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薔薇の標的(1980年)

  • posted at:2021-03-21
  • written by:砂月(すなつき)
ばらのひょうてき
東映セントラルフィルム
配給:東映
製作年:1980年
公開日:1980年4月19日 併映「クレージーモンキー 笑拳」
監督:村川透
企画:黒澤満
脚本:白坂依志夫 桂千穂
撮影:仙元誠三
録音:広上益弘
照明:渡辺三雄
美術:前田博之
編集:田中修
音楽:羽田健太郎
音楽監督:鈴木清司
助監督:原隆仁
色彩計測:鈴木耕一
記録:滝沢恵美子
スチール:安彦俊男
製作宣伝:松本洋
製作担当:青木勝彦
擬斗:松尾悟
カースタント:スリー・チェイス
テクニカルアドバイザー:トビー門口
衣裳:第一衣裳
美粧:入江美粧
装飾:高津映画装飾
現像:東映化学
協力:東映芸能ビデオ 東映俳優センター
製作協力:横浜ハリウッド
出演:舘ひろし 中島ゆたか 本間優二 沢田和美 山西道宏
アメリカンビスタ カラー 99分

大量の麻薬を手に入れ売り捌く相手を見つけた野本宏は深夜の横浜の港で取り引きを行うことになった。ところが暴力組織から突然の襲撃を受け、彼は麻薬と金、そして弟分の明まで失った。海に飛び込んだことが幸いし命拾いした野本だったが、騒動が収まるのを待ってから陸に上がると警察に包囲されていた。それから4年後、野本は刑務所を仮出所したが、燻り続ける復讐の火種が消えることはなかった。彼が真っ先に向かった先は八木が仕切るストリップ劇場だった。あの日の夜、警察に通報したのが八木であることは明白だったからだ。野本は彼を徹底的に叩きのめすと拳銃を突きつけ、組織のボスである井戸垣謙三が何故取り引きのことを知っていたのかを聞き出そうとした。だが命乞いするばかりで埒が明かないため、金を受け取ると井戸垣への宣戦布告をして立ち去った。

新調したスーツで中華街を歩いていた野本は組織に見つかり裏通りに連れて行かれた。八木から仕返しを受けた野本は銃口を向けられたが、先に出所した刑務所仲間の門田圭介によって助けられたのだった。ホテル・クォーターマスターを隠れ家とする門田は、野本が所内で話していた井戸垣に一泡吹かせるために彼を捜していたのだ。門田には小児マヒを息子がおり、その子が一生食うに困らない金を残して死にたいと考えていた。井戸垣への落とし前をつけるチャンスだと計画に誘うが、野本は返事を渋った。

野本は街中で恋人の石川杏子を偶然見つけた。だが四年の歳月が二人の間に溝を作っていたことを知りきっぱりと別れることにした。ホテルに戻ると門田はもう一人男を連れてきた。中尾光二は半年前まで横浜地区の麻薬取締官をしていたが、あることが原因でクビになったのだ。中尾は門田と綿密に練った計画を野本に話した。貨物船・上海丸の事務長をしている王兆徳は麻薬の運び屋だった。井戸垣と王が今月の25日に大きな取り引きを行うという情報を掴んだが、その金額は5億円にも及ぶと噂されていた。どうするかと聞かれた野本は、計画に手を貸すが組織に見つからないためにしばらく身を隠すと言った。

屋台的映画館
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拝啓総理大臣様

  • posted at:2020-09-20
  • written by:砂月(すなつき)
はいけいそうりだいじんさま
松竹(大船撮影所)
配給:松竹
製作年:1964年
公開日:1964年4月29日 併映「いいかげん馬鹿」
監督:野村芳太郎
製作:杉崎重美
脚本:野村芳太郎
美術:宇野耕司
撮影:川又昻
照明:三浦礼
編集:浜村義康
録音:栗田周十郎
調音:佐藤広文
助監督:杉岡次郎
装置:岩井三郎
進行:岸本公夫
出演:渥美清 長門裕之 宮城まり子 山本圭 壷井文子
シネマスコープ カラー 89分

