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賞金稼ぎ

  • posted at:2018-10-05
  • written by:砂月(すなつき)
しょうきんかせぎ
東映(京都撮影所)
配給:東映
製作年:1969年
公開日:1969年8月13日 併映「新網走番外地 流人岬の血斗」
監督:小沢茂弘
企画:俊藤浩滋 松平乗道
脚本:高田宏治 伊上勝
撮影:山岸長樹
照明:金子凱美
録音:中山茂二
美術:矢田精治
音楽:八木正生
編集:堀池幸三
助監督:本田達男
記録:牧野淑子
装置:温井弘司
装飾:清水悦夫
美粧:中野進明
結髪:白鳥里子
衣裳:高安彦司
擬斗:上野隆三
古武道指導:中島正義
進行主任:俵坂孝宏
協力:銃砲史学会 吉岡新一
出演:若山富三郎 野川由美子 真山知子 天津敏 高橋昌也
アメリカンビスタ カラー 90分

宝暦二年六月、オランダ船ロッテルダム号が最新式のゲーベル銃千丁を積んで神奈川沖に現れた。特命大使カピタン・シーゲルは幕府老中と会見し、銃を安価で提供する見返りに無条件和親条約の調印を要求したが、時の将軍家重はそれを断固拒絶し帰国を命じた。するとシーゲルは船首を南に転じ、幕府が最も恐れる九州の雄藩薩摩に向かったのだった。老中筆頭牧野豊後守を始めとする幕府首脳は重大な決意で薩摩藩江戸家老伊集院右京を召還しオランダとの密約を問い質したが、右京は決してそのようなことはないと断言した。同月二十日、東叡山寛永寺に異例の参詣をした家重はそこである人物と会った。関ヶ原の合戦以来、幕府と薩摩の関係が最も険悪になっていることを憂慮した家重は、右京が過激派の暴走を食い止めるために国許へ向かうはずと見当をつけ、オランダ医学に精通する懇意の町医者錣市兵衛に助力を要請した。市兵衛は剣術だけでなく銃や弓などあらゆる武器を使いこなせる凄腕の賞金稼ぎだった。薩摩へ向かう道中で右京の一行は桜島山嶽党の小野里民部に襲われたが、突如現れた彼によって命を救われた。礼を言う右京に市兵衛は、異国の船は足が速いからお急ぎなさいと先を急がせたのだった。

大雨で大井川が増水し川留めを食らった市兵衛は、道中で勝手についてきた曲垣藤九郎という妙な浪人と宿に泊まることになった。そこで川抜けをしてでも先を急ごうとする女と出会い、それ以来気になった市兵衛は先回りをして彼女を待つことにした。霧島越えの道を選ぶと読んだ市兵衛は薩摩国の入り口で待ち伏せし偶然を装って出会った。その先では幕府の隠密が屍としてさらされ、役人の目も厳しかったことから易々と入り込むことは出来なかった。そこで一番難しい入り口といわれる関所を市兵衛は選び二人に黙ってついてこいと言った。彼が関所の前で堂々と俺は幕府の隠密だと名乗ると役人たちは慌てふためいて取り押さえようとした。覚悟してきているんだから逃げやしないと市兵衛が落ち着いた声で言うと、男たちは迫力に負けて役人頭の所へ連れて行った。すると彼は懐から出した爆薬でその場を混乱させ、その隙に女とともに全ての役人を斬ったのだった。市兵衛は別れ際に、お前を死なせたくないんだと女に白い丸薬を渡した。

その夜、女は薬商名張の与藤次を訪ねた。女の正体は陽炎という名の隠密で、老中牧野豊後守の遣いで薩摩藩取り潰しのための謀叛の証拠を集めるために動いていた。その繋ぎの一人が与藤次だった。一方、市兵衛は座頭と偽って山嶽党の茜に接触すると民部から死に際に託された言付けを伝えるために砦まで連れて行って欲しいと訴えた。そして民部が身につけていた証を見せると茜はその話を信用した。

