東宝
配給:東宝
製作年:1956年
公開日:1956年1月3日 併映「決闘巌流島」
監督:千葉泰樹
製作:藤本真澄
脚本:笠原良三
撮影:中井朝一
美術:河東安美
録音:小沼渡
照明:岸田九一郎
音楽:松井八郎
監督助手:小松幹雄
編集:大井英史
現像:東宝現像所
製作担当者:根津博
出演:森繁久彌 小林桂樹 上原謙 八千草薫 司葉子
スタンダード モノクロ 82分
明和商事社長の田代善之助は来たる大株主懇談会のことが心配でよく眠れなかった。その事を朝食時に口にすると妻の厚子は気にする必要はないと言った。芦屋に住む先代社長・福原富太郎の妻・イネは善之助の経営方針に賛成しているし、そのために娘の未知子が代理で出席することになっていると聞いていたからだ。彼にとって妻の助言はとてもありがたかった。厚子は富太郎の姪で、善之助は彼女のハートを射止めて結婚した。ところが順風満帆だった家庭生活も最近は風向きが変わってきた。健康に気遣う厚子は富太郎の方針に従って彼が同じ年頃になると食事を和食から洋食に変えた。白米が胃がんと高血圧の原因だとするテレビに出ていた医師の情報を鵜呑みにしていることも後押しした。ただ厚子と差し向かいで味噌汁とお新香のご飯が食べたいだけなのに。善之助の願いは叶いそうもなかった。
出社すると善之助が真っ先に行うのは富太郎の肖像写真に睨まれながら教訓「仕事に惚れろ、金に惚れろ、女房に惚れろ」を唱えることだった。そしてそれが終わると社長秘書の小森信一とスケジュールの確認を行った。午前11時に羽田空港に到着する未知子を出迎え、午後1時に大株主懇談会に出席するのがその日の大まかな予定だった。気を利かせた小森は懇談会用の分厚い報告要旨を夜遅くまで掛かって作成したが、善之助は要点だけまとめてタイプで打ち直せと突き返した。
空港に到着した未知子を乗せた車は明和商事に向かっていた。その車中で善之助は株主配当率の問題や社員の待遇改善、ボーナスの件などを会議の議題として取り扱うと説明するが、興味のない未知子はただハイハイと返事をすればいいのねと言った。先代社長の時代はお茶を飲みながらの独演会のようなものだったが、今はそうは行かなかった。株主に対して一々説明をしなければならないなんて三等社長のつらいところねと未知子から他意なく言われた善之助はぐうの音も出なかった。
屋台的映画館
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