大阪天王寺の一軒家ではお笑い界の大師匠・鶴川鶴松の葬儀が行われていた。集まったのは彼の弟子ばかりで、在りし日の思い出をにぎやかに語っていたところにやってきたのは大阪市衛生局で働く角丸だった。彼は鶴松の一番弟子だったが、芽が出ず今の職に就いたのだった。そんな角丸に師匠が死んだことを伝えるのを皆忘れており、たまたまこの界隈へ仕事にきたことで知ったのだ。鶴松が念願通り舞台の上で死んだことを聞いた角丸は感激して大粒の涙を流し、再び漫才師として舞台に上がる決心をした。早速上京した角丸はテレビ局の待合室で関係者と接触し売り込みを掛けた。彼の元相方の鶴吉は、時事漫談「拝啓総理大臣様」が大ヒットし今や押しも押されぬスターとなった夫婦漫才師の東京ムーラン・ルージュのムーランだった。その話をきっかけにして仕事を貰おうと考えた角丸だったが全く相手にされなかった。

その夜、ドラマ撮影が深夜まで長引く可能性が出てきたためルージュはそのことをムーランに伝えるために電話を掛けた。だが主演の女優がすっぽかしたために仕事がなくなり急いでマンションに帰ってきたのだ。バスルームからシャワーの音が聞こえてくるのでドアを開けたところ、そこには彼女の見知らぬ男がいた。ムーランを訪ねた角丸だったが、部屋の主は妻の帰りが遅くなることを知り浮気に出掛けるところだった。急な仕事に行くので留守番を頼む代わりに部屋の物は自由に使っていいと言われた角丸はシャワーを浴びていたのだが、そこにルージュが帰ってきたのだ。得体の知れない男を気味悪がったルージュはもう大丈夫ですからと角丸を追い出した。

翌日、角丸とこそこそ会うムーランに不信感を抱いたルージュはマネージャーに夫の追跡を命じた。一方、元相方から紹介状を書いてもらった角丸は意気揚々と中央芸能へ向かうが、何も聞いていない社長の小石はとりあえず彼を大衆演劇の尾上梅五郎一座に回した。どうしても舞台に上がりたい角丸はどんな仕事でもやると売り込んだが、もらったのは漫才ではなくヘルスセンターの釜焚きだった。ヘルスセンター主任の松本から何事も修行だと説得されるも、納得が行かない彼は頭取の徳さんに相談した。もう一度座長に話をさせて欲しいと頭を下げるが、漫才をしようにも一人ではどうにもならないから相方が見つかるまで我慢しろよと言った。徳さんは角丸を元気づけようと一杯飲み屋に連れて行くが、そこで黒人ハーフの村瀬アヤ子が客から罵声を浴びせられている現場に出くわした。見兼ねた角丸は得意な話術を繰り出し彼女を救い出したのだった。

屋台的映画館

花と蛇 地獄篇

  • posted at:2020-09-07
  • written by:砂月(すなつき)
はなとへびじごくへん
にっかつ
配給:にっかつ
製作年:1985年
公開日:1985年8月24日 併映「令嬢肉奴隷」「白衣監禁」
監督:西村昭五郎
プロデューサー:奥村幸士
企画:植木実 小松裕司
原作:団鬼六
脚本:桂千穂
撮影:山崎善弘
照明:田島武志
録音:福島信雅
美術:北川弘
編集:奥原好幸
選曲:山川繁
助監督:北村武司
色彩計測:福沢正典
現像:東洋現像所
製作担当者:高橋伸行
緊縛指導:浦戸宏
スタントマン:井口浩水
擬斗:渡辺安秋
操演:テイク・1
出演:麻生かおり 藤村真美 中田譲治 清元香代 染井真理
アメリカンビスタ カラー 69分

1年前に商社の社長夫人となった後妻の遠山静子。夫の義隆は家庭を顧みないため、高校生の娘・京子は不良の道に走り葉桜グループの女団長になった。だが遠山家が崩壊しないのはひとえに家政婦として長年勤める千代の努力の賜物だった。海外での商談に旅立つ義隆を空港で見送った静子が屋敷に戻ると、千代が奇妙な電話を受けていた。仲間を裏切った京子がリンチに掛けられ、今すぐ300万円を用意すれば解放されるというのだ。団長が部下から罰を受ける上に金を積めば助かるという俄かに信じがたい話を千代は疑ったが、前妻の娘との距離を少しでも縮めたいと焦る静子は指定された場所へ向かおうとした。すると運転手の川田美津夫が門の中に投げ込まれたという鞄を持ってきた。それは京子の学生鞄で中には彼女の下着が入っていた。一刻の猶予も許されないと考えた静子は銀行で金を下ろすと、指定された午後4時に新宿センチュリーヘイアットホテルの前で待つことにした。だが予定の時間を過ぎてもそれらしい人物は現れず、川田がタバコを買いに車を離れるのと入れ替わるように二人の女子高生が乗り込んだ。静子は拉致され森の奥の小さな一軒家に連れて行かれた。

