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河内のオッサンの唄

  • posted at:2018-06-23
  • written by:砂月(すなつき)
かわちのおっさんのうた
東映(東京撮影所)
配給:東映
製作年:1976年
公開日:1976年11月17日 併映「新女囚さそり 701号」
監督:斎藤武市
企画:坂上順
脚本:関本郁夫 高田純
撮影:中島芳男
録音:小松忠之
照明:萩原猶義
美術:藤田博
編集:田中修
助監督:馬場昭格
記録:高津省子
擬斗:日尾孝司
スチール:藤井善男
進行主任:志村一治
装置:井保国夫
装飾:高井義典
美粧:入江荘二
美容:石川靖江
衣裳:福崎精吾
演技事務:山田光男
現像:東映化学
音楽:鏑木創
主題歌:「河内のオッサンの唄」ミス花子
出演:川谷拓三 岩城滉一 夏純子 奈美悦子 清水美恵
シネマスコープ カラー 89分

河内松原に住む徳田松太郎は三十路を過ぎてもまだ独り身の白タク運転手。喧嘩早くて粗忽者だが河内男の心意気を身につけた好漢である。そんな彼を皆親しみを込めて徳松と呼んでいた。博打好きだが才能のない彼は仕事で稼いだ金を地主の息子・堺忠三郎が開く賭場につぎ込み丸裸にされて朝帰りする、そんな毎日を送っていた。徳松がいつものように河内松原駅の前で客引きをしていると、金髪かつらをつけた八百千枝子がやってきた。浮気癖のある彼女は新しい男を見つけては家を出て行き、ほとぼりが冷めると帰ってくるのだ。そんなとき夫の仙吉との間に仲裁役として入るのが徳松の役目で、このたこ焼き屋の夫婦ゲンカは町の名物でもあった。ある日、怪我をした老婆がリアカーで運ばれてきた。彼女は六升とのあだ名で呼ばれる酒豪の林田かねで、倒れていた場所が大和川の工事現場付近だったことから山村建設の仕業だと断定し河内者の男気を見せつけろと団結した。徒党を組んだ徳松たちはバックに剛田組がいようが構わず飯場に突入し、通報でやってきた警官隊も巻き込んで大暴れした。そして釈放された彼らを女将たちは紙吹雪とクラッカーで歓迎した。その夜、徳松の家で宴会が行われたが、勝手知ったる他人の家。テキパキと働くのは彼を慕う倉本花子だった。隣のおばさんから醤油を取ってきて欲しいと頼まれた花子が玄関を出ようとすると、入り口に懐かしい人が立っていた。それは東京でファッションモデルとして活躍しているかねの娘のかほるだった。三年ぶりの帰郷ということで皆彼女を歓迎した。お開きになり自宅に戻るとかほるは誰か訪ねてこなかったかとかねに聞いた。それが東京者の三人連れだったことがわかると、かほるは夜明け前に出て行った。

博打で身上を潰した花子の父の墓参りをしたその夜、徳松に一生一度のツキが回ってきた。丁半博打で勝ちまくり誰も手に負えない状態になっていたのだ。天才を豪語する徳松を黙らせようとしたのは、夜食の海苔巻きを納めにきた花子だった。彼女は海苔巻きの売り上げに加えて体を賭けると啖呵を切り一世一代の勝負を行った。結果はピンゾロの丁で徳松の勝ち。煮ても焼いても食えないじゃじゃ馬に用はないと捨てゼリフ残して帰った徳松を許せなかったのはその場で一部始終を見ていた仙吉だった。博打の形はちゃんとつけるのが河内者の仁義という教えのもと彼はかねたちと結託してある行動に出た。まず寝入った徳松を豪勢な花火の灯りで叩き起こし、出てきたところを白無垢姿の花子に対面させるのだ。果たしてその作戦は成功し、面食らった徳松を力ずくで正装に着替えさせると強引に祝言を挙げさせたのだ。だが酒が飲めればいいかねたちにとってそんなことはどうでもよく、居場所を奪われた二人は刈り取りが終わった田んぼで朝を迎えたのだった。

