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(秘)女子高校生 課外サークル

  • posted at:2019-10-10
  • written by:砂月(すなつき)
まるひじょしこうせいかがいさーくる
若松プロダクション
配給:東映ビデオ
製作年:1973年
公開日:1973年2月3日
作った人々:若松孝二 鈴木史郎 磯貝一 竹村峻治 脇坂孝之 斉藤博 和光晴生 原田正幸 飯村隆晴 伊藤野鳴 末吉忠二 東映化学 大久保スタジオ (秘)仕掛花火
出る人々:秋山ミチヲ 堺勝朗 長田恵子 水城マコ 一二常子
アメリカンビスタ カラー 70分

営業担当の銀行員・井上則夫にとって重要な業務は顧客獲得だった。そのためには相手のどんな要求に対しても目をつぶって応えなければならなかった。ある日、銀座のバーのマダムから大口預金の依頼を受け彼女の自宅へ向かった井上だったが、待ち受けていたのはセーラー服姿の「怪物」だった。顧客回りで忙しいと理由をつけても放してくれないため仕方なくつき合うことになった。SM好きなマダムに気に入られようと従順な僕を演じる則夫だったが、元々M志向ではない彼のストレスが頂点に達し思わず相手の首を絞めたのだった。するとマダムはピクリとも動かなくなり、則夫は怖くなって逃げた。

行く当てのない列車に揺られる則夫は、終点の万座・鹿沼口駅で降りるとこれからどうするか村の案内図を見ながら考えていた。すると男が後ろから肩を叩き「いい娘、いますよ」と声を掛けてきた。則夫は客じゃないと断ったが、男はどこまでもついてきてあなたは何かを求めている顔をしていると言った。彼はこの道11年のポン引きで、あなたの好みまでわかりますよと言うが則夫は無視をした。だが1万円で女子高生が抱けるチャンスが滅多にないことを考えると思い直しついて行くことにした。

男が連れてきたのは街から離れた一軒家で、彼は学校帰りの女子高生を雇って売春宿を経営していた。騙されたと思い帰ろうとする則夫だったが、本当に学生たちがやってきたことで目を丸くした。そしてその中からサチコという娘を指名した。ところが疲れているからか機能が果たせず、それを恥ずかしく思った則夫が帰ろうとすると男が待ったを掛けた。何故なら不満を持った彼が警察にタレ込むかもしれないからだ。絶対にここのことは口を割らないと約束しても許さなかった。食い物とセックスの恨みは絶対に晴らせず、人間はこの二つのことに深い根があることを経験しているんだと男は言った。すると則夫は自分が4ヶ月前に起こした事件の殺人犯であることを告白し、マダムから奪った金の残りを彼の前に置いた。ようやく信用してもらったことで則夫は札束を置いたまま家を後にしたが、それは逃走を終わらせることでもあった。ところが情けない彼の姿を見て放っておけないと感じた男は引き留めたのだった。成り行きで住民となった則夫は翌日、男にある提案をした。それはサチコを身請けすることだった。男は了承したが、その条件として家を出て行くように言った.。売春宿にもルールがあり、サチコだけ特別扱いすれば秩序が乱れてしまうからだ。それが出来なければ出て行って欲しいと言われ、則夫は下働きとして渋々残ることにした。ところがサチコには以前から通い詰める作家の上客がいたことを知り、遣る瀬無い気持ちになった。

屋台的映画館
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魔女の宅急便(2014年)

  • posted at:2019-03-25
  • written by:砂月(すなつき)
まじょのたっきゅうびん
 「魔女の宅急便」フィルムパートナーズ(ステューディオ スリー=東映=北京泰楽国際文化発展=KADOKAWA=D.N.ドリームパートナーズ=オリコム=日本テレビ放送網=木下グループ=EDKO FILMS LTD.=ビーイング=こだま印刷=読売新聞社=MY Promotion=読売テレビ放送)
配給:東映
製作年:2014年
公開日:2014年3月1日
監督:清水崇
製作:梅川治男 遠藤茂行 修健 井上伸一郎 阿佐美弘恭 正盛和彦 城朋子 木下直哉 Bill Kong 升田年則 大竹俊夫 松田陽三 小川富子 藤門浩之
企画:小川富子
企画プロデューサー:松栄清
エグゼクティブプロデューサー:森重晃 修健
プロデューサー:梅川治男
原作:角野栄子
脚本:奥寺佐渡子 清水崇
音楽:岩代太郎
ラインプロデューサー:梶川信幸
撮影:谷川創平
照明:金子康博
録音:深田晃
美術:岩城南海子
編集:高橋歩
VFXスーパーバイザー:秋山貴彦
音響効果:柴崎憲治
衣裳デザイン・制作:宮本宣子 山下和美
装飾:小山大次郎
キャスティング:新江佳子 東平七奈
助監督:毛利安孝
制作担当:鍋島章浩 竹岡実
主題歌:「Wake me up」倉木麻衣
企画:スペースポンド
製作プロダクション:ステューディオ スリー
出演:小芝風花 広田亮平 山本浩司 吉田羊 新井浩文
アメリカンビスタ カラー 108分

