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ピーナッツ

  • posted at:2018-01-10
  • written by:砂月(すなつき)
ぴーなっつ
「ピーナッツ」製作委員会(マセキ芸能社=コムストック=テレビ朝日=博報堂DYメディアパートナーズ=ケイマックス=イキナエンタテインメント)
配給:コムストック
製作年:2005年
公開日:2006年1月28日
監督:内村光良
製作:柵木秀夫 長澤一史 亀山慶二 安永義郎 工藤浩之 白内寿一
企画プロデューサー:春名慶
プロデューサー:田村正裕 古郡真也
協力プロデューサー:山本隆司
脚本:内村光良 益子昌一
音楽:ロケットマン 梅堀淳
撮影:谷川創平
美術製作:津留啓亮
美術進行:大倉謙介
照明:木村伸
録音:内田誠
編集:田口拓也
VFXディレクター:山本雅之
VFXスーパーバイザー:稲葉貞則
サウンドデザイナー:藤村義孝
助監督:長瀬国博
製作担当:白石治
主題歌:「君の中の少年」NO PLAN
製作プロダクション:ウイルスプロダクション
出演:内村光良 三村マサカズ 大竹一樹 ゴルゴ松本 レッド吉田
アメリカンビスタ カラー 115分

スポーツライターの秋吉光一は生まれ故郷である山梨県富士沢地区に久しぶりに戻ってきた。だが商店街にかつての面影はなくシャッター通りと化していた。彼が最初に向かった先は、1995年の甲州軟式野球大会で優勝をともに経験した後輩で草野球チーム「富士沢ピーナッツ」のメンバーの相楽和雄だった。彼が経営する酒屋は辛うじて営業を続けていたが、客足が少ないことで棚の商品には埃が被っていた。突然の訪問にボーっとしていた和雄は一瞬で正気に戻り、大事にしていた光一の本「たかが草野球」を見せて興奮気味に語った。地元で塾の講師をしていたときにピーナッツのことを書いた原稿を送ったら出版社に認められて上京したのだ。気になっていたそのピーナッツのことを尋ねると、和雄は年々メンバーが減り続け試合にならないことがあると説明した。それを聞いた光一は、もう一度野球をやりたいからメンバーに入れてくれないかなとさりげなく言った。夏のトーナメントの登録締め切り日にはまだ時間があり、参加してくれそうなメンバーを急いで探せば何とかなるのではないかと思っていたからだ。そうまでして熱心に野球をやろうとする光一に和雄はある質問を投げかけてみた。仕事はどうするんですか、と。動揺した光一は目を逸らし、ひと通り終えたところだから長期の休みを取ってしばらくここにいようと答えた。

和雄がまず最初に向かったのは宮本音楽堂というCDショップだった。現メンバーで店長の宮本良一は、野球のセンスは全くないが足は人一倍速かった。次に向かったクリーニング店・ニコニコ堂には秋山ハルオ、ナツオ、アキオという全く似ていない三兄弟がおり、商業連合の組合長で監督の草野務の関係で入部した。光一が気になっていたのは優勝メンバーで、そのうちのひとりの赤岩登は幼稚園で働いていた。彼の妻は当時マネージャーを担当していたアカネで、今は乳がんで闘病していることから和雄は誘うのを遠慮していたのだった。和雄が次に案内したのは商業連合の入るビルだった。そこの組合長室にはピーナッツに関する数々の品が飾られており、二人が思い出話に花を咲かせていると務が現れた。

三人が訪れたのは小鉄という名の小料理屋だった。その店の主人も元ピーナッツのメンバーで、光一がトリプルプレーを決めた決勝戦で最後までマウンドを守ったものの右肩を壊した勝田一鉄だった。その影響で野球から足を洗った彼は脱サラして板前になり、金髪の女房トスカーナと店を切り盛りしていたのだ。何しに戻ってきたんだと務が尋ねると、光一はただ野球がやりたかっただけだと答えをはぐらかした。やがて話は商店街の再開発のことになり、和雄は絶対反対だと怒鳴った。その計画は地区一帯に商業施設や公共公益施設、観光施設などの開発が予定されており、野球場には都市型住宅が建設されることになっていたのだ。野球場がなくなることを知った光一はやるせない気持ちになった。

