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天国の駅

  • posted at:2021-07-10
  • written by:砂月(すなつき)
てんごくのえき
東映(東京撮影所)
配給:東映
製作年:1984年
公開日:1984年6月9日
監督:出目昌伸
企画:岡田裕介 矢部恒 和田徹
脚本:早坂暁
撮影:飯村雅彦
美術:中村州志
録音:林鉱一
照明:小林芳雄
助監督:吉崎元
編集:西東清明
記録:久保田民子
製作調整:山田光男
音響効果:原尚
演技事務:鎌田賢一
美粧:入江荘二
美容:宮島孝子
衣裳:内山三七子
装置:浜中一文
装飾:安永紀征
背景:松下潔
音楽事務:新井明美
擬斗:清水照夫
資料協力:高橋吉郎 浅井睦
スチール:加藤光男
宣伝プロデューサー:佐々木嗣郎
宣伝担当:石川通生 森澄桂子
進行主任:小島吉弘
現像:東映化学
音楽プロデューサー:多賀英典
音楽監督:加藤和彦
音楽:矢野誠
主題歌:「夢さぐり 天国の駅」吉永小百合
出演:吉永小百合 西田敏行 三浦友和 真行寺君江 白石加代子
アメリカンビスタ カラー 133分

昭和30年春、傷痍軍人の夫・栄三を抱える林葉かよは結城紬の織女をして生計と立てていた。戦時中、徴兵の赤紙がきたことで栄三は慌てて結婚し、式を挙げた直後に出征した。終戦を迎え茨城・結城に帰ってきたときには下半身が麻痺しており、彼は一度も夫婦の関係になることなく今を過ごしていたのだった。かよは若く美しかった。それだけに栄三は周囲の男たちの目が気になり、その嫉妬は度を越していた。つらい目に遭うかよを不憫に思っていた巡査の橋本浩一は、巡回中に彼女が自慰に耽るところを窓の外から偶然目撃したことをきっかけに接近し、それ以来頻繁に会うようになった。かよの行動を監視する栄三だったが、その日は彼女の行方がわからなかった。そこでかよが品物を納める奥順商店を訪ねると、番頭が口走った言葉が気になった。急に色っぽくなったねと。ピンときた栄三は方々を捜し回りついに河原の葦の繁みで体を重ねるかよと橋本の姿を見つけたのだった。激怒した彼はかよが帰ってくるなり狂ったように暴力を振るった。思い余ったかよは農薬を酒に混ぜて栄三を殺害したのだった。警察はろくな調査もせずに死因を脳内出血として処理した。

栄三の死から10日後に橋本は警官を辞め、20日目からかよと暮らし始めた。翌年には東京の大学の夜間部に入学したが、学費や生活費はかよが負担した。夏休みになり橋本は帰ってきたが、彼の隣には清水幸子という女性がいた。彼女は大学の傍にある食堂の女給で、橋本は町の噂を打ち消すために仮の夫婦になると打ち明けたのだった。騙されたことに気づいたかよは家を売って作った金での一部を渡して家を出たが、幸子も一緒についてきた。彼女は橋本に働いた金の全てを貸していたが、全く返す気がないことに気づいたため愛想をつかしたのだった。同じ男に騙されたことは二人の絆を深めて行き、かよは綿谷温泉郷に「姉妹」という名の土産物店を開いた。

それから1年後、店に結城署の五十沢刑事が訪ねてきた。同窓会できたついでに立ち寄ったという彼はかよに近況を尋ね、パラチオンという薬は知っているかと聞いた。一般的に殺虫剤として使われるその薬は白い粉末で水で溶かすと透明になり、変な味はするが酔ってしまうと飲んでしまうかもしれない。五十沢はそう話しながらかよの表情を窺った。