魔女の存在が信じられている東洋のある町でのお話。ある年の冬、山に囲まれた小さな村にキキという女の子が生まれた。彼女のお父さんのオキノは学者でごく普通の人間だったが、お母さんのコキリは魔女だった。コキリの使える魔法は二つで、一つは薬草を育てて薬を作ること。病院から遠く離れたこの村ではみんなが彼女の薬を頼りにしていた。そしてもう一つは箒で空を飛ぶことだった。小さな頃から母親の飛び方を見てきたキキは彼女の手伝いをしようと箒に乗ったが、まだ魔女として未熟ということもあり失敗を繰り返した。魔女の世界には13歳までにどうするか決めなければならないというしきたりがあり、その歳になると満月の夜を選んで独り立ちしなければならなかった。生まれた家を離れ、まだ魔女が住んでいない街を見つけて一年間暮らす修行を行うのだが、自分の魔法だけを頼りに生活をすることが出来ればようやく一人前の魔女として認められるのだ。それは今でも魔女がこの世にいることを知ってもらうための大切なしきたりだった。箒で空を飛ぶことが好きなキキはずいぶん前から魔女になることを決めていたのだ。

13歳になった春の満月の夜、キキは両親や住人に見送られながら相棒の黒猫・ジジとともに旅立った。彼女が一夜掛けてたどり着いたのはコリコという海辺の町だった。町の人たちが空飛ぶ自分を珍しそうに眺めていたことでここには魔女がいないと考えたキキは、美しい風景を気に入りこの地で生活を始めることに決めた。だが旅の疲れが出てしまい、たどり着いた動物園の干し草の上で眠っていたところを飼育員のナヅルに見つかった。家出娘と間違われた彼女は必死に弁解をしたが、空を飛んだことで逆に怖がられた。キキが次に向かったのは風車のある家だった。そこはおソノさんが営むパン屋で、自家製のパンが売りだった。お腹が空いたキキだったが、お金を持っていなかったため途方に暮れた。その様子を心配して見ていたおソノさんは食事をご馳走し話を聞くことにした。そして楽しそうに話すキキが空を飛ぶ能力を使ってお届け屋を始めようと考えていることがわかると、魔女の宅急便だねとおソノさんは笑った。彼女は2階の空き部屋をキキに提供し生活をともにすることに決めた。亭主に相談するまでもなく。キキはまず部屋の片づけをし、それと同時に店の手伝いもした。店先に「魔女の宅急便」という自作の看板を掲げたが、掛かってくる電話はパンの注文ばかりだった。お客がつくまで3年掛かるとおソノさんに言われてしょげていると、ヨメノ岬の小学校まで急いで本を届けて欲しいという少年・トンボが現れた。初仕事で興奮するキキは誰の届けるのかを聞きそびれてしまったため、とりあえず小学校へ向かうことにした。空を飛ぶことに憧れるトンボはキキが飛ぶ姿を一目見たかったのだ。