屋台的映画館
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真田風雲録

  • posted at:2018-01-05
  • written by:砂月(すなつき)
さなだふううんろく
東映(京都撮影所)
配給:東映
製作年:1963年
公開日:1963年6月2日 併映「恋は神代の昔から」 
監督:加藤泰
企画:小川貴也 翁長孝雄
原作:福田善之
脚本:福田善之 小野竜之助 神波史男
撮影:古谷伸
照明:井上義一
録音:中山茂二
美術:井川徳道
音楽:林光
振付:関矢幸雄
色彩考証:重達夫
編集:宮本信太郎
助監督:鈴木則文
記録:田中美佐江
装置:木津博
装飾:宮川俊夫
美粧:林政信
結髪:桜井文子
衣裳:三上剛
擬斗:足立伶二郎
進行主任:並河正夫
主題歌:「真田隊軍歌」ジェリー藤尾
・・・:「あなたなんだかおしえてよ」ジェリー藤尾
出演:中村錦之助 ジェリー藤尾 ミッキー・カーチス 渡辺美佐子 本間千代子
シネマスコープ カラー 90分

慶長五年関ヶ原の頃、戦乱の世をたくましく生き抜く子供たちがいた。ずく入の清次を頭に弟のどもりの伊三、舎弟分のかわうその六、そしてむささびのお霧の四人組だ。彼らは戦場の死体から金目の物を剥ぎ取っては金に換えて飢えを凌いていた。ある日、いつものように草むらから戦場の様子を窺っていると、取り残された子供をかばいながら戦う分が悪い足軽がいたことからお霧は石を投げて加勢した。勝敗が決し助太刀料欲しさに四人が駆け寄ると、豊臣方で戦い父や兄を失った筧十蔵は世を儚み自害しようとした。それを見て驚いた清次は仲間たちとともに力ずくで止めると、身寄りのない者同士で手を組まないかと提案した。子供の世界には豊臣も徳川も関係ないからだ。盗人として生きることに抵抗を感じていた十蔵が返事を渋っていると、木の上で話を聞いていたはなれ猿の佐助が自殺の方が賢明だと言った。彼は不思議な力を使って西方についた武士を何処にも就職させないと言った東軍本陣の家康の姿を覗いてきたからだ。十蔵は彼が刺客ではないかと疑うと佐助は十蔵の心を読み抜き自分の生い立ちを話し始めた。

十四年前、信州戸隠の山深くに大きな流れ星が白く長く尾を引いて落ちた。そのイン石の放射能が赤ん坊だった彼の体に作用したのだ。その後、老夫婦によって育てられたが、一年経ったある日、山賊一派が家に押し入った。ところが不思議な力によって一瞬のうちに退治したのだった。月日が流れ、二人が亡くなると佐助は本当に一人ぼっちになった。姿を消したり人の心を読み抜く彼を皆気味悪がって相手にしなかったからだ。

話を終えた佐助のことを信用する者はお霧だけだった。あばよと姿を消しても匂いを頼りについてくるのだ。その訳を尋ねると、好きになったとお霧は答えた。すると佐助は彼女の顔の前に両手をかざし人の気持ちは変わるものだと言った。心の中が見通せる彼にとって心変わりほど苦痛なことはなく、これまでにそれを何度も味わってきたのだ。再びそうならないためにお霧を深い眠りに落としその隙に姿を消した。

十数年後、清次(三好清海入道)たちは立派に成長していた。一緒に旅を続けるのは彼の他にお霧、六(海野六郎)、伊三(三好伊三入道)、筧十蔵、そして戦場で泣いていた根津甚八だった。若者たちはお霧がいつも口ずさんでいる「愛しい人」という歌が誰のためのものか知りたくて仕方がなかった。やがて宿場にたどり着くと、お霧は何処かで嗅いだ懐かしい匂いを感じた。だがそれが何なのか思い出すことが出来なかった。

屋台的映画館
がらすのかめんですがざむーびーおんなすぱいのこいむらさきのばらはきけんなかおり
「ガラスの仮面ですが」製作委員会(ポニーキャニオン=DLE= BS12ch TwellV=白泉社)
配給:ポニーキャニオン
製作年:2013年
公開日:2013年6月22日
監督:谷東
企画:井本直樹 椎木隆太 西村和晃 久保田博
製作:井本直樹 椎木隆太 西村和晃 久保田博
プロデューサー:中島純 原田拓朗 井上勝哉 中島英貴
ラインプロデューサー:後藤阿梨紗
アシスタントプロデューサー:白木薫 岩本隆宏
宣伝:安藤三四郎 中村美絵 市川裕一
広報:西岡理紗 片岡英理子 乙部のりえ
原作:美内すずえ
脚本:中野守
脚本協力:岸本卓 三好昭央
脚本設定:野々村友紀子
脚本設定協力:有限会社ブランチ
演出補佐:篠原由佳里
作画監督:西山司
音楽:烏田晴奈 加藤久貴
エンディングテーマ:「仮面の宴」Takamiy
劇中歌:「ロボ紅天女のテーマ」烏田晴奈
音響効果:出雲範子
録音:はたしょうこ
アニメーション制作:株式会社DLE
声の出演:中根久美子 白石晴香 高橋伸也 後藤ヒロキ 葉山いくみ
ワイド カラー 55分