屋台的映画館
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怪竜大決戦

  • posted at:2018-04-24
  • written by:砂月(すなつき)
かいりゅうだいけっせん
東映(京都撮影所)
配給:東映
製作年:1966年
公開日:1966年12月21日 併映「黄金バット」
監督:山内鉄也
企画:岡田茂 新海竹介
脚本:伊上勝
撮影:わし尾元也
照明:長谷川武夫
録音:荒川輝彦
美術:矢田精治
音楽:津島利章
編集:神田忠男
助監督:牧口雄二
記録:矢部はつ子
装置:米沢勝
装飾:山田久司
美粧:堤野正直
結髪:橋本明子
衣裳:三上剛
擬斗:上野隆三
合成:松木春吉
進行主任:並河正夫
特殊撮影・撮影:赤塚滋 国定玖仁男
特殊撮影・照明:金子凱美
特殊撮影・助監督:俵坂昭康
特殊撮影・記録:塚越恵江
主題歌:「怪竜大決戦」ヤング・フレッシュ
出演:松方弘樹 小川知子 鈴村由美 金子信雄 林真一郎
シネマスコープ カラー 85分

近江の国尾形城の乗っ取りを企てた家老結城大乗は忍者たちと結託し謀反を起こした。寝室の城主尾形左馬亮が大乗によって斬殺された頃、月夜に照らされる一艘の小舟が城からの脱出に成功していた。幼き若君雷丸は家臣に助け出されたのだが、彼らを待っていたのは巨大な海竜だった。忍者の頭領大蛇丸は奥の手を使って若君の命を狙ったのだが、それを阻んだのは突然飛来した大鷲だった。大鷲は海竜に襲い掛かり爪で額を一撃すると、雷丸をさらって飛び去って行った。

大鷲にさらわれてから十四年余、飛騨の国蟇ヶ岳に住む蟇道人に忍術を仕込まれた雷丸は青年忍者となっていた。数日前から身辺が騒がしくなってきたことに気づいていた道人は、お墨付きを与えた雷丸に里へ行くよう促した。明日あたり里の者が薬草を取りにくるかもしれないから用意をしてくれと言われ庵に戻ろうとした雷丸は複数の忍者に襲われた。自分の名を知っていることに眉をひそめた彼は持ち前の敏捷さで危機を乗り越え、残り一人を木に縛りつけた。そして何故自分の命を狙ったのかと刀を突きつけて問いただしたが、忍者は舌を噛み切って果てたのだった。他にも気配を感じ小太刀を木に向けて投げつけるとその後ろに隠れていた何者かが走り去った。雷丸が先回りして捕らえると忍者ではなく、通りすがりに殺し合いを見てしまい恐ろしくなり逃げ出した綱手という娘だった。幼い時に別れた父親を捜している彼女は、昔蟇ヶ岳に住んでいたことを知って手掛かりを求めて蜘蛛ヶ峰からやってきたのだ。父親の顔も名も知らず、ただ一つの手掛かりは大事にしている御守袋のみ。困り果てた雷丸は師匠なら何か知っているかもしれないと考え会せることにした。

夕刻、道人の庵に現れたのはかつての弟子の大蛇丸だった。彼は道人の命を狙うために蛇の化身となって近づいたが手の内は見透かされていた。仕方なく御機嫌伺いと嘘をついたが、欺いて秘伝昇竜の一巻を盗んだ男の言葉を信用するはずがなかった。道人は巻物を手に入れた大蛇丸が尾形家の忘れ形見を亡き者にしようと企んで小舟を襲うことを予知しており、雷丸を助けるために大鷲を差し向けた。そのときに受けた額の傷が大蛇丸にもあるのだ。雷丸が成人したことを知り立ち戻ったのであろうと指摘すると大蛇丸は開き直り、手の者が今時分始末したに違いないと言った。そして道人を葬り去ろうとしたが力の差は歴然だった。だが見せた隙をつき大蛇丸は道人を後ろから斬ったのだった。夕餉の支度をするために雷丸が綱手を連れて戻ると道人は虫の息となっていた。道人は最後の力で印可し蟇の妖術を授けた。そして雷丸の生い立ちを明かし、大蛇丸と結城大乗の成敗を命じたのだった。翌日、雷丸は両親と道人の恨みを晴らすために綱手と別れて近江の国に向かった。

屋台的映画館

華麗なる追跡

  • posted at:2018-03-05
  • written by:砂月(すなつき)
かれいなるついせき
東映(東京撮影所)
配給:東映
製作年:1975年
公開日:1975年4月26日 併映「県警対組織暴力」
監督:鈴木則文
企画:吉峰甲子夫 高村賢治
脚本:掛札昌裕 金子武郎
撮影:山沢義一
録音:内田陽造
照明:大野忠三郎
美術:北川弘
音楽:八木正生
編集:戸田健夫
助監督:沢井信一郎
記録:山内康代
擬斗:日尾孝司
スチール:藤井善男
進行主任:松本可則
装置:小早川一
装飾:酒井喬二
美粧:井上守
美容:宮島孝子
衣裳:福崎精吾
演技事務:石原啓二
現像:東映化学
協力:伊豆 長岡 エイトランド
志穂美悦子 ファッション・コーディネイター:北本正子
衣裳協力:池袋 東武百貨店
出演:志穂美悦子 マッハ文朱 郷鍈治 石橋雅史 円山理映子
アメリカンビスタ カラー 83分