屋台的映画館

マメシバ一郎 フーテンの芝二郎

  • posted at:2017-04-25
  • written by:砂月(すなつき)
まめしばいちろうふーてんのしばじろう
「マメシバ一郎 フーテンの芝二郎」製作委員会(アミューズメントメディア総合学院=tvk=テレ玉=チバテレ=三重テレビ=KBS京都=サンテレビ=札幌テレビ放送=TVQ九州放送=とちぎテレビ=ぎふチャン=テレビせとうち=NTTぷらら=アニマルプラネット=竹書房)
配給:AMGエンタテインメント
製作年:2011年
公開日:2012年2月4日
監督:亀井亨
企画:AMGエンタテインメント
製作総指揮:吉田尚剛
製作:熊谷典和 遠藤圭介 小森健一郎 波多美由紀 伊藤義行 菅村峰洋 加地良光 星野高章 寺田良司 中地務 中澤淳二 芝田麻也子 伊藤明博
プロデューサー:平体雄二 飯塚達介
ラインプロデューサー:近藤あゆみ
脚本:永森裕二
撮影:中尾正人
録音:田中博信
美術:松塚隆史
整音:藤林繁
助監督:島崎謙太郎
ヘアメイク:岩本みちる
衣裳:永井伸子
制作担当:吉田智
音楽:野中”まさ”雄一
歌:「カラクル」高橋直純
アニマルトレーナー:ZOO動物プロ
編集:亀井亨
DIT:川原康臣
音響効果:丹愛
制作プロダクション:スタジオブルー
出演:佐藤二朗 南沢奈央 高橋洋 高橋直純 キムラ緑子
アメリカンビスタ カラー 75分

母・鞠子の作戦によりついに分厚い殻を破った元ニートの中年・芝二郎(38歳)。鞠子に実家を売られたことで、今は叔父・芝重男が経営するアパートで暮らしている。勤務先は愛犬のマメシバ一郎がお世話になっているペットショップで、店長の市村影虎は風変わりながらも動物の面倒見がいい彼を信頼して雇ったのだ。仕事をサボって駄菓子屋へ行き好物のうまい棒を買い食いすることと客に対して減らず口をたたくこと、そして考え方の違いで動物トレーナーの真田まちこと衝突することが度々あることは問題だが、影虎は温かい目で見守ることにしていた。二郎が働き始めて1年が経ったある日、影虎はまちこが行っている飛び込みのしつけ教室をセミナーにする提案をした。お客さんにアンケートを取ったところ、ぜひ実施して欲しいという意見が多かったからだ。まちこは快く承諾したが、その条件を聞いて嫌な顔をした。次のステップアップとして二郎を参加させるというのだ。当の本人もしつけなんて金を取って教えるもんじゃないなどなど屁理屈をこねて参加を拒否した。

帰宅するとアパートの前で重男がさりげなく待ち構えていた。今日こそは滞納している家賃を取り立てろと妻・富子からきつく言われているからだ。すると二郎は、こんなボロアパートで親戚から金を取ろうなんざふてえ根性ですぜと言い返した。いつものことだと聞き流した重男は、契約書などの書類を揃えておかなければならないことから二郎に身分証明書の提出を求めたが、彼が持っていたのが一郎の診察券だけだった。犬に負けてるぞと言われショックを受けた二郎は部屋に逃げ込んだ。自分のペースで生きることの素晴らしさを再確認した彼は、翌日から仕事をサボって一郎と散歩に行く生活が始まった。とりあえず公園に行ったが、余暇の過ごし方を忘れてしまったため、結局は駄菓子屋で時間を潰した。再びニート生活に戻った二郎を心配した親戚で郵便配達員の財部陽介は何故職場に溶け込もうとしないのかと尋ねた。すると返ってきた答えは「自分らしさを見失わない人間になりたいが故」。陽介には二郎に職場復帰をしてもらわなければならない理由があった。それはどうしても読んで欲しい手紙をまちこに渡して欲しかったからだ。(手紙を配達するのはあなたの)仕事でしょうがと二郎に嫌味を言われようとそれだけは譲れなかった。翌日、出勤した彼はまちこに手紙を渡したが、結果が芳しくないことを表情から読み取った。だがまちこに接客が出来ないんだから今日こそしつけ教室に出てくださいねと言われたことで、頭にきた二郎はムキになって客の前に出たのだ。ところが応対に困った末にパニックに陥り店の犬を抱いたまま外に飛び出したのだった。頭の中でわめく声から逃れるために二郎は自宅へ戻り、落ち着くと辞表を書いた。

一郎と店の犬を連れて散歩に出かけた二郎は公園にいるところをまちこに見つかった。どういうつもりかと聞かれても答えられない二郎は、一郎を連れて成功体験を話して欲しいと言われ、翌日渋々出社した。ところが生徒の前で一郎が全く言うことを聞かないために再びパニックに陥っり、自信をなくした二郎は影虎に辞表を提出した。