柱に縛られていた京子は心配する静子を見るなり高笑いした。リンチが狂言だったことを知った静子はここで起きたことを警察に通報すると脅したが、団員たちは面白がって彼女の着物を剥ぎ取り縛り上げたのだ。そして口封じのために恥ずかしい写真を撮りまくり、それを義隆に見せると逆に脅したのだった。日が暮れた頃、一軒家にやってきたのは暴力団田代組の代貸・津島淳だった。津島が仕切るルーレットクラブに川田と入った京子は200万円の借金を作ったが、利息を含めた300万円を払えというのだ。話が違うと食い下がるが、津島は一緒に連れてきた川田に契約だから仕方がないと言わせた。困った京子は静子のはめていたダイヤの指輪で片をつけようとしたが、津島はそれを受け取っても承知せず静子の体で義隆を強請ろうと考えたのだった。川田が彼女に恋心を抱いていることを知っていた津島はこのままでは刑務所行きになると脅し、母子ともに田代組へ送り届けることに協力させることにした。一方、京子の話に乗ったにも拘らず割を食った銀子たちはある考えを思いついた。津島に近づいた彼女は口止め料の代わりとして調教師の鬼と呼ばれた父親譲り技術を持つ団員のマリをメンバーに加えるように言った。調教が成功した後に二人を誘拐し秘密クラブのSMショーで稼いでいる松岡組へ売り飛ばせばそれ以上に儲かるからだ。

屋台的映画館

花と蛇(1974年)

  • posted at:2020-07-12
  • written by:砂月(すなつき)
はなとへび
日活
配給:日活
製作年:1974年
公開日:1974年6月22日 併映「赤線最後の日 昭和33年3月31日」
監督:小沼勝
プロデューサー:松岡明
原作:団鬼六
脚本:田中陽造
撮影:安藤庄平
照明:木村誠作
録音:片桐登司美
美術:横尾嘉良
編集:鈴木晄
音楽:真鍋理一郎
助監督:鴨田好史
色彩計測:田村輝行
現像:東洋現像所
製作担当者:青木勝彦
出演:谷ナオミ 坂本長利 石津康彦 藤ひろ子 高橋明
シネマスコープ カラー 73分

一流企業の課長を務める片桐誠は、幼い頃にアメリカ兵相手に売春行為をして生計を立てていた母・美代の情事を目撃した。驚いた彼は脱いだ服と一緒に置いてあった拳銃で黒人兵士を射殺したのだが、それがトラウマとなり同じ夢でうなされる日々が続いた。思春期を迎えて自分が勃起不能であることがわかるとそれをジミーの亡霊のせいだと信じ込んでいたが、儲かるという理由で美代が大人の玩具屋よりもSMをテーマにしたブルーフィルムの撮影に重きを置いたことで、治らないのはいつしかそのせいだと思うようになった。

ある日、誠は社長の遠山千造から奇妙な相談を持ち掛けられた。誠の身辺を調べ上げた千造は彼が緊縛写真を持ち歩いていることを突き止め、同じことを妻の静子にもして欲しいと依頼したのだ。彼女はここ一年半ほどセックスを拒み続け離婚をしたがっていた。そこで貴族の出で気位の高い静子を服従させようと考えたのだ。実家から連れてきた小間使いのハルとは一心同体のような関係で、当初は二人の妻を得たような気分でいた。ところが時が経つに連れて状況が変わってきたため特別な飼育と調教で静子のプライドをぶち壊して欲しいというのだ。そう言われて困ったのは誠だった。何故なら彼には人を縛る経験がないからだ。美代が撮影する際には専属の緊縛師がおり誠はスタジオにすら入れさせてもらえなかった。恐縮して本当のことが言えずに断ると、千造は激怒して社長命令だと怒鳴った。自宅に戻った誠はテキストを参考にダッチワイフを縛って練習を重ねた。