中華料理店の住み込み店員の母とともに横浜で暮らす一見平凡な少女の北島マヤは、ひとたび演劇のことになると情熱を燃やした。ある日、近所の子供を観客にしてテレビの内容を公園で演じていると、たまたま通り掛かった往年の大女優・月影千草は彼女が持つ女優としての恐るべきポテンシャルに衝撃を受けた。演技指導を行うとその才能は開花し数々の舞台を経験することで着実に力をつけて行った。ところが父に映画監督、母に大女優を持つ芸能界のサラブレッド・姫川亜弓が現れたことで実力の差を思い知り、マヤはくじけそうになった。そんな彼女に救いの手を差し伸べたのは最大手芸能プロダクションの青年実業家・速水真澄だった。マヤの演技にひどく心を揺さぶられた真澄は陰ながら「紫のバラのひと」として手厚くサポートしたが、その正体を明かさなかったために何事にも仕事を優先する冷酷非道な速水の姿を彼女は本心だと信じ込んでいた。その後、マヤと亜弓の二人は多くの作品に出演し、互いの力を認めつつ月影が上演権を持つ伝説の舞台「紅天女」のヒロインを目指した。数々の試練を克服し、競い合い、やがてマヤは日本を代表する若手女優の一人となった。そんな彼女に思いを寄せる若手青年俳優・桜小路優は自らの思いを打ち明けるが、マヤの中では紫のバラのひとの存在が大きくなって行った。一方、マヤに対する自らの気持ちに気づき始めた速水は、フィアンセ・鷹宮紫織との間で気持ちが揺れ動いた。マヤと紫のバラのひととの恋の行方は?。そして紅天女のヒロインの座を射止めるのは誰?。

紅天女の稽古でマヤが落ち込んでいるのを見兼ねた桜小路は、気晴らしをさせるために彼女をデートに誘った。そしてそのついでに東京ヌカイシソーの展望台で愛の告白をしたのだがあっさりと振られてしまった。だが演技に頭を悩ませて寝不足に陥っていたマヤが彼の胸を借りて眠りにつくと、ここにきていることが月影に見つかったら大変なことになるのではないかと桜小路は心配になった。すると突然窓外の月に「ツキカゲ」というサーチライトの文字が浮かび上がり、空から巨大なピンクウサギが降ってきたのだ。そして速報ニュースをモニターで見た桜小路はその攻撃の首謀者であるコードネーム=ザ・ムーンの写真が月影だったことに驚いたのだった。倒れて行くヌカイシソーの展望台に空から現れたのは月影の付き人である小林源造で、マヤを救出するとヘリコプターで脱出した。

奈良県某所にある邸では救出されたマヤが静かに休んでいた。知らせを受けて亜弓と速水が駆けつけたが、それと同じ頃に桜小路もバイクでやってきた。源造に置いて行かれ爆発に巻き込まれた桜小路だったが、彼はそんなことではへこたれずにマヤの気配と匂いを辿ってきたのだ。邸は月影が隠れ家として使っているセーフハウスで、その彼女が何者かに誘拐されたのだ。月影は引退した舞台女優という仮面を被っているが、その裏では世界の巨悪とたった一人で戦う女スパイ「ザ・ムーン」として活動していた。そして源造はメカニックを担当するサポート役を引き受けていた。月影はある時は国際的なテロ組織に入り込んで内部から壊滅に追い込み、またある時は麻薬密売組織を一網打尽にして世界の秩序を保っていたが、過去のミッションで敵の罠にはまり毒ガスを浴びたことで体調を悪化させた。そして右目の視力を失ったのは舞台上のケガが原因だと本人が言い張っているが、これも敵に捕まったときの拷問が原因だった。時には集中治療室から出られない振りをしながら実は夜中に病院を抜け出してとある国の内戦を秘密裏に解決させたこともあったことから、彼女をマークしていた敵対組織に誘拐され今でも生きているのではないかと源造は考えていた。何故なら敵はいつか自分たちの前に立ちはだかるかもしれない千草の後継者の存在を恐れており、その謎の人物をおびき出すための罠に利用する可能性があるからだ。その後継者として月影が指名したのがマヤと亜弓だった。紅天女を演じるためにやってきた特訓は一人前のスパイを育てるためのものでもあったのだ。紅天女を演じる前に地球が滅んでしまえば元も子もない。そこで仕方なく亜弓が任務を引き受けると、隣の部屋から寝ぼけ眼のマヤが入ってきた。何も知らない彼女に事の顛末を速水が説明すると、マヤはノリノリで引き受けたのだった。