カーレーサーの矢代忍は鈴鹿サーキットで行われたゴールデンカップで優勝を飾ったが、彼女には秘密機関TESO(東南アジア特別調査機関)のエージェントという別の顔があった。レース終了後、スポーツカーで帰宅していると所長の前島勇人からお祝いの連絡が入ったが本題はそれではなかった。麻薬組織を捜査していたエージェントが、忍が長年追い掛けていた男の名を浮かび上がらせたのだ。ヘンリー中谷は日本にいた。アメリカ本土、中南米、東南アジアと男の姿を追い求めて日本へ戻ってきた忍の勘は当たっていたのだ。前島の下へ向かった忍は、そこで潜伏場所が赤坂の秘密賭博場を根城にしていること、そして潜入捜査で絶対に失敗が許されないことを説明された。仮にヘンリーの手掛かりが消えた場合、彼と背後関係の情報が永遠に闇の中へ葬り去られるからだ。現在のヘンリーの顔は整形によって5年前の看守時代の面影はなくなっていたことから忍はその写真を脳裏に焼き付けたのだった。純白のドレスに身を包んだ忍はルーレットテーブルに近づきヘンリーがいるのを確認した。忍が勝ち続けるのに対しヘンリーは賭け金を失い、30万円とペンで書き込んだ自分の名刺を賭けようとしてディーラーに止められた。俺を誰だと思っているんだと凄むヘンリーに、忍はその名刺を買ってあげましょうと声を掛けた。ヘンリーに気に入られることに成功した忍だったが、ボディーガードが彼を連れ出そうとしたため拳で攻撃した。その結果、賭博場は大混乱に陥りヘンリーはボディーガードの一人に連れ去られてしまった。

ある日、アオキフローリストという花屋に女が訪ねてきた。その店を営むのは青木新平と凪子の兄妹で、そこでは花を扱うだけでなく忍のファンクラブの受け付けも行っていた。忍は花屋が入るマンションに住んでおり、女は彼女に用があると言ったことから凪子はてっきりファンクラブの入会者だと思って対応した。そこに帰ってきた忍に高校時代の世話になった正田有希子だと自己紹介すると、二人は久しぶりの再会を抱き合って喜んだのだった。有希子はおじから任されたアンティークショップに連れて行くと、おばさまに忍の今の姿を見せたかったと思わず漏らした。するとそれを聞いた忍は、父の事件が母の命を縮めたのよと苦々しく言った。

5年前、忍の父・正之は光洋丸の船長時代に積荷から時価5億円相当のヘロインが見つかったことで麻薬の運び屋として逮捕された。その後、懲役12年の判決が下ったが、正之は面会にきた忍に無実を訴えたのだ。そして何年掛かってでもその陰謀を暴いて無実を晴らすというと、それを聞いていた看守が静かにしろと殴りつけ、強引に独居房へ連れて行かれたのだった。それから翌日、正之が死んだという知らせを受けた妻の綾子と忍は刑務所に駆けつけたが、その酷い有り様に言葉を失った。監視の目を盗んで毒を呷って自殺したと看守は言ったが、遺体には明らかな暴行の痕が無数にあるため、例え検視官が確認したと言っても忍はそれを鵜呑みにすることは出来なかった。その後、綾子は心を痛めて体調を崩しこの世を去った。度重なる不幸が襲ったことで、忍は父の潔白を証明するために命を懸けて真犯人を追い詰めることに決めたのだった。

屋台的映画館

怪談深川情話

  • posted at:2018-01-15
  • written by:砂月(すなつき)
かいだんふかがわじょうわ
大映(京都撮影所)
配給:大映
製作年:1952年
公開日:1952年7月24日
監督:犬塚稔
原案:高桑義生
脚本:犬塚稔
撮影:伊佐山三郎
録音:中村敏夫
照明:湯川太四郎
美術:中村能久
音楽:松本四郎
編集:西田重雄
振付:若柳吉兵衛
新内:新内鶴三郎 新内仲造
和楽:望月太明吉
制作主任:小林利勝
装置:林米松
装飾:水谷秀太郎
背景:太田多三郎
美粧:小林昌典
結髪:石井エミ
衣裳:吉実シマ
スチール:齊藤勘一
助監督:井田探
撮影助手:木浦義明
録音整音:江村恭一
照明助手:岩木保夫
移動効果:村若由春
記録:秋山みよ子
演技事務:毛利美津夫
進行:村上忠男
出演:水戸光子 長谷川裕見子 堀雄二 進藤英太郎 市川小太夫
スタンダード モノクロ 91分