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守護天使

  • posted at:2018-04-11
  • written by:砂月(すなつき)
しゅごてんし
「守護天使」製作委員会(エイベックス・エンタテインメント=メモリーテック=共同テレビジョン=BSフジ=クオラス=サンミュージックプロダクション=宝島ワンダーネット)
配給:エイベックス・エンタテインメント
製作年:2009年
公開日:2009年6月20日
監督:佐藤祐市
製作:千葉龍平 川崎代治 山田良明 北林由孝 武政克彦 相澤正久 劔重徹
企画:高木政臣
プロデューサー:柳﨑芳夫 井口喜一
共同プロデューサー:伊藤和宏
アソシエイト・プロデューサー:竹内一成 冨久尾俊之
原作:上村佑
脚本:橋本裕志
音楽:佐藤直樹
撮影:川村明弘
照明:阿部慶治
美術:荒川淳彦
録音:金杉剣
編集:田口拓也
サウンドデザイン:藤村義孝
VFXスーパーバイザー:野崎宏二
スクリプター:黒河内美佳
助監督:本間利幸
制作担当:持田一政
技術プロデューサー:佐々木宣明
美術プロデューサー:杉川廣明
プロデューサー補:椛澤節子
主題歌:「僕にできる事のすべて」エイジアエンジニア
制作プロダクション:共同テレビジョン
出演:カンニング竹山 佐々木蔵之介 與真司郎 忽那汐里 日村勇紀
アメリカンビスタ カラー 109分

うだつが上がらないメタボなブサイク中年サラリーマンの須賀啓一は鬼嫁・勝子に頭が上がらない。彼は市が運営する「さわやか若者支援塾」のカウンセラーとして働いており、その仕事内容は引きこもり家庭を回って対象者の社会復帰の後押しをすることだった。毎朝もらう小遣いは仏壇の下の貯金箱から取り出した500円玉。その代わりに玄関を出る彼の右手にはゴミ袋が握られていた。いつものように満員電車に揺られながらの出勤だった。車内で退屈な時間を過ごしていると、網棚にスポーツ紙があることに気づいた。それを何とか取ろうと場所の移動を試みるが、手を伸ばしても届かないところにあった。すると何処からか「恐縮しないでください。私は次で降りますので」という女の子の声が聞こえた。そちらの方へ目をやると、顔は見えないがどうやら制服姿の女子高生らしい。バッグには天使のキャラクターのキーホルダー。そんな彼女に興味を持った啓一は顔を見たい衝動に駆られたが、電車が急停止したことで体勢を崩したのだった。諦めきれない啓一は彼女を追い掛けようと降りる予定のないその駅で下車しようとしたのだが、乗り込んできた乗客に押し込まれて願いは叶わなかった。

翌朝、今度こそあの女子高生を追い掛けようと考えた啓一は職場の親睦会があるとウソをついて小遣いを多めにもらおうと考えたが、じゃあやめたらと勝子に言われたため即却下した。駅の売店ではベテランミュージシャンと女子高生との結婚が見出しになったスポーツ紙が売られていたが、興味があるものの節約のために断念。すると車内の網棚には念願のスポーツ紙が乗っていた。それを手に入れてほくそ笑んでいると、人の隙間からあのキーホルダーが見えた。それが女子高生だとわかると啓一は彼女と同じ駅で降り、後姿を追い掛けたのだった。ところが焦るあまりにちょっとした段差でつまづき大転倒。その拍子に飛び出した大事な500円玉が雑踏に転がって行った。女子高生の形跡と小遣いを失うというダブルのショックに打ちひしがれた啓一がピクリとも動かずにいると、誰かが「大丈夫ですか?」と声を掛けてきた。それが誰なのか啓一はすぐにわかった。笑顔の女子高生は彼に硬貨と新聞を渡すと会釈をして去って行った。その穢れのない笑顔に一目惚れした啓一は彼女を社会の悪から守り抜くと勝手に決心したのだった。だがその方法がわからないことから、子供の頃からの悪友の村岡を呼び出し指南を受けることにしたのだ。だが村岡は素性のわからない女子高生を一方的に守ろうとする啓一の意図がわからないため呆れ果てたのだった。金がなければ何も始まらないことがわかると夜更けに勝子の部屋へ忍び込み、彼女が眠っているのを確認してから貯金箱に手を出した。だが襖が開く音で勝子は既に気づいており、力士だった父親譲りの張り手を見舞った。それを顎に食らった啓一は前歯を一本失った。