屋台的映画館

やさぐれ姐御伝 総括リンチ

  • posted at:2017-12-24
  • written by:砂月(すなつき)
やさぐれあねごでんそうかつりんち
東映(京都撮影所)
配給:東映
製作年:1973年
公開日:1973年6月7日 併映「やくざ対Gメン 囮」 
監督:石井輝男
企画:天尾完次
原作:凡天太郎
脚本:掛札昌裕 関本郁夫 石井輝男
撮影:わし尾元也
照明:井上孝二
録音:中山茂二
美術:雨森義允
音楽:鏑木創
編集:神田忠男
助監督:萩原将司
記録:黒川京子
装置:稲田源兵衛
装飾:宮川俊夫
美粧結髪:東和美粧
スチール:中山健司
演技事務:饗庭益雄
衣裳:豊中健
擬斗:土井淳之祐
進行主任:伊藤彰将
主題歌:「お蝶のブルース」池玲子
出演:池玲子 愛川まこと 春日朱美 城恵美 碧川ジュン
シネマスコープ カラー 86分

関西扇組一家に草鞋を脱ぐことになり神戸港に到着した猪の鹿お蝶は、女スリの朱実から麻薬の運び屋と間違えられ迎えにきていた人力車に乗った。邸に着いたときにはもう日がとっぷりと暮れており、玄関までくると突然の停電で辺りが見えなくなった。そこで車夫に付き添って中に入ると奥からろうそくを持った男が現れた。だがホッとしたのもつかの間、暗闇から現れた男たちに羽交い絞めにされ麻酔薬を嗅がされたのだった。意識を取り戻した彼女は梁から吊るされて身動きが取れなくなっていた。そこに男の指が伸び女陰をまさぐったのだが彼らの目当ての物は見つからなかった。お蝶が運び屋とは無関係であることがわかるとロープが外され、落下した彼女はショックで気を失った。

再び意識を取り戻したお蝶は目の前に男の顔が見えたことから右手に握った物で攻撃しようとした。彼は刑務所帰りの譲二という男で、見覚えのある車夫の後をつけてきたところにお蝶が横たわっていたのだ。勘違いは迷惑だと腕を掴み、派手なことをやったじゃないかと譲二が言うと、お蝶はようやく自分が置かれている状況を把握した。彼女の傍らには全裸の女が死んでおり、女陰が血飛沫を浴びた右手のドスでえぐられていたのだ。世間を騒がせている股裂き魔の濡れ衣を着せられたお蝶は必ず仕返ししてやると心に誓った。一方、邸を抜け出した譲二は待ち伏せしていた男たちに左腕を撃たれ飲み屋街に逃げ込んだ。するとキリストの好美という謎の女に匿われたのだった。

翌日、扇組をお蝶が訪ねるとそこは空き家になっていた。このことと自分が巻き込まれた事件が関連しているのではないかと考えたお蝶は神戸港へ向かい朱実に親分のところへ案内するように言った。お蝶が連れてこられたのはバラック小屋で、そこは酒場の名を借りた売春宿だった。あんたの子分に払い下げたいのがいるとお蝶は直談判したのだが、親分の半纏ババアは聞く耳を持たなかった。分からず屋の相手だとわかると彼女は力ずくで朱美を連れ出し、誰もこない蔵の中で車夫の正体を強引に聞き出した。十日程前、いつものように港で稼ぎをしていた朱美は三人組の男に捕まり宿に連れ込まれて廻された。そして親分に言えばそのときの写真をばら撒くと脅されたために従うしかなく、さらに友人を集めるように命じられた。男たちは彼女らをシャブ漬けにすることで自由を奪ったのだった。薬が切れ掛けて苦しむ朱美に洗いざらい話すことをお蝶が強要すると、港から神戸に入ってくる赤い襟巻をした女たちを三人のところへ連れて行く仕事を任されたことを話した。そしてそのアジトが一柳閣というホテルだとわかるとお蝶は早速翌日から様子を探ることにした。すると門をくぐって出てきたのは譲二だった。