数日後、千造は静子を画廊に連れて行きお茶に睡眠薬を混入させてそのときを待った。そして薬が効き始めると誠の助けを得て車に乗せた。静子の飼育は一切任せるが貞操を破れば許さないと千造が言い含めると、信用出来ない男に何故任せるんですかと誠は開き直った。そして飼育状況を正確に報告すると約束すると車を出発させた。しばらくして空き地に車を停めると、誠は静子の顔を舐め回すように眺めると自信を取り戻すために彼女の体で試してみることにした。だが目の前に突然ジミーの亡霊が現れたことで諦めて車を出した。自宅に戻ると辺りはすっかり暗くなっていた。誠は自室のベッドに静子の両腕を縛ると着物をはだけさせたが、そのとき彼女が目を覚ましたのだ。静子は主人に言いつけますよと抵抗したが、その依頼主が千造だと知り愕然とした。

屋台的映画館

拝啓天皇陛下様

  • posted at:2020-06-16
  • written by:砂月(すなつき)
はいけいてんのうへいかさま
松竹(大船撮影所)
配給:松竹
製作年:1963年
公開日:1963年4月28日 併映「独立美人隊」
監督:野村芳太郎
製作:白井昌夫
制作補:六車進
企画:市川喜一 高島幸夫
原作:棟田博
脚本:野村芳太郎 多賀祥介
美術:宇野耕司
撮影:川又昻
照明:三浦礼
編集:浜村義康
録音:栗田周十郎
録音技術:伊藤暢男
音楽:芥川也寸志
装置:岩井三郎
装飾:宗田八郎
現像:東洋現像所
色彩技術:坂巻佐平
衣裳:長島勇治
監督助手:杉岡次郎
撮影助手:高羽哲夫
録音助手:日向国雄
照明助手:堀利英
進行:岸本公夫
出演:渥美清 左幸子 中村メイ子 高千穂ひづる 長門裕之
シネマスコープ カラー 98分

昭和六年一月十日、棟本博は岡山にある歩兵第十連隊に入隊したが、そのときに出会った山田正助という男のことが気になった。何故なら彼は自分の名を漢字で書くことが出来ず、宣誓書にカタカナで署名したからだ。棟本と親しくなった山田は風呂場で生い立ちを話し始めた。三歳のときに母親と死に別れそれ以来天涯孤独。父親は顔さえ知らず、鬼のような親戚は馬以上に働かせた。十三歳のときに村を飛び出すと沖仲仕、炭鉱夫、土工もやった。肉体労働の毎日と比べれば軍隊は天国だ。山田はそう言って笑った。初年兵は二年兵から厳しく指導を受けるため棟本は毎日がつらいと思っていたが、山田は雨が降っても三度三度の飯が食える生活があと二年も続くことを考えると天国だと言った。例え二年兵から厳しいしごきを受けたとしても。

ある夜、教官の菊地少尉が初年兵だけを練兵場へ連れ出した。他言ならぬというその集会で菊地は胸の内を明かした。今年の下士志願者は定員の三倍を遥かに突破し第十連隊からも九名が志願していたが、それらが全て農村出身者だった。今や農村の窮状は目を覆うものであり果たして日本はこれで良いものかと考えた菊地を始めとする青年幹部将校は腐敗堕落した特権階級を倒し混乱と退廃の世相に覚醒を促すべきだと考えていた。そこで第十連隊の中から志を同じくする兵士を募ることにしたのだ。「教官とともに死んでくれる者は一歩前に出ろ!」。前に出たのはつまづいた鶴西に押された棟本だった。それから数日後、菊地は急病という名目で彼らの前から姿を消した。五・一五事件が起きたのは翌年のことだった。

秋になり初年兵はようやく中島へ行くことが許された。中島とは遊郭の街の名のことで、山田と棟本はやりて婆さんの誘いに乗って建物に入った。部屋で料金の交渉をしていると廊下からしつこく遊女に絡む客の声が聞こえてきた。二人は襖越しにからかったが、それが二年兵の原だったことでビンタを食らった上にふんどしの洗濯まで押しつけられた。それでも山田が上機嫌だったのは仕返しをすることに決めていたからだった。仕返しは除隊満期の前夜に行うことになっていたが、その日が近づくに連れて原の態度は軟化して行った。お人好しの山田は情に流されやすいため棟本は止めると言わせないように努めた。そして満期の前夜、山田は原を営庭に呼び出したが弱ってしまった。仕返しするにもその気が失せてしまっていたからだ。仲間たちが面白がって遠くから見守る中、彼が選んだ勝負は相撲だった。これなら文句あるまいと山田は原を投げ飛ばしたが、動けなくなり慌てて寝室に運んだ。心配した山田は謝りながら一睡もせずに体をさすったが、当の原は高鼾をかいていた。

屋台的映画館

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