翌日、啓一が担当している佐々木大和から大学進学の相談を持ち掛けられたため、ショッピングモールのフードコートで食事をしながら話し合うことにした。啓一はあの女子高生の話題を持ち出し、お嬢様学校なら真面目で清純な娘なんだろうなとつぶやいた。すると大和はそうとは限らないと否定し、ノートパソコンに「ある聖女高校生の日記」というブログを表示した。そこには淫らな内容が書かれており、啓一は最新の日記の内容を見て愕然とした。「昨日は駅のホームで倒れたおじさんが落とした小銭と新聞を拾ってあげて感謝されたんだ!!」。

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ジーンズブルース 明日なき無頼派

  • posted at:2018-02-11
  • written by:砂月(すなつき)
じーんずぶるーすあすなきぶらいは
東映(京都撮影所)
配給:東映
製作年:1974年
公開日:1974年3月30日 併映「非情学園ワル ネリカン同期生」
監督:中島貞夫
企画:日下部五朗 佐藤雅夫
脚本:中島貞夫 金子武郎
撮影:増田敏雄
照明:金子凱美
録音:溝口正義
美術:吉村晟
音楽:井上忠夫
編集:神田忠男
助監督:土橋亨
記録:梅津泰子
装置:吉岡茂一
装飾:山田久司
美粧結髪:東和美粧
スチール:中山健司
演技事務:上田義一
衣裳:松本俊和
擬斗:土井淳之祐
進行主任:俵坂孝宏
主題歌:「ジーンズ・ぶるうす」梶芽衣子
出演:梶芽衣子 堀越陽子 橘真紀 室田日出男 菅貫太郎
アメリカンビスタ カラー 91分

都心の一角にあるバー・FU-ZOKUはマスターが奥のフロアを乱交パーティーの場として客に提供している。その店で働く聖子は名ばかりの雇われママで、カウンターでグラスを片手に時間を潰す毎日に嫌気が差していた。出先からの電話でマスターが帰ってこないことがわかると、彼女はレジの金をわしづかみにしてポケットに突っ込み店を後にした。マスターの車を拝借して当てもなく走らせていたが、急に飛び出した白い車と交差点で衝突した。威勢よく飛び出してきたのはチンピラの片桐次郎で、何処見て運転してんだよと怒鳴りつけたものの、一刻も早くその場から離れたい彼は銭だったらいくらでも出すよと聖子に言った。

金欲しさに高利貸し殺しの仲間に入った次郎は死体を埋めるための穴掘り役を任されていたが、リーダーの本郷が落として行った札束に気づき拾い上げた。目の前では高利貸しの男が撲殺されており、分け前が減るという理由で一緒に埋められることを知った次郎は同じ目に遭いたくないと逃げ出したのだった。暗闇を駆けるその先には立ち小便をする男がおり、その傍にエンジンの掛かった車が停めてあったことからそれを奪うとアクセルを踏み込んだのだった。昂る気持ちが抑えられない次郎の頭の中には札束がひしめき、交差点を横切る赤い車の発見が遅れたのだった。
 
人ひとり殺してきたんだぞと凄んでも聖子が動じる様子を見せなかったため、次郎はどっちもどっちだなとあきれてタバコに火をつけた。そしてマッチを投げ捨てると漏れ出したガソリンに引火し二台の車は大爆発を起こしたのだった。急いで道路脇に避難をすると野次馬が乗る車が近づいてきたことから、男が降りた隙にふたりが乗り込みスタートさせた。エンジン音に気づいた男が立ち塞がったことで次郎はそれを避けようとしたが間に合わず撥ね飛ばした。次郎が慌てて駆け寄ると男にはまだ息があったため救助しようとしたが、パトカーのサイレンが聞こえたことで札束から数枚抜き取ると治療代だと言って傍に置いた。次郎は聖子を助手席に乗せたが、この後のことは無計画だった。そこで何処へ行くつもりかと尋ねたが、聖子からは当てなんかないという素っ気ない言葉が帰ってきただけだった。とりあえず腹ごしらえをするために道路沿いのレストランに寄ったが、次郎は灯りの下で初めて聖子の素顔を見た。そしてあんたとならうまくやれそうな気がすると、丹後半島へ行く予定を話をした。その頃、本郷の部屋にマリー、早川、石松が集まっていた。彼らは次郎に札束を持ち逃げされた上に交通事故で車が炎上したことで、人と金の手がかりを失っていたのだ。