日本舞踊若柳流の師匠吉登世は器量良しだが操が固かった。そんな彼女に好意を持つ者は少なからずいた。太鼓持ちの幇間仙八を遣いに出して自分の邸に招こうとする信濃屋や、それを阻止しようとする吉登世の弟子銭屋助四郎などもそうだった。ある日、熊本組親分の熊本傳次郎の後援で弟子のお久は盛大な御披露目を行った。舞台後に傳次郎に身を預けなければならないことを養母から聞いたお久は吉登世に助けを乞うたが、今にも逃げ出そうとする彼女を引き留めると熊本組の若い男が見張っているから無駄だと諦めさせた。舞台が終わるとお久は人力車に乗せられたが、車夫は養母らとは違う方向へ走らせ吉登世の邸の前で人力車を停めた。彼は二人の話を聞いていたあの男だった。翌早朝、吉登世はお久を知り合いの寺に匿うことにし、婆やお安を遣いとしてやった。それと入れ替わるようにしてやってきたのは人力車の中の忘れ物を届けにきた熊本組の男だった。水を一杯いただきたいという男の声に聞き覚えのあった吉登世は、お話を伺いたいのでと部屋に上がらせることにした。

男は相良新吉といい、以前から傳次郎の考え方に違和感を覚えていたことで衝動的にお久を助けたのだった。その結果こっぴどく叱られた上に今日中にお久を連れ帰らなければならなくなったのだが、新吉の中にはもう熊本組に戻るつもりはなかった。そんな彼の身を案じた吉登世は着物の袖口にほころびを見つけるとその場で繕い、数日前の夜に起きた出来事を口にした。用事から戻り部屋に入ると、勝手口で人影が動いたとお安が腰を抜かした。勇気を振り絞って「どなたです?」と吉登世が声を掛けると、男の声で「すぐに出て行きますから桶の水をください」と返答があった。その穏やかな声にお安が様子を窺うと、男は騒がせてすみませんと謝ったのだった。きっと帰路ですれ違った警官隊に追われているに違いないと考えた吉登世だったが、悪い人物とも思えないため「無理に追い立てはしませんのでなるべく早く出て行ってくださいね」というと男は礼を言って立ち去ったのだ。それが新吉だとわかると吉登世は警察に追われた理由を尋ねた。すると新吉が喧嘩のとばっちりを食らい逃げる弾みで警官を川に投げ込んだことを話したことで二人の気持ちは打ち解けたのだった。

お久の養父の市川橋十郎とともに傳次郎の邸を訪ねた吉登世は、自分がお久を匿っていることを打ち明けた。すると傳次郎はお久を諦める代わりにお前さんの面倒を見ようじゃないかと言った。最初から仕組まれていたことに怒って帰ろうとする吉登世を傳次郎は手籠めにしようとしたが、様子を窺っていた新吉が部屋に乗り込んで彼女を助け出したのだ。翌日、新吉に怪我を負わせたことに責任を感じていた吉登世は、お久を手元に引き取ると今度は行く当てのない彼を寺で匿うことにしたのだった。

屋台的映画館
がらすのかめんですがざむーびーおんなすぱいのこいむらさきのばらはきけんなかおり
「ガラスの仮面ですが」製作委員会(ポニーキャニオン=DLE= BS12ch TwellV=白泉社)
配給:ポニーキャニオン
製作年:2013年
公開日:2013年6月22日
監督:谷東
企画:井本直樹 椎木隆太 西村和晃 久保田博
製作:井本直樹 椎木隆太 西村和晃 久保田博
プロデューサー:中島純 原田拓朗 井上勝哉 中島英貴
ラインプロデューサー:後藤阿梨紗
アシスタントプロデューサー:白木薫 岩本隆宏
宣伝:安藤三四郎 中村美絵 市川裕一
広報:西岡理紗 片岡英理子 乙部のりえ
原作:美内すずえ
脚本:中野守
脚本協力:岸本卓 三好昭央
脚本設定:野々村友紀子
脚本設定協力:有限会社ブランチ
演出補佐:篠原由佳里
作画監督:西山司
音楽:烏田晴奈 加藤久貴
エンディングテーマ:「仮面の宴」Takamiy
劇中歌:「ロボ紅天女のテーマ」烏田晴奈
音響効果:出雲範子
録音:はたしょうこ
アニメーション制作:株式会社DLE
声の出演:中根久美子 白石晴香 高橋伸也 後藤ヒロキ 葉山いくみ
ワイド カラー 55分