屋台的映画館

マメシバ一郎3D

  • posted at:2017-02-28
  • written by:砂月(すなつき)
まめしばいちろうすりーでぃー
「マメシバ一郎」製作委員会(アミューズメントメディア総合学院=tvk=テレ玉=チバテレ=三重テレビ=KBS京都=サンテレビ=札幌テレビ放送=TVQ九州放送=とちぎテレビ=NTTぷらら=竹書房)
配給:AMGエンタテインメント
製作年:2011年
公開日:2012年2月4日
監督:亀井亨
企画:AMGエンタテインメント
製作総指揮:吉田尚剛
製作:熊谷典和 遠藤圭介 梶野元延 波多美由紀 伊藤義行 江副純夫 菅村峰洋 矢上尚宏 星野高章 小川貴史 伊藤明博
プロデューサー:飯塚達介 森角威之
ラインプロデューサー:田口梓
脚本:永森裕二
撮影:中尾正人
美術:西村徹
照明:福田裕佐
録音:甲斐田哲也
助監督:島崎謙太郎
ヘアメイク: 唐澤知子
衣裳:永井伸子
制作担当:柏田藤子
音楽:野中”まさ”雄一
主題歌:「大切なキミ」高橋直純
アニマルトレーナー:ZOO動物プロ
編集:亀井亨
DIT:石川真吾
VFX:東海林毅
音響効果:丹愛
整音:甲斐田哲也
制作プロダクション:杜方
出演:佐藤二朗 臼田あさ美 高橋洋 高橋直純 一郎
ワイドビジョン カラー 59分

中年ニート・芝二郎(37歳)は長年引きこもり生活をしているが、そんな彼を放置して父・良男は山小屋の主人を、母・鞠子はベネズエラで看護師として新たな人生を謳歌していた。その結果、この大きな幼児を押し付けられた形になっているのが親戚一同だった。芝家の隣に住む叔母・富子の郵便受けには電気、水道、ガスの督促状がねじ込まれ、いとこの加代子のところへは寿司の請求書が回ってくる始末。富子は二郎の生活を安定させるために見合いを計画し、彼が心を許す数少ない人物の中のひとりである夫の重男を差し向けたのだった。

ご近所情報をブログに書き込み炎上に喜びを感じていた二郎だったが、自らビデオカメラで撮影し投稿サイトにアップロードした動画が好評を得ていることがわかると新たな作品作りにハマった。何故なら、ブログに貼付したアフィリエイト広告で小遣い稼ぎが出来ることを知ったからだった。二郎が最近取り組んでいるテーマは、愛犬の一郎と重男のコンビが出演する「老人と犬」だった。重男が撮影に協力する目的はもちろん見合いを成功させることだが、恋愛経験の乏しい二郎に怪しまれないようにするために「犬のお友達探し」ということにしていた。明後日に迫る見合いのために重男が相手の写真を見せると、二郎はある疑問を口にした。犬のお友達探しに何故飼い主が写っているのか、と。それを聞いた重男が飼い主同士だって大事じゃないかと言うと、二郎は疑惑の目を向け動揺する彼にこう言った。「犬にかこつけて若い女性にお近づきになりたいんでしょ?」。ホッとした重男が人とのコミュニケーションは大事だと言うと、二郎の返事は「そんなのはナッシングだ」。

見合いのことが気になっていた二郎の親戚の財部陽介は、郵便配達そっちのけで芝家にやってきた。ワンコのために何故そうも盛り上がれるのかと二郎が尋ねると、陽介は一郎が飼い主に似て引きこもってもいいのかと言った。すると部屋に重男が現れ、見合い相手の鎌田晶子を待たせては申し訳ないと二郎を引っ張って言った。見合いが始まると二郎はノーコメントを貫き、職業を尋ねてきた晶子に個人情報だから明かせないと言った。冷や汗をかく重男はIT関係だと言ってその場を取り繕い、実家の和菓子屋がネット通販を行い晶子がそれを担当していることがわかると、陽介は二郎と話が合うかもしれないと場を盛り上げようとした。だが二郎は、ボクと話が合っても仕方なかろうと言った。そして一郎を放すとビデオカメラを取り出し晶子が連れてきたつくねちゃんと遊ぶところを撮り始めたのだ。じゃれ合う二匹のいたずらはエスカレートし、その後は・・・。晶子が怒って帰る中、重男と陽介はひたすら頭を下げ続けたが、二郎はハプニング映像が撮れたことに満足していた。