屋台的映画館
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電子戦隊デンジマン

  • posted at:2021-06-28
  • written by:砂月(すなつき)
でんしせんたいでんじまん
東映
配給:東映
製作年:1980年
公開日:1980年7月12日 併映「白雪姫(再映)」「魔法少女ララベル」「ゲゲゲの鬼太郎」
監督:竹本弘一
製作:渡邊亮徳
プロデューサー:吉川進
原作:八手三郎
脚本:上原正三
撮影:石橋英敏
照明:高橋道夫
美術:森田ふみよし
キャラクターデザイン:野口竜
録音:佐藤修一
効果:阿部作二
選曲:石川孝
編集:山口一喜
助監督:小中肇
製作担当:佐々木丸正
計測:石山信雄
記録:石川和枝
進行:奈良場稔
進行主任:黒木勝利
技斗:山岡淳二
音楽:渡辺宙明
主題歌:「ああ電子戦隊デンジマン」成田賢
・・・:「デンジマンにまかせろ!」成田賢
装置:中島忠昭
装飾:装美社
美粧:太陽かつら
衣裳:鷹志衣裳
企画協力:企画者104
キャラクター制作:エキスプロダクション
視覚効果:デンフィルム・エフェクト
合成:チャンネル16
音楽制作:あんだんて
現像:東映化学
車輌制作:十和モーター
オートバイ協力:鈴木自動車(株)
特殊撮影・操演:(株)特撮研究所 鈴木昶
特殊撮影・美術:(株)特撮研究所 大沢哲三
特殊撮影・撮影:(株)特撮研究所 高橋政千
特殊撮影・照明:(株)特撮研究所 日出明義
特撮監督:矢島信男
出演:結城真一 大葉健二 津山栄一 内田直哉 小泉あきら
アメリカンビスタ カラー 46分

海に突如出現した怪物にヨット遊びをしていた青年と海水浴にきていた少年が飲み込まれ、目撃情報を受けた電子戦隊は戦闘母艦・デンジタイガーで出動した。海中から様子を探り、レーダーの反応に従って浮上すると辺りは一面霧に包まれていた。すると全長が60メートル以上はあると思われる怪物が突進してきたのだった。不安定な場所での戦いは不利だと考えたデンジレッドは上陸してミサイル砲・デンジミサイルで攻撃するが、致命傷を与えることなく逃げられてしまった。

今から約3千年前、異次元人のベーダー一族はベーダー怪物・ウミツラーを送り込みデンジ星を滅ぼした。巨大宇宙帆船「グレート・クイーン号」で脱出したデンジ星王女・デンジ姫はしばらく名もなき惑星に身を隠していたが、ベーダーに見つかり総攻撃を受けた。航行不能となったグレート・クイーン号は漂流の末に地球にたどり着き、先に到着していた巨大要塞「デンジランド」と合流した。科学者と一部の人々は恒星間航行が可能なデンジランドで脱出し地球を目指したが、生き残っていたのは眠り続けるデンジ犬アイシーだけだった。デンジ姫は王家に伝わる「虹の石」を女官のクレアに託し、自らはベーダー一族の動きを偵察するために銀河系へ旅立ったのだった。ある日、ベーダーが地球に侵攻したことでデンジランドのシステムが起動し、目覚めたアイシーは地球に移住したデンジ星人の末裔から5人の若者(赤城一平、青梅大五郎、黄山純、緑川達也、桃井あきら)を選び出して電子戦隊デンジマンを結成した。

デンジ姫がグレート・クイーン号から移動する際に使用したスペースクルーザー「デンジ号」を海の墓場・サルガッソー海域で発見したベーダー一族のヘドラー将軍は、誘拐してきた人々に舵を握らせた。すると杉本恵子が触ったときだけ青白く輝いた。それは彼女がデンジ星人の末裔であることの証拠だった。ヘドラーは不思議な力を持つ「虹の石」の在り処を聞き出そうとするが彼女が口を開くことはなく、業を煮やして娘のはるみのもとにアンゴラーを送ったのだった。その頃、帰ってこない母親を心配するはるみはお守りとして虹の石を握り締めていた。そこにアンゴラーが現れ、恐怖のあまり彼女は助けてと叫んだ。その声は石を通して20キロ離れたデンジマンの耳に届いたのだった。

屋台的映画館

手紙(2006年)

