩を知っていた恒子は知倒流の資質を持ったあなたが義仙のもとへ行けば必ず東恩から命を狙われると警告した。だが勇作は考えを変えようとはしなかった。

勇作は義仙の弟子になるために屋敷の門前で日が暮れても待ち続けた。夜が深まった頃、門弟の比嘉三郎がやってきて、いくら待っても先生は何も教えてくれないと言った。そして東恩の口癖が「自ら会得せよ。唐手の極意は一切の空(くう)だ。」であることを伝えると、勇作はその言葉が何を示しているのかを懸命に考えた。雨が降りだしても動かずにいると、部屋から出てきた義仙はびしょ濡れの彼を不憫に思い、三郎に入れてあげなさいと言った。

東京で文部省主催の運動体育展覧会開催されることになり、沖縄県の担当者は義仙を呼び出すと古来から伝わる沖縄唐手術を紹介してはどうかと意見を聞いた。すると義仙は出席することに賛成はしたが、空手の意義をうまく伝えられるか自信がなかった。そのことは東恩の耳にも入り、知事が何の断りもなく義仙に決めたことに苛立っていた。すぐさま県庁へ乗り込み抗議を行ったが、文部省の主催とあって知事は義仙の方が適任だと考えたのだ。すると東恩は、代表選手を決定する唐手大会の開催を要求し、勝った者を派遣するのが公平なやり方だと言った。

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