中華料理店の住み込み店員の母とともに横浜で暮らす一見平凡な少女の北島マヤは、ひとたび演劇のことになると情熱を燃やした。ある日、近所の子供を観客にしてテレビの内容を公園で演じていると、たまたま通り掛かった往年の大女優・月影千草は彼女が持つ女優としての恐るべきポテンシャルに衝撃を受けた。演技指導を行うとその才能は開花し数々の舞台を経験することで着実に力をつけて行った。ところが父に映画監督、母に大女優を持つ芸能界のサラブレッド・姫川亜弓が現れたことで実力の差を思い知り、マヤはくじけそうになった。そんな彼女に救いの手を差し伸べたのは最大手芸能プロダクションの青年実業家・速水真澄だった。マヤの演技にひどく心を揺さぶられた真澄は陰ながら「紫のバラのひと」として手厚くサポートしたが、その正体を明かさなかったために何事にも仕事を優先する冷酷非道な速水の姿を彼女は本心だと信じ込んでいた。その後、マヤと亜弓の二人は多くの作品に出演し、互いの力を認めつつ月影が上演権を持つ伝説の舞台「紅天女」のヒロインを目指した。数々の試練を克服し、競い合い、やがてマヤは日本を代表する若手女優の一人となった。そんな彼女に思いを寄せる若手青年俳優・桜小路優は自らの思いを打ち明けるが、マヤの中では紫のバラのひとの存在が大きくなって行った。一方、マヤに対する自らの気持ちに気づき始めた速水は、フィアンセ・鷹宮紫織との間で気持ちが揺れ動いた。マヤと紫のバラのひととの恋の行方は?。そして紅天女のヒロインの座を射止めるのは誰?。

紅天女の稽古でマヤが落ち込んでいるのを見兼ねた桜小路は、気晴らしをさせるために彼女をデートに誘った。そしてそのついでに東京ヌカイシソーの展望台で愛の告白をしたのだがあっさりと振られてしまった。だが演技に頭を悩ませて寝不足に陥っていたマヤが彼の胸を借りて眠りにつくと、ここにきていることが月影に見つかったら大変なことになるのではないかと桜小路は心配になった。すると突然窓外の月に「ツキカゲ」というサーチライトの文字が浮かび上がり、空から巨大なピンクウサギが降ってきたのだ。そして速報ニュースをモニターで見た桜小路はその攻撃の首謀者であるコードネーム=ザ・ムーンの写真が月影だったことに驚いたのだった。倒れて行くヌカイシソーの展望台に空から現れたのは月影の付き人である小林源造で、マヤを救出するとヘリコプターで脱出した。

奈良県某所にある邸では救出されたマヤが静かに休んでいた。知らせを受けて亜弓と速水が駆けつけたが、それと同じ頃に桜小路もバイクでやってきた。源造に置いて行かれ爆発に巻き込まれた桜小路だったが、彼はそんなことではへこたれずにマヤの気配と匂いを辿ってきたのだ。邸は月影が隠れ家として使っているセーフハウスで、その彼女が何者かに誘拐されたのだ。月影は引退した舞台女優という仮面を被っているが、その裏では世界の巨悪とたった一人で戦う女スパイ「ザ・ムーン」として活動していた。そして源造はメカニックを担当するサポート役を引き受けていた。月影はある時は国際的なテロ組織に入り込んで内部から壊滅に追い込み、またある時は麻薬密売組織を一網打尽にして世界の秩序を保っていたが、過去のミッションで敵の罠にはまり毒ガスを浴びたことで体調を悪化させた。そして右目の視力を失ったのは舞台上のケガが原因だと本人が言い張っているが、これも敵に捕まったときの拷問が原因だった。時には集中治療室から出られない振りをしながら実は夜中に病院を抜け出してとある国の内戦を秘密裏に解決させたこともあったことから、彼女をマークしていた敵対組織に誘拐され今でも生きているのではないかと源造は考えていた。何故なら敵はいつか自分たちの前に立ちはだかるかもしれない千草の後継者の存在を恐れており、その謎の人物をおびき出すための罠に利用する可能性があるからだ。その後継者として月影が指名したのがマヤと亜弓だった。紅天女を演じるためにやってきた特訓は一人前のスパイを育てるためのものでもあったのだ。紅天女を演じる前に地球が滅んでしまえば元も子もない。そこで仕方なく亜弓が任務を引き受けると、隣の部屋から寝ぼけ眼のマヤが入ってきた。何も知らない彼女に事の顛末を速水が説明すると、マヤはノリノリで引き受けたのだった。

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