  • posted at:2020-11-25
  • written by:砂月(すなつき)
てがみ
ギャガ・コミュニケーションズ=日活=葵プロモーション=毎日新聞社=S・D・P=レントラックジャパン
配給:ヒューマックスシネマ
製作年:2006年
公開日:2006年11月3日
監督:生野慈朗
製作:宇野康秀 大澤茂樹 高瀬哲 細野義朗 日下孝明 常田照雄
エグゼクティブプロデューサー:河井信哉 星野有香 大村正一郎 松山彦蔵
製作エグゼクティブ:永江信昭 熱田俊治
プロデューサー:朴木浩美 橋口一成
原作:東野圭吾
脚本:安倍照雄 清水友佳子
音楽:佐藤直樹
ラインプロデューサー:新津岳人
監督補:川原圭敬
音楽プロデューサー:志田博英
撮影:藤石修
照明:磯野雅宏
録音:北村峰晴
美術:山崎輝
編集:川島章正
助監督:高橋正弥
スクリプター:長坂由紀子
製作担当:増子美和
アソシエイトプロデューサー:水上繁雄 角田豊
主題歌:「コ・モ・レ・ビ」高橋瞳
製作委員会:高森厚太郎 牧田実 奈良聡久 藤下リョウジ 鈴木謙一 小川義延 村上葉子 鈴木佐和 浅野由香 宮脇祐介
制作プロダクション:葵プロモーション
出演:山田孝之 玉山鉄二 沢尻エリカ 吹石一恵 尾上寛之
アメリカンビスタ カラー 121分

武島剛志は弟の大学への進学資金を稼ぐために運送会社で働いていたが、腰を痛めて会社をクビになった。困り果て資産家の邸宅に空き巣に入ったのだが、帰宅した家主の緒方敏江に目撃され、焦った剛志は金を返すから勘弁してくださいと謝罪した。追いすがる彼の行動に恐怖を感じた老女は生け花用のハサミを振り回して抵抗したが、それが偶然腹に刺さり敏江は死んだ。二人暮らしの兄が逮捕されたことで、弟の直貴は進学を諦めリサイクル工場で働くことにした。桜が咲く季節、離れて暮らす二人を手紙が繋いでいた。

お笑いの世界を目指す直貴は親友の寺尾祐輔と中学時代から漫才コンビ「テラタケ」を組んでいた。実家が酒屋の祐輔は工場の食堂に商品の納品をすることがあり、昼休みの時間を利用していつも練習を行うのだ。直貴は今の仕事に着くまで何度も転職し住居も変えていた。職場や居場所はインターネットを通じてあっという間に知られ、その度に嫌がらせを受けた。それも会社の寮に住むことになってようやく解放されたのだ。そんなことを腹を割って話せるのは祐輔しかいなかった。

入社からしばらくすると直貴は食堂で働く白石由美子から声を掛けられた。面識はなかったが、どうやら送迎バスの中で一緒になるらしい。それから度々話し掛けてくるが、彼はそれを煩わしく思い相手にしなかった。それでも今日はクリスマスだからと帰り際にプレゼントを渡された。寮に帰り包みを紐解くと、中から手編みの毛糸の手袋と手紙が出てきた。とてもうれしかったがなるべく拘らないように努めることにした。

テラタケはお笑い年越しライブに出演したが、気を利かせた祐輔は由美子を招待していた。ステージを終え三人と食事をした後、寮に戻ると剛志から手紙が届いていた。直貴は誰もいない食堂でお茶をすすりながらゆっくりと読もうと考えていたが、そこに先輩の倉田たちが帰ってきたため慌ててポケットに突っ込んだ。ところがそのうちの一人がそれを見つけ面白がって倉田に渡した。倉田は差出人の住所を見てそこが千葉刑務所からだと見抜き、そんな奴は人間の屑だと言ってテーブルの上に放り投げたのだった。兄を馬鹿にされたことで頭に血が上った直貴は倉田を殴り飛ばした。騒動が治まり直貴が部屋で頭を冷やしていると倉田が数学を教えてもらいたいから自分の部屋にきて欲しいと言った。彼は大学入学資格検定の勉強を独学で行っていたのだ。直貴が部屋にくると倉田は千葉刑務所に入っていた過去を告白し、妻に苦労を掛けた自分と重なってつい余計なことを口走ってしまったと謝罪した。