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十三人の刺客(1963年)

  • posted at:2017-10-12
  • written by:砂月(すなつき)
じゅうさんにんのしかく
東映(京都撮影所)
配給:東映
製作年:1963年
公開日:1963年12月7日 併映「わが恐喝の人生」
監督:工藤栄一
企画:玉木潤一郎 天尾完次
脚本:池上金男
撮影:鈴木重平
照明:増田悦章
録音:小金丸輝貴
美術:井川徳道
音楽:伊福部昭
編集:宮本信太郎
助監督:田宮武
記録:勝原繁子
装置:西川春樹
装飾:川本宗春
美粧:佐々木義一
結髪:西野艶子
衣裳:三上剛
擬斗:足立伶二郎
進行主任:藤井又衛
語り手:芥川隆行
出演:片岡千恵蔵 里見浩太朗 内田良平 丹波哲郎 丘さとみ
シネマスコープ モノクロ 125分

弘化元年九月五日早朝、江戸城馬場先御門の外にある老中土井大炊頭利位の屋敷前にて播州明石十万石松平左兵衛守斉韶の家来、江戸家老職間宮図書が切腹した。斉韶は将軍家慶の弟に当たることから、この不祥事は幕閣を震駭させた。訴状には斉韶の暴虐ぶりが書き連ねてあり、それを読んだ利位は旗本衆の中から最も信頼がおける御目付役島田新左衛門を呼び寄せた。図書が命に代えて訴えた願いは叶うことはなかった。何故なら明年、斉韶は江戸出府の際に老中職に就任する願いが家慶から出されているからだ。御政道の歪みを如何に正すか。利位は先ず新左衛門に尾張中納言家来の木曽上松陣屋詰牧野靭負を会わせることにした。昨年十月、斉韶が参勤交代で中山道を江戸に向かう途中、尾張領上松で一泊した。万が一にも粗相のないよう尾張家陣屋勤めの藩士は妻や娘も加えて接待を行った。靭負は斉韶に見せたい絵巻物の準備を倅である妥女の嫁の千世にさせることにした。千世はふた月ばかり前に来た器量の良い嫁だったが、斉韶はそんな彼女を木曽の山中に置くには惜しいと見初めたのだった。妻が手籠めにされたことを知り奥の部屋に乗り込んだ妥女だったが不意打ちを食らって一太刀で果て、その夜千世も後を追って自害した。そのまま挨拶もなく明石藩の行列は出立し、江戸に到着した後に尾張家から何度も掛け合ったものの返事はなかった。生き甲斐を失った靭負の悲しみは深く、主君尾張中納言に降り掛かった恥辱を思って死ぬことも出来なかった。靭負が帰ると利位は新左衛門に感想を聞いた。こうしている間にも図書の声が聞こえる心地がするという新左衛門の言葉を聞いた利位は、天下の政道を為す老中と云えども適わぬことがあると言った。だがやらねば天下の政は乱れ、災いは万民に及ぶだろう。利位がどうだと尋ねると、新左衛門は見事成し遂げてご覧にいれますと言った。

斉韶は図書の遺体を明石藩上屋敷に差し戻すと妻や息子夫婦、幼気な孫といった図書の家族に縄を掛けた。そのことに怒りを隠せない家臣の鬼頭半兵衛は、御公儀同様の配慮を願うという利位からの言葉があったことを斉韶に伝えたが聞く耳を持たなかった。そして半兵衛が座を外した隙に図書の妻や他の者たちを次々と斬り捨てたのだった。このままでは利位の面目が立たないことから半兵衛は他の家臣たちに目の前で起こったことを口外せず内々に処理するように言った。次に遣いの者を呼び寄せると、利位の屋敷に向かわせ門番や小者に金を渡して三日の間に屋敷に招かれた者の名を突き止めるよう命じた。翌日、名簿を手に入れた半兵衛はその中から新左衛門の名を見つけた。文武の逸材として名高い新左衛門に利位が天下の一大事を託したことがわかると半兵衛は御家にとっては最も悪い籤を引き当てたようだと呟いた。

