松竹(大船撮影所)
配給:松竹
製作年:1964年
公開日:1964年1月15日 併映「道場破り」
監督:山田洋次
製作:脇田茂
企画:市川喜一
原作:藤原審爾
脚本:加藤泰 山田洋次
撮影:高羽哲夫
美術:佐藤公信
音楽:山本直純
録音:松本隆司
照明:戸井田康国
編集:浦岡敬一
調音:佐藤広文
助監督:不破三雄
装置:鈴木八州雄
衣裳:田口ヨシエ
現像:東京現像所
録音技術:上尾勵
色彩技術:倉橋芳宏
渉外事務:秦野賢児
撮影助手:青本澄夫
録音助手:鈴木正男
照明助手:内田喜夫
進行:末松昭太郎
出演:ハナ肇 桑野みゆき 犬塚弘 桜井センリ 安田伸
シネマスコープ カラー 87分
瀬戸内ののどかな漁師町に兵隊服を着た風来坊がやってきた。男は安五郎というシベリア帰りの復員兵で、そんな彼を不憫に思った浄念寺の浄閑和尚はひと晩本堂に泊めることにした。最近、付近の寺で仏像の盗難が相次いでおり、妻のきぬは泥棒だったらと猛反対したのだが、まさかそんなこともあるまいと和尚は安五郎を信じた。それを聞いた彼の息子の嫁で未亡人の夏子ももし泥棒だったら大っぴらには来ないでしょと庇うと、和尚はきぬを納得させるように頷いた。その夜、本堂の暗がりに人影があり、不審に思った安五郎が声を掛けると静かにしろと包丁を構えた。その男は寺を荒らし回る仏像泥棒だった。身の危険を感じた安五郎は鏧子を鳴らして和尚に危険を知らせると、逃げた男を追い掛けてお縄にしたのだった。明朝、日之出巡査に男を引き渡すと和尚だけでなくきぬや夏子にまで感謝され照れる安五郎だったが、夜露に当たったせいで風邪をひき寝込んでしまった。心配した夏子は常備していた解熱剤を飲むように言ったが、その美しさに一目惚れした彼は頑として断った。それは照れからでもあるが、薬を飲むと体中にブツブツが出来るからだ。自分で病気を治すと言い張る安五郎は、夏子の弟・清十郎に蛇を獲ってくるように言った。そして願い通りに蛇を持ち寄ると、安五郎はナイフを使ってその場で捌き肝を飲み込んだ。すると彼の体はみるみるうちに薪割りの手伝いが出来るまでに回復し、その様子は町医者が驚くほどだった。
シベリアで死人にお経をあげていたのが夏子の夫だったかもしれないと軽々しく言ってしまったことを後悔していた安五郎は、これ以上ご親切に甘えては罰が当たると出て行った。だが彼には行く当てなどなく、さっぱりした人柄に惚れ込んだ和尚が夏子に連れ戻すように言ったことで安五郎はまた浄念寺に舞い戻ることになった。朝から晩までよく働く安五郎はきぬからも信頼された。ある日、町に東京ターザンという怪力の持ち主が興行でやってきたが、その力男に惚れ込んだ主水平八郎浦上町長の娘・睦子が駆け落ちした。興行主たちは血眼になって捜し回り、田ノ浦の芝居小屋でようやく二人を見つけ出したのだが、束になって掛かっても力勝負では敵わなかった。その話を聞いて居ても立っても居られなくなった安五郎は、蔵にあった刀を腰に差して芝居小屋に乗り込んだ。
芝居小屋から飛び出してきた睦子に続いて出てきたのは、刀を握りしめた血に染まる安五郎だった。部屋の中で刀を振り回した際に、棚に置いていた赤い塗料を被ったことでそのような姿になったのだが、それを見た力男は慌てふためいて睦子を開放したのだった。誰かをバッサリやったという根も葉もない噂があっという間に町中に広がったことで安五郎は英雄扱いされたが、本人もまんざらではなかった。
屋台的映画館
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