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天国にいちばん近い島

  • posted at:2020-06-19
  • written by:砂月(すなつき)
てんごくにいちばんちかいしま
角川春樹事務所
配給:東映
製作年:1984年
公開日:1984年12月15日 併映「Wの悲劇」
監督:大林宣彦
製作:角川春樹
プロデューサー:坂上順 菅原比呂志
原作:森村桂
脚本:剣持亘
潤色:大林宣彦 小倉洋二
撮影監督:阪本善尚
照明:渡辺昭夫
録音:宮内栄一
美術デザイン:薩谷和夫
音響デザイン:林昌平
音楽監督:朝川朋之
音楽プロデューサー:高桑忠男 石川光
主題歌:「天国にいちばん近い島」原田知世
編集:大林宣彦
助監督:小倉洋二 内藤忠司
記録:黒岩美穂子
効果協力:スワラ・プロダクション 稲村和巳
特機:大島豊
ヘア・メイク:岡野千江子
スタイリスト:中山寛子
和装監修:宮崎順二
衣裳:第一衣裳 山田実
差し絵:とり・みき
スチール:遠藤功成
ビデオ編集:大林千茱萸
ネガ編集:川岸喜美枝
製作協力:P・S・C 大林恭子
出演:原田知世 高柳良一 峰岸徹 赤座美代子 泉谷しげる
アメリカンビスタ カラー 102分

父・次郎が急逝し、高校生の桂木万里は火葬場へ向かう車の中でぼんやりと幼い頃のことを思い出していた。小さな川の先には大きな海があり、ずっと南の方へ行くと地球の先っぽのところに真っ白なサンゴで出来た小さな島がある。そこは神様のいる「天国からいちばん近い島」があるんだと次郎が話してくれたことを。葬儀が終わり落ち着くと、万里は次郎と約束したそのニューカレドニアへ行ってみたいと母・光子に話した。日頃あまり口を開かない引っ込み思案な万里が自分から行動しようとしたことを喜んだ光子は了承した。

冬休みを利用してツアーに参加した万里。ルッサンホテルに着き自由時間になると、彼女はひとり自転車でヌメアの街に出掛けた。ところが街中は観光地化されており次郎が話していた印象とはまるで違っていた。諦めて帰ろうとしたとき、追い抜いて行った車の荷台からヤシの実が次々と零れ落ちた。坂道を転がるその実のせいで転倒した彼女を心配した青年は慌てて駆け寄るとやさしく起こした。彼はタロウという名の日系三世で、心細い異国で日本語の会話が出来たことに万里は安堵したのだった。ホテルまでトラックで送るとタロウは言ったが、万里はひとりで行けますからと断り自転車で帰った。後になって気づいたが、万里はタロウのことを何も知らなかった。住所や電話番号だけでなく名前さえ聞くのを忘れていたのだ。同室の山本福子からはドジ扱いされるが、きっとまた逢えると信じた。翌日、ツアー一行が動物園で見学していると馴れ馴れしい男が近づいてきた。彼は現地のインチキガイドとして知られる深谷有一で、添乗員の青山良男に絵葉書と同じ景色ばかり見せて何になると因縁をつけた。自分の風景を自分の目で見つけることが重要だと説く男の言葉に心を動かされた万里はガイドをお願いした。彼女から「天国からいちばん近い島」の話を聞いた深谷はそこはサンゴに囲まれた島ではないかと言った。だがそこへ行くにはセスナをチャーターしなければならず、多額の費用が必要となった。深谷は見せたい風景があると言い夕陽が見える高台へ連れて行った。そこから見える太陽が沈み切ったとき、水平線に緑色の光を見ることが出来れば幸福が訪れるのだいう。深谷は万里が他の人と違っているところを感じ取り高台へ向かったのだが、二人ともその光を見ることは出来なかった。その夜、万里をデートに誘った深谷はホテルのカジノに連れて行き、ルーレットで手持ちのチップを全てラッキーナンバーの9にベットさせた。ホイールと逆方向に投げ入れられたボールは勢いが弱まるとポケットに落ちディーラーは赤の9を宣言したのだ。突然の出来事に目を丸くする万里だったが、ディーラーは彼女に気づかれないように深谷へ目配せした。多額の資金を手に入れた万里はセスナでイル・デ・パン島に向かった。

