松竹(大船撮影所)
配給:松竹
製作年:1949年
公開日:1949年3月13日
監督:木下恵介
製作:小出孝
脚本:新藤兼人
撮影:楠田浩之
美術:小島基司
音楽:木下忠司
照明:豊島良三
録音:佐々木秀孝
調音:大野久男
編集:杉原よ志 大沢静子
現像:中原義雄
焼付:中村興一
装置:小林孝正
装飾:守谷節太郎
衣裳:鈴木文次郎
結髪:増淵いよの
床山:吉沢金五郎
スチール:小尾健彦
擬音:斎藤六三郎
撮影事務:山下義一郎
進行担当:渡辺大
賛助:八洲自動車株式会社
特別出演:大日本拳闘協会
特別出演:市村襄次夫妻(ガルデニアサークル)
主題歌:「お嬢さん乾杯」灰田勝彦
・・・:「バラを貴女に」灰田勝彦 若原弓子
出演:佐野周二 原節子 青山杉作 藤間房子 永田靖
スタンダード モノクロ 89分
ある日、自動車修理工の石津圭三のもとに得意先の佐藤専務が訪れた。その理由は車のタイヤがパンクしたときに彼のことを思い出したからだ。話の内容は工場を構えながらも独身生活を長らく送る圭三の縁談で、早速写真を見せると最初は拒みながらも幾分興味を持つようになった。見合いの相手は専務の恩人の令嬢・池田泰子で、家柄は立派だし学習院大卒と教養も申し分なかった。だがそれを聞いた途端、圭三は提灯に釣り鐘だと感じ拒んだ。そこで専務は会うだけでもどうかと薦めたが圭三にはその気がなかった。するとしつこくつきまとい身分違いなどこのご時世に流行らないと説得を続けると、絶対に断る気でいる圭三は条件として見合いの場所をいつも昼食で使うスパローというバーに指定した。嫌なら止めると言われた専務は渋々了承し、翌日の正午に行うことに決めた。
落ち着かない圭三はいつもの時間よりも早くスパローに向かい、マダムにこれからここで起こることを説明した。すると彼女は興味を抱いたが、組合の総会に出掛けなければならず成り行きを見届けることが出来ないことを残念がった。やがて時計の針が正午を差すと圭三は落ち着かなくなり、窓の下に車が停まるとグラスのビールをグイッと呷った。そして店に入ってきた専務に断りを言ったが後の祭り。仕方なく覚悟を決めた圭三だったが、泰子を見た途端、体が硬直した。「天上の美女」と逢い雷に打たれたような衝撃を受けた圭三は尚更自分とは住んでいる世界が違うと考えるようになった。部屋に戻ると五郎に心の内を打ち明けてたが気楽な弟は結婚しちゃえよと無責任なことを言った。やがて泰子を送り届けた専務が様子見にきて気持ちを聞いたが、煮え切らないため先方からの返事よりも自分から申し出るべきだとアドバイスした。だが圭三はダメに違いないと決めつけた。それからしばらくして専務からの電話で先方から承諾を得たことを知った圭三は天にも昇る気持ちになり、その喜びを分かち合うために同じ工場で働く五郎をバイクで迎えに行くと後ろに乗せて突っ走った。スパローに到着し五郎が承諾のことを報告するとマダムや客たちが圭三を祝福した。だが彼にはまだ解せないことがあった。何故自分なのかと。するとマダムがあんたは男の中でも上玉だとおだて五郎もそれに乗っかった。それを聞いた圭三はあっさりと心変わりした。
翌日、正装に身を包んだ圭三は池田家を訪問した。泰子から家族を紹介され畏まる圭三だったが、二人きりになると彼女は家の事情について話し始めた。その詳細をスパローにいる専務に尋ねると、泰子の父親が終戦直後の詐欺事件に巻き込まれて服役していることを知った。邸は抵当に入っておりその期限は三か月後に迫っているのだ。今回の縁談が金絡みだとわかり、他にも隠し事があって圭三は失望したが、泰子が心から結婚してくれる気持ちがあるのなら援助してもいいと専務に言った。二人きりで話して以来、彼女へ思いが一層強くなったからだ。
屋台的映画館
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