木下グループ
配給:キノフィルムズ
製作年:2020年
公開日:2020年7月3日
監督:阪本順治
製作総指揮:木下直哉
プロデューサー:榎望 菅野和佳奈
ラインプロデューサー:芳川透
企画:阪本順治
脚本:丸山昇一
音楽:安川午朗
音楽プロデューサー:津島玄一
撮影:儀間眞悟
照明:宗賢次郎
美術:原田満生
録音:照井康政
編集:普嶋信一
スクリプター:今村治子
衣裳:岩崎文男
メイク:豊川京子
音響効果:佐々木英世
装飾:石上淳一
助監督:井川浩哉
製作担当:小川勝美
製作プロダクション:プロダクション・キノ
出演:石橋蓮司 大楠道代 岸部一徳 桃井かおり 佐藤浩市
シネマスコープ カラー 100分
大手出版社で編集者として働く児玉道夫は頭を痛めていた。彼が入社した26歳の時に初めて担当したのが市川進という作家だった。純文学でデビューした彼は二冊本を出したが、その後は鳴かず飛ばずでそのうちハードボイルド風のノベルにシフトした。御前零児と名乗ったはいいが某有名作家の二番煎じで、出版の話を持ち掛けても営業は誰も取り合ってもくれなかった。その作家には都市伝説があった。ここ数年の間に未解決事件がいくつかあるのだが、それに共通するのが伝説の殺し屋だった。それら事件を基にした原稿をメールで度々送ってくるのが御前零児なのだ。実際に起きた事件をベースにして書いているのだろうが、殺害前後の一部始終を克明に記しているのが不気味で堪らなかった。そこで定年を間近に控えた児玉はそれを口実に担当を部下の五木要に引き継がせようと考えていたのだ。バー「Y」で飲んでいた児玉がそのことを伝えると、五木はそれを逃げだと言った。
74歳の市川は妻の年金をあてにして暮らす売れない小説家だ。物語のリアリティにこだわり過ぎる彼の作風はハードボイルド作家にシフトした後も同じだった。そんな彼が「Y」の暗い店内に入るとテーブル席の児玉が立って会釈した。カウンターでウイスキーのグラスを受け取った市川は五木の隣の空いた席に座った。児玉が長い間玉稿をいただきながら今一歩のところで出版出来なくてすみませんと謝罪すると、今日のは読んだのかと市川が言った。苦しそうな顔で児玉がやはり今一歩だったと言い、後のことは彼に託すと五木にパスを出した。市川から感想を聞かれた五木は、あれはノベルでも何でもないでしょと素っ気なく言った。そしてハードボイルドですら時代遅れなのにもっと陳腐で、もう一度売れたいのなら作者の感情を込めた物語を作ってくださいと思いの丈をぶちまけた。すると市川は作り物の物語はもうやり尽くしたしデッチあげた話を全て削ぎ落して残ったリアルが俺のノベルだと言った。それを聞いた五木が一歩間違うと病気扱いされますよと忠告すると、市川は病気にならないように夜が来るんだと気取って言った。
屋台的映画館
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