屋台的映画館

点と線

  • posted at:2019-02-25
  • written by:砂月(すなつき)
てんとせん
東映(東京撮影所)
配給:東映
製作年:1958年
公開日:1958年11月11日 併映「修羅八荒」
監督:小林恒夫
企画:根津昇
原作:松本清張
脚本:井手雅人
撮影:藤井静
録音:大谷政信
照明:川崎保之丞
美術:田辺達
音楽:木下忠司
編集:祖田冨美夫
助監督:飯塚増一
メーキャップ:井上守
美容:中井マサ
衣裳:八木一郎
色彩計測:林七郎
記録:大内小枝子
スチール:藤井善男
進行主任:内田秀雄
撮影助手:田中丈之助
録音助手:矢島一隆
照明助手:桑名史郎
美術助手:下沢敬悟
装置:中村唯行
装飾:北原義雄
背景:服部与一
電飾:木村孝
音響効果:岩藤龍三
現像:日本色彩映画株式会社
出演:南廣 高峰三枝子 山形勲 堀雄二 加藤嘉
シネマスコープ カラー 85分

10月21日、福岡香椎の海岸で男女の遺体が見つかった。着衣の乱れがない二人は規則正しく並び、履物もきちんと揃えてあった。傍にはジュースの空き瓶が落ちており、男女ともに顔の血色が良かったことから検視官は死因を青酸カリによる中毒死とした。東福岡署は死亡推定時間10時間前後、夜の10時から11時の間に合意の上で心中を図ったと断定した。だが古参刑事の鳥飼重太郎は違和感を覚えていた。どうして心中するのに寒々しい場所を選んだのだろう、と。だが石井刑事は考え過ぎだと一笑に付した。場所を署内に移し遺留品の確認が行われた。男の身元は持っていた名刺で産工省企業局業務部調査課課長補佐の佐山憲一であることがわかった。一方、女も東京赤坂にある割烹料理屋小雪の女中・お時であることが持ち物から判明した。佐山の遺留品の中から10月14日の日付けが入った列車食堂の受取証を見つけた鳥飼は一人分となっていることに疑問を感じ、東京発博多行きの7号列車の特急あさかぜには佐山一人で乗っていたのではないかと考えた。田坂刑事の捜査によって佐山が東中須の旅館に泊まっていたわかっており、20日の午後8時頃に女の声で掛かってきた電話をきっかけに出掛けたことも証言があった。これで翌朝の遺体発見と繋がった。

鳥飼は石井刑事とともに警察病院へ向かった。遺体を引き取りにきた佐山の兄は、女遊びを知らない堅物の弟が悪賢い女中の手管に掛かったのだとこぼした。それを聞いた鳥飼は二人の関係を彼が知らなかったことを確認した。一方、お時のことを良く知る女中の八重子も佐山が店にきたことはないと証言した。彼女に恋人がいることは察していたが、それが佐山だったことを今回初めて知ったのだ。それは一緒にきた女将も同じだった。だが八重子は、14日の夕方に友達のとみ子と東京駅にいたときに佐山がお時といるところを見ていた。そのことを何気なく話すと鳥飼の顔色が変わった。お時は佐山を見送りにきていたのではなく、一緒に車両に乗っていたのだった。

ひと月後、警視庁刑事部捜査第二課の三原紀一が東福岡署にやってきた。産工省汚職事件を追っていた彼は佐山の死に疑問を抱き、鳥飼から話を聞くことにしたのだ。鳥飼は彼を心中現場へ案内する間に複数の目撃者がいることを話した。一人は国鉄香椎駅向かいにある八百屋の主人で、買い物する客がいないかと店先にいたところ、オーバーを着た男と防寒コートを着た女が西鉄香椎駅の方へ歩いて行ったのを覚えていた。そしてもう一人は21時35分着の列車から降りた利用客で、酔ってゆっくりと歩いていた彼を追い抜いて行った二人組のうち女の方が澄んだ声で東京の言葉をしゃべっていたのを覚えていた。それらの証言を得ても鳥飼には腑に落ちない点があった。それは心中する場所を温泉地や観光地ではなくうら寂しい海岸を選んだのかだった。

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