坂本事務所=SEDIC=市川準事務所
配給:松竹
製作年:1988年
公開日:1988年11月26日
監督:市川準
製作:坂本敏夫
プロデューサー:中沢敏明
脚本:鈴木聡 市川準
音楽:板倉文
撮影:小野進
美術:菊川芳江
録音:熊谷良兵衛
照明:小中健二郎
編集:冨宅理一
助監督:米山紳
制作担当:高橋憲行
記録:川野恵美
スチール:上牧佑
スタイリスト:南平和子
擬斗:車邦秀
音楽プロデューサー:安藤賢次 庵豊
アートコーディネーター:市川敏明
企画協力:中井純一
製作協力:渡辺プロダクション
提携:松竹 日本テレビ放送網 坂本事務所 SEDIC
出演:ハナ肇 西山由美 谷啓 犬塚弘 桜井センリ
アメリカンビスタ カラー 99分
東京商事で勤続34年の総務課長・花岡始は間もなく定年を迎えようとしていた。仕事の引継ぎが終わったことで特に何もすることがなくなった彼は、自分のデスクからお茶をすすりながら部下たちの仕事ぶりを眺めるのが日課となった。仕事のストレスから解放されたからか朝早く目覚めるようになり、おかげで出勤時のラッシュアワーに遭うことはなくなった。だが家に帰れば見慣れた妻と顔を合わせなければならず、離婚した長女は娘と同居、受験に失敗した長男は予備校通いと別のストレスが溜まった。そんな花岡の一服の清涼剤は新入社員の西山由里が朝早くから笑顔で出迎えてくれることだった。退職を機に郊外へ引っ越すことにした花岡は、この地での最後の思い出に見慣れた河川敷で家族間でのささやかな焼肉パーティーを行ったが、定年後の彼を心配した妻は市役所でもらってきた趣味講座のチラシを手渡した。趣味を持たない花岡にとってどうでもいいようなものばかりだったが、何処からか聞こえてきたトロンボーンの音色に思わず耳を傾けた。
引っ越しが一段落した頃、花岡は同僚たちから陰口を叩かれていることを社内のトイレで偶然知った。その夜、久しぶりに別の課の谷山啓と飲みに行った花岡はそこで自分が昔、立川にある米軍基地のクラブでドラムを叩いていたことを話した。六大学の花形トロンボーン奏者として有名だった谷山が定年前に会社でジャズを演奏してみたいと言ったことに触発されたのだ。その頃を思い出し深酒をした花岡は帰り道にふらついて電柱に額をぶつけ、翌日は長男が警察にやっかいになり妻と謝りに行った。年末が目前に迫り何かと慌ただしい中、花岡は会社に迷惑を掛けまいと部下の木村台子に送別会を行わない旨の書類の作成を頼んだ。用事を済ませて席に戻ると封筒が置いてあり、その中には二人だけで行う由里主催の定年パーティーの案内が入っていた。驚いた花岡は視線で彼女を捜したが、その仕掛け人は台子だった。台子にとって朗らかで実直な花岡は太陽のような存在であり、私生活で何かあっても会社に行くことで元気をもらえた。 ある日、その花岡が由里を見るときだけ違う目をしていることに気づいた台子は、感謝のつもりでデートしてあげて欲しいと言った。パーティーは午後7時からだったが、重役会議と称した麻雀に誘われ抜けることが出来なくなった。ようやく終わった時には予定の時間を大きく過ぎており、急いで駆けつけると由里は辛抱強く待っていた。食事をし、今まで一度も足を踏み入れたことがないディスコへ行き、定年祝いの花をもらった。上機嫌でタクシーに乗ったが、伝えることを忘れていたことに気づき戻ると、由里は若い恋人とキスをしていた。ショックを受けた花岡はうなだれたまま家に帰った。
屋台的映画館
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