屋台的映画館

真夜中の招待状

  • posted at:2015-10-08
  • written by:砂月(すなつき)
まよなかのしょうたいじょう
松竹
配給:松竹
製作年:1981年
公開日:1981年9月26日
監督:野村芳太郎
製作:野村芳太郎 野村芳樹
原作:遠藤周作
脚本:野上龍雄
撮影:勝又昻
音楽:菅野光亮
美術:森田郷平
録音:山本忠彦
調音:松本隆司
照明:小林松太郎
編集:太田和夫
スチール:赤井溥旦
監督助手:山田良美
製作主任:福山正幸
装置:川添善治
装飾:磯崎昇
衣裳:松竹衣裳
現像:東洋現像所
進行:小松護
スタイリスト:金子初美
ヘヤーメーク:フロム・ニューヨーク
スタントマン:ジャパンアクションクラブ
出演:小林麻美 小林薫 高橋悦史 米倉斉加年 宮下順子
アメリカンビスタ カラー 125分

精神科医・会沢吉男を一人の女性が訪ねた。彼女は稲川圭子といい、フィアンセ・田村樹生のことで相談があるというのだ。気になった会沢はじっくりと話を聞いてみることにした。ひと月前のこと、樹生は水戸に住む次兄・和生から沼津の三兄・捷平が蒸発したという話を電話で知り真っ青になった。翌日、和生の行きつけのバーで圭子と樹生が待っていると、沼津で詳細を聞いた和生が現れた。真夜中にふらりと出て行ったことに隣で寝ていた妻も気づかなかったのだという。気の弱い捷平が人から恨みを買うとは思えず、新婚ということで女性関係は考えられないと和生がいうと、兄さんは大丈夫だろうなと樹生が心配した。熊本に住んでいた長兄・順吉も七年前に同じように姿を消したのだ。和生は、俺が万が一蒸発するようなことがあったら、残された者が心配しないように事情を知らせてやると約束した。そして圭子に、二人の婚約を祝福していることを前置きして、今回の件は単なる偶然で兄弟の中におかしな血が流れているなどと考えないで欲しいとお願いした。だが仲のいい和生でさえも樹生に何も知らせずに蒸発したのだ。それ以来、次は自分の番だと思い込んだ彼はノイローゼになり、部屋に鍵をかけて閉じこもるようになった。神経科の病気に罹った者が家系にいないことを圭子に確認した会沢は、本人に納得させることを条件に診察することにした。

樹生に診察を承知させた圭子は会沢と再び会った。彼女が用意してきた紙には簡単な家系図が書いてあり、それを受け取った会沢は眉をひそめた。原田姓の中で樹生だけ苗字が違うことを尋ねると、圭子は子供がいない伯母のもとへ養子に行ったことを説明した。稲川邸で診察を行うことになった会沢は、薄暗い部屋で樹生から話を聞き出すことにした。彼は小学校三年生のときに熊本の実家から養子として東京の田村家にやってきた。それから間もなく父親が亡くなり、既に母親が亡くなっていたこともあって熊本へ帰ることはなかった。兄弟との交際について尋ねると、疎遠になっていた順吉と捷平とは違い、東京の大学に進学したことで頻繁に会うことになった和生だけが肉親だと感じるようになったと答えた。その信頼していた兄が蒸発したことで強いショックを受けていたのだ。ある真夜中、電話のベルが鳴り、目覚めるとすぐに止んだ。何度かあったが、それが現実か幻聴かわからなかった。不安神経症だと診断した会沢は、三人が蒸発した原因を突き止めてあなたの精神的不安を取り除くために、枕元にメモを置いて夜中に見た夢や心に浮かんだ全てを書き留めてくださいとお願いした。ダーン博士の学説によれば、人間は近い将来に起こることを夢で予見する本能があるというのだ。それを聞いた樹生は和生から失踪前にもらった手紙のことを思い出し、会沢に読み聞かせた。そこには夢のことが書かれていた。

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