大映(東京撮影所)
配給:大映
製作年:1962年
公開日:1962年12月26日 併映「やくざの勲章」
監督:川島雄三
企画:米田治 三熊將暉
原作:新藤兼人
脚本:新藤兼人
撮影:宗川信夫
録音:西井憲一
照明:伊藤幸夫
美術:柴田篤二
音楽:池野成
編集:中静達治
助監督:湯浅憲明
製作主任:松本賢夫
現像:東京現像所
出演:若尾文子 船越英二 浜田ゆう子 高松英郎 川畑愛光
シネマスコープ カラー 96分
郊外の団地に居を構える前田家。主の前田時造は元海軍中佐で、終戦後に仲間と木造船の会社を始めたが経験不足と資金難で程なく倒産した。その後、カメラの製造や洋酒の販売など様々なことに手を出すもののことごとく失敗し、極貧の生活を体験した。もう二度とあのような生活に戻りたくないと心に決めた時造は、子供たちを使ってひと様からお金をいただく方法を考え出したのだった。まず娘の友子を流行作家・吉沢の妾にし、その吉沢の紹介で息子の実を芸能プロダクション・ハイライトプロに入社させると集金したタレントの出演料を着服させた。そのことで社長の香取一郎がやってくることがわかると家の中にある高価な物を極力隠し、自身と妻・よしのの身なりをみすぼらしい姿に変えた。そして息子がやったことは知らぬ存ぜぬと一方的に押し通し、そのことが事実ならば親として責任を取るのは当然だが事業の失敗で多額の借金を背負っているために支払うことが出来ないと涙ながらに説明した。出るところに出ると捨て台詞を残して出て行った香取と入れ替わりに帰ってきた実は仕事に手慣れてきており、時造が想定していた額の倍の100万円を着服していた。心配する時造に実は、税金を誤魔化しているのだから警察になんて行きっこないと高を括っていた。そこへ帰ってきた友子は恥ずかしくてアパートを出てきたと言った。時造は吉沢から度々借金をしており、さらに40万円を借りたことでもう付き合い切れないと言われたのだ。前田家に愛想をつかした原因は父にあると考えた友子だったが、時造はその責任を先方のせいにした。
友子がシャワーで汗を流していると吉沢が突然現れた。彼女の気配を消すために時造がしゃべり続けると、吉沢はここへきた理由を話し始めた。雑誌社からの原稿料を実が無断で着服し、しかも一度や二度ではないそのやり口が悪質だと怒っていた。吉沢の判子を押した名刺を使って代理人として受け取り、おまけに雑誌社の若い連中とともにツケで飲み歩いているというのだ。時造が詫びの言葉を口にすると今度は怒りの矛先が彼の方に向いた。彼が友子の世話をすると言った途端に金を貸せと言い、それが110万円にまで膨れ上がっていた。前田家が住む部屋も吉沢が友子のために用意した部屋だった。これじゃあ体のいいゆすりだというと、時造は誤解だと言い訳した。吉沢は実のハイライトプロの使い込みの件も知っており、一家で申し合わせているのではないかと疑いの目で見ていたのだ。すると自室から実が現れ、度々出版される前田家をベースにした小説のモデル代を請求した。彼の小説の登場人物には思い当たる節があり、それを猥雑にアレンジされていることに抗議すると吉沢は腹を立てて帰って行った。その夜、実を訪ねてきたのはハイライトプロで会計係を務める三谷幸枝だった。子供を抱える未亡人の彼女は、実に体を提供する代わりに貢がせて念願の旅館を手に入れた。女手ひとつで旅館を経営して行く上で身辺をきれいにしておかなければならないため、最初の契約通りにすっぱりと別れることにしたのだ。別れ話を切り出され実は必死に抵抗したが、彼女の気持ちは変わらなかった。
屋台的映画館
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