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しとやかな獣

  • posted at:2017-08-07
  • written by:砂月(すなつき)
しとやかなけだもの
大映(東京撮影所)
配給:大映
製作年:1962年
公開日:1962年12月26日 併映「やくざの勲章」
監督:川島雄三
企画:米田治 三熊將暉
原作:新藤兼人
脚本:新藤兼人
撮影:宗川信夫
録音:西井憲一
照明:伊藤幸夫
美術:柴田篤二
音楽:池野成
編集:中静達治
助監督:湯浅憲明
製作主任:松本賢夫
現像:東京現像所
出演:若尾文子 船越英二 浜田ゆう子 高松英郎 川畑愛光
シネマスコープ カラー 96分

郊外の団地に居を構える前田家。主の前田時造は元海軍中佐で、終戦後に仲間と木造船の会社を始めたが経験不足と資金難で程なく倒産した。その後、カメラの製造や洋酒の販売など様々なことに手を出すもののことごとく失敗し、極貧の生活を体験した。もう二度とあのような生活に戻りたくないと心に決めた時造は、子供たちを使ってひと様からお金をいただく方法を考え出したのだった。まず娘の友子を流行作家・吉沢の妾にし、その吉沢の紹介で息子の実を芸能プロダクション・ハイライトプロに入社させると集金したタレントの出演料を着服させた。そのことで社長の香取一郎がやってくることがわかると家の中にある高価な物を極力隠し、自身と妻・よしのの身なりをみすぼらしい姿に変えた。そして息子がやったことは知らぬ存ぜぬと一方的に押し通し、そのことが事実ならば親として責任を取るのは当然だが事業の失敗で多額の借金を背負っているために支払うことが出来ないと涙ながらに説明した。出るところに出ると捨て台詞を残して出て行った香取と入れ替わりに帰ってきた実は仕事に手慣れてきており、時造が想定していた額の倍の100万円を着服していた。心配する時造に実は、税金を誤魔化しているのだから警察になんて行きっこないと高を括っていた。そこへ帰ってきた友子は恥ずかしくてアパートを出てきたと言った。時造は吉沢から度々借金をしており、さらに40万円を借りたことでもう付き合い切れないと言われたのだ。前田家に愛想をつかした原因は父にあると考えた友子だったが、時造はその責任を先方のせいにした。

友子がシャワーで汗を流していると吉沢が突然現れた。彼女の気配を消すために時造がしゃべり続けると、吉沢はここへきた理由を話し始めた。雑誌社からの原稿料を実が無断で着服し、しかも一度や二度ではないそのやり口が悪質だと怒っていた。吉沢の判子を押した名刺を使って代理人として受け取り、おまけに雑誌社の若い連中とともにツケで飲み歩いているというのだ。時造が詫びの言葉を口にすると今度は怒りの矛先が彼の方に向いた。彼が友子の世話をすると言った途端に金を貸せと言い、それが110万円にまで膨れ上がっていた。前田家が住む部屋も吉沢が友子のために用意した部屋だった。これじゃあ体のいいゆすりだというと、時造は誤解だと言い訳した。吉沢は実のハイライトプロの使い込みの件も知っており、一家で申し合わせているのではないかと疑いの目で見ていたのだ。すると自室から実が現れ、度々出版される前田家をベースにした小説のモデル代を請求した。彼の小説の登場人物には思い当たる節があり、それを猥雑にアレンジされていることに抗議すると吉沢は腹を立てて帰って行った。その夜、実を訪ねてきたのはハイライトプロで会計係を務める三谷幸枝だった。子供を抱える未亡人の彼女は、実に体を提供する代わりに貢がせて念願の旅館を手に入れた。女手ひとつで旅館を経営して行く上で身辺をきれいにしておかなければならないため、最初の契約通りにすっぱりと別れることにしたのだ。別れ話を切り出され実は必死に抵抗したが、彼女の気持ちは変わらなかった。

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