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黒の試走車

  • posted at:2017-07-14
  • written by:砂月(すなつき)

くろのてすとかー
大映(東京撮影所)
配給:大映
製作年:1962年
公開日:1962年7月1日 併映「斬る
監督:増村保造
企画:中島源太郎
原作:梶山季之
脚本:舟橋和郎 石松愛弘
撮影:中川芳久
録音:渡辺利一
照明:泉正蔵
美術:山口熙
音楽:池野成
編集:中静達治
助監督:崎山周
製作主任:大岡弘光
出演:田宮二郎 叶順子 船越英二 高松英郎 竹村洋介
シネマスコープ モノクロ 94分

大衆車が親しまれる中、タイガー自動車は新たな試みとしてスポーツカーに手を付けることになった。そのプロジェクトの中心となっているのは、「スピードと贅沢への憧れを満たすのがスポーツカーだ」というのが心情の小野寺透企画部長で、公道で行われる極秘裏の高速テストが成功すれば「パイオニア」の生産にOKが出る可能性が高くなっていた。ところが黒布に覆われたテストカーはカーブを曲がり切れずに横転、炎上した。その様子は翌日の朝刊に一面で報じられた。緊急に対策会議が開かれ、小栗喜八専務に原因を尋ねられた小野寺は、計器を積み過ぎたこととエンジンの調子が良くスピードが出過ぎたためにカーブでバランスを失ったと説明した。そしてすっぱ抜かれた新聞の記事はデタラメであり、パイオニアの性能に欠陥はなく設計は完璧だと強調した。営業部長や生産部長など参加者の意見を聞いた小栗はパイオニアの生産準備に入ることに決め、入院中の社長にそのことを伝えることにした。そこへやってきたのは業界紙の記者・的場捨松だった。記事の情報がライバル会社のヤマト自動車から流れており、テスト現場にいたのが馬渡久のスパイだったと的場が説明すると小野寺の顔色が変わった。ヤマトの企画室長の馬渡は、元陸軍中佐で関東軍の特務機関に所属していたのだ。小野寺が企画一課を新設し有能な社員を集めて課長を兼任したのは、パイオニアの秘密を守ると同時に競争会社の秘密を探るためだった。にもかかわらずテストのコースと日取りが馬渡に漏れたということは、幹部の中にスパイがいるとしか考えられなかった。そこで小野寺は彼の片腕となって働く朝比奈豊に大衆車と見せかけたパイオニアのダミーの資料を30部配布するよう命じた。時期を見て回収し、それが出来ない人物がいたらそれがスパイだと断定できるからだ。

ある夜、馬渡がバー・パンドラの常連客だと知った朝比奈は、恋人の宇佐美昌子にそこで働くように言った。ホステスとして働いている彼女をそこへ送り込み、違和感なく馬渡と接して誰と会い何をしゃべったかを調べさせることにしたのだ。渋る昌子も結婚を条件にされれば引き受けるしかなかった。パンドラから戻った昌子から馬渡がパイオニアの資料を見ていたこと、タイガーの嶋本辰郎専務秘書が同席していたことを聞き、朝比奈は近々スパイの正体が割れることを期待した。だが嶋本は専務の甥ということで、いくら常連だと言ってもスパイと結び付けることは考えにくく、さらに資料が全て回収出来たことで謎は深まった。苦労が無駄だったと残念がる小野寺に、朝比奈はパイオニアが大衆車に間違いないと馬渡に信じ込ませることを提案した。それは朝比奈自身が馬渡と直接会って偽のデザインを売りつけるという作戦だった。

屋台的映画館

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