屋台的映画館

わたし出すわ

  • posted at:2017-12-20
  • written by:砂月(すなつき)
わたしだすわ
アスミック・エース エンタテインメント
配給:アスミック・エース
製作年:2009年
公開日:2009年10月31日
監督:森田芳光
製作総指揮:豊島雅郎
プロデューサー:竹内伸治 三沢和子
ラインプロデューサー:橋本靖
エグゼクティブスーパーバイザー:黒澤満
脚本:森田芳光
音楽:大島ミチル
撮影:沖村志宏
美術:山﨑秀満
照明:渡辺三雄
装飾:湯澤幸夫
録音:高野泰雄
音響効果:伊藤進一
編集:川島章正
スクリプター:森永恭子
衣裳:宮本まさ江
キャスティング:杉野剛
助監督:増田伸弥
製作担当:樫崎秀明
製作管理:山本勉
プロデューサーアシスタント:今井淑恵
制作プロダクション:セントラル・アーツ
出演:小雪 黒谷友香 伊坂俊哉 山中崇 小山田サユリ
アメリカンビスタ カラー 110分

民家の郵便受けに1キロもの金塊が投げ込まれた事件が世間を賑わせていた頃、山吹摩耶は東京から故郷の北海道・函館に戻ってきた。新居となるアパートへの引っ越しを終えると彼女は業者の二人に気持ちとしてポチ袋を渡した。ありがたく頂戴した布田と大国は廊下の角を曲がると早速中身を確認したのだが、その金額に驚いた。10万円の現金が入っていたのだ。何かの間違いではないかと思い布田は後戻って返そうとしたのだが、摩耶は重い荷物を動かすことが私には出来ないことだからと受け取ろうとしなかった。そしてそのお金を有効に使っていい思い出を作ってくださいと言うと、布田はこれ以上問答しても仕方ないと諦めて素直に受け取った。

高校の同級生だった道上保が市電の運転手をしていることを知っていた摩耶は、彼が担当する路面電車に乗り込み終点の谷地頭に到着すると声を掛けた。驚く保に摩耶は話があるからと仕事が終わる時間を聞き車庫の付近で待ち合わせをすることにした。昔の仲間に連絡をして欲しいと言われ保が電話を掛けたのは、北産乳業社長夫人の魚住サキ、専業主婦の平場さくら、実業団のマラソンランナーとして活動している川上孝、養魚試験場の研究員・保利満の親しかった四人だったが、それぞれの事情で誰も集まらなかった。その夜、飲食店に入った保は誰もが彼女に会いたがっていたと嘘をついたが、しばらくいるから大丈夫と摩耶は当たり障りのない返事をした。そして路面電車の話題になると、彼女は保が高校時代に世界中の路面電車巡りをしたいという夢を持っていたことを話した。だが今の保は市電の運転手として働くことで十分満足していたし、家庭を持つ身で世界を巡る資金を捻出することなんて出来るはずがなかった。「そのお金、私が出してあげようか?」。それを聞いた保は悪い冗談だと思った。金塊が郵便受けに投げ込まれていたのなら別だが。数日後、彼の自宅に摩耶からの荷物か届き、その中から手紙とガイドブックと一緒に大金が出てきたことから保は妻のかえでとともに腰を抜かした。

自分が経営するレストランに摩耶を呼び出したサキは学生時代のことで話の花を咲かせ、玉の輿に乗ったことを自慢げに語った。そして食事が終わると野暮ったい姿をした彼女を百貨店に連れて行き着飾ろうとした。その帰り道、摩耶を待っていたのはかえでだった。悪い金ではないかと疑うかえでに摩耶は偽札ではないし盗んだ物でもないことを説明した。すると彼女は次の疑問を口にした。「何か主人とあったんですか?」。摩耶はただの高校時代の友達だったと説明したが、それで疑念が晴れるはずがなかった。「お世話になった人にせめてものお礼として、受け取ってください」。それを聞いたかえでは困った人のために有効に使うべきだと言ったが、そういうことなら相談してご主人に理解してもらえばいいじゃないですかと言い包められた。すっかり摩耶の虜になったかえでは彼女を神様のように尊敬するようになった。

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